2011年11月22日
【知的生産】『プロの知的生産術』内田和成
プロの知的生産術 (PHPビジネス新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、『仮説思考』でおなじみ、内田和成先生の最新刊。帯にある「トップ・コンサルタント直伝の超効率的インプット&アウトプット術」というフレーズが光ります。
アマゾンのページがちょっと薄いので、出版社のサイトから一部引用。
情報と付き合う際の基本スタンスである「3つの目的」、アイデアを熟成させるための「20の引き出し」、アナログ活用で差別化を図る方法といったユニークな情報活用術から、新聞、雑誌、書籍、テレビやネットといった各種メディア、あるいは仕事の現場や日常生活の中からどう情報を得るかといった具体論まで紹介する。各章の終わりに、文房具ネタが記されているのも見どころの1つです!
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【ポイント】
■1.インプットに労力をかけてもムダが多いこの京大型カードの欠点というか限界は、情報のインプット(データの作成)に比校してアウトプットすなわち原稿を書いたり、発表したり、企画案にまとめたりすることがそんなに発生しないことである。(中略)
結果としてカードを作成したり、整理したりするのに使われるインプットの労力のわりにアウトプットの頻度が少なく、費用対効果が悪すぎる点に限界があると言えるかもしれない。個人的な感覚になるが、インプットに使う時間や労力を10とすると、アウトプットに使える効果は2〜3といった感じではないか。逆に言えば、2から3のアウトプットをするためには、その準備段階として10の努力をしなければなりないということになる。
■2.差別化はアウトプットにあり!
しかし、このように情報収集が簡単になり、かつ誰でもほぼ同じ情報源に接することができるとなると、これまでのように「どのように情報を集めるか」「情報を整理するか」というインプットの段階で差別化することはきわめて難しくなる。(中略)
ビジネスパーソンとして情報のインプットで差別化ができないのなら、どこで差別化するのか? 当然、入手した情報をどのように分析・加工し、さらにはそれをどのような企画案や提案にまとめるのか、そして最後は相手にどのように発信していくのかという「アウトプット」のところで差別化を図るべきということになる。
■3.アウトプットから考えれば、インプットも速くなる
情報を得る目的がわかれば、それに至る手段も見えてくる。
つまり、「こういうことを決めたいから、そのためにはどの情報が必要だ」という視点から逆算して、「それなら、新聞よりもソーシャルメデイアの情報を集めたほうがいい」ということになるかもしれないし、「この情報は事実関係の間違いが許されないから、広辞苑や専門家へのインタビューなど、信頼できるソースから情報を集めたほうがいい」、あるいは「概略を知ればいいから、ウィキぺディアで十分」という判断も考えられるだろう。(中略)
つまり、アウトプットから考えることで、インプットもまた、速く、確実なものになるのである。
■4.少ない情報で判断できるようにする
自分の経験でも、若いうちに、とにかく少ない情報で意思決定をしたり企画書をまとめてみたりして、大事なことを見落としたり失敗したりしてコテンパンにやられる。そして学ぶ。
ここで、「あつものに懲りて膾を吹く」ではいけない。つまり、「この前は失敗したので、前は30調ぺたのを今度は60調べてから判断しよう」とは考えずに、「じゃあ、同じ30の情報でどうやって前よりいい意思決定なり、より良い企画立案ができるだろうか」と考えるのだ。私はそこが、できるビジネスパーソンになれるか、平凡なビジネスパーソンで終わってしまうかの、別れ道だと考える。
■5.相手を説得したいなら、知らないことを突き付ける
セールスマンが顧客を説得するときには、なるべく相手が知らないような情報を伝えるのがセオリーだ。たとえば、ある車がほしくて来店したが、価格が高くて迷っている、という人に、その車の魅力を得々と語ったところで意味はない。そもそもその人はその車に魅力を感じているのだから、これは共通の土台でしかないのだ。
ならば、「今この車を買うと補助金が出る」「燃費がいいのでコストパフォーマンスもいい」などといった相手の知らない情報を提供したほうがいい、ということである。
■6.書籍は自分の文脈で読む
私も小説を読むときには、すっかり感情移入をしてその世界に入り込む。だが、それ以外の本に関しては、私はこの「著者の文脈」を完全に無視して、「自分にとって役に立つか」か「面白いか」という視点で読んでしまうのだ。そして、そうしたアンテナに反応したところのみ、印をつけたり書き込みをしたりして、頭の中に入れていく。(中略)
要は、そのときペンを使って印をつける、あるいは付箋をつけるという行為そのものが大事なのだ。そうすることで、脳の引き出しにより強く刻み込まれるわけだ。いわば、「思考の目印」だ。これを私は「脳みそにレ点を打つ」と言っている。
■7.あちこち寄り道できるのが新聞の利点
ネット上での寄り道はあくまで「関係のあるもの」だけである。要するに「芋づる式のつながり」でしかないのである。たとえば価格戦略について調べていて、インドの超低価格車の情報や高級ブランドの情報にたどり着くことはあるかもしれないが、それと全く関係ない情報へ飛ぶことはあまりない。
それに対してたとえば新聞では、自分が読みたい記事と全く興味のない記事が隣に並んでいたりするわけで、そこについ「寄り道」してしまうということが起こり得るのだ。
(詳細は本書を)
【感想】
◆タイトルに「知的生産術」とありますが、本書の類書との違いは、まず「アウトプットに当たる情報活用」を先に考え、そのあとに「必要な情報収集や整理方法」を考えましょう、としている点。内田先生は「情報収集・整理ができなくても、情報活用ができる人になろう」と言われているのですが、実際、上記ポイントの3番目にあるように、目的いかんによっては「ウィキペディアでも十分」だし、割愛したものの「コピー&ペーストも悪くない」とお考えです。
というのも、結局のところ「情報収集・整理」とは、意思決定をしたり作戦を立案するといった「仕事」のための「手段」に過ぎないから。
実際、多くの「知的生産術」の本は、「いかに作業の効率化を図るか」といった内容が中心であり、その後のことまでは触れていません。
もちろん「情報収集・整理」にてこずっていては、肝心の仕事の時間が足りなくなるので、こうした「作業スキル」も大切なのですが、ポイントの4番目にあるように、「少ない情報で判断せよ」と。
なるほど、こうした習慣が「できるビジネスパーソン」への道なんですね。
◆本書では、情報を活かすための「20の引き出し」という考え方を第3章で提唱しています。
これは、あらかじめ興味のある、もしくは仕事で必要なテーマごとに、あらかじめ頭の中に「仮想の引き出し」を用意しておく、というもの。
これは、実際にデジタルやアナログのデータで保存するのではなく、「頭の中だけで行う」のがミソ。
ある程度熟成させたり、他の情報と結びついたり、といったことができるのも「頭の中」だから、とも言えます。
この辺のお話は、こちらの本にも詳しいので、本もしくは下記参考記事をご参照のこと。
スパークする思考 右脳発想の独創力 (角川oneテーマ21)
参考記事:【コンサル的知的生産術】「スパークする思考 右脳発想の独創力」内田和成(2008年11月19日)
◆また、興味深かったのは、内田先生が実は「文房具評論家になりたかった」というくらい、ガジェットおたくだったこと。
初代ウォークマンや、最初の市販デジカメ「QV-10」、小型PDA「PalmPilot」等、数多くのエポックメイキングな製品の初代モデルを買っているのだとか。
もちろん現在は、iPhone、iPadはもちろん、キンドルも所有されているそうです。
中でも個人的に気になったのが、「TUMI」から乗り換えたというこのカバン。
[ヴィクトリノックス] VICTORINOX ブリーフケース Wainwright (30321901)
「TUMI」ほど頑丈ではないものの、軽いし安いw
◆そして、もう1つ、ステッドラーの多機能ペン。
ステッドラー 多機能ペンアバンギャルド/クールシルバー 927AG-S
「黒、赤&蛍光オレンジボールペン+シャープペン」という4機能入りなのに、かなり細い上に、LAMYの半値くらい、というのが素敵です。
……アナログばかりですいません。
冒頭で触れましたように、各章の終わりには、こうしたガジェット活用術がありますので、そこだけ見ても楽しいです。
ちなみに、本書の方ではデジタルガジェットも扱っておりますのでご安心を。
硬軟盛りだくさんな「知的生産術本」です!
プロの知的生産術 (PHPビジネス新書)
第1章 「情報整理」では差がつかない時代
第2章 大事なのは量ではなく「質」
第3章 情報を最大に活かすための「20の引き出し」
第4章 デジタルとアナログを使い分ける
第5章 私の情報源
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【編集後記】
◆『MONOQLO』の最新号は「ベストバイ2011特大号」。MONOQLO (モノクロ) 2012年 01月号 [雑誌]
これは買わずにいられませぬ!
ご声援ありがとうございました!
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