2011年04月30日
【57のルール】『伝達力の基本』大石哲之
伝達力の基本
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「論理的思考法を、広く分かりやすく伝える」のがお得意の大石哲之さんの最新作。今までのご本もおしなべて「当たり」でしたが、本書もその例に漏れず、充実した内容となっています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書はプロのコンサルタントが実践する、正しく論理的にわかりやすく情報や意見を伝えるノウハウを解説しています。新人から管理職まで、広く使える1冊です!
日々の報告、会議、プレゼン、メール、企画書、面接、部下指導などでやってしまいがちな57の"残念な伝え方"を「before→after」で劇的に改善。
「感覚的な形容詞は使わない」「主張と理由はセットにする」「30秒版を用意する」など、あなたの仕事をやりやすくする、実践的な「伝える力」が身につきます。
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.主張と根拠をセットで述べる何かを主張するときには主張と根拠をセットで主張すると、聞き手にとって説得力が高まります。
・Before「シートベルトを着用しましょう。シートべルトなしでの運転は危険です」・After「シートベルトを着用しましょう。シート・べルトなしでの運転は危険です。運転手がシートべルトしていない場合の致死率は着用していたときの46倍という統計があります」
■2.「空・雨・傘」がわかるように表現する
「空・雨・傘」とは、「空を見て曇ってきた、雨がふりそうだなぁ、じゃあ傘を持っていこう」という文章を縮めたものですが、これには大切な意味があります。
実は空・雨・傘の文章は、「根拠となる事実の観察」「それに対する自分の解釈」「解釈を踏まえて取るべきアクション」の3つが完璧に含まれているよい文章なのです。(中略)
文章を書き終えたら、空・雨・傘のどれかが抜けていないか、自己チェックしてみましょう。3つを揃えることで、わかりやすい文章になります。
■3.事実と意見を区別する
事実と意見の違いを意識することは大事です。事実とは「実際に起ったことそのままのこと」「数字やデータとして表せるもの」です。(中略)
その事実を見た誰かが「こう思った」「こう感じた」「こう考えた」というものが「意見」です。意見はその人の考えや見識で、主観的なものです。
同じ事実を見た別々の人が、別々の考えをもつこともありえます。何が事実で何が意見なのかわからない曖昧な表現は、誤解を生む原因となります。
・Before・このパソコンは安いです。・After・このパソコンが安いと思います。
■4.感覚的な形容詞を具体的にする
感覚的な形容詞を不用意に使うと、かえってうまく伝わりにくいことがあります。感覚的な形容詞とは、たとえば「深刻な」とか「多大な」「甚大な」といった形容詞のことを指します。発言者はこれらの言葉を使って、事の重大性をアピールしたいのですが、上手く伝わらないことがよくあります。
・Before野菜通販事業をこのまま継続すれば深刻な損害が予想されるため、すぐにでも撤退の意思決定を望みます。・After野菜通販事業をこのまま継続すれば昨年の利益を超える損害が予想されるため、すぐにでも撤退の意思決定を望みます。
■5.たとえ話は、単独では使わない
「たとえ話」を使って説明することは、抽象的な話を漠然とするよりも、相手の理解が進みやすいためー般的には有効な策だと言われています。しかし、ビジネスの場面では相手のバックグラウンドや考え方によっては、たとえ話によって伝えたいことがうまく伝わらないことや、間違って理解されることもあるため注意が必要です。
・Before「経営大学院(MBA)を卒業しただけでは通用しない。経営者はアーティストなのだ」・After「経営大学院(MBA)を卒業しただけでは通用しない。大学で学ぷような成功事例を適用するのが経営ではなく、過去の事例の枠からはみ出る新しいコンセプトを打ち立てることが経営でいちばん大事なことだ。経営者はアーティストなのだ」このように、あらかじめ「アート」の意味を明確にしたうえで、たとえ話で同じことを繰り返すように使いましょう。
■6.エレべーター内の30秒でつかむ
ハーバード大学などのアメリカの超一流大学では、「エレベーターピッチ」という話法を学習しているといいます。伝えたいことを30秒から1分くらいの短いあいだに凝縮して伝える訓練です。(中略)
短く簡潔に述べるためのコツとしては、次のようなテクニックを結集させます。
・結論のみ述べる
・最も重要な数字を言う
・理由づけを3つ以内で
【感想】
◆個々の項目が長くなってしまいましたので、この辺で。上記引用では「Before/After」の事例がないものもありますが、本書ではすべての「ルール」において分かりやすい「Before/After」の事例が収録されています。
そして、それら事例についてもそれぞれ解説が付されており、理解しやすいと思われ。
また、内容的にも、基本的なところから、かなり高度なところまで、幅広くカバーしています。
◆具体的には、本書の第1,2,4章は、「わかりやすく伝える」「明確に伝える」「簡潔に伝える」と、新人さんレベルでも比較的分かりやすい内容。
それに対して、第3章の「論理的に伝える」は、いわゆる「ロジカルシンキング」の領域であり、それまでの部分より歯応えが結構ありました。
例えば、「逆・裏・対偶の言い換えを理解して述べる」というお話は、何となく知っている気でいましたが、今般、再確認して冷や汗(詳しくは本書にて)。
ただ、この章こそが「論理的思考法」が得意な大石さんの真骨頂であり、見逃せないところだと思います。
◆ちなみに、割愛した中で印象的だったのが、「聞かれた質問に答える」というお話。
「そんなの当たり前」と思いつつ、いざ面接等で「当社を志望する理由を教えてください」と問われた場合、端的に「私は、○○という理由で御社を志望します。」という形で答えられているのかどうか。
内容もさることながら、「聞かれた質問に答えることができるか否か」は、多くの面接官が採用の際にコミュニケーション能力を図る基準としてチェックしているそうなので、転職志望の方はご留意を。
私自身、最終的に質問に答えられればいいや、とばかりに周辺の事から話し始めてしまう傾向が若い頃からあるので、注意したいと思います。
◆なお、本書の「おわりに」で書かれているように、本書は「伝達力」というタイトルながら、情報発信者の「身振り手振り、発音、演出」といった内容については触れていません。
大石さん曰く、「うまく伝えるためには、そもそもの内容の構成や順番、対応、論理、理由づけといったコンテンツの構成そのものも大事だということ」とのこと。
確かに、しゃべりが上手くとも、文章で接する場合には関係ないですし、私のように一人で仕事をやっている人間にとっては、本書のような「コンテンツの構成」の方が価値は高そうです。
相変わらずこのブログが、「ダラダラ書き」なのはさておいて。←ダメじゃん
この1冊マスターできたら、「仕事ができる奴」と思われることウケアイ!
伝達力の基本
第1章「わかりやすく伝える」
01 「起承転結」は使わない
02 結論、理由の順番で述べる
03 「I think…,because〜.」で述べる ほか
第2章「明確に伝える」
16 事実と意見を区別する
17 客観的な事実を述べる
18 5W1Hを明確にする ほか
第3章「論理的に伝える」
32 話のつながりに注意する
33 「暗黙の法則」を疑う
34 「根拠の薄い因果関係」に気をつける ほか
第4章「簡潔に伝える」
46 箇条書きを活用する
47 グループ分けで表現する
48 聞かれた質問に答える ほか
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【編集後記】
◆転職の話題が出たところでこんな本を。「キャリアアップ」のバカヤロー 自己啓発と転職の“罠”にはまらないために (講談社+α新書 559-1B)
当ブログ的にもニーズがありそうな予感。
ご声援ありがとうございました!
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