スポンサーリンク

       

2011年02月09日

【新マーケティング】『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる』佐々木俊尚


キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書 887)
キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書 887)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、お馴染み佐々木俊尚さん待望の最新刊。

本日9日発売、とのことでしたが、近所の小規模の書店に昨日の時点で置いてあったので、即ゲット致しましたw

アマゾンの内容紹介から。
情報の常識はすべて変わった!
テレビ、新聞、出版、広告――。マスコミが亡び、情報の常識は決定的に変わった。ツイッター、フェイスブック、フォースクエアなど、人と人の「つながり」を介して情報をやりとりする時代が来たのだ。そこには人を軸にした、新しい情報圏が生まれている。いまやだれもが自ら情報を選んで、意味づけし、みんなと共有する「一億総キュレーション」の時代なのである。シェア、ソーシャル、チェックインなどの新現象を読み解きながら、大変化の本質をえぐる、渾身の情報社会論。
新書らしからぬボリューム(314ページ!)で、読み応え満点でした!


人気blogランキングいつも応援ありがとうございます!




【目次】

プロローグ ジョゼフ・ヨアキムの物語

第一章  無数のビオトープが生まれている

第二章  背伸び記号消費の終焉

第三章  「視座にチェックインする」という新たなパラダイム

第四章  キュレーションの時代

第五章  私たちはグローバルな世界とつながっていく


【ポイント】

■1.日本の映画・テレビ業界はタレントの知名度中心でコンテンツはおまけ
 『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』という2009年のアメリカ映画があります。
 ものすごく痛快で面白いコメディです。たぶんだれが観ても、思い切り笑えるはず。私も日本で公開してしばらくしてからシネセゾン渋谷という映画館で観て、実に久しぶりに大笑いしてしまいました。(中略)

 でもこの『ハングオーバー!』は当初、驚くことに日本では公開される予定はありませんでした。
 理由は簡単。日本で知名度のあるスターがだれも出ていない低予算映画で、「日本ではヒットしないだろう」と配給会社が考えたからです。

ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)
ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)


■2.広告宣伝戦略不在のコンテンツ業界
(彼らは)マス消費のようなどんぶり勘定ではなく、ピンポイントでその映画を見てくれる人のビオトープを探し当て、そこに情報を送り込んでいく緻密な戦略を本当は構築しなければならなかったのです。しかしそうした発想を、音楽業界も映画配給業界もついに持てないまま2010年を迎えてしまいました。
 しかしコンテンツ業界は、自身の広告宣伝戦略の不在を棚に上げ、市場が収縮している原因を「インターネットの違法配信が原因」「ネットに食われた」と妄言のように繰り返しています。
 そんな風にネットに責任を押しつけ、根拠のない勧善懲悪的な主張を続けていても、なにも解決しません。本当理由は他にあったのは明白なのに、彼らはそれを直視したくないのです。


■3.iTunesのアフィリエイト広告は儲けのためではない
これはたしかに広告で、お金のやりとりが行われているわけですが、しかし1曲150円の曲の広告料なんてわずか数円ぐらいでしかない。だからこのアフィリエイト広告を儲けのためにやっているブロガーなど、ほんの一握りでしかないでしょう。
 儲けのためではないとしたら、いったい何のためにやっているのか。それは明らかです。自分がブログで曲を紹介したとき、それをだれかが購入してくれたという事実をそのアフィリエイト広告で確認できるからにほかならない。自分がブログで書いたことを、だれかが喜んでくれている。その事実をそこはかとなく認知したがために、iTunesのアフィリエイト広告を導入しているのです。


■4.所有の時代は終わった
 記号消費の衰退。
 クラウドとシェアによる「所有しない」という新たな生き方
 そして人と人のつながりを最も大切だと考える若い人たちの台頭。(中略)

「若者のクルマ離れ」「若者のブランド離れ」「若者の旅行離れ」といった「若者の○○離れ」が最近のメディアの若者批判の常套手段となっていますが、私がここまで書いてきたように記号消費がなくなって所有への興味が薄れ、つながりを大事にする文化になってくれば、従来の大量消費文化の文脈で語られていたような消費動向が変化していくのは当然のことです。
「草食」などと侮蔑的に新たな生活文化を非難している人たちは、実は自分たちの方こそが爛れた大量消費文化のなれの果てなのです。


■5.「視座にチェックインする」という行為
 ツイッターで面白いツイートをしている人を見つけて、その人をフォローする。そうするとその人からのツイートが自分のタイムラインにどんどん流れ込んでくる。タイムラインの中ではその人の目で、その人の視座で、世界を見ているわけです。
 同時に、あなたがだれをフォローしているのかをあなたの友人が知り、「へー、その人をフォローすると面白そうだな」と新たにフォローすることができるようになる。つまりフォローによって、フォロー相手からの情報を得ると「情報収集」と、どの人をフォローしたのかという情報を友人たちに宣言するという2つのプロセスが行われている。
 そうして「視座へのチェックイン」という行為が成立しているわけです。
 これは先にも書いたように、いまやさまざまなソーシャルメディア上で行われている行為です。


■6.「コンテンツが王の時代は終わった」
 情報のノイズの海の中から、特定のコンテキストを付与することによって新たな情報を生み出すという存在。それがキュレーター。
 あるアメリカ人のブロガーは「コンテンツが王だった時代は終わった。いまやキュレーションが王だ」と書きました。
 一次情報を発信することよりも、その情報が持つ意味、その情報が持つ可能性、その情報が持つ「あなただけにとっての価値」、そういうコンテキストを付与できる存在の方が重要性を増してきているということなのです。


■7.これからの広告・メディア業界の戦略の考え方
 広告やメディアの業界では、ソーシャルメディアの台頭に対してあれやこれやとさまざまな戦略が日々語られています。「これからはブログだ」とブロガーイベントを熱心にやっていたかと思えば、「今度はツイッターだ!」とツイッターマーケティングに血道を上げる。そうしてフェイスブックが本格始動してくると「ツイッターはもう古い。これからはフェイスブック」――。
 でもそんなふうにあちこち走り回って、短期的な線術を採用しても、そんなものはすぐに古びていってしまいます。
 大切なのは、将来出現してくるソーシャルメディアを軸とした情報の流路がどのような全体像になっていくのかというビジョン。
 そのビジョンをきちんと認識し、そのフレームワークに向けて中長期的な戦略を持って行くことでしょう。


【感想】

◆以前読んだ佐々木さんの『電子書籍の衝撃』が比較的読みやすかったのに比べると、本書はかなり骨太でした。

ひとつには、私の基礎的知識、特に一般常識レベルの芸術的素養が欠けていることから、取り上げられている事例について、即座に理解できなかったことがあるのですが。

そもそもシャガールがどんな絵を描いているか、なんてググるまで知りませんでしたよ(サーセン)。

同様に、「アウトサイダーアーティストとして日本で最も知られている」というヘンリー・ダーガーは、名前自体聞いたことが無く。

その代表作である『非現実の王国で』という作品も、本書で初めて知りました。

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で
ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

タイトルにある「キュレーション」も、もともとは美術界の用語だったわけですし、こうした分野の素養が自分自身になかったことが悔やまれるところ。


◆とはいえ本書の主たるテーマは、こうしたアート自体ではなく、むしろそれを見い出し広める「キュレーター」の存在にあります。

上記のダーガーも、死後、アパートの大家だったラーナー夫妻にその作品を見い出されるのですが、二人に芸術的素養がなければそのまま処分されていたハズ。

それは本書のプロローグに出てくるジョゼフ・ヨアキムも同様で、窓にぶら下げた自分の作品に、その価値を見い出す人物が現れなければ、そのまま埋もれていたことは間違いありません。

ポイントの最初で挙げた『ハングオーバー!』は、海外では見い出されていたものの、日本での上映を実現させたのは、映画ライターのわたなべりんたろうさんの公開署名活動のおかげです。




◆この「キュレーション」を具体的ないビジネスのレベルで実現させたのが、第1章に登場する田村直子さん。

彼女は、エグベルト・ジスモンチという、ブラジル出身のミュージシャンの来日公演を実現させ、集客に成功します。


広大な情報の森の中へと田村さんは足を踏み入れ、すぐれた狩猟者のようにあちこちにえさ箱を置き、ワナを仕掛け、川の一部をせき止めて簗(やな)を作り、そうしてピンポイントでそこに生息する「ジスモンチの音楽の消費者たち」を探し出したのでした。
マーケティングに興味のある方にとっては、この一連のプロジェクト部分が一番興味のあるところかも。

私自身も、かつて身内の音楽イベントの集客で色々と考えたことがあったので、ちょっとした興奮が味わえました。


◆本書は、どちらかと言うと「読んで何かすぐに行動に移す」タイプではなく、「その時代において読んでおくべき」タイプの本なのだと思います。

ちょうど、5年前の今頃出て大ブームとなった『ウェブ進化論』と同様。

本書のあとがきで、佐々木さんは「すべては変化していって、10年後にはまったく違う世界が私たちの前に見えていることでしょう」と言われていますが、実際には5年でも随分変わってしまうかと。

それゆえ、本書もどうせ読むなら旬を逃さないことをオススメしておきますw


広告・メディア関係者必読の1冊!

キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書 887)
キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書 887)


【関連記事】

【電子ブック】「電子書籍の衝撃」佐々木俊尚(2010年04月19日)

【ブランディング】「ネットがあれば履歴書はいらない」に学ぶ7つのポイント(2010年01月10日)

【ブログ心得】『マキコミの技術』でブロガーが確認すべき8つのこと(2010年12月18日)

【骨太】『コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則 』(2010年09月08日)

「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」 梅田望夫 (著)(2006年02月10日)


【編集後記】

◆同じソーシャルでも、こちらはガチなビジネス系のよう。

仮想世界錬金術―モバイルソーシャルアプリに見る現代ディジタルコンテンツ革命
仮想世界錬金術―モバイルソーシャルアプリに見る現代ディジタルコンテンツ革命

ガチすぎて、私には手が出ないんですがw


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「マーケティング」へ

この記事のカテゴリー:「ITスキル」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ

スポンサーリンク




               

この記事へのトラックバックURL


●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。