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2011年07月24日

【スゴ本】『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』正垣泰彦


おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ
おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、サイゼリヤの創業者で現会長である、正垣泰彦さんの初の著書。

以前、こちらの記事を拝読し、もし正垣さんがご本を出されたら絶対読もうと思っておりました。

サイゼリヤがすげーw - teruyastarはかく語りき

ですから本書もリアル書店でチェックすることなく、アマゾンアタック!

実際、中身も予想通りスゴくて、付箋貼りまくりました。

外食関係者のみならず、全てのビジネスパーソン必読の1冊かと。


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【ポイント】

■1.勘に頼らない科学的な経営をする
私は創業期から、お客様が喜んでくれているかどうかを「客数」という数値に置き換えて考えてきた。店が気に入れば再来店してくれるはずだからで、抽象的に「顧客満足度を高めよう」などと言うより、はるかに客観的に検証できる。何らかの試みで客数が増えれば、それはお客様が喜んでくれている正しい行動だと考えて継続する。一方、客数が下がれば、間違った行動だったと認め、それをやめれば良いわけだ。
 こうした考え方を前提にPDCA(計画→実行→検証→見直し)のサイクルを回し続けることが、勘に頼らない科学的な経営をするということだ。


■2.商品開発の考え方
 まず、あなたの店の料理名を縦に順に書き出し、それぞれの使用食材を料理名の横に書き出してみよう。弊社の「ミラノ風ドリア」なら米、牛乳、バター……となる。
 すべてのメニューを書き出してみると、ほとんどのお客様が食べている食材が分かるはずだ。それは卵や玉ねぎ、あるいは、水や米といったものかもしれない。
 ほとんどの人はメニューそれぞれをもっと売るにはどうするか、という視点から考える。しかし、どんな食材をお客様が口に入れているのか、というデータに変換してみると、店の料理をもっと売るには、最もお客様に食べられている食材から順番に品質を良くしていく方が効果的かもしれない、という仮説に気づく。


■3.商品の値付けを工夫して安心感を与える
 ポイントは商品間の価格差を広げすぎないことだ。
 具体的には、「パスタ」「ピザ」「ドリア」など料理のカテゴリー(品種)ごとに、一番安い価格の料理と一番高い料理の価格の差を2倍以内に収める。
「サイゼリヤ」でもパスタで一番安い「ぺぺロンチーノ」は299円。一番高いパスタは「森のきのこのスパゲティ」など499円で数種類と、価格差は2倍以内に抑えている。
 価格差を2倍以内にとどめておくと、どれを頼んでも無茶な金額にはならないという印象をお客様に与えられる。だから、お客様は安心して料理を選ぶことができる。


■4.コスト削減の極意:「多能工化」
通常のファミリーレストランでは、キッチンならキッチン、フロアなららフロアで人員を分けている。そのため、何組もの顧客が一気に来店するなどフロアで瞬間的に人手が足りなくなっても、キッチンのスタッフは手伝いに行けない。たとえ手待ち状態にあってもだ。ところがサイゼリヤでは、キッチンのスタッフでもフロアが忙しくなれば当然のように手伝いに行く。その逆もしかりだ。普通なら、フロアのスタッフにキッチン作業を覚え込ませるのは難しいが、単純化を究める同社ではそれが可能になる。「同じくらいの規模の他店を見に行くと、『ウチなら半分以下の人員でさばけるのに』と思う」(同社地区長の龍宏子氏)ほどだ。

(付録1:サイゼリヤ流のカイゼンを徹底解剖より)


■5.店長の責任は「売上」ではなく「経費」
 サイゼリヤの場合、売り上げの数値目標に責任を持つのは本社の商品開発部門で、各店長には経費の数値目標が課せられる。既に書いてもいるが、店長に売り上げの目標は課していない。
 チェーンストアでは、店の売り上げは「商品」「立地」「店舗面積」で決まる。店長の努力が及ぶところではない。この私たちの考え方を、単独店や数店規模の店に置き換えると、売り上げに責任を持つべきなのはメニューを開発する料理長で、経費コントロールは店長の責任ということになるだろう。


■6.値下げの限界点を決める
 ある科理を値下げするとき、350円よりも340円はかなり安い印象を受けるが、320円や330円まで引き下げても、消費者が受ける心理的なインパクトは340円とあまり変わらない。同じく500円よりも480円、490円はかなり安く感じるが、さらに20円、30円引き下げて460円や470円にしてもそのインパクトは知れている。ならば前者は340円、後者は480円か490円で売るべきだろう。


■7.食材に関するこだわり
サイゼリヤでは食材保管時の(1)「温度」と(2)「湿度」、収穫からの(3)「経過時問」、運搬時の食材への(4)「振動」の4つにこだわってきた。
 例えば、畑で野菜をトラックに積んで調理するまで、野菜のまわりの温度は4度に保つ。運搬時の湿度をある一定の水準に保つことで、野菜の水分が外に出ることを防ぐ。経過時間にこだわるのは細菌を繁殖させないため。運搬時、食材に振動を与えないようにするのは劣化を防ぐためだ。ミルクを振り続けると成分が分離してバターに変わるように、振動は食材を変質させてしまう。


【感想】

◆冒頭の記事に接したときには、実は私は、まだサイゼリヤで食事をしたことがありませんでした。

ですから美味しさのために「野菜を4度に保っている」と聞いた際には、「ぜってーサラダ食べてー」とか密かに思っていたワケでしてw

すると今年になって、自宅近所のマンション内にサイゼリヤがいよいよオープン!

今や週に1回は、ヨメや子供たちがお世話になっております。

もちろん私も「野菜の温度が4度に保たれたサラダ」を頂いて「なるほど美味しいわ!」と思った次第。


◆さて、上記でもいくつか具体的な金額が出てきているように、サイゼリヤはかなりの低価格路線を敷いております。

ただし、バイトの時給は業界最高水準ですし、材料費を惜しんでいないため、原価率も高め。

それでも利益が出ているのは、これら以外での徹底した経費の削減のおかげです。

それにしても、スタッフがキッチンとフロアの両方が出来る、というのは、かつてファミレスのキッチンで働いたことがあるワタクシとしては、「目からウロコ」

経費削減の秘策としては、他にも「作業の単純化」と「便利道具の開発」とさらに後2つあるので、こちらは是非「付録1:サイゼリヤ流のカイゼンを徹底解剖」の方をご覧頂きたく。


◆なお第3章は、当ブログ的には不人気のマネジメントや経営理念のお話なので、上記では丸ごと割愛しております(それでいいのか?)。

もっとも、興味深かったのが店長の扱いで、サイゼリヤでは毎年5%の店長が降格して、店長補佐になるのだそう。

ただし、そこから再度店長に昇格する人は、前と違って格段に仕事ができるようになる上、仕事ができない人の気持ちもわかるので、指導もうまいのだとか。

こうした「敗者復活」をもシステム化しているのが、また強みなのだと思われ。


◆とにかく本書を読んで感じたのが、「正垣さんは理詰めで行動されているなぁ」ということでした。

一番の自信作であるミラノ風ドリアを1000回以上も改良を加えているのも、全国から上がってきた数字を見て、PDCAサイクルを回した結果のこと。

そして、私がサイゼリヤのメニューで唯一疑問に思っているのが、「料理に比べてデザートが割高ではないか」ということなのですが、これはこれで、きっと何か理由があるに違いありません(お茶で長居する客を減らす等?)。

ビジネスパーソンなら、サイゼリヤの店内のすべてのことに理由や必然性がある、と考えた方が良いかも。


次回お店に行く前に、一読しておきたい1冊!

おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ
おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ
■第1章:「客数増」がすべて--お客様本位の物の見方とは
・給料を削ってでも核商品を作れ
・求められる「おいしさ」は店によって違う
・物事をありのままに見る方法 ほか

■付録1:サイゼリヤ流のカイゼンを徹底解剖

■第2章:十分な利益を確保するには--大切なのは儲かる仕組みづくり
・最も大切な指標「人時生産性」
・儲かる店を作る財務の大原則
・仕入れは価格より、品質を重視せよ ほか

■付録2:サイゼリヤ農場が被災でも絶望などしていられない

■第3章:リーダーと組織の在り方--人が頑張れるのは誰かの役に立つからだ
・リーダーならビジョンを持て
・人のために・正しく・仲良く
・ビジネスとは心を磨く修業の場 ほか

■あとがきにかえて--有力経営者が語る「正垣泰彦」
 ニトリホールディングス社長 似鳥昭雄


【関連記事】

【意外な発見】40代の自分が「16歳の教科書2」を読んでみますた(2009年09月08日)

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【オススメ!】「外食の天才が教える発想の魔術」フィル・ロマーノ(2008年03月20日)

「小さな飲食店 成功のバイブル」鬼頭宏昌(2007年02月06日)

【テク満載】「飲食店の利益を1.7倍にする50の方法」早川雅章(2009年08月11日)

【良い店とは?】「流行る店」吉野信吾(2007年09月07日)


【編集後記】

◆こちらは以前ご紹介した本(紹介記事は上記「関連記事」内にあります)。

トマトが切れれば、メシ屋はできる 栓が抜ければ、飲み屋ができる~居酒屋の神様が教える繁盛店の作り方~
トマトが切れれば、メシ屋はできる 栓が抜ければ、飲み屋ができる~居酒屋の神様が教える繁盛店の作り方~

今日の本同様『日経レストラン』連載記事の書籍化です。


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『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』【月のブログ】at 2012年04月14日 17:44
                               
この記事へのコメント
               
smooth様。お世話になっております。「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」の書籍化を担当した日経レストラン編集部の水野と申します。本書を取り上げて頂き、大変ありがとうございました。今後とも、smooth様に面白いと思っていただける本を作るように頑張ります!



Posted by 日経レストラン・水野 at 2011年07月27日 16:31
               
>日経レストラン・水野さん

コメントありがとうございます。
記事にも書いたように正垣さんの本が出たら、絶対買おうと思っていたので、大変満足できました。
実は今夜も子供たちとサイゼリヤに行ってきたのですが、読了後初めてだったので、メニュー構成をチェックしたり、厨房を覗き込んだりと、また違った視点でサイゼリヤを楽しむことができました。
また面白いご本ができましたら、紹介させて頂きたいと思います。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年07月28日 02:19