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2011年03月05日

すぐに使える『ヤバい統計学』テクニック7選


ヤバい統計学
ヤバい統計学


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、結構前の未読本の記事で取り上げておきながら、そのまま放置していた1冊。

タイトルに難しそうな「統計学」の文字が含まれてますが、原題が『Numbers Rule Your World』ということで、幅広く「数字」を扱っています。

アマゾンの内容紹介から。
ディズニーランド、交通渋滞、クレジットカード、感染症、大学入試、災害保険、ドーピング検査、テロ対策、飛行機事故、宝くじ―10のエピソードで探求する「統計的思考」の世界。そのウラ側にある数字を知れば、統計学者のように思考し、自分の世界を自分で支配できるようになる。
身の回りの出来事も、本書で展開されているような視点で眺めてみると、なるほど納得できるもの。

なお、書名があっさりしているので、今回の記事タイトルもホッテントリメーカーにお世話になっておりまする。


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【目次】

はじめに

第1章 ファストパスと交通渋滞 ――平均化を嫌う不満分子

第2章 ホウレン草とクレジットカード ――間違っているからこそわかること

第3章 大学入試とハリケーン保険 ――グループ分けのジレンマ

第4章 ドーピング検査とテロ対策 ――非対称がもたらす動揺

第5章 飛行機事故と宝くじ ――「不可能」が起きるとき

おわりに


【ポイント】

■1.待ち時間の意味を変えて来園者を満足させたディズニーランドのファストパス
もちろん、ファストパスの利用者はこのシステムをとても喜んでいる。では、待ち時間は実際にどのくらい短くなるのだろうか。驚くことに答えは――「まったく短くならない」。ファストパスがあってもなくても、人気アトラクションの待ち時間は同じなのだ。先に紹介したディズニーファンの分析のように、ファストパスが待ち時間を「なくす」と誤解されている。しかし実際は、列に並んで待つ代わりに、その場所からは解放されるというだけで、それほど混んでいないアトラクションに乗ったり、食事をしたり、トイレに行ったり、ホテルの部屋やスパで休憩したり、買い物したりしながら「待っている」のだ。


■2.「O157の感染源」をどうやって見つけたか
 興味深いことに、ホウレン草の調査官は近道をした。「コントロール(対照)」に聞き取り調査をする代わりに、オレゴン州の全住民のデータを使ったのだ(比較する基準をつくるためなので、手法として問題はない)。近道ができたのはCDCのフードネット(州の公衆衛生部門のネットワーク)の先見性のおかげだ。フードネットは、さまざまな食品を食べる人の割合を調べる大規模な調査を定期的に行っていた。そのデータによると、1週間に1回はホウレン草を食べるオレゴン州の住民は5人に1人。これと比較して、感染者の80%がホウレン草を食べていたという数字は突出していた。


■3.米消費者金融の発展に貢献したクレジットスコア
 クレジットスコアのシステムを導入した当初は、すぐに劇的な効果が表れた。小規模な企業への融資では、熟練の貸し付け担当者が1つの案件を処理するのに約12時間半かかっていた。同じ時間でコンピュータは50の案件のスコアをはじき出したのだ。こんにちでは、パーパラ・リッチーの自動車ローンがほとんど手間をかけずに承認されたのも不思議ではない――自動車ローンの80%以上は申請から1時間以内に承認され、25%近くが10分以内に承認される。コストコですぐに会員クレジットカードを手渡されたのも不思議ではない――店員は2分足らずで新規の口座を開設できる。クレジットスコアのおかげでクレジットカードの申し込み手続きのコストは90%削減され、自動車ローンの初期コストは半分になった。


■4.災害保険契約に関する不都合な真実
1970年〜2005年に保険金の支払い額が最も多かった10件の災害のうち、上位8件はアメリカで起きて、支払い総額1億7600万ドルの90%以上を占めた。残りは日本の台風とヨーロッパの暴風が1件ずつだった。アメリカで起きた8件のうち6件は大西洋のハリケーンで、すぺてフロリダを通過した。グローバル経営とアクチュアリーのコンサルタント、タワーズ・ぺリンの計算によると、アメリカはロンドンの再保険市場で保険料の総額の半分を支払い、保険金の総額の4分の3を受け取ったことになる。このレべルの不均衡が続けば、ほかの加入者は不公平な契約だと気づくだろう。


■5.1人の陽性反応と引き換えに10人のドーピング違反者を見逃す
 英デイリー・テレグラフ紙はジョーンズの派手な終焉を次のように評価している。「ドーピング検査の陰性反応には何の意味もないという不都合な真実こそ、マリオン・ジョーンズの一件における本当に重要な発見だ」。この素晴らしい洞察力が、どうしてほとんど注目されなかったのだろう。統計学的な分析からも、ドーピング検査では、陰性反応は陽性反応に比べてはるかに重要でないことがわかる。図4-1のとおり、実際にドーピングをしている1人を現行犯で捕まえる(正しい陽性反応)ごとに、約10人が処罰を免れる(間違った陰性反応)。ドーピング検査の本当の問題は、問違った陽性反応ではなく、間違った陰性反応なのだ。


■6.スクリーニングに嘘発見器を使うと多くの無実の人が犠牲になる
ケースA スクリーニング検査

 ●情報機関は職員1万人のなかに10人のスパイが潜んでいると考えている(1000人につき1人)。
 ●10人のスパイのうち、ポリグラフ検査は90%(9人)を正しく見抜き、1人を間違えてシロと判定する。
 ●残る9990人の潔白な職員のうち、ポリグラフ検査は10%にあたる999人を間違えてクロと判定する。
 ●スパイ1人特定するごとに、111人の潔白な職員を間違って告発することになる。

ケースB 警察の容疑者リスト

 ●警察は100人の容疑者のなかから20人の殺人犯を捜している(5人につき1人)。(中略)

 費用対効果の比率は、ケースBはケースAよりはるかに受け入れやすい。嘘発見器を、容疑者リストのように対象を絞った尋問に使う場合、犯罪者1人を捕まえる代償は1人未満の間違った告発だが、スクリーニング検査に使うと111人の無実の人が犠牲になる。
 ケースAとケースBの判定の正確さが同じだとすると、費用対効果の違いが出る本当の理由は、検査を受けた人全体に対しクロの人とシロの人の比率が異なることだ。ケースAは無実の人の割合がかなり高い(1000人あたり999人)ため、間違える確率が小さくても「間違ったクロ判定」はかなりの数になり、それだけ多くの人が一生を棒に振りかねない。


■7.宝くじ販売店関係者が「大当たり」を獲得する「不正」
 2006年10月25日に、公共放送局CBC(カナダ放送協会)のテレビ番組『フィフス・エステート』がこのスキヤンダルを報道。本当の当選者であるボブ・エドモンズの身に起こった事のいきさつを紹介した。(中略)

エドモンズが当たり券を盗まれたとOLGに訴えても取り合ってもらえなかったため、CBCはローゼンタールに鑑定を依頼したのだ。ローゼンタールは、販売店関係者が「幸運だというだけの理由で」5713本の大当たりのうち200本を当てる確率は、10の48乗(1の後に0が48個並ぶ)分の1だと指摘した。理性のある人はそのような幸運を信じるはずがない。この統計的分析に基づいて調査したところ、情けない話はラプランテ夫妻だけでは終わらなかった。販売店関係者の当選のうち最大140件が極めて怪しいと判明し、OLGには苦情が殺到した。


【感想】

◆米国での事例故、ピンとこなかったり、またその事例それぞれについて、説明が不足しているかもしれませんがお許しを。

本書は、冒頭のアマゾンの内容紹介にもあるように、10個の事例を用いて、「進取の気性に富んだ人々が情報を賢く活用して世の中を良くしている」ことを証明してくれています。

各章関連する2つの事例ごとで計10個。

プラス、おしまいの「おわりに」は、単なるあとがきではなく、各章の内容を整理するとともに議論をさらに広げている、という仕様です。

「最終章が終わったー」と思っても、その後に40ページもありますので、お忘れなくw


◆さて、ポイントでは7つしか挙げておらず、必然的に3つの事例はカットしておりますので、それらについて簡単に。

まずはファストパスとは対照的な、高速道路の渋滞を防ぐための「ランプメータリング」。

これは高速道路の進入車線(ランプ)に設置されている信号機で、基本的には「1回の青信号で車1台」入れるものです。

この信号機は、果たして渋滞解消に効果があるのか、そして、それに従うドライバーはどう感じたのか。


◆また、全米の高校生を対象にしたSAT(大学進学適正試験)は、受験者をグループ別(人種、男女等)に比較して、難易度が同じかを毎回チェックしています。

その際、取り入れられているのが「似たような能力のグループを比較する」という方法。

たとえば、黒人の受験者全体を1つのグループ、白人の受験者全体を1つのグループと考えてはいけない、ということです。

そしてそれは、ハリケーン保険において、フロリダ州の平均的な住民が、災害に弱い沿岸地区に住む住民のために、結果的に「援助金」を負担していることにも関連するという(詳しくは本書を)。


◆第5章では、結果的に不正があった「宝くじが大当たりするグループ」と比較して、ナンタケット島に近い大西洋の海原にジェット機が立て続けに墜落している事実について言及。

墜落事故がランダムに起こるなら、同じ空域で4年間に4件の大事故が起きたことをどう説明するべきなのか……。

本書では、これら10個の事例において、統計学がいかに活躍しているかを分かりやすく説いています…って、内容説明だけで終わってしまいました(スイマセン)。

ノウハウ本と違って、具体的にすぐ実践したり活用したりはできませんが、タイトルをパクった(?)、『ヤバい経済学』や、そのテイストがお好きな方なら、きっと楽しめるハズ。


知的好奇心を満たす1冊!

ヤバい統計学
ヤバい統計学


110306追記:経済学関係の本をまとめました。

【全14冊】経済関係本を集めてみました



【関連記事】

【ヤバ経再び】『超ヤバい経済学』スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー(2010年09月27日)

【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

「ヤバい経済学 」スティーヴン・レヴィット&スティーヴン・ダブナー (著)(2006年05月07日)

ヤバい経済学 [増補改訂版](2007年05月16日)

「行動経済学」友野典男(著)(2006年07月20日)


【編集後記】

◆上記ポイントの7番目に登場していたローゼンタール氏が書いた本。

運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 ((ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ))
運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 ((ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ))

アマゾンでの評価もえらく高いですし、ちょっと気になりますネ。


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