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2010年11月16日

【言葉の力】『こんな言葉で叱られたい』清武英利


こんな言葉で叱られたい (文春新書)
こんな言葉で叱られたい (文春新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、読売巨人軍球団代表清武英利さんが集めた熱き言葉の数々。

清武さん、文章がお上手だと思いきや、何と「新聞記者歴30年」という経歴の持ち主でいらっしゃいましたw

アマゾンの内容紹介から。
巨人軍再建の陰に「言葉の力」あり。球団代表だから書けた、原監督、コーチ陣、ベテラン選手たちの「叱る技術」。
プロ野球から遠ざかっていた私でさえ、どっぷりのめりこんだ内容ですから、プロ野球ファンなら、楽しめること間違いなしです!


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【目次】

1 「下を向くな!」

 「今日の負けにどう対処するか」―ノンロジカルの力
 「こんなバットで打てるか!」―血の仲間
 「いいかげんでもいい」―若者自身を殺すな ほか

2 「全力でやったものは心に残る」

 「もう違う次元にいる」―上司の背中
 「勝負しなければならない」―オン・ザ・ジョブ・トレーニング
 「だから契約金もらえたんだ」―自分にあるものを数える ほか

3 「我々は戦う武士であり、勝負師だ」

 「前夜の失敗を悲しみすぎてはいけない」―聖書と野球
 「我々は戦う武士であり、勝負師だ」―Big rockと武士道
 “Enjoy the moment.”(楽しんでいけ)―極限の緊張の中で聞こえた英語 ほか


【ポイント】

■話し言葉は貧しかった新聞社世界
 私は自分が育った新聞の世界と、球界を比べてみることがある。
 新聞の世界は、言葉の持つカを信じる人間の集まりだ。「言霊」という言葉がある。言葉に宿る不思議な霊力のことで、古代、そのカが働いて言葉通りの事象がもたらされると信じられていた。そんな世界を信じていた私達の話し言葉は実に貧しかった。
 職場での叱る言葉は二文字か三文字で済むようなものばかりだったし、褒め言葉も五文字の「よくやった」程度であった。荒っぽいのはスポーツ界ではなくて、むしろ新聞社の世界だったのである。


■コーチの仕事は待つこと
 内田(順三)はいつも早くから来て、選手を見つめている。巨人では、選手が気にし始めて教えてくれ、と言うまでじっと待っていた。気むずかしい清原和博もそうして近づいてきた。
 好調なレギュラー選手に教えることはないのだ。不調になると、向こうからやってくる。問題はそこまで待てるか、そして近づいてきたときに選手にかける言葉を持っているかどうかだ。


■やる気は持続しない
 プロ野球界に身を置いて気付いたことがある。その一つは、プロになった選手でも、やる気は持続しない、ということである。イチローや高橋由伸、木村拓也のように、努力する才能を持ち合わせた人間はごく一部だ。逆に言えば、やる気を持ち続けることが大成の条件なのだが、一流の選手は、やる気を自分で維持できるような仕組み、活性のシステムを持っていることが多い。


■雨中の練習に込めた思い
 それはオープン戦も終盤に差し掛かったころだった。巨人は宇都宮の清原球場に遠征し、肌寒い雨のデーゲームを迎えていた。間もなく開幕だが、選手は疲れ切っていた。怪我も怖い。誰もが雨中の練習を避けたがっていた。
 しかし、藤田(元司)は「打撃練習をやる」と言って雨のグラウンドに出て行った。
 気づくと、ケージの後ろに黙って腕組みして立っていた。四番打者の原辰徳も出ないわけにはいかなかった。
「藤田さんはびしょぬれで、黙ってケージの後ろに立っていました。すごい光景だった。ああしたことで、死期を早めたかもしれません。しかし、みんな藤田さんの強い気持ちがわかった」


■仕事を通じて人は成長する
 このころの抑えは上原浩治である。二点差のところで上原を思い切って投入することは考えなかったのか、と試合後、原監督に聞いてみた。(中略)

 監督はすぐには反論せず、ビジター球場の狭い監督室で椅子に腰掛けて静かに言った。
「もし、上原に代えて打たれれぱ、山口(鉄也)が死に、打たれた上原も死にます。山口は勝負しなけれぱならなかった。結果はあの通りですが、勝負して乗り越えていくしか成長はないのです」


■部下の前ではため息をつかない
 上に立つ人間がしてはならないことは、部下の前で愚痴ることと、ため息をつくことだという。ため息は原監督に口をすっぱくして言われていることである。
「ため息をつくと、下のものは不安になりますよ。がっかりもします。そして、それは無意識であっても、そこにいる人間を軽く見ているということです。目上の人や大事な人の前ではため息なんかつかないでしょう」


■全力でやって分かるものがある
「全力でやらないと、その先のビジョンがみえてこない。中途半端にやると、中途半端におわる。スイングでも全力でやって初めてズレが見える。その繰り返しで分かるものがある。気持ちも体も全力でやって、その反復練習の中から誤差やズレを修正していく。一回やったくらいでは体も頭も心もうまくいかない。根気よく粘り強くやっていかないと。辛いだろうが、良くても悪くても、そこまでやって見えてくるものがある」(小笠原道大

魂のフルスイング
魂のフルスイング


■気概を持って立ち向かう
「我々は戦う武士であり、勝負師だ。向こうは刀を振りかざして戦いに臨んでいる。
 我々は懐刀を持つことは必要だが、刀を鞘に入れたまま戦いに臨むようでは勝てない。向こうは『よし、オレは死んでもいい。その代わり、こいつと刺し違える』というつもりできている選手もいる。
 ジャイアンツに今、そういう気概で臨んでいる選手が何人いるか」(阪神戦を前に原監督がチームに語った言葉)


【感想】

◆タイトルが『こんな言葉で叱られたい』なのに、ふと気がつくと「叱られていない」部分ばかり拾ってしまいスイマセン。

どちらかと言うと「マネジメント」よりも「仕事術」「自己啓発」が好きなもので、そっち系の「ビジネス書的に美味しい」項目を中心としております。

実際、よく言われることですが、ビジネス界に比べたらスポーツ界は「狭き門」であることは間違いありません。

そして、選ばれてきたもの同士でも「優劣」「勝敗」はつくわけで、監督・コーチは、日々、そんな選手たちを叱咤激励するためにさまざまな「言葉」をかけてやっています。


◆中でも、本書での登場回数がもっとも多いのが(多分)原監督

これは、清武さんが球団代表になってから、もっとも長く監督を務めているのが原監督、というのもあるのかもしれませんが、ひとつひとつの「言葉の重み」が原監督の逸話からは感じられました。

なお、原監督のお父さんである原貢 氏も、野球界では有名なのですが、こちらはとにかく「語らずに殴る」タイプ。

三池工業高校野球部監督時代の貢氏の逸話が、『炭鉱町に咲いた原貢野球』からの引用として、本書ではこんな風に紹介されています。
ある日、三塁手がノックを受けてエラーを続けてしまったとき、激怒した原がつかつかと歩み寄り、一気に押し倒すや否や、そのまま選手を足蹴りして一塁まで転がして行ったときもあった。
現代だったら、余裕で出場停止です罠。

その反動で(?)原監督は言葉を大事にされているのかもしれませんが。


◆同様に、よく登場しているのが、故・木村拓也氏。

若くして今年4月にクモ膜下出血で亡くなった木村氏のことは、この記事がホッテントリ入りして、私は初めて知りました。

Yomiuri Giants Official Web Site NPB新人研修 木村拓コーチ講義内容 Yomiuri Giants Official Web Site NPB新人研修 木村拓コーチ講義内容

そして、実は木村氏は清武さんの高校の後輩であり、清武さんはいつか木村氏を母校の監督に据えて、甲子園を勝ち抜くことを夢見ていたのだそう。

そんな木村さんの最期に、清武さんは立ち会うことに……。
「代表が来てくれたぞ。起きんか」と、両親がかわりがわりに顔を拭いてやると、涙のようなものが流れた。「選手に思い入れを抱いてはいけません。辛くなりますからね」と口うるさく言ってきた運営部長の笹本信二が「タクヤー、みんな待っているぞー」と泣き声を絞り出した。
 もう母校の夢は見られないのだ。しかし、もう十分だ。お前は粘り抜いたぞと言い出そうとした瞬間に、わっと涙があふれた。
(´;ω;`)ブワッ


心震える1冊!

こんな言葉で叱られたい (文春新書)
こんな言葉で叱られたい (文春新書)


【備考】

◆ちなみに、今日ご紹介した本は、こちらのエントリーを読んでアマゾンアタックしました。

現体制になってからのジャイアンツは理想的で魅力的 - 昨日の風はどんなのだっけ?

野球に疎い私だけに、こういう記事はありがたいところ。

toroneiさんのブログは、話題が豊富なのですが、個人的にはサッカー関係の記事をいつも楽しみにしております。

また、お笑い関係の記事も充実していますので、興味のある方は要チェック!


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【Amazonキャンペーン有】『部下の「やる気」を育てる!』小林英二(2008年09月24日)


【編集後記】

ライフネット生命保険の岩瀬大輔さんの新刊。

132億円集めたビジネスプラン
132億円集めたビジネスプラン
2006年7月、小さな雑居ビルの部屋で、1934年以来となる独立系生命保険会社の設立準備が始まっていた。 しかも、生命保険をインターネットで売るという新たな試みであった。 その後、会社設立のために集めた金額は、132億円にのぼった。 なぜ、一年半もの短期間で、多額の事業資金を得られたのか? 本書では、著者が自ら分析し、各企業に出資を募ったビジネスプランを初めて公開する。そこには、著者の「熱意」と「ロジック」が詰め込まれている まず、著者は「事業機会の発見」において、自分にできることではなく、世の中から求められていることをやれ、と言う。 その言葉は、日本人4人目の上位5%の成績最優秀称号にて卒業したハーバード大学経営大学院留学時に学んだものだった。 そして独自に作り上げた「市場分析」「財務戦略」「組織作り」などを明らかにしていく 社内外問わず新規に事業を考え、リーダーとして成長したい人は必読の一冊!
これはなかなか面白そうですね!


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この記事へのコメント
               
野球は名言の宝庫ですね。私もこんな言葉でしかられてみたいです。

ただ、普通の人が名言を真似ても説得力が無いかもしれません。
逆に言えば、どんな些細なセリフでも立派な人が言えば名言になるのかもしれませんね(笑)。

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Posted by 読書ブログ屋 at 2010年11月17日 00:14
               
>読書ブログ屋さん

タイトルに「叱られたい」とあるように、ホントはもっと叱る言葉はあったのですが、記事では割愛してしまってスイマセン(汗)。

名言の是非については、ケースバイケースだと思うのですが、「叱る」と「怒る」は区別しないといけないといけないでしょうね。
…自分自身の子育てを省みるとアヤシイんですが(涙)。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2010年11月17日 06:08