2011年06月28日
【知的生産】『人たらしの流儀』佐藤 優
人たらしの流儀
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、当ブログでは初めてである佐藤 優さんの作品。月刊文庫『文蔵』の連載、「佐藤優に学ぶ『人たらしの極意』」を再編集し、加筆・修正したものとのことです。
アマゾンの内容紹介から。
国家の重責を担い外交の最前線で闘った佐藤優氏の情報収集法、読書術、人脈構築と活用法といったノウハウをビジネスマンに伝授。タイトルだと人脈話が中心のようですが、ビジネスパーソンにとって幅広く「使える」ネタがいくつもありました!
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.読むべき翻訳書のチェック方法翻訳書は真ん中ぐらいを開けてみましょう。
そこに、たとえば、『赤坂の溜池のシティホテルの22階の2256号室の冷蔵庫の……』と『の』が連続しているような文章が出てきたら、買わないほうがいいでしょう。翻訳は冒頭と最後のほうに凄くカを入れてチェックしているけど、中抜き、中だるみになっているのがときどきあります。
さらに、いい加減な監修者・監訳者は、序章と最終章しか見ないで、あとは大丈夫だろうというスタンスでやっていることが多いですから。
■2.英語ができるならヘラルド・トリビューン紙
へラルド・トリビューン紙は、東京でつくっているのにもかかわらず、扱っているニュースが違うのです。たとえば、日本中で、あざらしのタマちゃんを扱っているときに、へラルド・トリビューン紙にはタマちやんの記事はほとんど出てきません。ニュース・ソースの選択が国際基準だからです。(中略)
へラルド紙は築地の朝日新聞社の中に支局があります。ニューヨーク・タイムズの国際版のようなものです。決して部数は多くないけど、世界のニュースの土台をつくっている新聞です。
■3.新聞の気になる記事を破って袋に入れる森元首相
あの袋に入っているのは、『破いた』という行為をやることによって、頭の中にインデックス(索引)をつけて、記憶として定着させているわけです。
その記事の内容自体を記憶するのはとても大変です。しかし、あのとき、新幹線の中で、車窓からは、あの景色を見ながら破いた、という行為自体が印象に残り、頭の中に索引ができていくのです。もしその記事のことを詳しく知る必要が生じた時点で、その袋から取り出せばいい。
記憶のポイントは、索引をつけるか、細かく覚えるか、あるいは、捨てるか、この三つの選択肢があるのです。この記事は、仙台に行くあのときに破いた記憶がある。これは広島に行くときだった。こうすると、時系列と非常に絡みやすくなって、情報にインデックスをつけやすくなるのです。書斎の中で破いても変化がない。移動とか、変化のあるときにやると、思い出すのが楽だという経験則からの癖のようなものでしょう。
■4.人間関係構築は最初の3ヵ月がキモ!
相手と3ヵ月以内に3度会うことですね。3ヵ月以内に3度会えば、その後、3年間、相手は、あなたのことを覚えているものです。(中略)
相手と接触して、最初は挨拶。その時に物を借りて、2回目は物を返す。そして、さらに「お世話になりました」と、次回の話をして、3回目につなげるのです。(中略)
相手との共存共栄体制をつくり上げるのです。そうすれば、もう永遠の腐れ縁も同然です。だから、裏返すとですね、その人との人脈を切るには、3年以内にうまくやることです。3年以上、関係を引きずると、人間関係を切るのにコストが高くついてしまうので、結局切れなくなります。
■5.婚活女子を理解するには、中村うさぎ先生を読めばいい
『セックス放浪記』とか、『女という病』、また、少し前の『壊れたおねえさんは、好きですか?』などお薦めです。
これらを読めば、自己確認の旅をしている女性がどういうものかわかります。パートナーを見つけるためではなく、自分の価値を確認するために行動していることがよくわかります。
それは、売る気はないのに質屋に自分の高級ブランド品を持って行って、鑑定してもらい、価値を再確認して楽しんでいるということと同じだとわかるはすです。
■6.相手の人柄を知る方法
たとえば、犬の話を振ってみる。それで、動物に対して、憎悪が感じられる、または、小動物を徹底的に苛めた話を嬉しそうにする。相手が、そんな感じだったら、この人はちょっとヤバイかなって思ったほうがいい。(中略)
相手が、あまり動物に関心がない人には、子供の話をするといいですね。ここで、動物に続いて、人間の子供の話もダメならば、この相手の人は、極端に利己的な可能性があり、友だちが少ない可能性があります。
■7.自分の経験の少なさは本で補う
対人関係を実地で学ぶには障害が多過ぎます。
自動車教習所の例で言えば、いきなり、路上に出ることはないでしょう? 教習所の中にあるシミュレーションの画像で運転してみたり、敷地内で運転の練習をしたりするでしょう? 『人たらしの流儀』では、それに相当するのが、小説、そして、ノンフィクシヨンを数多く読むことなのです。
自分の具体的な経験には限界がある。それ以外に小説とノンフィクションから得られる疑似体験の知識があれば、それを補うことが十分できます。
戦場に投げ込まれたインテリゲンチャ(ロシア語で知識人階級のこと)は、小説好きのほうが生き残る可能性が高いのです。
インテリジェンス・オフィサーは、通常、外交官や官僚に比べて小説をよく読んでいます。
【感想】
◆ブログ紹介しておいてナンですが、アマゾンのレビューによると、本書の内容は、佐藤さんの過去の著作とかぶっている部分があるようです(低評価レビューはそれが原因)。私は全くの初めてだったので、かなりの量の付箋を貼ったのですが、『野蛮人のテーブルマナー』と『「諜報的生活」の技術 』の両方を読んでいる人は、読まなくてもいい(?)とのこと。
そもそもが、冒頭で触れたように月刊文庫『文蔵』の連載をまとめたものなので、そちらをお持ちの方も微妙な予感(どのくらい加筆・修正なのかにもよりますが)。
また、本書には「聞き手」がいて、その人の質問に答えたり、その人に語りかけたりする構成になっており、この辺も、好き嫌いが分かれるところかもしれません。
◆とはいえ、読書家で知られる佐藤さんだけに、その知的生産の技術には学ぶところが多いです。
読書ネタが続くのを避けましたが、「自分にとって必要な本の選び方」や「頭が良くなる読書と悪くなる読書」さらには、聞き手の前で行った「超速読」辺りは、当ブログの読者さんなら一読の価値アリ。
特に「超速読」は、聞き手が持っていた300ページ弱の小説を2分50秒で読み、物語の大筋やテーマを言い当てています。
具体的なやり方について掘り下げていないのが残念ですが、実は私が書評系ブロガーとして登場した週刊東洋経済2008年6/21号にて、佐藤さんは、その読書術を公開されていたのでした。
……当時はまだ、週刊東洋経済って、アマゾンで取り扱いがなかったんですよね。
◆同じように割愛した中では、「異業種交流会」ネタも興味深いところ。
「投資総額は年間10万円」「会費1万円のものより3万円のもの」「名刺を配りまくり、相手の名刺をもらいまくる」等々、類書とはひと味違う主張がなされています。
当ブログ的には、というか私が出不精なので、実践する気はないのですが、人脈作りやそこからビジネスにつなげる方法等には、思わず納得。
一応、名刺整理術のコツは、両面が見えるようにクリアファイルに入れておくことなのだそう。
◆ところで本書は、現時点でアマゾンに在庫がなく、マーケットプレイスでもそれなりの金額が付いています。
この金額にさらに送料が付くことを考えると、手放しではオススメしにくいと言うか、ぶっちゃけ値崩れするのを(ry
楽天でも品切れみたいなので、近所のリアル書店にあれば、そちらを推奨。
ブログで紹介しているくらいですから、決して悪い本じゃないのですが、待つのがいやだったり、周りに書店がなかったりする方のみ、アマゾンアタックしてくださいマセ。
人たらしの流儀
インテリジェンスとインフォメーションの違い
正しい情報を取るための二つのルール
インテリジェンスとランチ
天に宝を積む
いい本の選び方、いい読み方
インテリジェンス的情報収集術―新聞と嘘
ローンとホノラールと貨幣の品格
人間として失ってはいけない大切な感覚
聞き上手になる
相手についている「見えない値札」を見抜く
小さな嘘で相手を見抜く
異業種交流会は夢への架け橋!?
オウム返し話法とお金の哲学
人脈のメンテナンスと耐エントロピー構造
テクネーとエピステーメー
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【お買い得!】勝間さんの「まねる力」が濃厚な件(2009年07月01日)
【編集後記】
◆これはなかなか面白そうな1冊。瞬間説得―その気にさせる究極の方法
ナンパにも使えそうなヨカン!?
ご声援ありがとうございました!
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この記事へのコメント
項目4は納得。ある短い期間で連続していくと覚えてもらえる。
ここ最近行き続けているカフェで初めて対応してもらった人に「いつものですね♪」と言われたのは吹いたw。
俺のこと、どんだけ広まってんねんとwww。
ここ最近行き続けているカフェで初めて対応してもらった人に「いつものですね♪」と言われたのは吹いたw。
俺のこと、どんだけ広まってんねんとwww。
Posted by デッドリー at 2011年06月28日 23:39
>デッドリーさん
ご無沙汰です。
カフェで「いつものですね♪」ならいいじゃないですか。
私なんか、税理士試験の受験生時代、富士そばで「いつもありがとうございます!」って言われましたよ(涙)。
確かに毎日通ってましたが……(汗)。
ご無沙汰です。
カフェで「いつものですね♪」ならいいじゃないですか。
私なんか、税理士試験の受験生時代、富士そばで「いつもありがとうございます!」って言われましたよ(涙)。
確かに毎日通ってましたが……(汗)。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年06月29日 01:13
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