2011年04月19日
【説明スキル】『学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール』木暮太一
学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール (光文社新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、私自身課題としている「他人に分かりやすく説明する技術」を追求したご本。文章を書くにせよ、話すにせよ、「分かりやすいか否か」というのは、非常に重要なポイントだと思います。
アマゾンの内容紹介から。
「分かりやすい説明」に必要なものは、話術でも文章力でもプレゼンスキルでもない! 20万部突破『落ちこぼれでもわかる経済学』シリーズで人気の著者が20年間考えてきた「分かりやすさ」の本質とは?もちろん、本書自体も「分かりやすい」のは当然でございます。
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.テーマが分からなければ、説明も分からない要するに、私たちは、「目下の話題が何についてのことなのか」というテーマが見えていないと、理解が進まないのです。たとえば友人たちの会話に途中から加わった時、しばらくの間は、「え? 今何の話をしてるんだっけ?」となるでしょう。「今の話題は〇〇について」と明確に認識してからでないと、相手の言っていることが分からなくなるのです。
■2.比喩を使うと、かえって分かりづらくなることがある
具体例は、話の内容を理解する上で非常に役に立ちます。でも比喩表現は、「そのたとえ、うまい!」と言われることはあっても、それで「説明が分かりやすくなった」ということはほとんどありません。
全面否定はしませんが、あくまでも「分かりやすくなった気がするだけ」ということを意識した上で比喩は使うべきです。
■3.必ずしも厳密さ・正確さにはこだわらない
正確さと分かりやすさは、多くの場合、相反します。正確に伝えようとすると、どんどん複雑になり、分かりづらくなるんです。そのため、「分かりやすく説明すること」が第一の目的の時は、多少大ざっぱでも、相手が理解しやすい言葉で表現することが大事です。
■4.説明の文章は、知的に見せる必要はない
(改善前)
A.日本社会は、利益至上主義という、とてつもなくもろい経済基盤の上で、その性格がまさに元凶となった世界不況の影響をまともにくらい、未曽有の不況に苦しんでいる。
(改善案)
A.日本社会は、未曽有の不況に苦しんでいる。
いかがでしょうか? 短すぎて拍子抜けする人がいるかもしれません。また、改善前のものより知的に見えないかもしれませんが、少なくとも言いたいことはすっきり伝わるはずです。
そもそも、知的に見える文章は、学術論文には必要かもしれませんが、説明の文章には必要ありません。美しい文章も同じです。小説や随筆などの文学作品に限られます。
■5.「抽象的なテーマ」と「具体的な内容」を交互に説明する
その方法とは、
抽象的なテーマの説明をした後は、必ず具体的な例を出し、具体的な事例を説明した後は、必ず「それが全体の中でどういう位置づけなのか」、抽象的なテーマの話をする
というものです。
そうすることで、聞き手は話の方向性をつかみながら、具体的なイメージも持つことができます。
(詳細は本書を)
■6.長い説明の時は、ところどころに「ランドマーク」を作っておく
具体的はこういうことです。
1から10までの内容を説明する際、すべてを「単調」に伝えるのではなく、たとえば「3」と「6」を特にくわしく、聞き手がほば完璧に理解するまで説明します。これが「ランドマーク」になります。このランドマークがあれば、聞き手が「5」で混乱しても、最初に戻る必要はなく「3」から再スタートが切れるのです。
これは長い説明をする際に、とても有効なテクニックです。
■7.「相手の前提知識」だけではなく、「相手が理解できる言葉」を知る
たとえば、経済のことについて説明をする時、テーマは「経済」ですが、説明に使う単語やたとえは、「日常用語」です。つまり、「どんな日常用語で話したら、相手が経済の話題を理解できるか」を考えなければいけないわけです。その分野の前提知識を知っただけでは、それは分かりません。
【感想】
◆目次や小見出しにはないものの、本書では「分かりやすく説明する」ためのポイントが19個、さらに「分かりやすい説明」のルールが44個も挙がっています。そのいくつかは上記の通りで、それ以外にも「一文を短く」「主語と述語を近くに置く」といった、広く知られているものもちらほら。
また逆に、「具体的な動作を表さない動詞は使わない」「無生物主語はできるだけ使わない」というのは、私は本書で初めて目にしました。
前者は例えば、親が子どもに対して言う「ちゃんとする」(=「静かにする」「まっすぐ座る」)。
後者の「無生物主語」とは、例えば「不確実性がビジネスチャンスを生む」というフレーズにおける「不確実性」のようなものを言うのだそう。
この「無生物主語」をどう避けるかについては本書をご覧頂くとして、使うと何となく知的には見えるものの、実際には漠然としてしまっているのは確かです。
ただ、本書で指摘されるまで、私自身違和感がなかったわけで、なるほど、こういう点を意識するところから「分かりやすさ」が身に付くのだな、と思った次第。
◆そう言えば、つい先日、私はイベントで税金の話をしてきたのでした。
参考記事:【ご報告】『魅力的な八戸の港湾夜景をまた撮影に行きたい!』で税金のお話をしてきました(2011年04月11日)
そもそも日頃クライアントさんと話をする時には、相手もある程度の経理や税金の知識を持っている場合がほとんどです。
しかし、こういったオープンな場だと、どこまで掘り下げて話をしたらいいのか良く分からないため、観客の構成等を事前に聖幸さんにお伺いして、原稿の内容を決定しました。
ただし、内容は間違ってなかったとしても、表現の問題はあったわけで、イベントの前に本書を読むことができれば、と今さらのように後悔しきり(遅すぎ)。
◆なお本書では、「伝える対象」の属性の違いによって、ここまで中身が変わってくる、という具体例を設問形式で解説しています。
説明すべきテーマは「日銀」「為替」「株とはなんでしょう?」の3つ。
一方、「伝える対象」は「一般企業で働いている社会人」「高校生」「小学生」の3つの層。
「それぞれのテーマを各対象に説明」することによる、計9個の説明例は、本書の第9章にてご確認を。
おそらく私たちの頭は、「一般企業で働いている社会人」向けに固まっており、トレーニングなしでは「高校生」「小学生」向けには、満足な解答ができないと思います。
逆に、「高校生」「小学生」向けにも伝えられるようになれれば、誰に対しても「分かりやすく説明する」ことが、きっと可能になるハズ。
◆何でも、著者の木暮さんは、この「分かりやすい説明」について、中学2年生の時から考えてきたのだそう。
一連の著作にも「気軽にはじめる」「落ちこぼれでもわかる」「今までで一番やさしい」「世界一簡単な」等のフレーズがついており、これはもう、木暮さんの「コア・コンピタンス」なんですね。
…とカタカナ言葉を使ってしまいましたが、これもさっそく「他が真似できない核となる能力」等と言い換えねば。
こうした常日頃の意識が大事だと、本書の「おわりに」もありましたよ!
「説明上手」になるために読んでおきたい1冊!
学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール (光文社新書)
第1章 あなたの説明を分かりづらくする3つの原因
第2章 こんなアドバイスはいらない!
第3章 勘違いをなくそう!
第4章 意識と表現はこう変えよう!
第5章 表現の練習をしよう!
第6章 説明力をさらにアップさせよう!
第7章 聞き手の世界観を体感しよう!
第8章 「頭の柔軟体操」をしよう!
第9章 最終試験
【関連記事】
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【編集後記】
ちょっと気になる本。カジュアル起業 ~"好き"を究めて自分らしく稼ぐ~ (マイコミ新書)
アマゾンでは4月26日発売とのことです。
ご声援ありがとうございました!
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この記事へのコメント
4番目の内容について。
前提条件や話している内容の範囲を省く事は、説明上手とは言えないのでは?
ミスリードを招いたり、正確に伝わらなかったりとデメリットが多いように思えてならない。
まぁ、あんたが書いた内容じゃないんだけどね。
前提条件や話している内容の範囲を省く事は、説明上手とは言えないのでは?
ミスリードを招いたり、正確に伝わらなかったりとデメリットが多いように思えてならない。
まぁ、あんたが書いた内容じゃないんだけどね。
Posted by abc at 2011年04月19日 20:01
>abcさん
コメントありがとうございます。
>ミスリードを招いたり、正確に伝わらなかったりとデメリットが多いように思えてならない。
おっしゃることは分かります。
例もちょっと極端な気もしますし(笑)。
ただ、正確かどうか、という点については、その上の3番目で触れているように、分かりやすさとはトレードオフになることもままある、というスタンスを本書はとっています。
実際、記事に書きましたが、第9章の事例のように小学生に説明するのであれば、4番目の事例も改善案の方が伝わりやすいと思います。
この辺はバランスの問題でもあるんでしょうが。
コメントありがとうございます。
>ミスリードを招いたり、正確に伝わらなかったりとデメリットが多いように思えてならない。
おっしゃることは分かります。
例もちょっと極端な気もしますし(笑)。
ただ、正確かどうか、という点については、その上の3番目で触れているように、分かりやすさとはトレードオフになることもままある、というスタンスを本書はとっています。
実際、記事に書きましたが、第9章の事例のように小学生に説明するのであれば、4番目の事例も改善案の方が伝わりやすいと思います。
この辺はバランスの問題でもあるんでしょうが。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年04月20日 04:30
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