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2010年08月27日

【スゴ本】『売り方は類人猿が知っている』ルディー和子


売り方は類人猿が知っている(日経プレミアシリーズ)
売り方は類人猿が知っている(日経プレミアシリーズ)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨年暮れに出ていた「マーケ本」

出た当時にリアル書店で見た記憶はあったものの、タイトルと装丁が微妙だったのでスルーしていました。

ところが最近よく見かけるようになり、ふと気が付くと帯に糸井重里さんの推薦の言葉が。

ググってみたら、先日「ほぼ日」で対談なさってたんですね。

ほぼ日刊イトイ新聞 - ルールを原始的に。 ルディー和子さんと、お金と性と消費の話。

このマーケッター同士の対談も興味深いんですが、本書はそれに負けず劣らず面白いです!

思わず付箋も雨あられ……。

売り方は類人猿が知っている









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【目次】

第1章 不安なホモサピエンスはモノを買わない

 不安を一生感じ続ける日本人
 最初に生まれた感情は「恐れ」
 恐怖を感じる災害用ロボット ほか

第2章 人間もサルも「得る」よりも「失う」を重く考える

 アインシュタインよりも偉い科学者とは
 2足歩行はクールビズと同じ
 「妬み」のおかげで民主主義が実現した ほか

第3章 金持ち父さんは貧乏父さんがとても気になる

 シアワセ相対性理論
 金持ちに買い控えさせる罪悪感
 犬がネコに見えてくる仕組み ほか

第4章 自動車の売上と孔雀の羽との関係

 孔雀の羽のミステリー
 目玉模様が多い孔雀がモテる理由
 セクシュアル・デイスプレイ ほか

第5章 感情と記憶が長寿ブランドをつくる

 川に投げ込んで記憶させる
 頭の中の複雑なファイル・システム
 夢と深夜の道路工事の共通点 ほか

第6章 人間も進化の歴史から逃れられない

 トレーダーの脳を調べるニューロファイナンス
 お金には無意識に反応する
 人間にとってお金とはなんなのか? ほか


【ポイント】

■1.現在の経済状況よりも、将来の不安が重要
不景気でも今後の展望がはっきりしていれぱ高額品も売れます。現在の経済状況よりも、将来にどれだけ不安を感じているかのほうが重要なのです。私たちの遠い祖先である猿人が、いまの時代にタイムスリップしてきたら、曖昧な状況に不安を抱き貯金に精を出すはずです。なぜなら、現代人も猿人も同じ心の仕組みを持っていて、曖昧な状況に無意識のうちに恐れを抱くようにつくられているからです。


■2.購買を決定するのは「論理」ではなく「感情」
 この実験結果をふまえて、購買決定は、何かを買うことからくる快感とそれに対してお金を払う不快感とのバランスのうえに成り立っていると結論づけられました。
 つまり、消費者は快・不快の感情で購買するかしないかを決めているのです。快を生む側坐核も不快を生む島皮質も古い脳である大脳辺縁系に属しています。購買決定には論理的思考をする新皮質の前頭葉の影響力は余りないようです。


■3.不景気だとモノを買うことに罪悪感を覚える
私たちは、他人に共感するミラーニューロンを持ち、自分だけ良い目をみることに罪悪感を感じたり恥ずかしく思う道徳的感情を持っています。
 ですから景気が悪くなって、低所得の人たちの暮らしぶりが毎日のようにテレビや新聞で報道されると、彼らに感情移入してその悲惨さに身につまされる思いをするし、また、自分が賛沢な暮らしをしていると他人に思われないようにしなくてはいけないと、無意識のうちに気をつけるようになるのです。


■4.女性は配偶者に経済力を求める
 現代女性は社会進出を果たし自ら経済的なカをつけてきたにもかかわらず、昔と同じ傾向を示している。配偶者を選ぶ判断基準において、女性は経済力を男性よりも2倍高く評価しています。この数字は日本ではより高く、女性は男性に比べて、配偶者の経済力を2.5倍も重視するという結果が出ています。


■5.セックスや交際は面倒くさい?
 男性は、ポルノを見て、脳内でシミュレーションすることによって、実際に自分が直接体験しているかのように感じる傾向が高いと考えられています。結局は、現代の社会環境において、セックスから得られる快感刺激は、他の手段で得られる快感刺激に比べて、それほど大したレべルでもないことが問題なのでしょう。(中略)

 日経産業地域研究所が20000年に実施した調査によると、いまの20代の男女において、異性との親密な交際を、「お金がかかる」「面倒でわずらわしい」「趣味や個人的な楽しみの時間が減る」と考える人の割合が高くなってきているそうです。「面倒でわずらわしい」と答えた人は、一昔二昔前の2倍以上になっています。


■6.「無駄な消費」が景気回復には必要
人類の消費の多くの部分は、生存と繁殖に関係しています。生存に関する消費は生活必需品が多く値段もそれほど高くありません。一方で、繁殖に関係する消費は、異性の目を引くための「無駄な消費」です。無駄な「性的ひけらかし」のための商品は、無駄であるがゆえに、高額品が多いはすです。しかし、異性に興味のない消費者が増えたら、異性の目や気をひくための無駄な消費はしなくなります。


■7.ライフサイクル理論はブランドには関係ない
 ライフサイクル理論が発表されたのは1965年ですが、すでに70年代には、実際のブランド調査の結果として妥当性がないと指摘されています。100種類の商品カテゴリーのうち4段階のサイクルの流れに従っているものは17%しかなく、とくにブランドと呼ばれる著名商品は、ライフサイクル曲線にはまったく沿っていないと証明されています。


■8.節約してお金を使わないのは損失回避性のため
 顧客の本当の心理が理解できるようになると、企業が採るべき戦略や戦術も、「脈絡なく、単なる気まぐれで商品を選択しているように見える消費者」に対するものとは異なってくるはずです。不安で巣ごもりしている消費者を「低価格」というエサだけで外におびき出そうという戦術は、正しいものだとは思えません。
 消費者は、エサ(低価格商品)を手にしたら、すぐ巣に逃げ帰ります。そして再び外に出てもらうためには、より割引率の高いエサを用意しなくてはいけません。消費者の心によみがえっている太古の心理状態を理解すれぱ、採るべき戦略もおのずと明らかになってくるはずです。


【感想】

◆冒頭で付箋の画像をご紹介しましたが、ホントにネタ的に秀逸なものが多く、選ぶのに苦労しました。

ジャンルとしては、行動経済学系になるわけで、今までご紹介してきた本と同じく「それ自体がそもそも面白い」んですけど、「何でそういう行動を取るのか」まで踏み込んでいるのが、本書の特徴です。

そしてそのキーワードが「類人猿」

上記の「ほぼ日」の対談でも言われているように、要は、「人は昔も今もそんなに変わらない」(太古の昔から)と言うことです。


◆違うのは周りの環境であって、例えば現在は「将来に不安を抱えている」という状態かと。

その場合に取るべき戦略は何か……という話になると、もはやマーケティングなワケで、単なる行動経済学の理論から、具体的な話に発展。

上記ポイントでは詳しく触れておりませんが、人は、「買いたい」という欲望を刺激する商品を見ると「快感」を感じ、「値段が高すぎる」と考えると「不快感」を感じます。

ところが、「安い価格」に対しては、脳内のどこも「快感」を感じてないのだそう。

それでは購入した商品に思い入れも何もないでしょうし、より安い物があれば、そちらに流れて当然なのかも。


◆かといって、バブル期のように、異性のための「無駄な消費」をできる独身男女ももはや希少。

そもそも、男性にとって交際の大きな「快感」であるセックス自体、他の快感と比べて、そんなに突出していない状況です。

ならば、「面倒くさい」と思ってしまうのも当然でしょう。

私が学生の頃は、たとえ面倒くさくとも、それに代わるものが少なかったんですけどね(遠い目)。

そういえば、私も結婚してからというもの、スーツや靴にかけるお金が極端に少なくなりましたが、もし現代の独身ビジネスパーソンが皆このように支出を抑えているとしたら、それはデパートもつぶれます罠

実際、私がかつて、最もスーツを購入していた有楽町西武も年内で閉店しちゃいますし。


◆ところで、冒頭の「ほぼ日」の対談によると、本書はあまり売れていないのだそう(具体的な部数の明記は無し)。

それを糸井さんは「悔しいなぁ」と表現されており、対談内では、やたらとルディーさんの考えに共感されていました。

ただ、今回の「ほぼ日」のおかげか、リアル書店ではよく見かけるようになりましたし、私も今さらのように読んで、「これは面白い!」と思った次第。

何らかの「企画」を考えるべき方なら、本書は参考になるでしょうし、また、マーケッターの方だけに独占させておくには惜しい1冊と言えます。


糸井さんじゃなくともオススメせざるを得ません!

売り方は類人猿が知っている(日経プレミアシリーズ)
売り方は類人猿が知っている(日経プレミアシリーズ)


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ヤバい経済学 [増補改訂版](2007年05月16日)

「行動経済学」友野典男(著)(2006年07月20日)


【編集後記】

◆連日の勝間さん本ですが、こちらはマスト

そこまで言うか!
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どんな鼎談になったのか、大変興味があります!


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