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2011年04月29日

【夜の経済学】もしビジネス書好きの元クラバーが『東京ディスコ 80's&90's』を読んだら


東京ディスコ 80's&90's
東京ディスコ 80's&90's


【はじめに】

◆先日の編集後記でちょこっとご紹介した、『東京ディスコ 80's&90's』

かつての夜遊び人の皆さんへのインタビュー集であります。

この本、バブル時代を知るオサーン的には、当時を懐かしむ意味で楽しめるものの、この頃のクラブ(というかディスコ)シーンをご存じない方には、今ひとつピンとこない作品かもしれません。

ただ、ビジネス書好きとして、「ビジネス的な視点」から眺めると、なかなか面白い記述もちらほら。

あの頃、そんな視点を持ってなかった自分は、全く気がつくこともなかったのですが……。


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【ポイント】

■1.黒服にはチップを渡すと美味しい思いができる

◆私にはまったく縁のなかったVIPルームにも、こんなコツが。

元スコラの編集者だった、佐々木弘さんのお話から。
VIPルームで楽しく過ごすには最初に黒服へチップを渡すのがコツでした。彼らはそのチップで、オールパックでサービスしてくれます。例えばキープしてあるへネシーのボトル。中身がなくなると余っているほかのボトルから注ぎ足してくれますから、1本で何年も飲めるんです。ギャル付けもありがたかったですね。これは黒服がフロアにいる子に声をかけて連れてきて、隣につけてくれることです。あの時代の黒服は腕利きでしたから、お客の期待を裏切ることなく、確実にレべルの高い子たちを連れてきましたよ。
「ほかのボトルから酒を注ぎたす」というのは衛生上いかがなものかとは思いますが、キレイな女性を席に供給してくれる、というのはうらやましいな、と。

          ちょっくらVIPルーム行ってくる

                   ,'⌒,ー、           _ ,,..  X
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■2.ギャル付けには「キャッシュバック」という裏があった

◆しかしその「ギャル付け」には、実はこんな「裏」が。
 そういえば最近、ディスコ黄金期のVIPルームでギャル付けの女の子へのキャッシュバックシステムがあったことを知ってショックを受けました。黒服が連れてきてた子は実は店と繋がっていて、VIPルーム内で意図的に高級シャンパンなんかを次々とオーダーする。そして店は彼女が客に払わせた代金の何割かをキャッシュバックして渡していたんですね。キャバクラなんかのシステムと一緒だった(笑)。
口説くつもりで高いお酒をオーダーしてたのに、実は彼女らの懐を潤していたんですね。

これはもう、セミプロとしか言いようがないような。


■3.キャッシュバックせずに売上を上げる法

◆さて、キャッシュバックすると、店としては当然その分売上が減ってしまいます。

ところが、赤坂にあったロンドクラブというお店ではこんなことも行なわれていたのだそう。

当時の常連客だった佐藤あやさんのお話から。
 そのうちにVIP扱いの男性客が来ると、黒服に頼まれて彼らの席につきます。で、私たちはその連中を盛り上げて、ドリンクをどんどん注文させて黒服の売上を助けてあげるんです。(中略)
この店はカッコいい黒服が多く、常連の女の子は黒服の誰かしらのファンでした。それこそお気に入りの黒服は、身近な男性アイドルのような感覚です。だから役者へのおひねりじゃないけど、献身的にお気に入りの黒服の成績を良くするために、男性客を接待して店へお金を使わせる。マハラジャのVIPルームなんかでも同じようなことが行われていましたが、あそこは女の子に売上の一部がバックされるシステムです。逆にロンドの女の子は黒服のための純粋な無料奉仕でした。
マハラジャがキャバクラと同じなら、こちらはホストクラブと同じ仕組み。

と言うか、ホストクラブだと女性が身銭を切るところ、こちらは鼻の下を長くした男性に払わせていたところが、一枚上手かな、と。


■4.格安料金で女性を集めて、男性から金を集める

◆さらに、このロンドクラブでは、平日の集客にこんな工夫をしていました。
 まず火曜が「Tバックナイト」で水曜が「水着ナイト」、そして木曜が「ボディコンナイト」でした。
どの曜日もまっとうな服装ではありませぬー。
女の子はそれぞれのイべントに合わせた服装で行けば、入場料金が格安でした。男は女の子さえたくさんいれば有料で集まってきますから、女の子がタダ同然でも十分ぺイできたと思いますよ。女の子の料金は各イべントでまちままちだったからほぼ忘れちゃいましたけど、ボディコンナイトが30円だったのはしっかり覚えています。ほかのイベントも何百円のレベルだったんじゃないでしょうか。
そんな過激な服装の女性に釣られて、平日からしっかりお金を払っていた男性がいたわけですね。

……って、ここだけの話、私も何度か行ったことあるんですがw


■5.客数ではなく、客単価で売上を伸ばす法

◆マハラジャグループに、かつて「名古屋キング&クイーン」というお店がありました。

私は知らなかったのですが、開店後4年目ほどで客が入らなくなり、末期状態だったのだそう。

当時他店からテコ入れに参加した、小林英雄氏のお話から。
 名古屋って繁華街が意外と小さいんです。だからたくさんの人を集めるのは簡単にできません。そこで新田さんたちは名古屋の街の特色をリサーチすると、その小さい繁華街の中に異常なくらいたくさんのキャバクラや性風俗店、ホストクラブがあって賑わっていることが分かりました。だったらそこで働く女の子たちを店に呼び込もうと。つまりは店を彼女たちが行くようなホストクラブのノリにして、客数でなく客単価を上げようという考えです。
まさにマーケティング的発想です。
 僕らはまず、VIPルームだけでなくフロアにも座れるコーナー席を増やすことから始めました。そして従業員はホストのごとく女性客をもてなしました。するとこっちの思惑以上に客層のお水率と単価が上がったんです。ホストクラブから鞍替えした女の子たちだけでなく、彼女たちのパトロンも一緒について来たんです。VIPルームにもへネシーやドンぺリといった高級酒のボトルもどんどん入るようになりました。
当初は、このような方針で集客を無視してでも客単価を上げようとしたのですが、思わぬ副効果が。
 お水の子が店に集まるようになると、さらに一般の男性客も「キャバクラ行くより安いぞ」って客で来ているキャバ嬢目当てに集まるようになりました。
結果的に「量」と「質」の両面で成功したようです。


■6.名古屋キング&クイーンがジュリアナより過激だったワケ

◆さらにその「客層」ゆえ、名古屋キング&クイーンは「ジュリアナをも上回る」ことになります。
 このタイミングで東京で起きていたジュリアナブームの流れが名古屋にも入ってきたんです。ジュリアナといえばお立ち台、肌密着型のボディコン、Tバックの印象でしたが、もともとお水や風俗の子が集まっていた名古屋はそのはるか上をいきました。それこそ上は水着どころか胸の一部を隠しただけの半分ハダカ、下はTフロントやOバック姿でお立ち台で踊っている子がたくさん出現して。それがテレビの「トゥナイト」で取り上げられたりして、お客さんが店に殺到するぐらい集まるようになりました。
確かにテレビや雑誌等でも、名古屋の過激さは広く知れ渡っていた記憶があったのですが、その裏にはこんな理由があったのですね。


■7.人気店でも3年で閉めてしまうワケ

◆一方、人気店であっても、短期間でクローズしてしまうのには、こんな理由が。

メディアプロデューサーの稲田成吾氏のお話から。
 またトゥーリアの場合、「営業期間を3年で終えるというリミット付きの店でした。その理由はバブル期における不動産事情と関係しています。この時代、都心のビルは転売目的のために購入されるケースがたくさんありました。でも、買って3年未満で売ると売却額の半分を超える税金が生じます。だからビル購入後の3年間を利益率の高いと思われているディスコなどの営業をさせて、その後に売りさばこうと考えるオーナーが多かったのです。トゥーリアの物件もそのひとつでした。
「売却額の半分を超える税金」という表現は微妙ですが、いずれにせよ、そもそも「転売で利益を出す」のが目的の場合、お店が流行ってようがいまいがあまり関係なかったんですね。

「あんなに流行っているのに勿体ないな」、と思うことが何度もあったのですが、今さらながら納得。

ちなみに、上記のトゥーリアが閉店したのは、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、不幸な事故が原因です。


【感想】

◆上記では「ビジネス的な視点」に関するもののみ挙げましたが、本書のメインコンテンツは、「当時のディスコ文化の描写」です。

登場する方々の年齢層もほぼ私と同じ(経営層の方は若干上ですが)。

そして私も、本書に登場するディスコのほとんどに、1回は顔を出していました(ミーハーなんで)。

もっとも私の場合、大学時代は数えるほどしか行っておらず、最盛期は社会人になってから。

会社が田町にあったため、六本木や銀座に近い上、芝浦界隈に有名店がいくつかオープンしたのが大きかったです。

何といっても、行きつけだったボウリング場のビルの下にジュリアナができてしまったという。


◆なお、興味深かったのが、登場されるほとんどの皆さんが現役を引退されているにも関わらず、最近のお店もチェックされていたこと。

そして、ほぼ一様に違和感のようなものを感じられていたこと。

それは皆さん年をとった、ということかもしれませんし、かつてのような高級感をウリにする店が少なくなったこともあるのかもしれません。

とは言え、バブル時代と今とで、こういう業界を比較するのもどうかとは思いますが。


古き良き時代の華やかさを垣間見れる1冊!

東京ディスコ 80's&90's
東京ディスコ 80's&90's
伊藤隆由希(「トゥナイト2」で合コンの帝王として紹介された90年代の有名遊び人)
佐々木弘(雑誌「スコラ」のディスコ担当者)
YUMI(80年代六本木のディスコクイーン)
岡本香了(旧芸名・岡本かおり。80年代に若者情報番組のMCを務めたタレント)
佐藤あや
里見愛子
呉京律(東京マハラジャの元常務)
小林英雄(青山キング&クイーン、麻布十番マハラジャ、ヴェルファーレなどに勤務)
ジョーンズ栄理子(コンパニオン派遣の(株)Jトリップの元社長。ジュリアナのジュリ扇現象を生み出した人。
稲田成吾(貴彦)(東京ベイサイドクラブやMZA有明をプロデュース)
Dr.Koyama(70年前半から六本木のディスコなどでDJを始め、Jトリップバーをプロデュース。)


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【編集後記】

◆音楽つながりで、DJでもある沖野修也さんの初のビジネス書を。

フィルター思考で解を導く~ビジネスで勝つための情報戦略~
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DJの書いたビジネス書って、どんななんでしょね?


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