2011年11月02日
【オススメ】『ラーメンと愛国』速水健朗

ラーメンと愛国 (講談社現代新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、以前記事にした『ケータイ小説的。』が個人的にツボだった、速水健朗さんの新作。新書にしてはちょっと厚いので迷ったのですが、いしたにまさきさんの記事に促されて捕獲w
ただ、いったん読み始めると、止まらない面白さでした。
アマゾンの内容紹介から。
なぜ「ラーメン職人」は作務衣を着るのか?なるほど、速水さんらしい鋭い視点の光る力作です!
いまや「国民食」となったラーメン。その始まりは戦後の食糧不足と米国の小麦戦略にあった。“工業製品”として普及したチキンラーメン、日本人のノスタルジーをくすぐるチャルメラ、「ご当地ラーメン」に隠されたウソなど、ラーメンの「進化」を戦後日本の変動と重ね合わせたスリリングな物語。
【ポイント】
■1.「ナポリタン」と「ラーメン」によるアメリカ化そもそも、それぞれイタリア、中国を連想させる食べものとして偽装されているので、誰もアメリカ化とそれらが結びついているとは考えられないのである。だが、この2つの料理の普及が、アメリカの小麦輸出政策を背景に持ったものであり、「イタリア」「中国」といったナショナルイメージを偽装して日本の食文化を侵食してきたものと考えると、直接的にアメリカのイメージを帯びたハンバーガーやコカ・コーラやジーンズやハリウッド映画以上に、よほど巧妙なアメリ力化をもたらしていると言えるのではないか。
■2.「GOPAN」のヒットを後押しした自給率低下への危機感
2010年11月に発売された三洋電機のホームべーカリーの「GOPAN」は、米からパンをつくることができる製品であり、発売以後ずっと品薄状態で、一年経ってもいまだ入手困難が続く大ヒット商品だ。この商品を購入して満足したユーザーたちは、単に米からつくったパンの美味しさだけに満足しているわけではない。三洋電機に寄せられた商品の購買理由や反響の多くが、食料自給率、米の消費拡大に貢献したいからといった感情からくる購入だったという。つまり、「GOPAN」のヒットは愛国の感情とワンセットなのである。
SANYO ライスブレッドクッカー Gopan プレミアムホワイト SPM-RB1000(W)
■3.日米両国の兵器観の違いは、ものづくりに対する思想の違い
日本人のものづくりの源流にあるのは、職人の匠である。一点ものの兵器を好み、魂が込められた武器をもって戦いに挑むのが日本人だとするなら、アメリカにあるものづくりの思想とは何か。それは、大量生産である。(中略)
アメリカの生産工場は、非熟練工でも生産ラインに加われるような人間工学に基づいてつくられており、施設は機械化され、分業が徹底化され、マニュアル化が進んでいたのだ。
日本の兵器の生産の現場はその逆だった。日本は兵器といえども、まるで工芸品をつくるかのように組み立てていた。よく言えば丁寧につくられていたのだろうが、熟練した職工に多くを依存した結果、戦争末期に腕利きの職人たちが戦場に動員されると、生産効率は途端に悪くなり、品質の低下に直結した。
■4.工業製品としてのラーメンを目指した安藤百福
戦後の大阪、闇市の支那そば屋に並ぶ人々の姿を見て百福が得たアイデアとは、いつでも安価に食べられるラーメンを、工業製品としてつくるというものであった。ここで重要なのは"工業製品としてのラーメン"という部分である。彼は単に画期的な製品のアイデアを思いついたというわけではない。彼の着想において重きを置くべきは、その製品を大量生産することがビッグビジネスになるという、端から量産化を見越していた部分にある。
■5.実は地元に根ざしていないご当地ラーメン
土地に根ざした観光資源が重視されることもなく、無個性なロードサイドビジネスだけが生み出され、全国の地方都市の光景が画一化していった図とは、ご当地ラーメンの登場、進化とよく似たものだったのではないか。ご当地ラーメンは、「地元に根ざした」食文化の結晶である本来の郷土料理に成り代わって、観光化のニーズに応える形で全国的に増殖した。全国のご当地ラーメンを見ると、食文化の多様性が見えてくるように思えるが、日本古来の食文化という観点で見れば、ご当地ラーメンは、多様性が失われ画一化した、戦後日本の食文化の象徴でもあるのだ。
■6.「作務衣系」ラーメン屋の台頭と「職人の匠」
"作務衣系"がラーメン屋を代表するスタイルとして完全定着を果たすのは、1990年代末のことだ。そしてそのイメージは、おそらくは陶芸家に代表される日本の伝統工芸職人の出で立ちを源泉としている。第2章では、生産技術で勝るアメリカに、"職人の匠"だけで戦争を挑み大敗を喫した日本が、戦後はものづくりで復興を遂げた経緯を述べた。だが、90年代のラーメンの世界は、再びものづくりのロールモデルとして"職人の匠"を重視する伝統職人を選んだのである。
■7.客単価を上げていったラーメン
フードライターの佐々木正孝は、ラーメンムック『石神秀幸 極うまラーメン2009-2010』(双葉社)にに登場するラーメン屋の平均価格を計算するという興味深い試みを行っている。その結果、ラーメンムックに登場するような人気ラーメン屋の、基本となる「ラーメン」の平均価格は754円であった。チャーシューや味玉などのトッピングを加えれば、客単価はもう少し高くなるだろう。仮に客単価を、800〜900円と考えると、1990年代初頭にはファストフードの客単価ほどしかしなかったラーメンは、90年代を経てファミレスの中級店クラスの客単価にまで上がったということができるだろう。
石神秀幸極うまラーメン 2009-2010―東京/神奈川/埼玉/千葉 (双葉社スーパームック)
【感想】
◆本書を読んで、まず「ガツン」と来たのが、第1章の「アメリカの小麦戦略」のこと。第二次大戦後、アメリカからの経済復興資金にはアメリカの「余剰生産物」がセットされていました。
日本においては、その約半分を小麦が占めており、価格競争力で太刀打ちできなかった日本の小麦農家が壊滅的な被害を受けることに。
さらには、小麦の使い道として、全国の小学校の給食でもパンが提供されることになります。
食糧事情が悪かった当時、こうした援助はありがたいですし、確か小麦は「単価当たりのエネルギー量が最大」だと、この本で学んだ記憶が。

勝間式「利益の方程式」 ─商売は粉もの屋に学べ!─
参考記事:【実践!】『勝間式「利益の方程式」』勝間和代(2008年04月03日)
その代り、子ども時代からパンを主食とした食生活を送ることにより、アメリカの目論見通り、パン中心のライフスタイルが定着するようになったワケです。
◆また上記で触れたように、第二次大戦での敗因の原因としてあったのが、日本伝統の「職人の匠」。
逆にそこから抜け出す発想を持っていたのが、日清食品創業者の安藤百福氏です。
安藤氏が大量生産したチキンラーメンは大ヒット。
なお、その宣伝には、当時まだ誰もマスメディアとして認識していなかったテレビを活用したのだそう。
「新しい商品だから、資材も設備も、売り方さえも、これまでにない手法を使ってきた。今度も、そうしない法はあるまい」その後も日清食品は、他社に比べて広告宣伝費率(売上高に対する広告宣伝費の比率)が高いのですが、それはこのチキンラーメンのCMからの伝統のようです。
食文化を変えた男―安藤百福
◆その「大量生産」の時代から、90年代には再び「職人の匠」へと向かった象徴が、「作務衣系」ラーメン。
その代表格の1つが「博多一風堂」です。
その創業者である河原成美さんは、著作もたくさん!
そもそも「ラーメン」は、ビジネスをやる上で狙うべき「既に大きな市場ができており、かつ大手の寡占が緩い」業種なんですよね。
詳しくはこちらの本で。

小さな飲食店 成功のバイブル―赤字会社から年商20億円企業までの軌跡
参考記事:「小さな飲食店 成功のバイブル」鬼頭宏昌(2007年02月06日)
こうした「ご当地ラーメン」ならぬ「ご当人ラーメン」については、本書の第5章にてご確認を。
◆何やら、本やら参考記事を連発してスイマセン。
本書を読んでいて、色々と思い出したり、新たに思いつくことが多々あったもので。
たとえば「チェーン店」ではなく「ご当人ラーメン」がブームになったのと、「J-POP」と何か関係があるのではないか、とかw
いずれにせよ、一読すれば知的好奇心が刺激されること間違いなし!
当ブログで人気の仕事術系とは違いますが、「読んでおきたい1冊」です。
日本の国民食にこんなウラがあったとは!?

ラーメンと愛国 (講談社現代新書)
第1章 ラーメンとアメリカの小麦戦略
第2章 T型フォードとチキンラーメン
第3章 ラーメンと日本人のノスタルジー
第4章 国土開発とご当地ラーメン
第5章 ラーメンとナショナリズム
【関連記事】
【ヤバ本】「ケータイ小説的。」速水健朗(2008年07月09日)「タイアップの歌謡史」速水健朗(2007年01月28日)
【ネタ?マジ?】『ラーメン二郎にまなぶ経営学 ―大行列をつくる26(ジロー)の秘訣』牧田幸裕(2010年12月12日)
【実践!】『勝間式「利益の方程式」』勝間和代(2008年04月03日)
「小さな飲食店 成功のバイブル」鬼頭宏昌(2007年02月06日)
【編集後記】
◆アマゾンによると、本書と何故か「よく一緒に購入されている商品」なのがこちら。
文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)
私自身は音楽ネタ大好きなんですが、当ブログでは、あまり支持されないのがツライところです……。
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