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2011年10月06日

【詐欺師の法則】『詐欺師たちの殺し文句』に学ぶ5つの心理テクニック


詐欺師たちの殺し文句―あなたの「欲」と「迷い」を見逃さない! (主婦の友新書)
詐欺師たちの殺し文句―あなたの「欲」と「迷い」を見逃さない! (主婦の友新書)


【本の概要】

◆今日お送りするのは、「詐欺師」の手口を描いた興味深い1冊。

「豊田商事事件」や「投資ジャーナル事件」といった、日本の歴史に残る大きな詐欺事件を描くことにより、騙される側の心理も明らかにしています。

アマゾンの内容紹介から。
人はなぜ騙されるのか? そんなにオイシイ話はない、とわかっていながら、人々はたやすく詐欺師の網に引っ掛かる。希代の詐欺師たちの殺し文句から見えてくる、どうしようもない人間の性。
今回はその中から、当ブログ的にお馴染みの「心理テクニック」が、詐欺商法にどう使われているかをご紹介してみます。


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【5つの心理テクニック】

■1.「原野商法」における「返報性の法則」
「借り」は返さねばならない、という心理をつくのが「原野商法」という詐欺の手口。北海道の"原野"を材料に「老後に実際に住んでもいいし、まちがいなく将来、資産価値が上がるので投資としても最適だ」と勧める。「話だけでも聞いてみようか」と集まった者たちを、まず、北海道などの現地に無料招待する。関東や関西から飛行機で北海道へ招待するのだから、それなりの費用はかかる。しかも、いきなり"原野"に案内するわけではなく、最寄り(といっても"原野"までは車で2時間余もかかる)の温泉地に連れて行く。そして旅館で大宴会である。もちろん費用は業者持ちだ。こんないたれりつくせりの接待を受ければ、参加者たちはよほどのへソ曲がりをのぞけば「お返し=分譲地購入」をしなければ悪いだろう、という気持ちになっていく。


■2.多重債務者の「整理屋」における「好意の法則」
「整理屋」は、複数の金融業者から借金を重ねて返済に苦しんでいる多重債務者に、「親切」を売り物にして持ちかける。
「あなたの債務をうちが一本にまとめてあげますよ。複数の金融業者に追われ、おちおち寝てもいられないでしょう。あいつらは、蛇のようにしつこいタチの悪い連中ですからね。うちが窓口になれば、今後、奴らに一切口をさしはさませませんよ。そうすれば精神衛生上、ぐ〜んと楽になります、ぐっすり眠れますよ」(中略)

依頼を受けた整理屋は、ちゃんと債務を一本化すると、「うちが債務をすべて引き受けた」と他の金融業者と話をつける。だが、その一本化した債務の利息は、従来のウラの金融業者の倍に相当する。


■3.「のほう商法」「点検商法」における「権威の法則」
 官庁など公的な権威や権限が関わっていると、自分の持つ価値観と判断基準を変えても、権威に従ってしまう人が多い。詐欺師の得意とするのがこういう権威を持ち出したり、錯覚させたりすること。
 詐欺の古典、通称「のほう商法」がそれだ。たとえば「消防署のほうから来ました」といい、消火器を売りつける。「……のほう」は早口かつ小声でいうのがコツ。逆に「消防署……」は大声で明確に発音する。「消防署」から来たのだなあ、と錯覚させるというわけだ。(中略)

 公共性の強い電気、ガス、水道でも、さも「水道局」「ガス会社」「電力会社」の"公認"であるかのように、同じく「のほう」話術でひっかけて、機器を購入させたり、工事会社を紹介する手数料を編しとったりする。これらの「編し」を「点検商法」という。


■4.極秘情報における「希少性の法則」
「中国が非常手段に出ます。現在保有しているアメリカ国債を、すべて手放します。そして、その後もアメリカ国債を保有することはありません。その結果、アメリカがどうなるか。アメリカ経済に与える影響がリーマンショックの比でないことは、簡単に想像できるでしよう。(中略)

これ以上の情報については、われわれのグループの特別会員になってもらわないと……。なにせ、放っておけばドルや円、ユーロが紙くずになってしまうほどの通貨の大暴落が起きる……その対応をどうするか……会員になる500万円をケチっている場合じゃないでしょう」


■5.カルト集団における「一貫性の法則」
 カルト系の集団は路上でいきなり「あなた、幸せですか?」「幸せって何か、考えたことがありますか」と話しかける。「そんなこと、あんたに答える必要があるのか」と断ればいいのに、マジメというか気が弱いというか、ある種のタイプは「いまは答えられません」とその場しのぎの答えをしてしまう。それをカルト系は見逃さない。つぎの機会をとらえて「この前、お答えくださるとおっしゃいましたね」とつっこみ、またあいまいな答えが返ってくると、研究会と称する会合への参加・出席を強要する。それに参加・出席すれば「洗脳」が開始されるという流れである。そして、1セット50万円もする印鑑や壷を購入させる。親の財産を処分させるなどの"荒業"も。


【感想】

◆以上5つ、当ブログの読者さんというか、この手の本では古典的名著である『影響力の武器』をお読みの方なら、お馴染みのテクニックばかりでしたね。

影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか
影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか

参考記事:【スゴ本】「影響力の武器 実践編」がやっぱりスゴかった件(2009年06月10日)

そもそも、この『影響力の武器』は、著者のR・チャルディーニが訪問販売や宗教団体に潜入し、そのテクニックを明らかにしたものですから、ある意味当然。

そして実は上記の引用部分は、すべて本書の「序章」からであり、本書のメインテーマは、日本における詐欺師・詐欺商法の移り変わりです。

対象となった商法・事件は下記目次のとおり。

私自身、名前は聞いたことはあっても、詳細までは知らないものがほとんどでした。


◆「豊田商事事件」等の有名なものはさておき、お恥ずかしい話ですが、「ココ山岡」の「買い戻し商法」なるものも、本書で初めて知った次第。

ココ山岡 - Wikipedia
販売にあたっては購入の決断を促すために、婚約指輪へのリフォームや一定期間後に販売価格で買い戻すという特約をつけて将来投資要素を強調していた。この特約が成り立つためには価格が上がることが前提であったが、実際には販売当時は不況などの影響もあり相場が下がり続けていた。また、ココ山岡のダイヤモンド鑑定書は独自のものであり、世間の鑑定とは大きな開きがあった。特約は当初機能していたが、やがて売上よりも買い戻しが上回り、ココ山岡は債務超過に陥り、1997年1月9日に自己破産を申し立て、翌日に破産宣告が下り、全店舗が閉鎖された。消費者の手元には、価値の低いダイヤモンドしか残らず、加えて人によっては多額のローンも残るという事態を引き起こした。[1]
具体的には、「90万円以上のダイヤモンドを購入すれば、5年後に購入時と同価格で買い戻す。30万円以上90万円未満のダイヤモンドについては、同じく購入価格の70%で買い戻す」というもの。

「詐欺商法」か否かは意見が分かれるところなのだそうですが、上記Wikipediaにも記述があるような「若い男性」をターゲットにした「勧誘方法」や、本書に詳しい「マニュアルにのっとった接客・クロージング方法」は確かに批判されるべきものです。

また、Wikipediaでは触れられてませんが、この商法ではクレジット会社も大きな役割を果たしており、被害者の会では9社の信販会社も訴訟の対象とされたそう(詳細は本書を)。

それにしても、テレビ番組の景品としても有名だったし、まさかそんな……って、私も騙されかけてる気がw


◆一方悪質なのが、第7章の「オレオレ詐欺」を初めとする「振り込め詐欺」で、他の商法が「騙される側の欲」につけこんだものであるのに対し、こちらは明らかな「詐欺」。

2004年のピーク時には、なんと283億円超もの被害総額を記録しているのだとか。

実は、私の実家にも以前「オレオレ詐欺」の電話がかかってきたことがあり、私の母が対応。

幸いなことに、私は自分のことを「オレ」とは呼ばないので不審に思った母が問い質すと、電話は切れたそう。

天然ボケの母の割には「GJ!」w

さらに、こんな年寄りを相手にするのではなく、中小企業の経営者を対象とした「融資保証金詐欺」なるものも本書では登場しています。

……まさに「あの手この手」。


◆本書を読んで改めて思ったのが「うまい話はない」ということ(当たり前w)。

それでもこういった話を「信じさせる」ためのテクニックやストーリー、キャラ作り等を、本書で学ぶことができました。

もちろん、「騙す」ためではなく、「騙され」ぬため。

表面は変わっても、ベースとなる部分は意外と変わっていないので、本書で詐欺商法の変遷を見ておくと良いかと。


備えあれば憂いなし!

詐欺師たちの殺し文句―あなたの「欲」と「迷い」を見逃さない! (主婦の友新書)
詐欺師たちの殺し文句―あなたの「欲」と「迷い」を見逃さない! (主婦の友新書)
序章 詐欺師の法則
第1章 M資金
第2章 ネズミ講
第3章 マルチ商法<初期>
第4章 ペーパー商法
第5章 ノミ屋商法=10倍融資
第6章 買い戻し商法・マルチまがい商法
第7章 振り込め詐欺


【関連記事】

絶対に公開してはいけない「詐欺師の逆転話術」:マインドマップ的読書感想文(2010年05月09日)

「〜カンニング竹山と考える〜大阪人はなぜ振り込め詐欺に引っかからないのか」竹山隆範:マインドマップ的読書感想文(2007年04月05日)

【ウソ看破?】「相手の隠しごとを丸ハダカにする方法」デビッド・J・リーバーマン(2010年04月02日)

【速報!】最強のビジネス本「影響力の武器」の[第二版]がいよいよ登場!!(2007年08月18日)

【スゴ本】「影響力の武器 実践編」がやっぱりスゴかった件(2009年06月10日)


【編集後記】

◆今日の本に関連して。

詐欺の罠―だまされるものか! あなたを守る実例集 (CARTOP MOOK)
詐欺の罠―だまされるものか! あなたを守る実例集 (CARTOP MOOK)

こちらは弁護士の方が監修されてますので、結構堅めな内容のようです。


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