2010年09月27日
【ヤバ経再び】『超ヤバい経済学』スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー
超ヤバい経済学
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、当ブログでも大人気だった、『ヤバい経済学』の続編。「90年代のアメリカで犯罪が激減した原因は中絶」とか「相撲の八百長疑惑」等、前作はかなりの論議を巻き起こしましたが、本書もタイトルに「超」が加わった分、ヤバさも「絶賛増量中」(?)となっておりますw
出版社のサイトから。
レヴィットとダブナーは、難しい疑問や、みんなが思ってもみなかった疑問に対して、経済学的アプローチで人がインセンティブにどう反応するか調べ、超ヤバい世界の本当の姿を暴いていきます。「経済学的アプローチ」と出てきますが、『ヤバい経済学』と同様に経済学の知識がなくても大丈夫です。売春婦の戦略から地球を冷やす方法まで、レヴィットとダブナーのコンビが世の中の見方をまたひっくり返すのをぜひお楽しみください。確かに世の中の見方が変わることウケアイ!
161011追記:Kindle化されました!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
説明のためのノート
――前の本でウソついてた件
序章 経済学が「ヤバい」とは
――グローバルな金融危機なんてまるごと無視してもっとおもしろい話をする
第1章 立ちんぼやってる売春婦、デパートのサンタ、どうしておんなじ?
――女やっているとどんだけ損かを追求する
第2章 自爆テロやるなら生命保険に入ったほうがいいのはどうして?
――生と死のやるかたない側面を検討する。基本的には死のほう
第3章 身勝手と思いやりの信じられない話
――にんげんって、思ったほどいいもんじゃない。でも、思ったほどわるいもんでもない
第4章 お悩み解決いたします――安く簡単に
――大きくて難しそうな問題が、びっくりするようなやり方で解決できたりする
第5章 アル・ゴアとかけてピナトゥボ火山と解く。そのこころは?
――地球温暖化を、冷めた、でも真剣な目で見てみよう
終章 サルだってヒトだもの
――さあ、真実が今あきらかに・・・・・・んーと、でも、たぶん読むまで信じちゃくれないし
謝辞
訳者あとがき
付注
索引
【ポイント】
■1.女性の社会進出の結果起きたこと昔から学校の先生という仕事は女の人たちが牛耳ってきた。100年前、女の人が携われる中で、教職は料理に洗濯といった家事にかかわらない数少ない仕事の一つだった。(中略)
しかし、そう経たないうちに、頭のいい女性たちが手にする機会は何倍にも増えた。1963年の同一給与法と1964年の公民権法が威力を発揮し、女性の役割について社会の考え方が変わった。(中略)
その結果、学校の先生の業界は頭脳流出に悩むことになった。1960年、女の先生の約40%は知能指数やその他のテストで上位4分の1に入っており、下位4分の1に入っている女の先生はたった8%だった。20年後、上位4分の1に入る女の先生の割合は当時の半分にも満たず、下位4分の1に入る女の先生は当時の2倍を超えるところまで増えた。
■2.男性が女性より稼ぎが多い1つの要因
最近行われた一連の実験を考えてみよう。若い女性と男性を集めて20問の問題からなるSAT(訳注:アメリカ版大学入試センター試験)っぽい数学の試験を受けてもらう。一つ目の形式では参加してくれた人に5ドル、問題を最後までやってくれた人に15ドルを一律で支払う。二つ目の形式では参加してくれた人に一律で5ドル、正解した問題1問当たり2ドルを支払う。
結果はどうだっただろう?
一律の金額を支払う形式では、成績は男性のほうが少しだけよく、女性よりも20問当たり平均で1問正解が多かった。一方、正しい答えに現金で報いる形式では、男性は女性をさんざんに打ち負かした。女性の成績は一律の金額を支払う形式をかろうじて上回るぐらいだったが、男性の成績は平均で20問当たり2問も正解が増えた。
■3.「意識的な練習」の3要素
名人の域に達したければエリクソン言うところの「意識的な練習」を積まないといけない。八短調で100回弾くとか肩が抜けるまでサーヴを打つとかだけじゃダメだ。意識的な練習には重要な要素が三つある。具体的な目標を立てること、すぐに評価を受けること、それに、結果と同じぐらい技術にも集中することだ。
■4.テレビをたくさん見て育った子どもは、番組内容にかかわらず犯罪に手を染める可能性が高い
調べてみると、早くにテレビが見られるようになった地域とずっと後にやっと見られるようになった地域では、犯罪にはっきりした違いが現れた。テレビが導入される前、犯罪の傾向は二つのグループの間で同じようなものだった。でも1970年、テレビの導入が遅かった街に比べて、早かった街は暴力犯罪が2倍になっていた。窃盗犯罪のほうは、テレビが早くに来た街は1940年代までは発生率が低かったが、最終的にはずっと高くなっている。
■5.人の行動は見られているだけで変わる
イギリスのニューカッスル・アポン・タイン大学で心理学の教授を務めるメリッサ・べイトソンという人が、自分の学部の休憩室でこっそり実験を行った。普段、先生たちはコーヒーやなんかの飲み物の代金を「正直者の箱」に入れて払っていた。毎週、べイトソンは価格の表を変えた。値段はまったく変わらないのだが、表の上に載っている小さな写真が変わるのだ。奇数の週には花、偶数の週には人の二つの目を載せた。代金表から人の目が見ているとき、べイトソンの同僚たちが正直者の箱に人れる額は3倍近くになった。だから、今度鳥がバカみたいな案山子に驚いてるのを見て笑いそうになったら、案山子は鳥だけじゃなくて人間にだって効くんだって思い出そう。
■6.チャイルドシートはシートベルトより安全か?
FARSのデータに入っている30年分近い自動車事故をちょっと見てみると、びっくりするような結果が出る。2歳以上の子どもの場合、死亡事故に巻き込まれた子どものうち亡くなった予どもの割合は、チャイルドシートを使っていてもシートべルトを締めていても、ほとんど同じなのだ。
■7.サルにお金の使い方を教えたらどうなったか?
大騒ぎの間に、チェンは視界の隅っこであるものを見かけた。1匹のオスザルが、コインを人間に渡してぶどうだかりんご1切れだかを貰わず、代わりに別のサルに近づいてコインを渡した。コインを貰ったのはメスだ。前にやった研究で、チェンはサルに思いやりがあるのを発見していた。サルが自分から思いやりのある行動をしたのを、このときチェンは目の当たりにしたんだろうか?
ちょっとの間、グルーミングをしてると思ったら――ジャンジャジャーンッ!――2匹はセックスを始めた。
チェンが見たのは思いやりでもなんでもなかった。彼が見たのは、おそらく科学史上初めて観測された、サルの売春だった。
【感想】
◆前作同様きわどい話が連発されているのですが、これまた前作同様に「ネタバレ自重」した面白ネタがいくつも。まずは第1章の「売春婦のマーケティング」ネタ。
前作で『黒人ギャング組織の構造』を潜入調査した、著者陣の友人であるスディール・ヴェンカテッシュが、今度は『売春婦』の実態を完全調査。
「各種プレイの平均価格」やら「ポン引きがいる場合といない場合の稼ぎの違い」等々、フツウでは知りえない情報が明らかにされています。
さらには、「高級娼婦」、アリーの「売春マーケティング」(?)も紹介。
ちなみに、訳者あとがきによると、本書の翻訳者の望月衛さんは、本国のブログに掲載されているアリーの「声」と「身体」でおかわり3杯は楽勝だそうですw(URLは訳者あとがきに記載)
◆そして、個人的に最も興味深かったのが、第3章の「独裁者ゲーム」における「新しい発見」のお話。
「独裁者ゲーム」というのは、簡単に言うとAさんにお金を渡し、AさんはBさんに与えるその金額を決めてよく、Bさんにはその金額に反対できない、というもので、経済学的に考えると、Aさんが全部取ってもよいところ、ある程度(2割ほど)はBさんに与える「結果」が一般的に出ています。
そこで実験者のジョン・リストは、通常のパターン1に加えて、次のような変形パターンを実施。
2.「Bにあげても良いが、逆に1ドル巻き上げても良い」
3.「『BにもAと同じ金額を渡している』ことを告げ、その金額を全部巻き上げてもよく、Bに与えても良い」
さらにもう1つ、「目からウロコ」の4つめのパターンもあるのですが、その中身とそれぞれの実験の結果については、本書をご覧アレ。
きっと、このゲームについての皆さんの考え方が「根底からひっくり返される」と思われ。
◆一方、第5章では「アル・ゴア」の名前が出ているだけあって(?)、「地球温暖化」のお話が。
登場するのは、ネイサン・ミアヴォルドCEO率いる、最近日本にも上陸した「インテレクチュアル・ヴェンチャーズ」。
ネイサンは元マイクロソフトのチーフ・アーキテククト・オフィサーであり、かつてビル・ゲイツが「ネイサンより賢い人なんて1人も知らない」とまで語った人物です。
彼らの考える「画期的な温暖化対策」とは何か。
そしてそれが、「なぜ実現できないのか」。
これまた詳しくは本書でご確認下さいマセ。
◆前作のヒット後、本書の著者陣以外にも「ミクロ経済学を日常に持ち込んだ本」が多数発表されてきました。
例えばこんなところ。
ヤバい社会学
予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
人は意外に合理的 新しい経済学で日常生活を読み解く
また、上記ポイントの3で挙げたエリクソンの研究ネタと「スターの誕生日が偏っている」という話で、著者陣が『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』に記事を書いた後に、エリクソンの研究をテーマにした本で、この本も出ております。
天才! 成功する人々の法則
本書はこれらの本と比べても遜色なく、「本家本元(?)」が満を持して投下したものであり、ぶっちゃけ「単純に面白かった」です。
3年半ぶりの「ヤバ経」を満喫して下さい!
超ヤバい経済学
【関連記事】
「ヤバい経済学 」スティーヴン・レヴィット&スティーヴン・ダブナー (著)(2006年05月07日)ヤバい経済学 [増補改訂版](2007年05月16日)
【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)
【勝間さん激賞!】「天才!成功する人々の法則」がいよいよ発売へ!(2009年05月13日)
【速報!】最強のビジネス本「影響力の武器」の[第二版]がいよいよ登場!!(2007年08月18日)
【編集後記】
◆いよいよ村上春樹さんのインタビュー本も出ますね!夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです
ブログでご紹介するのは難しいのですが、読んでおきたい1冊です。
ご声援ありがとうございました!
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