2010年09月08日
【骨太】『コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則 』
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【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「近代マーケティングの父」こと、フィリップ・コトラーの最新刊。昨日の記事の編集後記でも触れたように、本田直之さんから原書の段階でオススメ頂いていた本の翻訳版がやっと登場です。
アマゾンの内容紹介から。
「消費者志向」はもう古い! マーケティングは「2.0」から「3.0」にバージョンアップした。モノを売り込むだけの「製品中心」が「1.0」。顧客満足をめざす「消費者志向」が「2.0」。では、「3.0」とは何なのか。ツイッター、SNS、ウィキペディアなどソーシャル・メディア上の評判が大きな影響力を持つ時代に、マーケティングは何をめざすべきか。“マーケティングの神様”コトラーによる新時代のマーケティング原論!『モチベーション3.0』に続き、マーケティングも「3.0時代」に突入のようです!

【目次】
はじめに
第1部 トレンド
第1章 マーケティング3.0へようこそ
第2章 マーケティング3.0の将来モデル
第2部 戦略
第3章 消費者に対するミッションのマーケティング
第4章 社員に対する価値のマーケティング
第5章 チャネル・パートナーに対する価値のマーケティング
第6章 株主に対するビジョンのマーケティング
第3部 応用
第7章 社会文化的変化の創出
第8章 新興市場における起業家の創造
第9章 環境の持続可能性に対する取り組み
第10章 まとめ
マーケティング3.0の10原則
本書が生まれた経緯
推薦の言葉----インドネシア共和国大統領 スシロ・バンバン・ユドヨノ
解説----早稲田大学商学学術院長兼商学部長 恩藏直人
【ポイント】
■1.マーケティング3.0における消費者の姿マーケティング3.0では、マーケターは人びとを単に消費者とみなすのではなく、マインドとハートと精神を持つ全人的存在ととらえて彼らに働きかける。消費者はグローバル化した世界をよりよい場所にしたいという思いから、自分たちの不安に対するソリューション(解決策)を求めるようになっている。混乱に満ちた世界において、自分たちの一番深いところにある欲求、社会的・経済的・環境的公正さに対する欲求に、ミッションやビジョンや価値で対応しようとしている企業を探している。選択する製品やサーピスに、機能的・感情的充足だけでなく精神の充足をも求めている。
■2.「3i」というコンセプト
マーケティング3.0では、マーケティングはブランドとポジショニングと差別化のバランスのとれた三角形として定義し直される必要がある。この三角形を完全なものにするために、われわれは「3i」というコンセプトを打ち出している。brand identity(ブランド・アイデンティティ)、brand integrity(ブランド・インテグリティ)、brand image(ブランド・イメージ)の三つである。
■3.ニューコークとIKEAのフォント変更に見るブランドコントロール
これれらニつの事例は、きわめて重要なメッセージを伝えている。マーケティング3.0では、ブランドがいったん成功したら、当該ブランドはもう企業のものではなくなるということだ。マーケティング3.0を採用する企業は、企業がブランドをコントロールするのは不可能に近いという事実を受け入れなければならない。ブランドは消費者のものであり、ブランドのミッションはもう消費者のミッションになっている。企業にできるのは、自社の行動をブランドのミッションと一致させることだけである。
■4.アップルに見るブランドの物語
ジョブズが語ったストーリーは序章にすぎなかった。アップル・ブランドの完全なストーリーは、大勢の書き手たち――社員、チャネル・パートナー、そして最も重要な消費者――が協働しながら継続的につくり上げてきたものだ。横につながっている世界では、ブランドを取り巻くストーリーの大きな部分が集合知から生まれる。書き手から書き手へと伝えられていく中で、ストーリーは絶え間なく書き換えられる。市場に流布する最終的なストーリーがどうなるかは、企業にはわからない。だから、最初に本物のストーリーを語ることが常に最善の策なのだ。
■5.自社の掲げている価値を守る企業は社員の称賛を勝ち取る
べーグルワークスのコア・バリューのひとつは健康と安全だ。これらの価値に対する真剣な取り組みを示すために、同社は小麦粉を大袋ではなく小袋で買っている。小袋で買うほうが高くつくにもかかわらず、小麦粉の袋を運ぷ社員が腰を痛めないよう、そうしているのである。企業が誠実さを保ち、自社の唱えていることを実践することは必須の要件だ。雇用主の誠実さを目の当たりにすれば、社員はおそらく会社にとどまって全力を尽くすだろう。価値ををしっかり守ることで、社員の忠誠心が高まるのである。
■6.社会的課題に対する進んだ取り組み方「コーズ・マーケティング」
これは企業がマーケティング活動を通じて特定のコーズを支援するというものだ。コーズ・マーケティングを初めて使ったのはアメリカン・エキスプレスで、自由の女神の修復資金を集める手助けをするために、クレジットカード利用額の1パーセントを修復資金に寄付すると発表したのである。多くのアメリ力人がこのキャンぺーンに応えて、VISAやマスターカードではなくアメリカン・エキスプレス・カードで買い物をした。
■7.イノベーターの事例である「デュポン」
デュポンは新しいよりよい製品を生み出す技術を絶えず探し求めているがゆえに、イノべーターの役割の好例になっている。同社は世界のニーズやテーマの変化に合わせて、自社の位置づけを変えてきた。国力とは軍事力のことだとされていた19世紀初頭には、デュポンは火薬や爆薬のメーカーだった。19世紀末に戦争に生物兵器が用いられるようになり、最も優秀な科学者や発見を擁する国が最強とみなされるようになると、デュポンは合成材料を製造する化学会社に姿を変えた。それから百年余り後、地球温暖化が起き、環境保護の声が高まる中で、デュポンは二度目の大変身を遂げ、省エネ製品を生産することによって持続可能性にカを注ぐ企業になっている。
■8.変化を敏感にとらえ、積極的な変化を
プリウスを発売する前、トヨタは画期的な製品に支えられた破壊的イノべーターとは決してみなされていなかった。むしろ、絶え間ないイノべーションと、時間を要するが確実な意思決定プロセスで知られていた。だが、トヨタは市場のトレンドを読み取り、ハイブリッドカーを時代遅れにならないうちに発売する必要性を理解した。そのためプリウスの発売にあたっては、融通のきかない日本型経営システムの多くを打ち破って、製品開発を迅速に進めたのだ。
【感想】
◆本書はページ的には300ページなく、本来であればすぐ読み終わるつもりでしたが、意外と苦戦。さすがにコトラー先生の本だけあって、私のようなライトユーザー向けに(?)水増しされたビジネス書とは、ちと勝手が違いました。
お恥ずかしながら、読了するまで2時間半ほどかかってしまったという。
なお、翻訳書だけあって、注が充実しているのは当然として、索引まで付いているのがありがたいです。
◆さて、本書のテーマである「マーケティング3.0」。
コトラー教授たちはこれを「協働マーケティング」「文化マーケティング」「スピリチュアル・マーケティング」の融合と位置づけています。
それぞれについて巻末の解説から引用。
協働マーケティングでは、製品開発やコミュニケーションにおいて顧客や他社をいかに参加させ、協力を得るかが問題になる。文化マーケティングでは、グローバル化によるパラドックスといった文化的課題を自社のビジネスモデルの中心に据え、グローバル化によって引き起こされる消費者行動の変化にも対応できるようにする。そして、スピリチュアル・マーケティングでは、単に人々のニーズを満たす製品やサービスだけではなく、精神を感動させる経験やビジネスモデルを提案し、心理精神的便益の実現が進められる。この中では、やはり解説で指摘があったように、「スピリチュアル・マーケティング」の部分が、従来のコトラー教授の理論とは変わっているよう。
◆上記ポイントでも触れているように、ソーシャルメディアの発達につれて、ブランドコントロールも以前より難しくなっています。
とはいえ本書は、そのソーシャルメディアの使い方について指南するものではありません。
位置づけとしては、「戦術本」ではなく「戦略本」。
自分自身、読む前にはある程度の戦術論を予想していたので、一応念のため。
◆ところで、記事としては表現できなかったものの、上記の「3i」をはじめとして、本書では図表が適度に掲載され、理解を助けてくれています。
事例もポイントでも引用しまくったように豊富。
今現在、実際にマーケティングのお仕事に関与されている方なら、押さえておくべき1冊であることは間違いないかと。
個人的には上記の「3i」の考え方は、「パーソナルブランディング」に応用できそうな気がしております。
…ここの所を、もう1回読み直さねば。
新時代のマーケティングを身につけるなら!

コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
【関連記事】
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【水平思考】「コトラーのマーケティング思考法」(2009年02月06日)
【編集後記】
◆昨日から読み始めた本。
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
500ページ超あるので、暇を見て少しずつ読むツモリですが、いつ読み終わるのかは不明ですw

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この記事へのコメント
モチベーション3.0みたいですねw
やはりソーシャルメディアによって大きくマーケティングが変わっていくんでしょうねぇ
やはりソーシャルメディアによって大きくマーケティングが変わっていくんでしょうねぇ
Posted by タカダヨシヒコ at 2010年09月08日 18:30
>タカダヨシヒコさん
以前は情報はマスメディアからの1方向だったのが、消費者間でやりとりできるようになったのが大きいと思います。
「ブランドは消費者のもの」、というのは確かにそうだな、と。
以前は情報はマスメディアからの1方向だったのが、消費者間でやりとりできるようになったのが大きいと思います。
「ブランドは消費者のもの」、というのは確かにそうだな、と。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2010年09月09日 07:44
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