2010年12月03日
【仕事術】『仕事のアマ 仕事のプロ──頭ひとつ抜け出す人の思考法』長谷川和廣
仕事のアマ 仕事のプロ──頭ひとつ抜け出す人の思考法(祥伝社新書227)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、ヒット作『2000社の赤字会社を黒字にした社長のノート』で知られる、長谷川和廣さんの最新刊。各項目ごとに、会社を担う「仕事のプロ」と、そうでない「仕事のアマ」の働き方や考え方が比較されているのが、本書の特徴です。
アマゾンの内容紹介から。
この本は、将来、プロ社員になるみなさんに向けて書いています。果たして皆さんは、自分が「仕事のプロ」だと、胸を張れますでしょうか??
仕事の現場におけるさまざまなシチュエーションに当てはめながら、プロとアマは決定的にどこが違うのか、 そしてその実践的な行動と思考の差を明確にを示したつもりです。(本書「はじめに」より)
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【目次】
その1.「勝ちぬく人から法則を学びなさい」
その2.「仕事の方法論をガラリと変えなさい」
その3.「人を動かす人になりなさい」
その4.「組織の力を信じて利用しなさい」
その5.「商売の基本を頭に入れておきなさい」
その6.「半歩でいいから工夫を加えなさい」
その7.「とことん人を見極める眼を養いなさい」
その8.「世の中の仕組みに目を配りなさい」
【ポイント】
■1.強い思い、高い志をもって努力する社会に出てすぐに自分のやりたい仕事をやれる人はいません。このため、若い人たちは、夢とはあまりに隔たった現実を前にして、それを簡単に捨ててしまいがちです。(中略)
しかし、本当のプロとは、夢からはるか遠いところにいても、日々のルーティン・ワークをきっちりとこなしながら夢を持ちつづけ、その実現のために努力を必死で続ける人たちです。「どうしても私はこうなりたい」という強い意志があると、いつかはそれを実現させられるカが人間にはあるのです。
■2.ビジネスは「できる/できない」ではなく「やる/やらない」
ビジネスは、基本的に「できる/できない」ではなく、「やる/やらない」で動いています。事業として詳細に検討した結果、「やらない」と結論するケースは出てくると思います。しかし、力不足や守備範囲外といったあなた自身の都合で、「できない」と決める局面は今後もありません。最初から、「やる/やらない」を基準で考えるクセをつけておかないと、「できそうもない仕事」から一生逃げ回る社員になってしまいます。そして、「やる」と決定したことについては、どうやったらできるのか、手だてをつくし、全力で取り組むのがプロの作法です。
■3.「成功した人」と「成功できる人」は、まったく別物
会社が求めているのは、「成功した人」ではなく、「成功できる人」です。前の会社でどれほど成功しても、私たちの会社で成功してもらわなくては、採用する意味がありません。どこに行っても成功できる人は、すぐれた分析能力のある人です。たとえ大きな失敗体験があっても、それを活かして成功できる人であれば、よいわけです。過去の成功体験に固執し、分析を怠る人は、新しい考え方を排除するかもしれません。そんな成功体験であれば、もはや邪魔なだけです。
■4.「褒める」とは、相手の機嫌をとることではない
ここで一点確認させておいてください。それは、褒めるということは、決して相手の機嫌をとることではなく、あくまでも適切に評価したうえでの表現方法であるということです。ですから、相手を喜ばせようとしてはいけません。褒められることで、いっそう気持ちが引き締まり、次の仕事に高い意識で臨んでもらうために、褒めているのです。ここを混同してしまって、心にもない褒め言葉を羅列しても逆効果になるだけでしょう。
■5.謝罪は「何について謝っているのか」を明確にする
たとえば、「納品が遅れたために、御社の販売スケジュールが非常に厳しいものになってしまい、そのことで関係部署の方にも多大なご迷惑をおかけしてしまいました」「スケジュールの調整に奔走されたA様のご心労には、謝罪する言葉も見当たりません」というように、相手の受けたダメージについて具体的かつ詳細に言及してはじめて、これに続く「謝罪」の言葉は意味を持ちます。そのうえで、トラブルの原因や今後の対策を説明し、最後にもう一度謝罪を重ねるのです。謝罪に至る道筋を省略せずに、言葉を尽くすことで、ようやく誠意を示したことになります。
■6.コストカットは数字のためでなく成長のため
ムダな出費のカットは、必要でしょう。しかし、どこかの時点で、成長戦略に頭を切りかえて、それを実現していかないことには、会社の明日はありません。何のための会社なのか、考えてみてください。コストカットで得られたお金は、次の投資に回すべきものであって、その決算期の表面上の利益を作り出すためのものではないはずです。ライパル企業と横並びの商品を作りつづけていては、ジリ貧になるばかり。成長戦略のない安易なコストカットは会社を疲弊させ、生産性を低下させるだけです。
■7.人を見極めるポイントは「素直さ」
赤字会社の再生で乗り込んでいくような仕事では、組織のキーとなって働いてくれるような人材の候補を探し出さなくてはなりません。
その際、私が最も重要なポイントとして考えいるのが、「素直さ」です。よくその人独自の感性を第一にあげる人がいるのですが、私はそうではないと思います。感性というのは人によって千差万別です。それを質のよいものに変えるのは、その人の持つ素直さしかありません。
■8.正しい「マイナス思考」はビジネスを成功に導く
すばらしい提案や企画、将来性のあるプロジェクトを前にした時、プロは「成功させよう」と強いプラス思考を持ちながら、「そのリスクは何だろうか」という「マイナス思考」も同時に働かせます。プラス思考とマイナス思考とが、車の両輪のようにうまくかみ合って判断されてこそ、ビジネスは成功に導かれるでしょう。
【感想】
◆本書の著者の長谷川さんによると、どの組織でも、能力やスキルが一定のラインに達している「仕事のプロ」は、全体の5%ほど。この下に「あと一歩の社員」が全社員の40%ほどいて、本書ではそれらの人々を「仕事のアマ」と呼んでいます(残りの55%は「その他の社員」「ぶら下がり社員」)。
組織は「仕事のプロ」が背負っているものの、彼らがいつまでも組織にいるわけではない以上、「仕事のアマ」を「仕事のプロ」に引き上げるかが肝要。
本書ではそのための「ヒント」が約90ほど列挙されています。
◆長谷川さんを評する際に、よく「2000社以上の会社の再建にたずさわり」とあるように、本書でも、例として出てくる会社の多くが「再建途中」。
つまり、スタート時点でマイナスなわけで、人も組織も停滞しているわけです。
そこから長谷川さんは、正しく「仕事のプロ」を見抜き、抜擢し、そして会社を立て直しているわけなので、本書で述べられている事項は、かなり説得力があるかと。
もちろん、再建途中でない一般の会社に在籍されている方であっても、ほとんどの項目が、当てはまるものと思われますので、その点はご安心を。
◆ただし、上記で抜き出したポイントからもお分かりのように、その内容は、「働き方」という点に関して、かなりの「王道系」。
「裏ワザ」はもちろん、「効率化」「ハック系」とも異なったものとなっています。
いわゆる「仕事術」が好きな方でも、この辺はご了承頂きたく。
私はぶっちゃけ、「裏ワザ」とかの方が好きなんですが、時折丹羽宇一郎さんの本とか、本書のような作品を読んで、バランスを取っている次第です。
◆実は以前、長谷川さんのご本(『社長のノート』ではありません)を1冊拝読してピンと来なかったので、その後ちょっと距離を置いておりました。
ただ、本書は新書ですし、たまにはいいかも、と思って手に取ったところ、想定外に充実したコンテンツで、得した気分。
単に私自身が成長しただけなのかもしれませんが、それは別としても本書は「正統派の仕事術の本」として、秀逸だと思われ。
思わず正座して読みたくなる1冊!
仕事のアマ 仕事のプロ──頭ひとつ抜け出す人の思考法(祥伝社新書227)
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【編集後記】
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ご声援ありがとうございました!
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