2011年03月10日
【コンサル視点】『仕事オンチな働き者』山崎将志

仕事オンチな働き者(日経プレミアシリーズ) (日経プレミアシリーズ 116)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「残念な人」シリーズでお馴染みの山崎将志さんの最新作。ご本人曰く、『残念な人の思考法』や『残念な人の仕事の習慣』同様に、本書も読み物を目指しているのだそう。
アマゾンの内容紹介が簡単すぎるので、本の裏表紙から紹介文を。
なぜピントのズレた努力を重ねてしまうのか。仕事オンチを脱却するためには、定数aの正しい理解が必要である――洗濯機のガタガタから学ぶヒットの法則、"人気女優似"に知るブランド力、話がつまらない人の残念な特徴など、ビジネスシーンその他で使える身近なヒントを紹介する。確かに、気軽に読める中にも「ムムム」となるような視点が含まれているのは、今まで通りでした!

【目次】
プロローグ 仕事オンチはaを知らない
1章 私たちには時間が余っている
2章 成果の出し方は洗濯機が教えてくれる
3章 「やるべきこと」は結局やらない
4章 大事なことはすべて教科書が教えてくれる
5章 あの人の話はなぜ面白くないのか
おわりに
【ポイント】
■1.売り手のことを考えた商品を作る書店は売上を上げたい。店長は前年同月比〇パーセント増、などの目標を持って、毎日店作りを考えている。書店員も自分の担当エリアがある。売上が上がるような商品を探しているのと同時に、自分なりの仮説検証を楽しんでいる。
これ売れるかな、売れた。もっと売れるかな、もっと売れた。この本はあまり注目されていないけれど、自分は売れると思う。どうだろう――。
書店員は、このような思考サイクルを回しているのではないか。だから、商材開発者(著者、出版社)としては、売り手が売りたくなるような、売りやすいような商品を考えないといけない、ということである。
■2.「箱」に入れたから売れた
あらゆるソフトウェアが成功したのは箱に入れたからだと思う。ダウンロードさせたらあれほど売れないのではないかと。
ただし、既存ゲーム業界もオンラインゲーム事業者に押されつつあり、今後この流れは変わる可能性が高い。これはネットによって人々の考え方や習慣が変わってきたからだと思う。しかし、少なくとも過去は「箱」だった。
■3.売り手がいないビジネスは成功しない
電子書籍が注目されているが、これも現在想定されているような構図では、それほど大きなビジネスにならないのではないかと私は思っている。最大の理由は、電子書籍ビジネスには、売り手がいないことである。
売り手がいたとしても、個別の商品を本気で売っていないように見える。たとえ本気で売っていたとしても、一個あたりの利幅が低いため、広く手がけざるをえないから薄まってしまう。
■4.おカネになる時間を見極めないと、何が無駄な時間かも定義できない
付加価値を生む時間、おカネになる時間というのが何なのかということを見極めない限りは、何が重要で何が無駄な時間かを定義することはできない。
それがわからない限りは、隙間時間の活用で効率化してもしょうがないし、エレべーターに駆け込んでもしょうがない。逆にそれが明確で成果が出せるのであれば、家でテレビを見ながらポテトチップスを食べていてもよい、ということにはならないだろうか。
この観点では、早起きがいいとは必ずしも言えない。成果を出すべき昼に眠かったら無意味である。また、最新の電子機器で便利になるというが、そのおかげで空いた時間に、一体何をするのか?
■5.「生き残り」を目標とした時点で生き残れない
業績を上げている会社の社長は、規模の大小にかかわらず、自分が「やりたいこと」をやっている。つまり、事業家である。
一方、管理者視点(should)、あるいはオペレーター視点(must)で社長が働いている会社は、業績がよくない。オーナー社長であっても、サラリーマン社長であっても、同じである。もちろん、社長にwantがあっても、筋が悪ければダメなのは言うまでもない。
特に、社長が、「生き残り」と言って運営している会社は本当にうまくいかない。(中略)
「生き残りをかけて」と言ったその瞬間に、完全にその会社の中の人だけにしか関係のないビジネスになってしまう。誰の共感も得られない。
■6.「おにぎり市場」は非論理的に作られた
たとえば、コンビ二におにぎりが売られている。今となっては、コンビニ各社の収益の柱のひとつであると思うが、もしかすると最初は適当に決まったのではないか、と思う。
ぺットボトルの水と同じで、おにぎりは家で作って適当に食べるものだから外でおカネを払って買う人がそんなにいるはずがない、と考えている人が当時はほとんどだったと思う。頭のいい人が普通に分析したら、「できません」という結論しか出なかったはずだ。なにしろ、前例がない。
おにぎり市場は、顧客ニーズによって生まれたわけではない。「おにぎり市場を作りたい」という人によって創られたのである。
■7.「優れた体験談」を語ることができるか?
会社で人が育たないとか、なかなか自分の方針を理解してもらえないなどという声を、部下のいる立場の方から耳にすることも多い。メールでのコミュニケーションが増えた、経済が停滞している、仕事が増えて時間がないなどの時代背景の影響もあるかもしれないが、「原因自分論」で考えてみるとどうだろうか。
部下のいるあなたは、優れた体験談を持っているか。持っているとして、それを他人が興味を持つように語ることができるか。そして、そこから得られた教訓を語ることができるか。
【感想】
◆本書は目次にもあるように、5つの章から構成されているのですが、上記ポイントや付箋の多くが、2章と3章に集中していました。まず、1番目と3番目に出てくる「売り手」のお話、特に電子書籍絡みの例は、指摘されて「確かにそうかも」と深く納得。
今までの「本」は、著者から読者まで届く間に、多くの人が関わってきましたが、電子書籍になると、両端(著者&読者)以外は基本的にすべて「部外者」になってしまいます。
コストの面では、それがメリットなのでしょうけど、その分多くの人の「想い」も乗せることができません。
◆私自身は、本の「読者」であると同時に、アマゾンのアフィリエイトを通じて、本をお買い上げ頂いております。
そういう立場からすると、アフィリエイトシステムが整備されていない現在の電子書籍市場は、まだまだ様子見するしかない状態。
ただ、紙の本自体にコレクション的な意味合いもある文芸等に比べると、情報収集をメインとする読者が多いビジネス書は、電子書籍に馴染みやすい気はします。
それに、音楽配信がCDからの移行が成功したと思われるので、やはりいずれは、電子書籍が主流となるのかもしれませんが。
◆なお、4番目の「無駄な時間」のお話の背景には、山崎さんが「年収1500万円の人と、年収400万円の人との時間の使い方の比較をした」雑誌『プレジデント』の特集があります。
![PRESIDENT (プレジデント) 2011年 2/14号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/61PuCj6qAnL._SL75_.jpg)
PRESIDENT (プレジデント) 2011年 2/14号 [雑誌]
この特集は、当ブログでもお馴染みなんですが、かつては小宮一慶さんが同じように監修されたことがありました。
そう言えば、小宮さんも同じくコンサルタントですし、小宮さんのこの最初のヒット作と、山崎さんの30万部突破の『残念な人の思考法』とは何となく似ているような。

ビジネスマンのための「発見力」養成講座 (ディスカヴァー携書)
参考記事:【コンサルタントの視点】『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』小宮一慶(2007年10月24日)
◆その小宮さんの本もそうでしたが、今回の山崎さんのこの本も、具体的なノウハウや、テクニックを身に付けるものではありません。
代わりに得られるのは、物事の「見方」や「考え方」といったものであり、目先のメリットとは異なるものです。
当ブログの傾向としては、どちらと言うとスキルアップ系の本が人気なので、本書はちょっと微妙なのですが、ハマる人にはハマるであろうネタが多々。
いずれにせよ、山崎さんの過去の著作がお好きな方にはオススメできる1冊です。
気軽に読めて得る物アリ!

仕事オンチな働き者(日経プレミアシリーズ) (日経プレミアシリーズ 116)
【関連記事】
【仕事術】『残念な人の仕事の習慣』山崎将志(2010年09月21日)【働き方】「残念な人の思考法」山崎将志(2010年04月28日)
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【コンサルタントの視点】『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』小宮一慶(2007年10月24日)
【編集後記】
◆「堀江貴文×成毛 眞」という夢の組み合わせが!
儲けたいなら科学なんじゃないの?
これはハゲシク気になりますね!

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