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2011年06月23日

マッキンゼーが選んだ『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』の10個の原則


アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】
アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、私たちにもなじみが深い「チェックリスト」の効能を描いた1冊。

本書の著者であるアトゥール・ガワンデ氏は、米誌「TIME」で2010年の「世界で最も影響力ある100人」に選出された医師で、ジャーナリストとして『コード・ブルー―外科研修医救急コール』という著作も出されている方です。

アマゾンには載ってないのですが、本書の帯の裏には、あの『ヤバい経済学』のレヴィット教授からの推薦文が。
「チェックリストなんて興味ないと思っていたのに、一気に読んでしまった。魅力的なエピソードを満載した最高の一冊だ。誇張抜きに私の物事の考え方を一変させてしまった。こんなに素晴らしい本を読んだのは本当に久しぶりだ」
確かに本書を読むと、チェックリストを日々の業務に取り入れたくなることウケアイ!

ただしタイトルは、「ホッテントリメーカー」作なので、マッキンゼーさん関係ないです(スンマセン)。


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【ポイント】

■1.航空業界におけるチェックリストの導入
 初期の飛行機の操縦は、危険だったが複雑ではなかった。飛行機のためにチェックリストを作ろう、なんて当時言ったら笑われただろう。だが、1935年に登場したボーイングのモデル299の操縦は非常に複雑だった。パイロット一人の頭脳に全てを任せきれないほど、飛行機は進歩してしまった。チェックリストという発想自体が、航空業界の進歩の証左だったとも言える。
 彼らの作ったチェックリストは、ハガキ大のカードに収まるくらい短く簡潔だった。離陸、飛行、着陸、地上移動、それぞれの手順にチェック項目が設けられていた(中略)。
あまりに単純なので、こんなものに意味があるのかと疑ってしまうほどだ。だが、効果は絶大だった。


■2.感染予防に効果のあったチェックリスト
 2006年12月、このプロジェクトの成果が『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』(訳注:マサチューセッツ内科外科学会発行の著名な医学誌)に発表された。プロジェクト開始から三ヶ月でミシガン州のICUの中心静脈カテーテル感染率は66%下がり、サイナイ・クレース病院を含む多くの病院の四半期のICU感染率はゼロだった。ミシガン州のICUの平均の感染率は、全国の90%のICUより低かった。プロジェク卜開始から18ヶ月で、1.75億ドルの医療費を節約し、550人以上の命を救った計算になる。たった1つのチェックリストのおかげで、数年たった今でもミシガン州のカテーテル感染率は低いままだ。


■3.M&M'sチョコレートというチェックリスト
 ある日のラジオで、ロックミュージシャンのデイビッド・リー・ロスの逸話を聞いた。ヴァン・へイレンのボーカルを務める彼は、コンサートの契約書に「楽屋にボウル一杯のM&M'sチョコレートを用意すること。ただし、茶色のM&M'sはすべて取り除いておくこと。もし違反があった場合はコンサートを中止し、バンドには報酬を満額支払うこと」という事項を必ず含めるそうだ。実際、ロスが茶色のM&M'sを見つけてコロラド州でのイべントを中止したこともある。(中略)

 ロスは自伝の『クレイジー・フロム・ザ・ヒート』でこう語る。「ヴァン・へイレンは、地方の巡業に巨大セットを持ち込んだ初めてのパンドだった。(中略)
スタッフや機材の人数が多いので、契約書は電話帳並みに分厚かった」その契約書に試金石としてM&M'sの項目を入れておく。「そして、もし楽屋で茶色いM&M'sを見つけたら、全てを点検しなおすんだ。すると必ず問題が見つかる」それが命に関わることだってある。コロラド州のイベントでは、興行主が重量制限を確認しておらず、セットは会場の床を突き破って落ちてしまうところだった。


■4.良いチェックリストと悪いチェックリストの違い
 ブアマン氏はいろいろ教えてくれた。良いチェックリストもあれば悪いものもある。悪いチェックリストというのは曖昧でわかりにくい。長すぎて使いにくく、実用に適さない。現場を知らないデスクワーカーによって作られる。彼らはチェックリストを使う人たちは馬鹿だと思い込んでいるから、全ての手順を細かく書き出そうとする。脳を活性化させるのではなく、眠らせてしまうようなチェックリストを作ってしまう。
 一方、良いチェックリストは明確だ。効率的で、的確で、どんなに厳しい状況でも簡単に使える。全てを説明しようとはせず、重要な手順だけを忘れないようにさせる。なにより実用的であることが良いチェックリストの条件だ。


■5.現場の人間によるチェックリストの評価
3ヶ月の試用期間後、科医、麻酔科医、看護師、その他を含む250人以上のスタッフが匿名のアンケートに答えてくれた。チェックリスト導入前は有効性を疑う者が多かったが、3ヶ月後にはスタッフの80%が「チェックリストは短時間で簡単に使え、手術をより安全にしてくれた」と答えた。78%は、チェックリストがミスを防止するのを実際に目撃した。
 もちろん、全員が納得したわけではない。残りの20%は、「チェックリストは時間がかかって使いづらく、手術をより安全にしてくれなかった」と思っているわけだ。
 だが、私たちはアンケートにもう1つ質問を入れておいた。
「もしもあなたが手術を受けるとしたら、その時にチェックリストを使って欲しいと思いますか」
 93%が「はい」と答えた。


■6.投資にも役立つチェックリスト
 匿名希望の投資家(便宜上"クック氏"としよう)もチェックリストを使っているが、彼のやり方はさらにシステマチックだった。彼はまず投資の全過程を分析した。下調べ、投資先の選択、投資の決断、投資後の経過観測で起きるミスを集計し、それらのミスを防ぐための詳細なチェックリストを作った。一時停止点をはっきりと定め、いつ彼のチームが集まって項目を一つ一つチェックするのかを明確にした。(中略)

 彼のファンドは利益を公表していないので、正確な数字は教えてくれなかったが、チェックリストのおかげで成績は向上しているそうだ。2008年初頭にチェックリストを導入し、同年の大暴落をうまく乗り切ることができた。他の者に言わせれば、乗り切るどころか、競合者を圧倒するような大成功を収めたそうだ。


【感想】

◆長い引用が多かったのでこの辺で。

とにかく本書は、机上の空論ではなしに「いかにチェックリストが役に立っているか」の実例が豊富でした。

今回は割愛してしまいましたが、著者のガワンデ氏もチェックリストを活用しており、第9章ではご自身の体験についても触れられています。

ガワンデ氏は、とある手術を失敗し、出血多量であやうく患者を殺してしまうところを、チェックリストのおかげで予備の血液が用意されており、患者は一命をとりとめたのだそう。

とにかく病院でのミスは人命に関わるので、チェックリストは必須と言えそうです。

感情的に導入に反対している人も、上記ポイントの5番目にあるように、「自分の手術には使って欲しい」くらい効果があるわけですからw


◆同じように「人命に関わる」、という点で、航空業界でもチェックリストは大活躍しています。

これまた割愛したものの、実は「ハドソン川の奇跡」と言われた2009年1月15日のUSエアウェイズ機の事故の陰でも、チェックリストが活用されていたとのこと。

USエアウェイズ1549便不時着水事故 - Wikipedia

機長はオバマ大統領の就任式に招待されたり、ABCニュースで「ハドソン川のヒーロー」と呼ばれたりしましたが、繰り返し「乗務員全員の手柄だ」「チームワークと忠実に手順を守ったことが成功の大きな要因だったと思う」とインタビュー等で言い続けてきました。

人々は「機長謙虚スグル!」「機長△!」とはやし立てていたわけですが、本書を読むと、彼が極めて事務的に淡々とチェックリスト通り作業を進めていたことが分かります。

何たって、機長と副機長は一番最後に脱出した後、二人して「案外大したことなかったな」と言ってたそうですし。

こういったエピソードを読むにつけ、私たちは、日頃チェックリストを過小評価している気がしないでもありません。


◆一方、これら「一刻を争う」場面以外でもチェックリストが使えるということは、一番最後の投資のお話を読むとよく分かります。

ちなみに、ベンチャーキャピタリストを十数種類に分類した(「美術評論家」「検察官」「八方美人」「機長」等々)心理学者のジェフ・スマート博士によると、あるタイプが飛び抜けて好成績を収めていたのだそう。

……って、これはもう言うまでもなく、チェックリストを活用する「機長」タイプなんですが、確かに数値的に見ても段違いなので、気になる方は本書にてご確認を。

面白いのは、「株で儲ける秘訣」的な話に飛びつく人はものすごく多いのですが、「チェックリスト」だけはそうならないこと。

上記のクック氏によると、彼のやり方を熱心に聞いてくる人も「チェックリスト」という言葉を聞いた途端に、「みんなどこかに行ってしまう」のだそう(なんじゃそれw)。


◆結局のところ、本書に登場するチェックリスト自体は、「画期的」だったり「今までにない」ものではありません。

本書を読み終えた後でも、何故にここまで効果があるのか、という点についてはマユツバ(特に投資のお話)だったりします。

とはいえ、そういう風に思っている時点で、手術で失敗したり、投資でコケてる人と変わりないワケで。

むしろ、「自分の仕事にチェックリストがどう活かせるか」を考える方が大事なのだと思われ。


チェックリストは、費用対効果はバツグンですから!

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】
アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】
序章 外科医の失敗談
第1章 複雑すぎる!
第2章 チェックリストと爆撃機
第3章 高層ビルの建て方
第4章 災害への対処法、美味しい料理の作り方、そして私の仮説
第5章 手術をもっと安全にする方法?
第6章 良いチェックリストの作り方
第7章 世界規模のテスト
第8章 投資で成功する方法と、今求められている人材
第9章 助かった!


【関連記事】

【ミス対策】『「事務ミス」をナメるな!』中田 亨(2011年01月19日)

【オススメ】マルコム・グラッドウェル『失敗の技術』に学ぶ2種類の失敗(2010年08月07日)

【スゴ本】『しまった! 「失敗の心理」を科学する 』ジョゼフ・T・ハリナン (著)(2010年01月27日)

【作業効率化】「ミスゼロ、ムダゼロ、残業ゼロ! 」オダギリ展子(2008年07月14日)

「行動経済学」友野典男(著)(2006年07月20日)


【編集後記】

◆たまたまネットで見つけた1冊。

失敗の教科書。
失敗の教科書。

ちょっと前の本ですが、今日の本に関連して。


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この記事へのコメント
               
お久しぶりの岩波貴士です。チェックリスト!やっぱり古典的ですがとても便利な方法だと思います。8月9日に新刊『思わず人に教えたくなる「問題解決」のネタ帳』のなかでもチェックリストの有効性について書かせていただきました。今編集者にネタをチョイスしてもらってるところなので、掲載されるかどうかは、まだ不明ですが、チェックリストは、発想の取りこぼしをなくすのに、とても有効なんです・・・(^o^)/゛
Posted by 岩波貴士 at 2011年06月25日 14:56
               
>岩波貴士さん

ご無沙汰しております。
コメントありがとうございます。
お!新刊出ますか!これは楽しみです!!
でも、まだ結構先ですね〜。

過去の2冊のクオリティから考えたら、当然新刊も素晴らしい出来だと思いますので、チェックリストの掲載いかんにかかわらず、発売され次第拝読させて頂くつもりです!

今後ともよろしくお願いします。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年06月26日 03:21