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2011年11月07日

ビジネスの達人がこっそり教えてくれる『7つの危険な兆候』の真実


7つの危険な兆候 企業はこうして壊れていく
7つの危険な兆候 企業はこうして壊れていく


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、「企業の失敗例」を徹底的に検証し、その原因と対策について掘り下げた1冊。

経営者や投資家のみならず、私たちビジネスパーソンが読んでも参考になる内容です。

アマゾンの内容紹介から。
過去25年分750件の失敗事例を徹底検証。名だたる企業・エリートでも陥る戦略の罠とその回避策とは。
本書の表紙裏にあった「さあ、名だたる企業が何億ドルも損失を出して教わってきたことを、われわれは、本書で学ぼうではないか」というフレーズには、思わず納得!

なお、タイトルは「ホッテントリメーカー」のお世話になりました。


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【ポイント】

■1.シナジーという幻想に惑わされる
 最も重要な質問はこうだ。シナジー効果を得るためには、会社を買収しなければならないのか? それともパートナーシップを築くだけでいいのか? たとえばユナイテッド航空は、ハーツとウェスティンを買収しなくても、旅行代理店のカを借りて、顧客をハーツやウェスティンに向かわせる方法を考え出せたはずだ。会社と会社が本当に協力しあうには、ひとつ屋根の下で仕事をする以外にもやり方はある。


■2.「金融の錬金術」の虜になる
 行き過ぎた金融工学にからめとられるのを避けるために、まず2つのざっくりした質問から始めよう。「その戦略は白日の下にさらされても大丈夫か?」。そして「その戦略は嵐に遭っても耐えられるか?」。
 第一の質問については、別の言い方もできる。「その戦略は会社のウェブサイトのトップぺージで伝えられるか?」「ウォールストリート・ジャーナルの第一面で取り上げられたら、みんながどういう反応を示すか?」(中略)

 ざっくりした質問のあとには、さらに掘り下げるべき具体的な質問がある。
 まず自分にこう問いかけてみよう。「その会計は確かなキャッシュフローをつくりだすだろうか? それとも損益計算書の見栄えをよくするだけだろうか?」。実際にキャッシュフローが得られないのなら、やめたほうがいい。


■3.業界をまとめ、ひとり勝ちを夢見る
 1999年1月、再建の専門家ジョン・レイシーが、レイ・ローウェンに替わって会長の任に就いた。4月、レイシーは、自分が1300もの企業体を扱わねばならないことに不満を述べた。「税金部門だけで85人もの従業員がいて、ばらばらに書類をつくろうとしていた。管理面でのシナジー効果など存在しなかった。あるのは、たがいに連絡をとりあおうとしないタコツボだけだ。かつて見たことのない、まさしく混乱の極みだった」


■4.現実の変化を都合よく解釈する
 ほとんどの例で経営者たちは、コア事業に必要な改善は行なっていると自分に言い聞かせていた。だが実際には、何かしら理屈をつけて、当の事業に疑いを抱かせる脅威を認めずにいただけだった。言うなれば、タイタニック号の甲板の上でデッキチェアを並べなおしていたのだ。
 外部の人間の目には、どんな問題が起ころうとしているかがはっきり見える。しかし内部の人間には、これまで長らく続いてきた成功のあとで、自らの存在自体が脅かされていることがなかなかわからない。


■5.隣接市場にまちがったチャンスを見出す
隣接市場への参入は、成功を収めるのが困難なだけではない。リスクも高いのだ。べインは別の研究で、1997年から2002年にかけて最も大きな損失を出した事業破綻(ITバブルによるものは除く)25社に注目した。その結果、75パーセントの失敗例の根本原因や主因が、隣接市場に手を出したことにあるとわかった。25社で株式価値にして全体の88パーセントに当たる1兆1000億ドルを失っていた。
 私たちの調査でも、隣接市場への参入という一見無害に思える戦略が破綻を導いた例が何十も見つかった。


■6.新テクノロジーを求めて暴走する
 私たちが驚かされたのは、テクノロジー依存の戦略のじつに多くが、最初からずさんな計画に基づいているということだ。いくら幸運に恵まれようと、経営実行がすばらしかろうと、これではどうしようもない。そんな失敗をもたらす戦略を推し進めるには、企業がよほど徹底的に自分たちをごまかさなくてはならない。どう見ても自分たちにとって不利な流れを読みまちがったか、弱い無線信号は厚い壁を通れないといった基本的な物理的制約を無視したのだ。途中で食いとめられるはずの失敗だった。
 モトローラによるイリジウム衛星電話のベンチャー事業は、そうした失敗の典型例だ。この電話システムは開発に50億ドルかかったが、サービス開始から1年足らずで破綻し、競売のすえ2500万ドルで資産売却された。


■7.統合がもたらす難題を軽視する
 誤った統合戦略を避けるには、取得する相手が抱えていそうな問題をあらかじめリストアップすることが不可欠だ。ダイムラー・べンツの場合なら、社会保障や退職者年金など引き継がねばならないコストの他、自動車市場全体を覆う厳しい状況、たとえばクライスラーの販売特約店が(他の自動車メーカー同様)多すぎるとか、クライスラーの市場シェアが次第に落ちこんでいる、といったことを認識すべきだった。事前に問題が確認できれば、統合やらシナジーといった戦略の名の下にすぺてを片づけてしまうのではない議論ができるし、ある程度なら定量化も可能になる。


【感想】

◆タイトルに「7つの危険な兆候」とあるように、本書はまず、企業が陥る戦略の失敗のパターンを7つ紹介しています。

それらは、下記目次の第I部にある各章のタイトルそのままで、今回も上記ポイントにて転用済み。

構成としては、各章ごとに戦略の解説のあと、具体的なケーススタディ、そして「失敗しないために、あなたがチェックすべきこと」という処方箋が続きます。

なお、上記ポイントでは、本の雰囲気を再現すべく、解説やケーススタディ、処方箋をミックスしてみた次第。

本当なら、ケーススタディだけでまとめてみてもよかったのですが、あまりに皆つぶれてしまう(当たり前ですがw)ので、げんなりしてしまったという。


◆ケーススタディで特徴的だったのが、第4章のコダック。

デジタル写真の台頭を早くから認識していたものの、「実用性が低く脅威には当たらない」と判断し、抜本的な対策を練りませんでした。

代わりに「タイタニック号の甲板の上でデッキチェアを並べなおす」ような製品、アドバンティックスを開発。

ASCII.jp:コダック アドバンティックス プレビュー カメラ

「デジタルカメラを買いながら、結局フィルムも買う」というこの商品は失敗に終わりました。


◆また、第6章の「新テクノロジー」の話では、上記ポイントでも触れている、衛星電話イリジウムが登場。

出た当時に「そんな携帯電話ができるんだー」とニュースか何かで読んだ記憶がありましたが、その裏側では、こんなにとんでもないことになっていたとは(詳細は本書を)w

それより驚いたのが、未だそのサービスが提供されているということ。

携帯電話の基地局が利用できない時でも通話可能な衛星携帯電話「イリジウム」とは? - GIGAZINE

当初は「煉瓦」並みの大きさだったのが、ここまで小さくなっております。

ただ、「遮へい物が無いところで利用します」となっているので、相変わらず建物の中では使用できないよう(ダメじゃん)。


◆こういった問題を解決すべく展開されるのが、第II部の第8章以降。

なるほど、と思ったのが、CEOのインセンティブの問題で、とにかく何か新しいことをやって成功すれば、彼らの報酬やストックオプションはかなりの高額になります。

一方で、たとえ失敗したとしても、法を犯していない限り、損害賠償という話にはならないので、それは社内で反対意見があったとしても押し切ります罠。

逆に、解決すべき問題を将来に先送りしたとしても、大事になる前に辞めてしまえば、自分の報酬には影響はありませんから、こちらは、「ゆでガエル」になるのを待つばかり。

本書ではそれに対抗すべく「悪魔の代弁者」という仕組みを提案していますので、気になる方は第10章にてご確認を。


◆個人的には、過去における「失敗の事例」を読むのが好きなので、次から次へと企業が潰れる本書の事例は大変興味深かったです。

ただ、むしろ怖いのは、上記で挙げた第4章や第6章の「分かりやすいパターン」よりも、「シナジー効果」「ロールアップ」「隣接市場」「統合」といった、一見、何の問題もないパターンかも。

ご自分の会社が、こういった戦略を検討されているのなら、事前に本書を読む価値は大きいです。

経営陣の暴走を止められるとしたら、それは現場の声かもしれません。


備えあれば、憂いなし!

7つの危険な兆候 企業はこうして壊れていく
7つの危険な兆候 企業はこうして壊れていく
第I部 企業が陥る7つの罠

第1章 シナジーという幻想に惑わされる
第2章 「金融の錬金術」の虜になる
第3章 業界をまとめ、ひとり勝ちを夢見る
第4章 現実の変化を都合よく解釈する
第5章 隣接市場にまちがったチャンスを見出す
第6章 新テクノロジーを求めて暴走する
第7章 統合がもたらす難題を軽視する
第I部のまとめ

第II部 成功率を確実に高める知恵

第8章 人はなぜ悪い戦略を選んでしまうのか
第9章 企業が戦略ミスを犯す本当の理由
第10章 異論のないところに成果なし
第11章 「最後のチャンス」審査で念を押す


【関連記事】

【目から鱗の経営本】『どうする? 日本企業』三品和広(2011年08月21日)

【スゴ本】『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建(2010年10月20日)

【戦略】『戦略は直観に従う』ウィリアム・ダガン(2010年10月10日)

【立ち位置を考える】「リ・ポジショニング戦略」ジャック・トラウト(2010年07月03日)

【オススメ】「異業種競争戦略」内田和成(2010年02月04日)


【編集後記】

NHKで放送されたこともあって、アマゾンで総合1位となったのがこの本。

6時間でできる!2ケタ×2ケタの暗算―岩波メソッドゴースト暗算
6時間でできる!2ケタ×2ケタの暗算―岩波メソッドゴースト暗算

ウチのムスメも九九が暗記できたところなので、いずれ挑戦させてみたいな、と。

参考記事:【メモ】『暗算力を身につける』から選んだ5つの暗算TIPS(2011年10月26日)


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この記事へのコメント
               
タイタニック、いい喩えですね!


Posted by マグロ船 齊藤 正明 at 2011年11月10日 08:22
               
>マグロ船 齊藤 正明さん

超レス遅くなってスイマセン!
タイタニック号の悲劇は、別の視点からも得るものがありますけどね……(汗)。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2012年04月09日 05:24