2011年07月19日
【色のヒミツ】『カラー版 色彩の教科書』芳原 信

カラー版 色彩の教科書 (COLOR新書y)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の未読本記事で取り上げた1冊。私たちに日頃からなじみ深い、「色」というものが、どのような効果を持っているかを、豊富な具体例とともに解説してくれています。
アマゾンの内容紹介から。
色には、時間や重さなどの感覚、さらには味覚、感情などを操る不思議なチカラがあります。街中の看板や空間、あるいは店頭に並ぶすべての商品は、そんな色のチカラを利用して、人々の感覚に訴えているのです。高級ウイスキーのラベルはなぜ黒色なの?ファミレスの店内や看板に青系が使われない理由とは?色が私たちに与える影響を科学的に分析!本書を読めば、仕事からプライベートまで「色のチカラ」を使いこなすことができます。色がテーマだけあって、全ページほぼフルカラーなのもありがたかったです!

【ポイント】
■1.暖色は時間を長く感じさせる
Wedding Hall / fergie_lancealot
まず、赤やオレンジなどの暖色は、時間を長く感じさせるチカラがある。つまり「もう2時間くらいたったかな」と感じても、実際は1時間しかたっていない、そんな感覚のズレを人間に感じさせるのだ。
実は結婚式場なども、赤いじゅうたんや温かみのある色の内装などを使って、この暖色と時間の感覚の効果をうまく使っている。週末に集中する過密スケジュールの中で、新郎・新婦が追い立てられるような感覚を持つことなく、テキパキ時間通りに式を進行させていく上で、赤などの暖色が大切な役割を果たしているのだ。
■2.重さも色に左右される

white, OCD boxes / jm3
例えば、色と重さについてのこんな実験がある。同じ大きさの箱が2つある。一方は黒い色をした100gの箱。もう一方の箱は白い色。この白い色の箱の重さを徐々に増やしていき、黒い箱の重さと同じになったと感じたときを計測したところ、なんと187gとなった。つまり、黒と白の間では、約倍近い重さに対する感覚の差が生まれたことになる。
■3.青は犯罪を抑える効果あり

Streetlights / TNRN
イギリスのグラスゴーという町では、街角の美観アップのため、それまでのオレンジ色の街灯を青い色に変えた。すると、街灯の色が変わった街角では犯罪率が激減したという。
この現象がマスコミで紹介されたことで、日本でも奈良県をはじめ、さまざまな自治体で街灯を青に変える試みが行われた。その結呆、実際に犯罪を抑止する効果が得られたとも報告されている。最近、高架線下の自転車置き場などで青い照明が目立つようになってきたのも、こうした犯罪軽減の効果を狙ったものだ。
■4.ピンクは女性を若返らせる

Royal Hawaiian Hotel, Waikiki / www.bluewaikiki.com
ピンクには、内分泌を活発にし、エストロゲン(女性ホルモン)を分泌させる効果があるといわれている。(中略)
ピンクについての実験でも、女性がピンクの洋服を身につけたり、ピンクの壁紙やカーテンのある部屋で生活すると、実際に容貌や身体が若返り、愛らしく、美人になる、そのような驚くべき結果が伝えられている。
■5.味は色に支配されている

Doubleshot Espresso / howie221
濃い茶色、赤、青、黄色の缶に入れられた4種類の缶コーヒー。実はすべて同じ味の物が入れられているのだが、これを知らない被験者たちに、それぞれの味を聞いたところ、濃い茶色は芳香が非常に強く、赤、青、黄色になっていくうちに薄い味だという感想を述べる人が増える結果となった。
■6.色で変わる男女のテリトリー

Rosa Bonheur cafe / austinevan
男性が居心地のよさを感じるのは、明度を抑え目にした寒色。黒やグレー、紺色やシックな木目など重さのある色だ。一方、女性が自分のテリトリーと感じるのは、明度が高く、暖かみのある色だ。アイボリー系やピンク系、オレンジ色や明るい木目調、そこに花を感じさせるような色合い(もちろん花そのものでも)を配置すれば、女性は「自分のために用意された場所」と一瞬のうちに感じる。こうした場所に間違って男性が立ち入った場合などは、何をいわれるまでもなく、非常に居心地の悪い思いをする。
■7.その製品は「らしい」色をしているか?

Blue Package from Ecommerce Store / Humor Blog
例えば、卵でできた甘い製品をクールで清涼感ある青いパッケージで包んでしまったら、製品の正体はおろか、特長さえ伝わらなくなる。これでは、買う側も色によって混乱してしまい、製品を購入しないという結果を招きかねない。
【感想】
◆今まで「色」については、その「効果」を漠然と感じていました。ただそれは、ほとんどが「暖色系=暖かそう、ぬくもりがある」「寒色系=冷たそう、理知的」のようなステレオタイプのようなもの。
それが本書では、もうちょっと踏み込んだ効果にまで言及しています。
まず、暖色が「時間を長く感じさせる」というのは全くの初耳。
結婚式場の内装に暖色系が多いのは、式自体に温かみを加えるのかと思いきや、「ゆったり感」を意図していたとは!
逆に寒色系は時間を短く感じさせるので、単調な作業を行う現場(工場等)の内装は、寒色系が常識なのだとか。
◆その寒色ですが、実は意外な効果があって、物体が実際よりもこちらに進んでいない印象を与えるのだそう(暖色はその逆)。
その結果どうなるかと言うと、例えば同じ距離にある車でも、赤い車はこちらに近づいているように見え、青色の車はまだ遠くに見えることに。
実際、交通事故率の高い車の1位は「青」で2位は「緑」であるとのこと(『カラー・マーケティング論』より)
ただ、赤い車は目立つので、その分事故になりにくいような気もしますが……。
◆上と同様に、割愛したお話の中では「4大販売色」も見逃せないところ。
具体的に何色なのかはここでは自重するものの、1つだけ言うと、思いっきりベタですが「赤」。
実際、コカコーラやカップヌードル等、ロングセラーとなっている製品の多くに、赤は使われています。
ところが面白いのが、ポイントの最後に挙げた「らしい色か否か」との兼ね合い。
例として挙げられているのが牛乳で、赤と白のそれぞれのパッケージを比べた場合、「印象が強いのはどちらか?」という問いでは、76.7%の人が赤を支持したのに対し、「どちらを買う?」という問いでは、逆に74%の人が白を支持したのでした。
確かに自分自身、牛乳だったら白いパッケージを買いそうな気が。
◆本書は他にも、第4章で年齢や地域・国によって変わる「色の好み」にも言及。
また、第5章ではお店の業種別に、店頭での「色」メッセージを分析しています。
冒頭の内容紹介にもありましたが、ファストフードで赤と黄色が使われるのに対し、ファミレスでは黄色が少ないのは何故なのか?
さらには、高そうなウイスキーのラベルが黒いのは何故なのか?
本書を読んだら、今までとは違った視点で、身の回りの「色」を意識することウケアイです。
「目からウロコ」の1冊!

カラー版 色彩の教科書 (COLOR新書y)
巻頭 自分がわかる色彩心理テスト
第1章 知っておきたい色の基礎知識
第2章 色が持つ不思議な力
第3章 今すぐ使える! 色彩効果
第4章 地域、年齢、男女で違う色の好み
第5章 お店と商品の色彩学
【関連記事】
【服装戦略】『男の価値は「色」で決まる! 』今井志保子(2008年05月06日)【モテファッション?】「男のファッション基本講座 カラー版」(2008年05月27日)
【オススメ】「視覚マーケティングのススメ」はお役立ち!(2008年07月27日)
【編集後記】
◆当然とはいえ、この本が現在絶賛ランキング上昇中であります。
なでしこ力 さあ、一緒に世界一になろう!
うーん、在庫切れなんで、数週間後に仕入れて記事にしても、旬は過ぎてるような。

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