2010年11月26日
【オススメ】『不合理だからすべてがうまくいく』ダン・アリエリー
不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、ひょっとしたら今年最後の「超大型翻訳本」。前作、『予想どおりに不合理』が、個人的には「2008年のベスト5」に入っていた、ダン・アリエリーの新作、『不合理だからすべてがうまくいく』です。
行動経済学系の類書は色々あれど、やはりこの人の作品は、ひと味もふた味も違う感じ。
中でも当ブログ的に見逃せないのが、2つの章を用いて「恋愛ネタ」を取り扱っている点です。
400ページ超の厚さも気にならない面白さでした!
【目次】
序 章 先延ばしと治療の副作用からの教訓
第一部 職場での理屈に合わない不合理な行動
第1章 高い報酬は逆効果―なぜ巨額のボーナスに効果があるとは限らないのか
第2章 働くことの意味―レゴが仕事の喜びについて教えてくれること
第3章 イケア効果―なぜわたしたちは自分の作るものを過大評価するのか
第4章 自前主義のバイアス―なぜ「自分」のアイデアは「他人」のアイデアよりいいのか
第5章 報復が正当化されるとき―なぜわたしたちは正義を求めるのか
第二部 家庭での理屈に合わない不合理な行動
第6章 順応について―なぜわたしたちはものごとに慣れるのか(ただし、いつでもどんなものにも慣れるとは限らない)
第7章 イケてる? イケてない?―順応、同類婚、そして美の市場
第8章 市場が失敗するとき―オンラインデートの例
第9章 感情と共感について―なぜわたしたちは困っている一人は助けるのに、おおぜいを助けようとはしないのか
第10章 短期的な感情がおよぼす長期的な影響―なぜ悪感情にまかせて行動してはいけないのか
第11章 わたしたちの不合理性が教えてくれること―なぜすべてを検証する必要があるのか
【ポイント】
■1.高い報酬は逆効果?結論は明らかだった。高額のボーナスを約束することは、こと単純な機械的作業に関する限り、成績を高める効果がある。ところが、頭を使わなくてはならない課題では、かえって逆効果になることがあるのだ。企業が重役に莫大なボーナスを支払うのは、ふつうこの後者に当てはまる。副社長がレンガ積みの仕事をして報酬をもらっているのなら、高額ボーナスを通じてやる気を引き出そうとするのもいいだろう。しかし、企業買収や合併について考えをめぐらせたり、手のこんだ金融商品を編み出したりする仕事に、ボーナスという形のインセンティブを与えるのは、わたしたちが思っているよりずっと効果が薄いかもしれないのだ。それどころか、とてつもなく高額のボーナスは、悪影響さえ与えかねない。
■2.動物は皆、自分で食いぶちを「稼ぎ」たがる
ジェンセンの研究の結果、魚、鳥、スナネズミ、ラット、ハツカネズミ、サル、チンパンジーなど、多くの動物が、短い直行ルートでエサを得るより、長い迂回ルートを通ってエサを手に入れるのを好むことがわかった(その後行なわれた多くの実験も、これを裏づけている)。つまり、魚、鳥、スナネズミ、ラット、ハツカネズミ、サル、チンパンジーは、極端な重労働が必要でないかぎり、自分で食いぶちを「稼ぎ」たがることが多かったのだ。じっさい、これまでテストされた動物のうち、てっとり早い道を選んだ唯一の動物は、そう、見事なまでに合理的なネコだった。
■3.「やる気」を左右するもの
この実験からわかったことがある。仕事から意味を奪うのは、驚くほど簡単なことなのだ。あなたが管埋職で、なんとしても部下のやる気をなくしたいのなら、部下が見ているその目の前で、かれらの労作を粉砕すればいい。もうちよっとさりげなくやるなら、部下を無視したり、無視したり、がんばっている様子に気づかないふりをするだけでいい。逆に、同僚や部下のやる気を高めたいなら、かれらに気を配り、がんばりや骨折りの成果に関心を払うことだ。
■4.人生を変えるほどの大きなできごとの影響も、時間とともに大幅に薄れる
三つのグループの間には、たしかに満足度の水準にちがいは見られたが、そのちがいは思ったほど大きくなかった。半身不随者はふつうの人ほど生活に満足していなかったし、宝くじ当選者はふつうの人より満足度が高かったが、どちらのグループの生活満足度も、ふつうの人の水準に、驚くほど近かったのだ。別の言い方をすると、重傷を負うとか、宝くじに当たるといった、人生を変えるほどの大きなできごとは、満足度に大きな影響をおよぼすが、この影響は時間とともに、大幅に薄れるということだ。
■5.イヤなことは一気に片付ける
いらだたしい体験や退屈な体験は、中断した方がつらくないように思えるが、じつは中断のせいで、順応能力が低下してしまう。だから、もう一度その体験に戻ったとき、前にも増して嫌な気分になるのだ。家を掃除したり、確定申告の準備をしたりするときのコツは、腰を落ち着けて一気に片づけてしまうことだ。
■6.しょっちゅう触れるものは、すぐ慣れてしまう
もしあなたがつかの間の体験(スキューバダイビング)と、しよっちゅう触れるもの(新しいソファ)のどちらにお金をかけようか悩んでいて、どちらも全体的な満足度が同じくらいなら、つかの間の体験を選んでみよう。ソファが長い間にわたって満足度におよぼす影響は、あなたの思っているよりずっと小さい。逆に、スキューバダイビングが与えてくれる楽しみと記憶は、たぶん思ったよりずっと長続きする。
■7.容姿に恵まれない場合の対処の仕方
以上、ホット・オア・ノット、ミート・ミー、そしてスピードデートの実験から得られた結果を総合すると、こう言える。本人の魅力度は、美意識には影響をおよぼさないが、優先順位には大きな影響を与える。要は、外見の魅力に乏しい人たちは、外見以外の特質を重視するようになるということだ。(中略)
美しさが本当に重要かどうかという価値判断はさておき、優先順位を見直すというプロセスが、順応に役立つことはまちがいない。結局のところ、わたしたちはみな、いまの自分や自分のもっている資質と、折り合いをつけて生きていかなくてはならない。そしてつきつめれば、うまく順応し、周りに合わせることは、幸せになるためのカギなのだ。
■8.良い関係を築ける異性の選び方
だれかと長い関係を誓う前に、二人がはっきりした社会的なきまりごとかないような環境に置かれたときどうなるかを、まず調べてみよう(たとえばカップルは結婚する前に、結婚式の計画を一緒に立てて、それでもお互いを好きでいられたら、そのままゴールインすればいいのではないだろうか)。それに、行動パターンが悪化していないか、つねに気を配ることも大切だ。初期の危険候信号に気づいたら、まずい関わり方のパターンができあがってしまう前に、すばやく行動を起こして、望ましくない方向に行かないように軌道修正することだ。
【感想】
◆鬼のように付箋を貼ったのですが、この辺で。前作を記事にしたときは、具体的な実験内容とその結果をいくつか列挙したのですが、今回は逆に、そこから導き出される「結論部分」を抜き出しております。
いや、それにしても、「実験」が多いこと多いことw
さすがに前作の「性的興奮状態における、行動判断のアンケート」レベルのネタ(?)はなかったものの、「そこまでやりますか」的にガンガン飛ばしているような。
日本の行動経済学の本も、これ位実験をしてくれていれば、もっと説得力が(ry
◆今回取り上げなかった中で興味深かったのが、第5章の「報復が正当化されるとき」。
「信頼ゲーム」を行い、身銭を切って相手に復讐したの脳をスキャンしたところ、線条体という報酬や喜びに関連して活動する部位が活発に反応していたことが分かったのだそう。
人は復讐することで、実際に「喜びを感じる」なんて、にわかには信じたくないような…。
一方で、こんなスライドを作ってしまった人もいます。
これは、ひどい顧客対応を受けた二人のビジネスマンが、泊まったホテル(ダブルツリークラブ・ホテル)の経営陣にあてたパワーポイント形式のプレゼン資料。
ネット上で話題になり、ホテルはその後サービス対応を改めたのだそうです。
◆また、本書は前作に比べて、より「個人的な色合いが強い」のが特徴。
特に第二部においては、多くの部分で、著者であるダン・アリエリーの個人的な体験がベースとなっています。
前作をお読みの方ならご存知のように、彼は18歳の頃全身に大やけどを負い、困難なリハビリを経て、現在に至っているわけで、その結果「痛み」や、「外見の悪化」とそれに伴う「デート市場での価値の下落」を受け入れなければなりませんでした。
果たして外見に恵まれない人は、恋愛活動において、どのように折り合いをつけているのか?
上記ポイントでは結論部分だけ抜き出していますが、興味のある方は、本書の第7章でご確認を。
◆この手の本の続編で、失速気味な作品もある中、本書は全く問題ありませんでした。
さらに、実生活(ON&OFF)で使えるTIPSも前作より多い感じ。
とりあえず私は、今後は「イヤなことは、途中で休まないで一気に片付ける」ことにします!
実は、楽しい事は逆に小分けにした方がいいんですけど(本書ご参照のこと)、私はこの本を読むことを止められませんでしたw
これを読まずして年を越すなかれ!←ちとパクりw
不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
【関連記事】
【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)【ヤバ経再び】『超ヤバい経済学』スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー(2010年09月27日)
【いよいよ完結!】『マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選3 採用は2秒で決まる! 直感はどこまでアテになるか?』(2010年09月10日)
【オススメ】『スイッチ! 「変われない」を変える方法』チップ・ハース, ダン・ハース(2010年08月11日)
【はてブ3000超!】ダニエル・ピンクの新作『モチベーション3.0』がついに登場!(2010年07月06日)
【編集後記】
◆本田直之さんの新作がいよいよ登場!トリガー・フレーズ
出版社サイトによると、今までの著作からの「フレーズ集」とのことなので、これまた楽しみです!
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「ビジネススキル」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
この記事へのトラックバックURL
●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。
当ブログの一番人気!
10月10日まで
9月26日までのところ一部値引に移行して延長中
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです