2010年09月12日
【必読】『ビジネスで一番、大切なこと』ヤンミ・ムン
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【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日とはうって変わってw、真面目なマーケティング本。丸善オアゾのカリスマ店員さんが激プッシュされてたのですが、完全に出遅れて、今頃読んでみた次第です。
アマゾンの内容紹介から。
彼女の授業は なぜ、それほど熱く支持されるのか? 「競争戦略論」マイケル・ポーター、「イノベーションのジレンマ」クリステンセンと並び、ハーバード・ビジネススクールで絶大な人気を誇る、いま、最も注目される女性経営学者、初の著書!…って、これだけでは内容がよくわからないですが、キーワードを挙げるとすれば「差別化の罠」。
従来のマーケティングの問題点と、その打開策について、分かりやすく解説されています!

【目次】
序 棚に並ぶシリアルは、どれも同じに見える
◇第1部 私たちが陥っている「競争」の正体
・自覚はなくても、同じ方向を目指している
・よくしようという努力が、感覚を麻痺させる
・選ぶだけで大変すぎて、愛着どころではない
・競争の群れから抜け出すには
◇第2部 私たちの目を奪うアイデア・ブランド
・世の流れの逆を行く「リバース・ブランド」
・既存の分類を書き換える「ブレークアウェー・ブランド」
・好感度に背を向ける「ホスタイル・ブランド」
・ひと目でわかる違いを出せるか
◇第3部 私たちは、人間らしさに立ち返る
・生まれたてのアイデアには、呼吸する時間が必要
・私たちは、もっとうまくやれる
【ポイント】
■1.自らの執筆スタイルに影響を与えたファインマン研究者が物事の理解に貢献する方法は二種類ある。一つは、パワーポイント的アプローチ。複雑な現象を取り上げ、そこから不要なものを取り除いて核心にたどり着く。もう一つはその逆で、不要なものを取り除くのではなく、思いもよらない方向から微妙なニュアンスを汲み上げ、積み重ねていく。これがファインマンのやり方だった。科学というテーマを日常生活に織り込み、豊かさや味わい、深みを加える。彼こそ、私がディナーに招きたかった男性だ。
ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)
■2.真の差別化は偏りから生まれる
ポジショニングマップや市場調査に限らず、どんな分析手法にも言えることだが、自社の競争力を測るという前向きな努力が、結果的には均質化を促すムチになってしまう。(中略)
真の差別化は、均整の取れた状態から生じるものではない。むしろ、偏りから生まれる。卓越性についても同じことが言える。脳外科医が、自分は小児整形外科やしわ取りの専門医でもあると言ったなら、あなたはうさんくさく思うだろう。なぜなら、どこかが抜きん出ていれば、どこかにその代償があることを、直感的に理解しているからだ。
■3.世の流れの逆を行く「リバース・ブランド」
リバース・ポジショニングの発想は、明らかに従来のビジネスの直感に反する。こうした企業が拡張という競争を拒んでいるのは、顧客を大切にしないからではなく、逆の前提に基づいているからだ。それは、過度に成熟したカテゴリーには、満足しすぎている顧客(必要としていないのに、あふれるほどの便益を与えられている顧客)が大勢いる、というものだ。それゆえ、足すのではなく、そぎ落とす方向に動き出す。
■4.既存の分類を書き換える「ブレークアウェー・ブランド」
AIBOのようなブランドを、「ブレークアウェー・ブランド」と呼びたい。消費に関して言えば、私たちの分類は表面的で恣意的になりがちだが、消費行動に大きく影響を及ばす。ブレークアウェー・ブランドは、そうした消費者の分類プロセスに意図的に介入し、デフォルトに代わるカテゴリーを提示する。「これが一切れのチーズに見えるのはわかっている。でも、空飛ぶじゅうたんだと考えてみたらどうかな」
■5.好感度に背を向ける「ホスタイル・ブランド」
たとえば、製品の欠点を率直に語る、製品が容易に顧客の手に入らないようにする、顧客を魅了するのと同じくらい嫌悪感をも抱かせるようなメッセージを提供し、心地良いプロモーションを拒否する。どの手法を採るにせよ、消費に対する障壁を築き、そのブランドにかかわる意志の強さを試す。消費そのものが私たちの忠誠心を露骨に表し、壁を越えられない他の消費者との間に大きなへだたりを生じさせる。
■6.アドバイザーからの教訓
「僕が自由でいられるのはね、常に100%完璧でなくてはならないとは思っていないからさ。僕のゴールが完璧であることだったなら、僕は世界にほとんど貢献できないだろう。その代わり、僕がやろうとしているのは、僕が見つけられる一番面白い2%を探し出すことだ。そして、そこからしか得られないような視点を提供する。秘訣はね、誰も目を向けないような面白いことに絶えず興味を持つことだ」
■7.競合他社を知ることの弊害
私の観察では、競合他社についての豊富な情報を得ると、少なくともニつの点で影響が及ぽされる。第一に、近視眼的な競争が生み出される。他社が何をしているかを常に気にかけ、監視に労力を費やすようになる。(中略)
第二に、さらに深刻な問題だが、競合他社の行動を模倣しよう(できれば一歩先んじよう)とする傾向が生じる。前に述べたように、比較するモノサシそのものが、同質性を生み出してしまう。ライバルに劣っている領域が図表になっているのを見たら、追いつきたくなる衝動が生まれるのは自然なことだ。それに抗うのは、不可能に近い。
■8.市場調査からはアイデア・ブランドは生まれない
本書で紹介したアイデア・ブランドに共通点があるとしたら、その差別化戦略がいわゆる市場調査に基づいていない、ということだ。これは重要だと思う。ビジネネスの世界では暗黙のうちに、市場調査への多大な投資が顧客重視の表れだと考えられている。しかし、まずいだけではなく、牛の睾丸で作られていると噂されるようなエネルギー飲料が愛されるなんてことを、市場調査が予測できるとは思えない。認知度がないばかりか、強力な競合他社に比べて何の特徴もないサーチエンジンが愛されるなんて、どの市場調査が予測できただろう。
【感想】
◆最近にわかにブームとなっている「米国の大学・ビジネススクールの教授の本」ということで、読む前には苦戦することを覚悟していたのですが、意外とすんなり読了。そもそもページ数も200ページ程度(『20歳のときに知っておきたかったこと』で231ぺーじ)なのですから、これはある意味当然かと。
また、本書のテイスト自体が「マーケティング論」という堅めの内容に反して「読み物」的というか、読みやすさを意識している感じがします。
挿入されている図表もこんなテイストですしw

◆さて、本書では「差別化しようとして、結局皆同じ」になってしまう「差別化の罠」について言及。
具体例として、エビアンを初めとする「ボトル入りミネラルウォーター」が挙げられています。
これは個々の製品が問題というよりも、属する「カテゴリー」が飽和状態(本書では「過度の成熟」と表現)なのかと。
日本でも、コンビニの清涼飲料水のコーナーには一体何種類のドリンクがあるのか見当もつきません。
もっとも、コンビニに置かれている時点で、ある程度の「勝ち組」であって、本当はもっと多くの種類があるのでしょうが。
◆本書では、そうなることを回避して「ブランド価値」を確立しているいくつかのブランドを、タイプ別に紹介。
上記ポイントで個々のタイプについて簡単にご紹介していますが、いくつか具体例を挙げておきます。
●リバース・ブランド……Google、IKEA
●ブレークアウェー・ブランド……プルアップス、シルク・ドゥ・ソレイユ
●ホスタイル・ブランド……ミニクーパー、マーマイト
最後の「マーマイト」というのは、イギリスではかなり一般的な食品のようですが、「他に類を見ない味と香りのため外国人には理解できない味」なのだそう。
それがゆえに、オフィシャルサイトも「好き」か「嫌い」かで2つに分かれていますw
この、「アンチ」も参加できるサイトというのは、なかなかユニークですね。
◆また、上記3つのタイプ以外で成功を収めたブランドの1つが「ダヴ」
2004年に始めた「リアル・ビューティ・キャンペーン」は、「スーパーモデルの美の神話を暴露し、普通の女性の魅力を称賛する」ものです。
私も、「Evolution」と題されたYouTubeの動画は、見た記憶がありました。
なんでも、「このキャンペーンを見てダヴに押し寄せた女性たちは、創業50年の歴史上、最も熱狂的な顧客だった」そう。
◆本書は、ポイントの最初で著者が言っているように、テーマに対して「日常生活に織り込み、豊かさや味わい、深みを加える」スタイルを取っています。
ゆえに、読んで即、実践できるようなノウハウをご紹介しているわけではありません。
むしろ、今までのやり方に疑問を投げかけ、パターン化された思考にストップをかける感じ。
確かに、今まで読んできたマーケット本とは「ひと味違う読み心地」でした。
オリジナリティ溢れるブランド作りを目指すなら必読の1冊!

ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業
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【編集後記】
◆来月初めに出る気になる本。本田直之さんプロデュース作なのだそう。

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この記事へのコメント
おはようございます。
私もこの本買いましたけどまだ読んでないので読んでみます。
私もこの本買いましたけどまだ読んでないので読んでみます。
Posted by タカダヨシヒコ at 2010年09月14日 06:54
>タカダヨシヒコさん
この本は結構深くてオススメです。
もうお持ちならお早めにw
この本は結構深くてオススメです。
もうお持ちならお早めにw
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2010年09月15日 06:32
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