2011年06月08日
【18禁?】『セックスメディア30年史欲望の革命児たち』荻上チキ

セックスメディア30年史欲望の革命児たち (ちくま新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、当ブログではご紹介しにくいタイプの1冊。ただし、人間の「欲望」を満たす、という観点から見た場合、お金や健康と同じように「性」に対するビジネスも立派に存在するわけで、読みようによってはかなり濃い「ビジネス書」にもなりうります。
アマゾンの内容紹介から。
風俗、出会い系、大人のオモチャ。日本には多様なセックスが溢れている。80年代から10年代までの性産業の実態に迫り、現代日本の性と快楽の正体を解き明かす!特に挿入されている各業界のキーパーソンへのインタビューは必読です!
【ポイント】
■1.「出会い系サイト」と「出会えない系サイト」のビジネスモデルの違いまず「出会い系サイト」のピジネスモデルは、「本当に出会える」という環境をつくり出すことで、課金ユーザーを増やすというものだ。そのためには、優良なユーザーに長期滞在してもらい、他ユーザーに口コミで宣伝してもらわなくてはならない。もちろん「騙し」はご法度で、風俗店や裏デリなどの「業者」の書き込みを極力削除するための監視体制も必要となる。(中略)
一方の「出会えない系サイト」のビジネスモデルは、サクラを用意し、あるいは自動返信プログラムを用意し、男性ユーザーを釣って、ほいほいと課金させてからしらばっくれるというものだ。
■2.エロ雑誌は中高年向けメディア
――ビデオ情報誌の場合、サンプルが見られなかった時代に、購買者がカタログ代わりに雑誌を買うという、「情報の格差」があったことを前提にしたビジネスだったものが、ネットで簡単にサンプルを見比べられるようになると、その優位性が失われていったと。
まさに情報格差ですよね。それをビジネスに利用していたんだけれど、気づいてみると、デジタルデバイド、情報弱者と言われている人たちが、どんどん高齢化していく一方で、しかも減少していった。エロに限らず、コンビニ誌なんかの購読者年齢を訊くと、みんな平均40歳以上とかなんですよ。(中略)
今は基本的に、エロ雑誌は中高年向け、パソコンが使えなかったり、家族共有だったりする老人向けのメディアになりつつある。
(『オレンジ通信』元編集長・石井始氏)
■3.ビデオ情報誌衰退の理由
それからもうひとつ大きい理由があります。それは、ビデオメーカー自体が雑誌を始め知めちゃったことです。たとえば北都系(CS系)でいえば『DMM』という雑誌。(中略)
それからソフト・オン・デマンドのグループだって『月刊SOD』を、雑誌コードをとってカを入れてつくっている。(中略)
そしてなにより、ビデオメーカーグループ系の雑誌というのは、それ自体の売上で成り立たせようという発想がないのが強みですよね。『DMM』『DMMぺっぴん』は290円、『NAO』は350円。しかもDVD付きです。
(同上)
■4.ネットに力をいれていないエロ本業界
そももそも多くのエロ本は、ウェブ上でのアピールにそれほど関心がないようにも思え、公式サイトすらないものが多い。ウェプでチラ見せして購買させるというような、フリーミアムモデルを採用している出版社がほぼ皆無な状況である。
■5.出版社には工夫が足りない
小売店だって、ウェブに落ちていくお金が大きくなれぱ、売上は当然、落ちる。でもうちは、前年比マイナス20%が当たり前の業界で、前年比100%超を達成できているんです。お客様がより見やすいような棚をつくるといった、当たり前のことしかしていません。「棚ざら」という、見た目を3ヵ月に1回見直すというスキームをつくって、客を飽きさせない工夫をしている。でも雑誌の方は、何年間もスキームを変えてないところが多いですよね。
(芳賀書店社長・芳賀英紀氏)
■6.「動画ファイルナビゲーター」がコンテンツにこだわる理由
「広告を多く見せられますよ」というために、俺らはアクセス数を増やすことに対して、時間と労力とエネルギーを使うわけです。だから、ニュースブログみたいに、一見するとお金に直結しない部分も頑張るわけです。そういう一見無駄な努力でユーザーからの信頼度があがっていく。逆に、PVだけあげようとして、騙しリンクとか増やしたりすると、リピーターもこないし、広告主も離れていきます。そういう労力や関係性の大事さって、新しくアダルトサイトをやろうとする企業さんは、あんまり考えてないんじゃないかなあ。
(「動画ファイルナビゲーター」山田ともき氏)
■7.TENGA誕生の瞬間
自分ならバーコードを付ける。社名、問い合わせ先、HPアドレスも書く。品質も良く、いいデザインのものをつくる。パンフレットをつくって、お客さんとコミュニケーションをとる、と。その瞬間に、やることが山ほど思いついたんです。そして「自分がやればいいじゃん」とも。自分がつくれば、革新的なモノがつくれる、革命的なことが起こせると思った。「これだ!」と。
これがTENGAの始まりです。店に入って、ほんの15分くらいの出来事でした。アイデアがあっという間にめぐり、結論までいけたので、これは間違いないと。自分の感覚を信じようと。そこから会社を辞めるまで、そんなに時間はかかりませんでした。
(株式会社典雅・松本光一社長)
【感想】
◆本書では様々な「セックスメディア」を「オカズ系」「出会い系」「性サービス系」の3つに分類し、その歴史を踏まえて分析。ただ、今回はこの中の「オカズ系」、特にエロ本業界のお話が「メディア」というものを考える上で非常に興味深かったです。
ネットの普及により、「オカズ」の座を奪われてしまった、ということはもちろんあるのですが、その前から衰退は始まっていた、と。
例えば、よくエロ本がひっそりと置かれている(?)町の小さな本屋さんがどんどんなくなっている、という事実があります。
一方で、アマゾン等のネット書店が、思ったほどエロ本の売上の助けにはならなかったのだとか。
ひとつには、上記の2番目のポイントにもあるように、そもそも多くのエロ本ユーザーが「ネットについていけない世代」に支えられている、ということはあるかもしれません。
◆代わりに販売チャネルとしてコンビニが勢力を伸ばしてきたものの、今度は「慎太郎シール」と一部で呼ばれる立ち読み防止の青いシールが登場。
シール作成のみならず、貼るコストも作り手側が負担しなくてはなりません。
さらに、中がわからなくなってしまったため、週刊誌のつり広告さながらに、表紙に内容を記載する必要もでてきます。
例えばこれは、アダルト雑誌『URECCO』の画像検索ですが、タイトルだけの洗練された表紙は2005年11月以前のもので、やたらと文字が多いのがそれ以降のもの。
URECCO - Google 検索
…って、以降のものがあまりないんで、アマゾンから引っ張りますが、とても同じ雑誌とは思えない装丁ですね、これ…。
urecco (ウレッコ) 2007年 03月号 [雑誌] [アダルト] 「アダルト注意!」
◆こうした出版業界は別として、多くの「性メディア」にありがちなのが、「騙し系」。
そんな中、成功している会社は、ユーザーに対して「誠実な態度」で売上を伸ばしています。
ポイントの初っ端の「出会い系サイト」しかり、6番目の「動画系サイト」しかり…。
とはいえ、「騙し系」でも、騙される人がいる以上、そういった会社がなくならないのは、普通のビジネスでも同じこと。
ネットビジネスでも、悪質なアフィリエイトとかありますもんね。
まさに、セックスメディアにビジネス世界の縮図を見る思いです(←大げさw)。
◆冒頭でも申しあげたように、本書は「ビジネス書」として読むことが可能です。
特にマーケティングがお好きな方なら、読んで損はないかと。
「他の業界なら当たり前のように出来ている事が出来ていないなら、そこにビジネスチャンスがある」というのは、別にセックスメディアに限ったことではありません。
最後のTENGAの会社の社長さんのお話を読んで、強くそう思った次第。
タイトルからは分かりえなかったオススメ本です!

セックスメディア30年史欲望の革命児たち (ちくま新書)
第1章 いかにして出会い系は生まれたか?―電話風俗篇
第2章 変化するウェブ上の出会い―出会い系サイト篇
第3章 何がエロ本を「殺した」か?―エロ雑誌篇
第4章 「エロは無料」の衝撃―アダルト動画篇
第5章 性と快楽のイノベーション―大人のオモチャ篇
第6章 変わり続ける性サービス―性風俗篇
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【起業のヒント!?】『風俗的マーケティング』モリコウスケ(2011年01月08日)【起業のヒント】「耳かきエステはなぜ儲かるのか?」鬼頭宏昌(2010年07月19日)
【風俗的?】「デリヘルの経済学」モリコウスケ(2007年07月25日)
【編集後記】
◆今日の本に関連して(?)。
裸心 ─なぜ彼女たちはAV女優という生き方を選んだのか?─
コレ、かなり面白いですw
アマゾンの動画もご覧頂きたく。
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