2010年10月15日
【男女】『科学でわかる男と女の心と脳』麻生一枝

科学でわかる男と女の心と脳 男はなぜ若い子が好きか?女はなぜ金持ちが好きか? (サイエンス・アイ新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の『論理的にプレゼンする技術』も好評だった、「サイエンス・アイ新書」の中の1冊。男と女の「心」と「脳」について、タイトル通り、極めて科学的に論じております。
アマゾンの内容紹介から。
男はなぜ若い子を好むのでしょうか?女はなぜ金持ちを好むのでしょうか?本書は、ふだん聞けない性の科学を明らかにしました。男女の恋の駆け引き、セ●●ス、浮気…に隠された性の裏側を、進化論という視点で解説。これまた装丁で油断してはいけないことを痛感いたしましたw

【目次】
第1章 恋のはじまり―男が望むもの・女が望むもの
男と女の違いは平均の違い
オスとメスの定義 ほか
第2章 恋のかけひき―パートナーを獲得し、つなぎとめる
なぜ男は女より地位や収入にこだわり、それを誇示するのか?
なぜ女は男より見た目を飾ろうとするのか? ほか
第3章 恋の悲劇―性と犯罪
ダーウィンの進化論
犯罪者のほとんどは男 ほか
第4章 恋と脳―男女の脳の違い
脳の性差を、男女差別や固定観念に結びつけないで
男の得意と女の得意 ほか
第5章 恋とからだ―男女の発達の仕組み
3つの性
ほ乳類の性分化の仕組み ほか
【ポイント】
■1.「男は女をえり好みしない」というアメリカの研究結果たとえば、3年の間に、男子は平均9人の異性と交際したいと考え、女子は平均2人の異性と交際したいと考えている。期間の長さにかかわらず、男子の理想とする交際相手の数は、女子の理想とする数より多い。一生のうちに何人と交際したいかとなると、女子は5人止まりだが、男子では18人と、20人近くに跳ね上がる。
■2.男が若い女にひかれる理由
男が若い女にひかれるのには生物学的な理由がある。それは、女の妊娠・出産能力の年齢差、つまり子をつくる能力の年齢差だ。
性的に成熟した10代後半以降の女たち。若いほど子どもができやすい。だから、男たちは若い女を選ぶ。若い女を選ぶことで、よりたくさんの子、そして、遺伝子を次世代に残せるからだ。
■3.なぜ男は女より地位や収入にこだわり、それを誇示するのか?
一般的に、男は女より地位や収入にこだわる。そして、地位や収入を手に入れた男は、自分がどれだけ偉いかをなにかにつけて自慢したがる。(中略)
なぜ、男は女より地位や経済力にこだわり、それを誇示するのか? それは地位や経済力が、とりもなおさず女が男に求めるものだからだ。男はそれなりの地位や経済力を手に入れ、それを手に入れたことを女に知らせなければ、パートナー獲得競争で勝ち残ることはできない。
■4.女性が浮気をする理由
恋人や夫のいる女が浮気をする理由。それは、恋人や夫の遺伝子よりも優秀な浮気相手の遺伝子を子に伝えるためだ、という説もある(Jennions & Petrie 2000)。(中略)
女が、地位や経済力があり、かつ、肉体的にも健康で魅力的な男(=優秀な遺伝子をもつ男、くわしくは後述)と結婚したならば、浮気をする必要はない。しかし、このようなすぺてをもつ男は、結婚相手にも高い資質を求める。従って男の資質に見合うだけの魅力が女にないかぎり、こういう男と結婚するのは難しい。しかしカジュアル・セ●●スなら可能だ。なぜなら、一般的に男は、妻に求めるような高い資質をカジュアル・セ●●●スの相手には求めないからだ。つまり、女にとっては、「すべてをもつ男とは、結婚するよリセ●●スだけするほうが簡単」という状況が生じるわけだ。
だから、女は浮気をする。配偶者市場における自分の価値に見合った男と結婚して、まず、その男からの長期的な経済的支援を確保する。それから、結婚だったら手の届かない相手と浮気して、その男の優秀な遺伝子を子に伝えるのである。
■5.女には精神的裏切りが耐え難い
女にとっては、パートナーの精神的裏切りによって失われるものは、肉体的裏切りによるそれよりも大きい。男がほかの女とセ●●スしても、自分と子どもを経済的に支えてくれているかぎり、子孫を残すという意味では失われるものは少ない。しかし精神的裏切りとなると話は違う。精神的裏切りは、夫が自分と子どもを捨ててほかの女のもとへ走ってしまう可能性、つまり夫からの献身や、経済的資源の供給の終わりを意味する。だから女は男の精神的裏切りをより嫌う。
■6.なぜ、犯罪者のほとんどは男なのか?
オス同士の配偶者をめぐる競争は、メス同士の配偶者をめぐる競争に比べてずっと激しい。オスは勝者と敗者の得るものの格差が大きいので、危険を冒してでも戦う価値があるし、戦わなかったら子は残せない。そして、この「大きな危険を冒してでも大きな利益を狙う」という戦略が、ヒトの男の心理にも隠れている。だから男のほうが罪を犯しやすい、と考えられている(Daly & Wilson 1988a)。
■7.「右脳は直感的で、左脳は論理的」は本当か?
結論からいってしまえば、かなりウサンくさい。右脳と左脳が、ある程度作業分担をしているのは確かだ。少なくとも右利きの男性に関するかぎり、声を出して話すという機能に関連した部分は左脳に偏っているし、空間認識に関連した部分は右脳に偏る傾向にある(Hellige 1990)。しかし「右脳は直感的で左脳は論理的」となると、科学的基盤が揺らいでくる。そう書いてある本はあっても、それを支持するデータが見つからないのだ。
現在少なくとも専門書では、このように単純化した右脳・左脳論は登場しない。
【感想】
◆一部、長々と引用してしまったので、この辺で。実は今回は引用部分がかなり偏っていて、前半の第1章、第2章が多めになっています。
というのも、目次では大見出しに全て「恋」とついているものの、実際には「モテネタ以外」が多かったから。
もっとも第3章は「犯罪」がメインなのですが、これはこれで興味深かったりします。
例えば「犯罪者の7〜8割が男性」と言うのは感覚的にわかりますが、「殺された女性の3割は夫や彼氏によるもの」というのは指摘されるまで考えもしませんでした。
ちなみに、この男性によるパートナー殺しは、進化論的には大きな謎なのだそう(殺すことで得るものが、殺すことで失うものより大きいとは考えにくいため)。
◆この男性によるパートナー殺しの要因の1つが、ポイントの4番目に挙げた「女性の浮気」。
既婚(もしくはパートナーがいる)女性の浮気も、「優秀な遺伝子を残すため」というのは、私にとっては「目からウロコ」でした。
実際、バレたら殺されはしないまでも、まず関係は破綻してしまいますよね?
上記でポイントの5番目に「女性は精神的な裏切りが耐え難い」とありますが、逆に男性が許せないのは「肉体的な裏切り」だそうですから(確かに同意)。
もっとも、だからといって、男性が肉体的な裏切りをしていい、というわけではないのですがw
◆ところで本書は、装丁のイラストがほぼ全編で展開されており、一見初心者向けのようですが、書かれている中身は結構ハードコア。
何箇所か引用部分にカッコ書きで出典が載っていることからも分かるように、「エビデンス主義」ですし、巻末の参考資料も本文よりよほど小さな字で、英語の論文や書籍名がビッシリ列挙されています。
タイトルに「科学でわかる」とあるのも伊達じゃありません。
普通の新書でモノクロでイラストもなく、タイトルも「男と女の心と脳」だけだったら、書店にも並んでいなさそうなw
◆私としては、その装丁ゆえに(?)「モテ本」として買ったツモリなのですが、思った以上にシリアスな項目が多かったです。
ただ、個人的に「マストなモテ本」と思っているこの本の内容を、キチンとエビデンスを揃えて掘り下げてくれている感じがしないでもなく。

彼と彼女の科学的「恋の法則」―“幸せな結果”を知りたいっ! (王様文庫)
参考記事:【モテ】『彼と彼女の科学的「恋の法則」』はオススメ!(2008年10月07日)
感覚的に「そうかもね」と思っていることを、論理的に証明してくれた点で、その功績は小さくはないかと。
「男と女の真実」を科学的に明らかにしてくれる1冊!

科学でわかる男と女の心と脳 男はなぜ若い子が好きか?女はなぜ金持ちが好きか? (サイエンス・アイ新書)
【関連記事】
【モテ】『彼と彼女の科学的「恋の法則」』はオススメ!(2008年10月07日)理系のための「だから、男と女はすれ違う」入門 (2009年02月16日)
【モテ】「なぜ、その人に惹かれてしまうのか?」森川友義(2007年09月14日)
【モテ】「ベストパートナーになるために」ジョン・グレイ(2007年08月09日)
【脳科学】「最新脳科学で読み解く 脳のしくみ」サンドラ・アーモット,サム・ワン(2009年05月02日)
【編集後記】
◆今日お送りした本の中で、紹介されていたのがコチラ。
一度なら許してしまう女 一度でも許せない男―嫉妬と性行動の進化論
これは結構面白そうですね。

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