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2011年03月31日

【オーラル・ヒストリー】『「質問力」の教科書』御厨 貴


「質問力」の教科書
「質問力」の教科書


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、政治家や官僚を中心としたオーラル・ヒストリー(聞き取り調査)や、テレビ番組「時事放談」の司会で知られる、御厨 貴さんの最新刊。

「御厨流」の質問作法について、分かりやすくまとめられています。

アマゾンの内容紹介から。
いい質問は人生を変える! 質問力を鍛えよ当事者にインタビューを重ねて真実をあぶりだすオーラル・ヒストリー。その第一人者が体験をもとに「質問力」を磨く方法を教示。面白く、実務にも役立つ一冊。
御厨さんのTIPSもさることながら、登場する政治家たちの素顔が垣間見れるのも本書の魅力だったり。


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【ポイント】

■1.相手の打ちやすいボールをなげる
 野球にたとえるとさしずめ質問者はピッチャーであり、答える側はバッターである。本来、バッターに打たせないようにするのが野球だが、「質問と回答」という観点から見ると「相手にいかに打たせるか」ということが重要になってくる。
 質問者というピッチャーは、バッターが気持ちよく打ちやすいボールを投げる必要がある。つまり、「いい質問者」とはいかに「バッターに打ちやすい」ボールを投げられるか、ということなのだ。


■2.幼少期の話を会話の糸口にする
 私の場合、会話の糸口としてよく利用するのは、相手の幼少期の頃の話題である。なかには幼少期に辛い体験があり、それがトラウマとなっていてあまりしゃべりたがらない人もいたりするが、ほとんどの人は自分の幼少期を進んで話してくれる。
 相手は質問される前に幼少期の自分のことを話すことで、インタビューに対する警戒心や抵抗感といったものがどんどんと薄れていく。


■3.片づけ始めてからの本音に留意する
 取材中、肝心なことがなかなか聞けず、諦めて片づけを始めた時に相手が事の真相を語りだすという経験を幾度となくしている。(中略)

 なぜ、片づけを始めると相手が核心を話してくれるのか。これには人間の心理が大きく作用している。
 片づけが始まったことで、相手は現場の緊張感から解放される。安心し、張りつめていたものが弛緩することで、心の奥にあった本音がポロッと出たりするのだ。


■4.嘘はいったん聞き流す
 私は相手の嘘を感じたとしても、その場ですぐにそれを指摘したりはしない。嘘を指摘された相手は自分の殻に閉じこもってしまうか、激高するだけだからだ。
 相手の嘘を感じても、とりあえずその時は聞き流す。そしてしばらく経ってから、「先ほどのあの話、もうちょっと詳しくお聞かせ願えますか」と軽く振り返る。
 その時、前とは内容的に微妙なズレがあったりする。嘘は本質的にブレるものだからだ。そのズレに相手が気がつかないよう指を入れ、ちょっと広げてみると、そこから真実がひょこっと顔を覗かせたりするのである。


■5.大事なことほどさりげなく聞く
 重要なこと、大切なことを聞き出す場合は、質問の焦点を重要なことに当てるのではなく、他の質問に並行し付け加えていくような形で、さりげなく質問するのが一番望ましいやり方である。
 相手が他の質問に答えている最中に、「〇〇のようなこともありまししたよね」とか「〇〇に関してはどう思われます?」といった感じでさりげなく質問をを挟み、徐々に核心に近づいていく。


■6.「無言」という質問を暗にする
私は相手が「うーん」と押し黙ってしまった時は無闇に言葉を挟まないようにしている。その沈黙が合いの手を求めているものなのか、それとも思案に暮れているものなのかをしっかりと見極めたうえで対応するようにしているのだ。
 相手にとってこちらの無言はひとつのメッセージである。つまり無言という形態を借りて、「もっと考えると、そこのところはどうなんでしょう?」という質問を暗にしているのだ。
 そうすることで、ロに出して突っ込むよりも数段も深くて真実に富んだ言葉が相手から返ってくる可能性がある。


■7.具体的なシーンを設定して聞く
「シーンを設定する」とはつまり、相手の前に"イメージ"を提示してあげるということでもある。たとえば会社の社長にインタビューをするとしよう。社長がまだ部長だった頃の話を聞きたい場合「部長だった頃の部屋はどんな感じでした?」とまずは相手の置かれていた環境を思い出させる。環境を思い出したら次に「1日のスケジュールはどんな感じでした?」と出社してから帰宅するまでを思い出してもらう。そうすることで相手の中に当時の自分の姿が具体的に思い描かれ、それを手がかりに忘れていたことを思い出し、徐々にではあるがこちらの聞きたい話もしゃべってくれるようになるのである。


【感想】

◆私は今まで言葉すら知らなかったのですが、本書の著者である御厨さんは、日本の「オーラル・ヒストリー」の第一人者です。

それゆえ「質問」する相手も、政治家や官僚といった公的立場の人がほとんど。

結果的に本書も、よくある「質問」をテーマにした書籍とはちょっと違うテイストになっています。

ちなみに御厨さんの場合、ひとりにつき2時間程度のインタビューを、約10回ほど行なうのだそう。

当然、わざと相手を怒らせる手法や、一発勝負のやり方を用いるわけにはいきません。

上記で挙げたTIPSも、少なくとも奇をてらったものではないことは確かです。


◆それに対して本書で面白かったのが、冒頭で触れたように、事例で登場する政治家の方々の素顔。

宮沢喜一氏、竹下 登氏、後藤田正晴氏、野中広務氏等々のツワモノが、御厨さんにどう応戦(?)したか、というのは、本書の読みどころの1つです。

特に後藤田正晴氏とは全27回、60時間をかけたインタビューをまとめた上下巻本が、政治家の回顧録としては異例の20万部を売り上げたのだとか。

情と理 -カミソリ参謀回顧録- 上 (講談社+α文庫)
情と理 -カミソリ参謀回顧録- 上 (講談社+α文庫)

情と理 -カミソリ参謀回顧録- 下 (講談社+α文庫)
情と理 -カミソリ参謀回顧録- 下 (講談社+α文庫)

意外だったのが、御厨さんが小泉純一郎氏を評価していないことで、「オーラル・ヒストリーで取り上げようとも思わない」とまで言い切ってます。

逆に、あのデヴィ夫人に対しては「そんじょそこらの政治家よりもよほど芯があり、頭の回転も速い」と絶賛されていたのが興味深いところ(詳しくは本書を)。


◆なお、今回上記ポイントで取り上げたTIPSの中では、7番目の「具体的なシーンを設定して聞く」というものが、個人的にはツボでした。

確かに過去のことを漠然と聞かれると、何を話したらいいのかピンときませんが、「当時の部屋」のように具体的な部分だと、答えやすそうな。

また、「幼少期の頃の話」というのは、モテネタでもありますので、皆さまにおかれましては、幅広くご活用のほどを。

私自身は、セミナーでもほとんど質問をしない「地蔵」なのですけど、自分がメンターのような人を見つけて、話す機会があれば、本書の教えを実行してみたいと思います。


「聞きだす力」は人生をも変える!

「質問力」の教科書
「質問力」の教科書
第1章 相手を透明にする「質問力」

第2章 仕事の生産力を上げる「質問力」

第3章 壁を超える「質問力」

第4章 状況を変化させる「質問力」

第5章 自分を発見する「質問力」


【関連記事】

【質問力】「脳を丸裸にする質問力」増田剛己(2010年05月12日)

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【これは使える!】「“聞き上手”の法則―人間関係を良くする15のコツ」澤村直樹(2010年01月23日)

【会話】「初対面でも会話術で好感」@日経産業新聞から学んだ6つのコツ(2010年01月21日)

【これは使える!】「キラークエスチョン」山田玲司(2009年08月19日)


【編集後記】

「術」と付くとチェックしたくなる私が来ましたよ、と。

パワー・オブ・レスト 究極の休息術
パワー・オブ・レスト 究極の休息術

私の場合は、休息と言うより、単に睡眠不足なだけですが。


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この記事へのコメント
               
相手に徹底的に興味持つと幼少期の話自然にでますよね笑

ランキング応援ぽちっ(*・ω・)つ凸
Posted by 浅井文博 at 2011年03月31日 20:50
               
>浅井文博さん

はじめまして、コメントありがとうございます。
子供のころの話というのは、ある意味キラーコンテンツのようですね。
私も取り入れたいと思います。
今後ともよろしくお願いします。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年04月04日 00:29