2011年06月30日
【超説得】『瞬間説得―その気にさせる究極の方法』ケヴィン・ダットン

瞬間説得―その気にさせる究極の方法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日の未読本・気になる本の記事にて取り上げた1冊。本書のテーマは、「普通の人なら思いもよらない方法で、瞬間的に相手を説得してしまう方法」についてです。
例えば……。
とある金曜の夜、ロンドンの地下鉄で信号機故障があり、アナタは満員の列車の中で立ち往生しています。
すると禁煙であるにも関わらず、すぐそばにいたジョギング姿の男がタバコに火をつけ、車内は不愉快そうな沈黙に包まれました。
アナタならその男に何と言ってタバコをやめさせますか……?

【ポイント】
■1.瞬間説得の5つの要素鍵となる要素は明らかに「意外性(インコングルイティ)」(もしくは驚き)です。でも、それはほんの始まりにすぎません。わたしたちが説得されるか否かは、この他にある4つの要素によって決まります。それは単純性(シンプリシティ)、私的利益感(パシーブド・セルフ・インタレスト)、自信(コンフィデンス)、そして共感(エンパシー)です。
これらは植物や動物の王国でも説得に不可欠な要素ですが、同時に世界でもっとも優秀な詐欺師たちの犯罪でも欠かせない要素です。この5つの要素(頭文字をつなげるとスパイスとなる)を混ぜあわせた影響力のカクテルは、絶大な効き目があります。さらに、それが話術で薄められず、議論によって手垢がつかず、まっすぐ吸収された場合はなおさらです。
■2.言葉より雄弁なしぐさ
考えてみてください。どんな状況にあろうと、口に出さずに言葉以上のことができるなら、それは大きなアドバンテージになるます。
ビジネスの場合。
トップクラスの営業部員は、契約をとる際に顧客に対してやや近づき、身を乗りだしているという調査結果が出ています。それは"共感"(近づくことによって増す)だけでなく、従属する意思を見せるという二重パンチを放っているのです。
あるいは育児の場合。
今度あなたがわがままな6歳児に命令することになったら、頭ごなしでなく"見あげて"命じてみてください。上から言い聞かせるのではなく、子どもを引き寄せ、いっしょにしゃがんで――できるだけ落ち着いた口調で(実際には口で言うほど簡単ではありませんが)――言うべきことを言うのです。
このように自分を相手のレべルまで下げると、効果を上げることがよくあります。
■3.アイコンタクトによる説得パワー
あなたが賛成できないことを、わたしが主張しているとします。わたしはあなたに自分の主張の長所短所をあげて、いよいよ賛成してもらおうとします。どうしたらあなたを説き伏せるチャンスが増すでしょうか。方法は1つ。視線を合わせる長さが増せば、説得できることが実証されています。調査によれば、会話をかわす2人がたがいを見る時間の長さは、同じではありません。聞き手が話し手の目を見る時間は75パーセントなのに対して、話し手が聞き手と目を合わせる時間は40パーセントにすぎないのです。この数字が50パーセントあたりに上がると(聞き手に不快感が生じて)、たちまち権威を漂わせた雰囲気が入りこみます。
こうした統計値を見ると多くの人が驚きます。でも、大半はこうした状況で受け手側になったとき、なるほどと納得します。
■4.人を笑わせると同時に積極的に拒絶を誘うセールステクニック
人がいきなり電話してきて、耳よりな話があるんですよ、なんて言われて、それにつき合いますか? とりあえず相手が「わたしは○○××と申しまして、△△からお電話していますが」なんて切りだせば、あなたはすぐに受話器を置きはしないでしょう。
それが最初のキー・ポイントです。相手に電話を切らせないようにすることが。発信音には何も売れませんから。で、「あなたは迷信深いですか?」――たいていの人は「いいえ」と答えます。「迷信深くない」と。そこでこう切り返します。「じゃ、ぼくに13ポンド13ペンスくださいませんか?」十中八九、反応があります。たいていは笑って、あんた誰? と訊きますね。
■5.質問と沈黙による説得
これまで予約係は客が予約の電話をしてくると、こう言っていました。「ご予定が変わりましたらお電話ください」
変更後はこうしました。「どうしてもご予定が変わるようでしたら、お電話いただけますでしょうか?」そう言ったあと、相手の返事を待ったのです。
指示から質問に変え、きわめて重要な沈黙をプラスしました。それだけで問題がかなり解消されたのです。
なぜ?
質問は返事を求めており、沈黙は――電話での沈黙がすべてそうであるように――埋められなければなりません。客は、「どうしてもご予定が変わるようでしたら、お電話いただけますでしょうか?」という質問に"はい"と答えることで、心理的な予定表を心に焼きつけます。つまり方向を修正する契約上の目印を。
■6.何より大事なのは自信
ロバート・へンディ=フリーガードは、詐欺師の世界のハンニバル・レクターです。あまりに説得力がありすぎるので、厳重に警備された建物のなかでさえ、同房の囚人たち(それと刑務所の職員)を魔力から守るために、独房へ移されたほどです。(中略)
では、なぜ彼はそんなにだますのがうまいのか? 被害者の一人が手がかりを出してくれます。
「彼の自信がじつに魅力的なんです」と彼女はふりかえりました。「あの態度にすっかり巻きこまれてしまって」
検事として陣頭指揮をとったアンドルー・ウェストは、もう一つの要素を指摘しています。
「脱帽せざるをえなかった」と彼は公判の論告求刑で述べました。「とにかく被告はじつに口がうまい。証拠を持ちだす際にも、とても説得力がある」
【感想】
◆今回も、引用分量が多いのでこの辺で。上記ポイントは、いずれも「瞬間説得」の要素の分析等に関するものであり、実際に実践する場合に参考になるであろうものを選んでみました。
逆に具体的な「瞬間説得」の事例については、紹介してしまうとモロに「ネタバレ」なので、あえて割愛しております。
ただ、冒頭のタバコの事例だけは、振るだけ振っといてスルーするのもなんですのでご紹介しておきますと、とあるスーツ姿の男性がタバコを持ってその男に身を寄せ「ちょっと火を貸していただけません?」とひと言。
これがきっかけになりました。堪忍袋の緒が切れたのです。すぐに別の乗客が止めに入りました。お見事!
「あんた方、禁煙だってことは知ってるだろう?」彼はぴしゃりと言いました。
スーツの男は禁煙の表示に、突然"気づき"ました。
「悪かった。気づかなかったんだ」
それから彼はジョギングウェアの男をふり返りました。
「これは消したほうがよさそうだね」
◆また、本書の冒頭で紹介されているのが、ウィンストン・チャーチルが、政府の晩餐会で顔見知りの客が貴重な銀の塩入れをこっそり盗もうとしているのを目撃したケース。
主催者の顔も立てなければならないのですが、不祥事も避けたいチャーチルの取った方法とは?
他にも、飛行機のビジネスクラスで「料理がまずい」となじった男性のケース。
「申し訳ございません」と愛想よく対応した主任客室乗務員に対して「感じのいいやつに愛想よくされるのはもうウンザリなんだよ!」と言った男性に、前の座席の男性が「とあるセリフ」(ネタバレ自重)を放ちました。
すると…
一瞬、みんなが黙りました。誰もが凍りついたのです。それから、まるで頭の中で秘密の仕掛けが作動したように、問題の不機嫌な乗客は……にっこりしました。笑い声もあげました。やがて腹の底からおかしそうに笑いだしました。それをきっかけに主任客室乗務員は立ち去り、もちろん、わたしたちも食事を再開しました。……いやもう、正直完全に「想定外」の解決策なんですよ、コレも。
ただ、いずれも上記ポイントの初っ端の、「瞬間説得」の要素が見事に反映されてるんですよね。
詳細や他の事例に興味のある方は、本書にてご確認を。
◆ちなみに、私が本書を購入した主要因は、実は「ナンパテク」として使えるのではないか、と思ったから(オイコラw)。
長々と交渉するのではなく、「瞬間的に」こちらのペースに引きずりこんでしまえば、成功率も高まりそうじゃないですか。
過去にご紹介した本から拾ってみても、デパート売り場で「叩きやすいスリッパってどれ?」と店員に声をかける佐伯鉄人のテクなんかは、まさに「意外性」ですよね。

口説きの理論―ナンパの鉄人が極めた最強のワザ (宝島社文庫)
参考記事:【モテ】『口説きの理論―ナンパの鉄人が極めた最強のワザ』がパネェ件:マインドマップ的読書感想文
「自信」や「共感」はナンパでも言わずもがな。
実際、本書には「金曜の夜に女のコをモノにするのをスポーツと考える」詐欺師が登場して、その手口を公開しているのですが、確かに「瞬間説得」の5つの要素に当てはまっていました(真似するのは多分無理ですが)。
◆ところで、昨日の記事で「驚いたことに」と申し上げたのは、アマゾンのページをクリックされた方はピンと来たかもしれませんが、本書のお値段。
天下のNHK出版さんですから、ボッタくってるワケではないでしょうが、400ページ弱で2835円というのは、ちょっとお高いんじゃないでしょうか……って、私も他の本と一緒にアマゾンアタックしたので気がつかなかったのですが、知ってたら買うのを躊躇してましたよww
また、本書は翻訳本らしく(?)、日本のよくあるビジネス書のような「ノウハウを提供する」のを目的としていない分、「買ったらすぐ『瞬間説得』できる」と思われると、ちと違うかと。
ただ、ベクトル的には『影響力の武器』に近く(実際、同じ事例を引用したりしてます)、「人を動かす」ことに興味があるなら、一読の価値はあると思います。
私としては、こんなに付箋貼りまくったんですけどね!


瞬間説得―その気にさせる究極の方法
はじめに
1章 本能に注目しよう
2章 赤ちゃんには逆らえない
3章 脳の衝動性を利用する
4章 説得の奥義
5章 数を味方に
6章 瞬間説得のメカニズム
7章 サイコパスの能力
8章 影響力の可能性
あとがき 完全な不完全
【関連記事】
【速報!】最強のビジネス本「影響力の武器」の[第二版]がいよいよ登場!!(2007年08月18日)【出世の心得?】『権力(パワー)に翻弄されないための48の法則〈上〉』が予想通り濃厚だった件(2011年05月24日)
【スゴ本】「影響力の武器 実践編」がやっぱりスゴかった件(2009年06月10日)
【会話術】相手を傷つけないようにモノをいう「8つのポイント」(2011年05月08日)
【話し方】「たった1分間で相手を引きつける話し方13のテクニック」アラン・ガーナー(2010年06月06日)
【編集後記】
◆気になる本、というか、これはネタなのか…。
松岡修造の人生を強く生きる83の言葉
アマゾンのページで紹介されている言葉を見ても、ネタ疑惑がぬぐえませぬw

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この記事へのコメント
3は今度、実践してみよう。
お姉さんに携帯の番号を書いたカードを渡して「連絡くださいね。」と言う時に。
いや、この前番号を書いたカードをお姉さんに渡したのですが連絡が無(以下略)。
お姉さんに携帯の番号を書いたカードを渡して「連絡くださいね。」と言う時に。
いや、この前番号を書いたカードをお姉さんに渡したのですが連絡が無(以下略)。
Posted by デッドリー at 2011年07月03日 10:56
>デッドリーさん
お!ナンパですか!?
でも、「意外性、単純性、私的利益感、自信、共感」の5つの要素がないとダメですからねww
実はこの本読んでから、私もアイデアが浮かんだのですが、ヨメの手前(ry
お!ナンパですか!?
でも、「意外性、単純性、私的利益感、自信、共感」の5つの要素がないとダメですからねww
実はこの本読んでから、私もアイデアが浮かんだのですが、ヨメの手前(ry
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年07月05日 05:23
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