2010年12月13日
【羽生流】『結果を出し続けるために (ツキ、プレッシャー、ミスを味方にする法則)』羽生善治
結果を出し続けるために (ツキ、プレッシャー、ミスを味方にする法則)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、ご存知、将棋の羽生善治名人による自己啓発本。今年7月に行われた講演、「結果を出し続けるための3つの秘訣」を元に、加筆・修正して出来上がったものが本書です。
単に将棋の話に留まらないことは、以下のアマゾンの内容紹介からもお分かり頂けるかと。
「次の一手の決断プロセス」「不調の見分け方」「ミスをしたときの五つの対処法」「無謀でない、リスクの取り方」をはじめとする勝負で大切なことから、「最高のパフォーマンスを発揮するために」「集中するために」「才能とモチベーション」「成功とは何か?」など日常でどういう風にすごしたらよいか、などたくさんのヒントが詰まっている。新人から経営者まで、全てのビジネスパーソンに役立つ1冊です!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第一章 努力を結果に結びつけるために
第二章 ツキと運にとらわれずに、最善を選択する
第三章 120%の能力を出し切る、プレッシャーとの付き合い方
第四章 結果を出し続けるためには、ミスへの対応が鍵になる
第五章 自ら変化を生み出し、流れに乗っていくために
【ポイント】
■1.不調のときは、小さなことから変えてみるたとえば、今までの生活習慣を変えてみる。早起きをしてみる、新しい趣味を始めてみる。あるいは服装を変えて、気持ちを切り替える。何でも良いのですが、生活の中にメリハリをつけて、気持ちが行き詰まらないように、落ちないようにするのです。
結果が出るまでにはタイムラグがあるので、その時期をうまく使って、生活や仕事のサイクルに変化をつけ、停滞しないようにすることです。不調は、必要な充電期間なのです。
■2.「もうひと息」の努力が結果につながる
さきほど、努力をやめてしまうのは、「それが、いつうまくいくかわからないからだ」と書きましたが、「もうダメだ」と思ったときは、結構いいところまできていることが多いものです。そこからもうひと頑張りできるかどうかが、明暗を分けます。もうひと頑張りしてから、「やっぱリダメだった」と、判断すればいいのです。
■3.迷ったときは、自分の気持ちが軽くなるかどうかを判断基準にする
一つ例を挙げると、いろいろな人の話を聞いて、それを取り入れるかどうかを決める際に、自分の気持ちが軽くなるかどうかを判断基準にすることです。人が何を言っているかではなく、自分自身がその話を聞いた後にどういう気持ちになるかを見極める。
自分の気持ちが軽くならない場合でも、人が本当に素晴らしいことを言ってくれることはもちろんあります。しかし、今の自分にとっては必要ではないことかもしれません。それをやるべきかどうかがわからない場合、自分の気持ちが軽くなるかどうかを判断基準にしておくのも一つの手です。
■4.自分が選ばなかった選択肢を、可能なかぎり検証する
「読み」の力をつけるには、自分で考える経験を積むことも大事ですが、自分が選ばなかった選択肢を、可能なかぎり検証することです。「もし、こちらを選んでいたら、どういう展開になっていたか?」を、自分なりにシミュレーションし、振り返るのです。
その際に、次の展開がわからずに迷っていても、実際に何手か進めてみると、はっきりすることがあります。思いつかなかった選択肢は仕方がないのですが、検討した結果として自分が選ばなかった選択肢を検証することは、非常に大切です。
■5.選択する際には「うまくいかないとしても納得できるか」
行なった選択に後悔するよりも、選んだことの中に、次に進むために必要不可欠なものがあったと考えるほうが、未来に活きてきます。
私も日ごろから、選択をする際には、その結果がうまくいくかどうかではなく、「うまくいかないとしても納得できるか」というところに重きを置いています。何か選択をする際に、そのように考えれば、結果にとらわれず、後悔することは少なくなるでしょう。
■6.集中するためには刺激を遮断する時間を作る
普通に歩くのでも、音楽を聴くのでも、絵を描くのでもいいのですが、何も考えずに頭に刺激が入らない状態にすることです。
とくに都会に住んでいると刺激だらけなので、自分をそうした刺激から遮断するのです。別の静かな場所に行く、といったことをする必要もありません。普段の生活の中で、自然に歩いていたり、地下鉄の階段を昇り降りしたりすることでも、相当ボーッとできます。
つまり、メリハリをつけるというか、脳をうまく休ませることが大切です。情報・刺激を遮断して、脳を飢餓状態にする、お腹を空かせた状態にするのです。これは短い時間でも構いません。五分やるだけでも全然違います。
■7.結果が出ていないときにこそ、現実を直視する
結果が出ていないということは、必ず何かしらの原因があります。それを見つけるいい機会だととらえ、どんどん掘り下げていって、原因がわかれば、それに対して対策を立てればいいことになります。
現実を直視するのは、精神的にきついかもしれません。たとえば、私も子どものころに指した棋譜は穴だらけですから、見たくはありません。しかし、それがあったからこそ今があるのです。たとえ今が穴だらけでも、一〇年後から今を見ると、同じように思えるはすです。
■8.才能とは、続けること
よく世間で、素晴らしい成果を出す人のことを、「才能がある」「この人は天才だ」と言いますが、私は「才能とは、続けること」だと考えています。
プロとアマチュアとの違いを定義するならば、「自分の指したい手を指すのがアマチュア」、「相手の指したい手を察知して、それを封じることができるのがプロ」です。
そして、一人前のプロと、一流のプロとの違いは、「継続してできるかどうか」。この一点のみです。
【感想】
◆実は私は、羽生名人の本を読むのは本書が初めてでしたが、思った以上にビジネスパーソン向けであるのには少々驚きました。例えば、本書に登場する事例で、「将棋」に関係した部分を丸ごと「ビジネス仕様」にしてしまったら、そのまま違和感なく読めそうなくらい。
考えてみれば、「選択」「ミス」「不調」「集中」等々、私たちの仕事の中でも普通に現れるキーワードについて述べられているのですから、ある意味当然なのかも。
しかも羽生名人の場合、中学生の時点で立派な「プロ」だったのですから、同年代のビジネスパーソンと比較するまでもなく、経験豊富なのは、間違いないワケですし。
◆また、将棋の場合、常に色々なパターンを考えながら、その都度「ベスト」と思われる手を「選択」しています。
これって恐らく、大企業の経営者以上の「選択回数」なのではないでしょうか?
さらに「選ばなかった選択肢を、可能なかぎり検証する」なんてことまでやられているわけですから、もはや達観されてても不思議ではありません。
「自分の気持ちが軽くなるかどうかを判断基準にする」というのは、一見合理的ではないようですけれども、おそらく経験則から言って正しいのだと思います。
◆「経験則」といえば、上記ポイントでは挙げませんでしたが、「最後に思いついた選択肢に飛びつかない」というものがありました。
羽生名人曰く、例えば4つの選択肢を検討しているときに、悩んだあげくに急に5番目の選択肢を思いつくと、今まで悩んでいただけに、やけに素晴らしい手に思えて、飛びつきたくなるものなのだとか。
そしてこの選択肢は、正しい場合もあるものの、名人の経験上、危ないことが少なくないそう。
ゆえに、「最後に思いついた手を選ぶ場合は、多くの注意を払うべき」とのこと。
私はそんな経験はまだないですが、確かに悩んでいる最中にふと思いついたら、「ひらめいた!」と飛びついてしまいそうなw
もし、そんな機会が本当にあって、しかもキチンと「一瞬、立ち止まる」ことができたら、それだけで本書を買った甲斐があるというもの。
◆もちろん、そんな機会がなくとも、本書を活かせるビジネスシーンは多々あります。
「不調のとき」「もうダメだと思ったとき」「判断に迷ったとき」「結果が出ないとき」etc...
本書には他ならぬ羽生名人のアドバイスが満載ですから、ここはひとつ素直に受け入れてみるのが良いと思われ。
将棋に通じることは、人生に通じます!
結果を出し続けるために (ツキ、プレッシャー、ミスを味方にする法則)
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【編集後記】
◆こちらは羽生名人ネタの、梅田望夫さんのご本。どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語
羽生名人の「強さ」に迫ってらっしゃいます。
ご声援ありがとうございました!
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