2010年12月04日
【価格戦略】『マクドナルドはなぜケータイで安売りを始めたのか? クーポン・オマケ・ゲームのビジネス戦略』吉本佳生
マクドナルドはなぜケータイで安売りを始めたのか? クーポン・オマケ・ゲームのビジネス戦略 (講談社BIZ)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、『スタバではグランデを買え!』でお馴染みの、吉本佳生さんの最新作。今回のテーマは「クーポン・オマケ・ゲーム」という、中高生にとって身近なテーマであり、かつ、その世代が読んでも理解がしやすいよう、分かりやすい具体例が豊富に収録されています。
かといって、中身も中高生レベルかというとあにはからんや。
ビジネス書を読み漁っている私にとっても、かなり深い内容が展開されていました。
特に、ビジネスモデルやプライシングに興味のある方なら、必読の1冊です!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 オマケ商法は正しいビジネスのやり方なのか?
第2章 超人気の豪華RPGソフトの価格が暴落しやすいのはなぜ?
第3章 ゲーム機やテレビがどんどん高機能になって安くなるのはなぜ?
第4章 なぜ牛丼チェーンは過激な値下げ競争をやめられないのか?
第5章 同じゲームソフトの廉価版と中古品はどっちがお得?
第6章 Tシャツにブランドマークをつけるだけで高く売れるのはなぜ?
第7章 マクドナルドはなぜケータイで安売りを始めたのか?
第8章 ネットでいろいろなサービスが無料なのはなぜ?
【ポイント】
◆本書は上記目次のようなテーマで各章が展開されています。一定部分を引用しても分かりにくいので、いくつかのテーマにつき、簡単なまとめを記してみたく。
■オマケ商法は正しいビジネスのやり方なのか?
●女性アイドルグループSG×5が登場するゲームソフトが発売される。
熱心なファンは、人気投票権を得るため一人で何本も購入するが、余ったソフトは安値で転売しているという。
果たしてこれでゲームソフト会社は本当に儲かっているのだろうか?
■超人気の豪華RPGソフトの価格が暴落しやすいのはなぜ?
●国民的人気RPGソフト、RRF9は定価8000円なのに、2ヶ月で4500円で山積みに。
一方、それよりマニアックで人気もない同じRPGソフト、ZYX2は、3ヶ月経っても定価の7000円のまま。
前者の方が断然人気があり、制作費も高いのに、なぜこのような逆転現象が?
■なぜ牛丼チェーンは過激な値下げ競争をやめられないのか?
●かつて400円の並盛りを280円に一気に下げて、低価格化をリードした吉野家。
その後、ライバルの松屋やすき家も追従し、低価格競争は泥沼化となってしまう。
そして、この競争の陰にあったのは「囚人のジレンマ」だった…。
■同じゲームソフトの廉価版と中古品はどっちがお得?
●ゲームソフトを安く買うのに便利なのが中古品。
それに対して、正規版発売から一定期間後に売り出される廉価版も同じくらい低価格。
果たしてどちらを買うのが「得」なのか?
■マクドナルドはなぜケータイで安売りを始めたのか?
●2010年前半の時点で1850万人の会員を集めたマクドナルドのケータイサイト。
高齢者は使いこなせないものの、低年齢層が使うことでグループ別の「価格差別」を実現しているとも言える。
ただし、本当に目指したものは、クーポンによって利用者のシフトを促し、稼働率を高めることにあった。
【感想】
◆冒頭で触れたように、本書は中高生を意識したテーマと作りになっています。そして実際に本書の中では、高校生の兄、竜一と、中学生の妹、桃美が登場……って、「当ブログ鬼門の『物語形式』じゃありませんか!!」
と、買ってから気がついた私ですが、実際に物語(会話)形式になっているのは、各章の最初の2ページと最後の3ページほどで、その間は二人が訪れるカフェのマスター(昔大学で経済学部で教えていたという設定)が二人に分かりやすく解説するという流れ。
この部分を読む限り、通常のビジネス書と全く変わりないので、私のように物語形式が苦手な方でも全く問題ありません(キッパリ)。
◆そして、事例は非常に身近ながらも、扱っている対象は結構ガチ。
表紙の折り返しの部分に「この本で学べる価格戦略の基礎知識」と題して、項目が列挙されているのですが、いくつか挙げてみます。
●価格差別(グループ別の価格差別、自己選択型の価格差別、オマケ商法での価格差別、時間を通じての価格差別)
●需要の価格弾力性
●平均コスト、追加コスト、機会コスト、サンクコスト、取引コスト
●規模の経済性、経験効果
●囚人のジレンマ ……etc
「一つひとつ説明せよ」と言われると心もとない(「私は」ですがw)レベルのコンテンツであることが、お分かり頂けるかと。
◆なお、上記ポイントでは割愛したものの、本書の第3章ではゲーム機やテレビがどんどん高機能になっていくのに、価格が下がる理由について言及しています。
「そんなの当たり前じゃね?」と思われた方(私も最初はそうでした)は、ぜひこのパートはお読み頂きたく。
ソニーがプレステで黒字を出すために、どのようなことを行ったかを中心に、「コスト」について掘り下げています。
また、その部分の参考書籍として強く薦められていたこの本は、私は既にアマゾンアタック済み。
美学vs.実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史 (講談社BIZ)
これまた読むのが楽しみです。
◆一方、タイトルにあるマクドナルドのクーポンのお話は、第7章にて。
私自身が使ったことがなかったので(PHSだからw)よく知らなかったのですが、単なる「割引チラシのケータイ版」とは狙いも効果も違いました。
さらには、このマクドナルドのクーポンをも凌ぐ仕組みとも言える「Tカード」。
ファミマで買い物する度に、持っているか聞かれて、結構鬱陶しかったのですが、これは入っておいた方が良いかも!?←単純w
◆本書は、吉本さんの『スタバ〜』からの一連の著作をお好きな方なら、ノータイムでオススメ。
また、「価格戦略」について興味のある方も同様です。
実際、「値付け」は、ビジネスにおいてもかなり難しい項目ですし、それを分かりやすく解説してくれている点で、本書の価値は非常に大きいと思われ。
普段、何も疑問に思っていなかった「モノの様々な値段」に、興味が湧いてくることウケアイです。
「売る側」にも「買う側」にも役立つ必読の1冊!
マクドナルドはなぜケータイで安売りを始めたのか? クーポン・オマケ・ゲームのビジネス戦略 (講談社BIZ)
【関連記事】
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【編集後記】
◆同じくプライシングに関係ありそうなご本。1円家電のカラクリ0円・iPhoneの正体―デフレ社会究極のサバイバル学 (幻冬舎新書)
こちらもなかなか面白そうです。
ご声援ありがとうございました!
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