2011年07月23日
本当は残酷な『「権力」を握る人の法則』 の話
「権力」を握る人の法則
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、いつものように某カリスマ書店員さんのツイートで知った1冊。「キレイごと」ではない、「本音」ベースでの出世の秘訣が明らかにされており、本書を読んでいて、確かに「悲しいけど、これ現実なのよね」と痛感しました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
著名企業のCEOや有名人の成功体験談を読んで、それを真似すればトップに行けると思っていませんか? 成功したリーダーや経営者が語るのは自分に都合がいいことばかりで、本当の成功要因など教えてくれません。(中略)なお、タイトルは久しぶりに「ホッテントリメーカー」作でございます…。
成功したリーダーたちが「後世に遺したい」と考えるような美しい教えが出世の要因ではありません。リーダーたちが隠す《悪い行動》にこそ出世の要因が存在する場合もあります。
本書は、フェアプレーを守らず、ルールがねじ曲げられる実社会で、あなたがパワーポリティクスを巧みに切り抜ける方法を、大規模な社会学的調査や研究をもとに伝授します。
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.モチベーションと成功の関係たとえば仕事に対するモチべーションと職業的成功の関係を調べた調査では、次のような結果が出ている。この調査は管理職を対象に行われ、仕事に対するモチべーションをおおざっぱに3種類に分類した。第1は「チームワークを重視し、目標の達成よりも人とのつながりを大切にする」グループ。第2は「目標達成を最優先する」グループ。第3は「権カや地位の獲得が仕事上の最大のモチべーションだ」というグループである。調査の結果、組織内の影響力の点でも、目標達成の点でも、最も成功を収めているのは第3のグループであることがわかった。
■2.成功の最大の障害は自分自身
人がセルフ・ハンディキャッピングに走る論理は、拍子抜けするほど単純である。まず、自分は優れている、能力がある、と思っていたい。だが失敗をすれば、この自尊心はいたく傷つく。ところが意図的に失敗の確率を高めるような細工をしておけば、実際に失敗しても、自分の能力が低いせいではないと言い訳できる。たとえば数学の試験の前に読書に耽るとか、他の科目の勉強に必要以上に時間をかけるなどは、その代表例だ。(中略)
まさに同じように、積極的に上をめざさない人は、自分が昇進しないのは人格や能力に問題があるからではなく、自らの選択の結果なのだと暗に示すことができる。
■3.上司が気にかけることを気にする
上司が何を重視するか、自分はちゃんと知っていると考える人は少なくない。だが読心術の心得でもないかぎり、うぬぽれは禁物である。下手な推測をするよりも、上司に直接聞く方がよほど効率的だ。仕事で重視するのはどんなことか、自分に何を期待しているか、折に触れて質問しよう。またアドバイスを求めるのも関係作りに役立つ。自分が無能に見えないよう注意しつつ、力を貸してもらうのもいいだろう。これは、上司をいい気分にさせる効果がある。ただし言うまでもなく、何を重視するかを質問するからには、上司の答に沿って行動しなければならない。
■4.自分を客観視するにも、ある程度の能力が必要
コーネル大学で社会心理学を研究するジャスティン・クルーガーとデビッド・ダニングは、10年ほど前に画期的な実験を行い、次のことを実証した。すなわち、何らかの仕事に必要な専門知識を持っていない人は、自分たちが無能であることを理解するのに必要な情報も持ち合わせていないため、自分を過大評価するのである。たとえば、文法と論理思考を問う試験で12パーセンタイル以下、つまり受験者が100人であれば下から12番目以下というお粗末な成績をとった人は、自分が62パーセンタイル以内に入っていると考えたという。彼らは自分の能力を過大評価するだけでなく、どの設問に正答しどの設問に誤答したかも把握できていない。また、他の受験者の相対的な能力も認識できない。
■5.頼みごとは案外うまくいく
スタンフォード大学ビジネススクールのフランク・フラインと教え子のバネッサ・レークは、他人が頼みに応じてくれる確率がどれほど過小評価されているかを調べるために、いかにも断られそうな頼みを実際に行う実験を行った。その1つは、参加者が通行人に短いアンケートに答えてくれよう頼むというものである。実際に頼む前に、「5人に答えてもらうまでに何人に頼む必要があると思うか」と参加者に質問したところ、答は平均20人だった。だが実際には約10人に頼んだだけで、5人の回答者を獲得できている。つまり打率5割に達したわけである。
■6.時間と関心というリソースを提供する
ささやかな行為が意外に大きな効果を発揮することは、覚えておいて損のない事実である。たとえば誕生パーティに出席する、葬式に列席する、ランチを共にする、病気の見舞いに行くといったちょっとしたことが相手の心に通じる。上院議員のロバート・ケネディは、47年におよぶ議員生活を通じて数々の法案を成立させている。また、共和党陣営にまで多くの友人を持っていた。それができたのは、誰に対してもフレンドリーで、よく話を聞いて相談に乗り、相手にとって重要なイべントには喜んで時間を割いたことが大きい。
■7.ネットワーク力はキャリアアップに重要な影響を及ぼす
(キース・)フェラッジは、40歳のバースディ・パーティをなんと7回も開いている。ちがう場所で、それぞれちがう友人たちに囲まれて。考えてみれば、誕生日は旧交を温め新しい仲間を増やす絶好の機会である。ハイディ・ロイゼンも、友達の多さでは負けていない。彼女は家族の写真に一言メッセージを書き添えて、夏休みやクリスマスにカードを送る。それも、700枚も。印刷所に頼みに行くとびっくりされるという。ロイゼンは、旅行先からのちょっとしたカード、ときたまのメールやランチ、あるいは「元気にしてる?」という一本の電話が自分のネットワークを強化し、自分を思い出させることをよく知っている。肝心なのは覚えていてもらうことだ。そうすれば、何かのときに手を貸してくれるだろうし、あるいは逆に助けを求めてくるだろう。
【感想】
◆付箋を貼りまくったため、割愛した部分が今回もかなり多いのですが、正直、冒頭の内容紹介で触れているようなえげつない話は、個人的な嗜好でほとんどカットしてしまいました(サーセン)。例えば、本書には「権力を握る人の7つの資質」(項目はアマゾンの内容紹介をご参照のこと)というパートがあるのですが、その1つである「闘争心」では「職場でパワハラがやまないのは、加害者側にとってこれほど有効な手段はないからだ」と指摘。
また第7章の『「権力」を印象づけるふるまいと話し方』には、権力者らしい話し方の1つとして「相手の話を遮る」なんてものもあります。
いずれも積極的に推奨しているのではないのですが、少なくともその効果に対しては肯定的。
うーん、あんまりやりたくないような。
……って、これこそポイントの2番目の「セルフ・ハンディキャッピング」なんでしょか?
◆一方、『一生モノの人脈力』でお馴染みのキース・フェラッジが、第4章の『出る杭になれ』の冒頭のエピソードでも登場します。
曰く、マッキンゼーとデロイト・コンサルティングから内定をもらっていたフェラッジは、デロイトの社長にかけあってレストランで会食し、入社の条件として社長に「年に1回このレストランで一緒にディナーを食べること」を提案したとのこと。
それにしても、「新入社員の時点で社長とのホットラインを確保する」とは大胆すぎるというか、「出過ぎた杭」というか。
ただ、こういう「頼みごと」は、意外と「ローリスク・ハイリターン」であり、要は「やったもの勝ち」。
それでもやる人が少ないのは、ポイントの5番目にあるように、難易度を計り損ねているんでしょうね。
◆また第6章では、「人脈作り」について言及。
人脈本を出しているフェラッジはいいとして、上記に出てくるハイディ・ロイゼンも、実はネットワーク力の模範例として、ハーバード・ビジネススクールのケーススタディによく登場するのだそう。
と言っても、上記のポストカードネタではなくて、社内における「橋渡し的な役割」ゆえ(詳しくは本書を)。
彼女については、ググってもあまり情報が出てこなかったのですが、「文系の女性が、なぜ一流のハイテク企業の役員になれたのか」を考えると、この「ネットワーク力」の重要性が良く分かるかと。
いずれにせよ、この第4章から第6章あたりが、当ブログの読者さんにとっては、ツボになると思われます。
◆さて、本書では、基本的に「権力を握る」までのお話がメインなのですが、第9章は「落ち目」になったときの乗り越え方について。
さらに第10章では「高い地位に伴う影」、第11章では「権力を失う原因と対処法」等について言及されています。
正直、権力を握ったことのない立場の人(含む私w)にとっては、この辺りの章はちょっと微妙というか、実際に握ってから初めて読みたい気分になるのでは?
ただ、個人的には、「セルフ・ハンディキャッピング」という概念を知り得ただけで、本書を読んだ価値がありましたし、メンタルブロックを乗り越えられそうな気がしております(キリッ!)。
本気で出世を目指す方に!
「権力」を握る人の法則
はじめに――「権力」を握る準備を始めよ
第1章 いくら仕事ができても昇進できない
第2章 「権力」を手にするための七つの資質
第3章 どうやって出世街道に乗るか
第4章 出る杭になれ
第5章 無から有を生み出す――リソースを確保せよ
第6章 役に立つ強力な人脈を作れ
第7章 「権力」を印象づけるふるまいと話し方
第8章 周りからの評判をよくしておく――イメージは現実になる
第9章 不遇の時期を乗り越える
第10章 「権力」の代償
第11章 権力者が転落する原因
第12章 権力闘争は組織とあなたにとって悪いことか
第13章 「権力」を握るのは簡単だ
【関連記事】
【人脈】「一生モノの人脈力」キース・フェラッジ(2008年04月07日)【出世の心得?】『権力(パワー)に翻弄されないための48の法則〈上〉』が予想通り濃厚だった件(2011年05月24日)
【会話術】相手を傷つけないようにモノをいう「8つのポイント」(2011年05月08日)
【真打登場!】「人脈の赤本 成長と成功につながる6.5の金言」ジェフリー・ギトマー(2008年11月27日)
【スゴ本】「影響力の武器 実践編」がやっぱりスゴかった件(2009年06月10日)
【速報!】最強のビジネス本「影響力の武器」の[第二版]がいよいよ登場!!(2007年08月18日)
【編集後記】
◆今日のご本の中でも何度も登場したのがこちら。一生モノの人脈力
人脈本としてはもはや「定番」ですし、未読の方は、この機会にぜひ!
ご声援ありがとうございました!
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この記事へのコメント
タイトルは権力ですが、人脈構築術、人間心理術って切り口でも引用したいデータが豊富で価値の高い本ですね。
【書評ナビ】コーナーと、今度の新刊でこちらのsmoothさんのブログを紹介させていただきました。
【書評ナビ】コーナーと、今度の新刊でこちらのsmoothさんのブログを紹介させていただきました。
Posted by 岩波貴士 at 2011年07月24日 00:42
>岩波貴士さん
ご無沙汰しております。
こちらの本は、おっしゃるように色々な切り口で読むことができると思います。
実際は、私が取り上げてない部分の方がディープなんですが(汗)。
そしてサイトやご本でご紹介頂き感謝です!
ただそれよりも、新刊が早く読みたくてしょうがないワタクシ(笑)。
前2作のクオリティから考えると、今回も間違いないでしょう!
もちろん、キャンペーンも併せてご紹介させて頂くつもりですので、よろしくお願い申し上げます。
ご無沙汰しております。
こちらの本は、おっしゃるように色々な切り口で読むことができると思います。
実際は、私が取り上げてない部分の方がディープなんですが(汗)。
そしてサイトやご本でご紹介頂き感謝です!
ただそれよりも、新刊が早く読みたくてしょうがないワタクシ(笑)。
前2作のクオリティから考えると、今回も間違いないでしょう!
もちろん、キャンペーンも併せてご紹介させて頂くつもりですので、よろしくお願い申し上げます。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年07月24日 01:16
>キャンペーンも併せてご紹介させて頂くつもりですので、よろしくお願い申し上げます。
大感謝 m( _ _ )m・・・献本嫌い(?)のsmoothさんですが、掲載連絡ということでキャンペーン前に到着するよう献本したいのですが発送先をメールで教えてもらえませんでしょうか?
大感謝 m( _ _ )m・・・献本嫌い(?)のsmoothさんですが、掲載連絡ということでキャンペーン前に到着するよう献本したいのですが発送先をメールで教えてもらえませんでしょうか?
Posted by 岩波 at 2011年07月24日 02:48
「ブクペ」への記録を熱望します!
Posted by あのす at 2011年07月24日 13:16
>岩波貴士さん
確かに今回は掲載本でもありますから、普通の献本とはちがいますね…。
ご連絡させて頂きます。
>あのすさん
コメントありがとうございます。
ブクペの細かい規定は良く分かってないのですが、著作権法上、基本的に「要約」は認められていないハズです。
もちろん、著作権者たる著者の許可を得ればいいんですけど、そこまではやってないんじゃないでしょうか?
また、一番心配なのは、場を提供しているブクペではなくて、記事を投稿しているユーザーが、一義的な権利の侵害者になる点です。
この辺の諸問題について、ブクペがどう考えているのか、知りたいところです……。
確かに今回は掲載本でもありますから、普通の献本とはちがいますね…。
ご連絡させて頂きます。
>あのすさん
コメントありがとうございます。
ブクペの細かい規定は良く分かってないのですが、著作権法上、基本的に「要約」は認められていないハズです。
もちろん、著作権者たる著者の許可を得ればいいんですけど、そこまではやってないんじゃないでしょうか?
また、一番心配なのは、場を提供しているブクペではなくて、記事を投稿しているユーザーが、一義的な権利の侵害者になる点です。
この辺の諸問題について、ブクペがどう考えているのか、知りたいところです……。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年07月25日 03:02
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