2011年11月03日
【神話完結】『スティーブ・ジョブズ II』ウォルター・アイザックソン
スティーブ・ジョブズ II
【本の概要】
◆今日お送りするのは、一週間ほど前にご紹介したジョブズの伝記の続き。参考記事:【速報】『スティーブ・ジョブズ I』が想像以上に濃厚だった件(2011年10月25日)
今回も読み切るのに5時間ほどかかりました。
内容的には、アップルで再び実権を握るところから、その死の直前まで。
1巻目と同じように付箋も貼りまくりましたが、皆さん想像できると思いますので、割愛しますw
既に読み終えた知人から「1巻より面白い」と言われてましたが、確かにそうかも!
いつのまにか驚愕の順位に?!
【ポイント】
■1.アップルのトップ就任へ当初消極的だったわけこれが正しいと確信したジョブズは誰も止められない。しかし少しでも疑いがあると消極的になり、自分にとって必ずしも都合のよくないことを考えずにすまそうとする。どういう役割を果たしたいのかとアメリオに聞かれたときもそうだった。じっと黙り、うとましい状況を無視するのだ。
こうなる背景には、人間はヒーローかまぬけ、製品は驚異かゴミなど、なんでも白黒に二分したがる彼の性格がある。それだけに、結婚する、ソファを選ぶ、会社経営を引き受けるなど、複雑であやふや、違いが微妙な場合、どうしたらいいかわからなくなってしまうのだ。
■2.TVCM「シンク・ディファレント」への想い
このときのことを思い出すと、涙が出るんだ。止まらなくなるほどに。リーはアップルを深く愛してくれているとよくわかった。広告界トップの男だ。営業など10年もしていない。その彼が心を込めたプレゼンをしてくれた。僕らと同じくらいアップルを愛しているからだ。彼らが持ってきたのは、「シンク・ディファレント」というすごいアイデアだ。ほかに比べて10倍はすごいものだった。リーの深い愛と「シンク・ディファレント」のすばらしさ――あのときも込み上げるものがあったし、いま、思い出しても涙が出てしまう。
ときどき"純粋なもの"に出会うことがある。精神や愛という純粋さに。そういうとき、僕はいつも泣いてしまうんだ。心に染みてね。あのときもそうだった。あれは忘れることができない。事務所で彼の話を聞いたときも泣いてしまったし、いま、思い出しても泣けてしまうんだ。
■3.ジョブズの語るジョナサン・アイブ
ジョニーは、アップルだけでなく、世界を大きく変えたんだ。いろいろな意味で嫌になるほど事業のコンセプトやマーケティングのコンセプトまで理解してしまう。なんでもさっとわかってしまうんだ。僕らが本当のところなにをしているのか、一番よくわかっているのは彼だ。アップルでひとりだけ精神的なパートナーをあげろと言われたら、ジョニーしかいないね。
ほとんどの製品はジョニーと僕がふたりで考えたあと、ほかの人を連れてきて、「どうだい?どう思う?」と聞いたんだ。どの製品も、彼は、ごくごく小さな部分から全体まで把握している。アップルが製品の会社であることもわかっている。単なるデザイナーじゃないんだ。だから僕の直轄で仕事をしてきた。アップルで彼以上に事業経営のカがあるのは僕だけだ。彼にああしろこうしろと干捗できる人はいない。僕がそうしたからね。
■4.正しくやれるチャンスは1回しかない
最終的に正しくやれたことも、どこかで巻き戻しボタンを押さなければならなかった――ジョブズは好んで語るストーリーをこのときも語った。完璧ではないと気づいたモノはやり直さなければならない。『トイ・ストーリー』では、ウッディがあまりに嫌なキャラクターになったとき、やり直さなければならなくなった。初代マッキントッシュでも、そういうことが2〜3回はあった。
「良くない部分があったとき、それを無視し、あとで直せばいいというのはダメだ。そんなのはほかの会社がすることだ」
■5.音楽配信をソニーが失敗したわけ
「どうしてソニーがだめだったのか、私にはまったく理解できません。史上有数の失策でしょう」
とイオヴァインはいまでも首をかしげる。
「アップルの場合、社内で協力しない部門は首が飛びます。でもソニーは社内で部門同士が争っていました」
実際、ソニーはいろいろな意味でアップルの逆だった。かっこいい製品を作る消費者家電部門もあれぱ、ボブ・ディランなど人気アーティストを抱える音楽部門もあった。しかし、各部門が自分たちの利益を守ろうとするため、会社全体でエンドツーエンドのサービスを作れずにいた。
■6.ジョブズの語るiPod成功の理由
僕は、年を取るほど、モチべーションが大事だと思うようになった。ズーンがお粗末なのは、マイクロソフトの人たちがアップルと違って音楽や芸術を本当には愛していないからだ。アップルが勝ったのは、僕ら一人ひとりが音楽を大好きだったから。みんな、iPodを自分のために作ったんだ。自分のため、あるいは自分の友だちや家族のために努力するなら、適当をかましたりしない。大好きじゃなければ、もう少しだけがんばるなんてできない。もう1週間とがんばれやしない。音楽を大好きな人と同じだけ、現状をなんとかしようと努力なんてできないんだ。
■7.タッチスクリーンを採用したiPhone
ジョブズはタッチスクリーンを指さす。
「動くようにしようじゃないか」
ハイリスク、ハイリターン。ジョブズが言う「会社を賭ける」ときだった。
ブラックべリーの人気を受け、キーボードも用意すべきだとするメンバーもいたが、ジョブズは拒否権を発動する。物理的なキーボードはスクリーンを小さくしてしまうし、タッチスクリーンキーボードに比べて柔軟性も適応性も劣る。
「ハードウェアキーボードは楽な道に見えるけど、それは大きな制約になる。スクリーン上でキーボードをソフトウェア的に実現したとき、どれほどのイノべーションが可能になるのか考えてみろ。これに賭けよう。それでうまくゆくように工夫するんだ」
【感想】
◆1巻同様、あまりにボリュームがあり、かつ付箋を貼った所が多かったので、書き足りない点が多々あるのですが、ご勘弁を。まず、本書で新たに知ったことの多くが、ジョブズの病気に関すること。
たとえば、あの有名なスタンフォード大学卒業式でのスピーチの際には、私はてっきりガンを克服したものとばかり思っていました。
しかしスピーチで触れられている膵臓がんの手術中、実は肝臓への転移が3か所発見されます。
既に記事になっているように、もし9か月早く手術をしていたら、また違ってきたのでしょうが。
スティーブ・ジョブズ、ガンの手術を9ヶ月間も先延ばしにしていた - Touch Lab - タッチ ラボ
おまけに、ジョブズ独自の食事のスタイルがさらに彼の体力を弱めていたことも、本書を読んでわかりました。
◆その一方で、この2巻では「世界を変えた」製品やサービスの話が続々登場します。
iPod、iTunesストア、iPhone、iPad、iCloudは、すべてこの2巻に収録されたもの。
また、1巻の終わりで既に『トイ・ストーリー』がヒットしていますが、2巻ではそれ以後のピクサーでの快進撃、さらにピクサーが買収されることによってディズニーの大株主になるお話もでてきます。
ジョブズと対立していたディズニー前CEOマイケル・アイズナーに比べ、ジョブズを信頼していた新CEOロバート・アイガーは、新たにオープニングした香港ディズニーランドのパレードで、この10年間でパレードに追加されたキャラクターが、ピクサーのものばかりであること気づくことに。
「あっと思いました。隣にはマイケルがいましたが、このことは私の心に秘めたままとしました。そのあいだ、アニメーションを率いたマイケルを痛烈に告発することになりますからね。『ライオン・キング』『美女と野獣』『アラジン』の10年間のあとは、無の10年だったのです」そう、アニメの世界をもジョブズは変えたのです。
◆個人的には上記ポイントの2番目に挙げた「シンク・ディファレント」の逸話に痺れました。
そのアイデアにどれ程ジョブズが感銘を受けたかは、ジョブズの話の通り。
さらには、TVCMだけでなくポスターにもジョブズは注力し、完璧なポートレートを用意しようとします。
コマーシャルに使えないものに例外を認めさせたり、家族を説得したり、ジョン・レノンの写真をオノ・ヨーコから直接もらったり等々、その完璧主義さは相変わらずw
ちなみにこのCMに登場する人物で、私は知らない人も結構いたのですが、本書を読んで分かりました(ネタバレ自重?)。
もう1つ小ネタとして、当初はこの曲でCMを制作したものの、使用許諾が得られなくて断念したという。
Seal - Crazy (Video) - YouTube(埋め込み不可動画)
◆そもそも本書は、原書では1巻と分かれていないわけですから、1巻のテイストや掘り下げ方が納得できれば、迷わず「買い」でしょう。
「世界に与えた影響」の度合いから言っても、1巻の話よりこの2巻の話の方が大きいわけですし。
もちろん、ジョブズの本や記事を読んでいれば、既知の話も多いものの、その裏側のいくつかをジョブズ自身に語らせているのが「公認本」の強みかと。
私は時間がないので出来ませんでしたが、ホントは上記の「シンク・ディファレント」の話のように、気に入った部分を2,3回味わって繰り返して読めればなお良かったのですがw
今年最後のヒット作の完結編です!
スティーブ・ジョブズ II
第22章 再臨
第23章 王政復古
第24章 シンク・ディファレント
第25章 デザイン原理
第26章 iMac
第27章 CEO
第28章 アップルストア
第29章 デジタルハブ
第30章 iTunesストア
第31章 ミュージックマン
第32章 ピクサーの友人
第33章 21世紀のマック
第34章 第1ラウンド
第35章 iPhone
第36章 第2ラウンド
第37章 iPad
第38章 新たな戦い
第39章 無限の彼方へ さあ行くぞ!
第40章 第3ラウンド
第41章 受け継がれてゆくもの
【関連記事】
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【スゴ本】『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則』カーマイン・ガロ(2010年07月11日)
【スゴ本再び】『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション―人生・仕事・世界を変える7つの法則』カーマイン・ガロ(2011年06月27日)
【名言】「スティーブ・ジョブズ名語録」桑原晃弥(2010年08月05日)
【編集後記】
◆この2巻目でジョナサン・アイブが強調していたのが「シンプルさ」。シンプリシティの法則
以前読んだっきり、記事にできていないのですが(スイマセン)、まさにこの本で主張されていることそのままでした。
ご声援ありがとうございました!
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