2010年08月11日
【オススメ】『スイッチ! 「変われない」を変える方法』チップ・ハース, ダン・ハース
スイッチ!
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、当ブログでも大人気だった「アイデアのちから」のハース兄弟の最新作。アイデアのちから
参考記事:【オススメ】「アイデアのちから」が予想以上に面白かった件(2008年11月25日)
今回のテーマは、「いかに変化を起こすか」ということで、いくつもの事例を紹介しながら、「変化のしくみ」を掘り下げています。
アマゾンの内容紹介から。
会社や人生に持続する変化を起こすのが難しい。その原因はわたしたちの脳の中にある。「象使い(理性)」と「象(感情)」の支配権争いだ。象使いがスリムな体形を欲していても、象はがケーキに飛びついてしまう。頭のいい象使いが変化を求めても、象はいまの手順が大好きなのだ。だが、象と象使いの性格を研究していくうちに、ちょっと工夫するだけで、変化は驚くほど簡単なものになることがわかる。 本書では、大きな権限や強固な意志の持ち主ではない「ごく普通の人たち」が、会社や国を動かすような変化を生み出した例を豊富に挙げながら、それらに共通する「変化のしくみ」を明かしていく。まさに、「企業の問題解決」から、「子育て」まで応用範囲の広いスゴ本。
思わず付箋も貼りまくりました!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 「変化」の三つの意外な事実 象使いに方向を教える
■象使いに方向を教える
第2章 ブライト・スポットを見つける
第3章 大事な一歩の台本を書く
第4章 目的地を指し示す 象にやる気を与える
■象にやる気を与える
第5章 感情を芽生えさせる
第6章 変化を細かくする
第7章 人を育てる 道筋を定める
■道筋を定める
第8章 環境を変える
第9章 習慣を生み出す
第10章 仲間を集める
第11章 変化を継続する
さあ、スイッチしよう
問題解決Q&A
訳者あとがき
注
【ポイント】
■1.セルフコントロールは消耗資源であるさまざまな研究によって、自己管理が心身を消耗することが証明されている。たとえば、ウェデェング・レジストリ(訳注/アメリカで、結婚時に新郎新婦がつくる結婚祝儀の"ほしいものリスト")の作成や新しいコンピュータの購入など、複雑な選択や検討をさせられた人々は、させられていない人々よりも集中力や問題解決能力が落ちることがわかっている。
■2.比較的小さな解決策が大きな問題を解決する
これこそ、本書で繰りかえし取り上げるテーマだ。大きな問題が、それに匹敵するくらい大きな解決策で解決されることはほとんどない。むしろ、数週間、ときには数十年間の小さな解決策の積み重ねによって解決されることが多い。この非対称性こそ、象使いの分析好きが裏目に出やすい理由なのだ。
■3.「地元でお金を使おう」という「明確な台本」の効果
生徒たちは、印象的なスプレッドシート、図表、グラフを用意していた。しかし、それだけでなく、複雑なデータを意外でシンプルな事実で言いかえていた。ハワードの住民が地元で使うお金を10パーセント増やすだけで、地元の経済を700万ドルも押し上げられると計算していた。(中略)
1年後、サウスダコタ州の税務課は驚くべき数値を発表した。マイナー郡で消費されたお金が生徒の期待を2倍以上も上回り、1560万ドルも増えたのだ。
■4.厳格な経理担当者が心を入れ替えたワケ
アッテイラは、非営利団体の金銭的な窮状を目で見て感じた。まさに破産すれすれだった。小切手が一枚とどこおっただけで、何かの支払いができなくなる。給料を遅らせるか、食事を減らすか、子どもの診察を延期するかしなければならない。アッテイラは初めて、自分のつまらないこだわりが被害を生み出していると直感的に理解したのだ。オフィスに戻るころには、すっかり改心していた。
■5.行動を促すために「ゴールラインの近くにいる」と感じさせる
どちらの客も「ゴール」は同じだ。8回洗車で1回無料。しかし、心理は異なる。一方は、ゴールまですでに20パーセント進んでいる。しかし、もう一方はゼロから始めなくてはならない。数力月後、8個用のスタンプカードを受け取った客は、19パーセントしか無料の洗車までこぎ着けなかった。一方、スタート・ダッシュを切った客では34パーセントがスタンプをためきった(しかも、ためきるまでの時間も短かった)。
■6.利息を無視する「雪だるま式返済法」の効果
大半の金融アドバイザーは、お金を最大限に有効活用するため、高利息の負債から順番に支払うよう勧めている。しかし、ラムジーが解決しようとしているのは効率最大化の問題ではない。象の問題なのだ。人々が金銭トラブルに陥るのは、コントロールを失うからだ。人は負債の山をまえにすると無気力になっていく。そして、計算ではその無気力と戦うことはできない。自分でも勝てるという確信がなければ戦えないのだ。高利息のクレジットカードの2万ドルの借金に185ドルを返しても、絶望感は消えないだろう。しかし、滞納中の185ドルの公共料金の支払いを済ませれば、リストから消すことができる。負債に勝ったことになるのだ。
■7.セルフコントロールを課すよりも、環境を変えるほうがうまくいく
ワンシンクは、食事を制限するには、まず皿の大きさを制限するべきだと考えている。いま使っている大皿をクロゼットの箱にしまって、毎晩の夕食をサラダ用の皿で取るようにしよう。大きなゴブレットではなく、小さなワイングラスを使おう。(中略)
食器棚の皿、ボウル、グラスを取りかえるというシンプルな環境の変化で、食習慣に大きな影響を及ぼすことができるのだ。
■8.環境を変え、習慣を生み出す「チェックリスト」
チェックリストには単刀直入な指示が記載されていた。「医師はライン挿入のまえに両手を洗う」、「挿入時に消毒液で患者の肌を消毒する」などだ。チェックリストには新たな科学もなく反論の余地はなかった。しかし、その結果は驚くべきものだった。ミシガン州のICUで一年半にわたってチェックリストを実践したところ、ライン感染がほとんど発生しなくなり、病院は推定で1億7500万ドルのコストを削減できた。(中略)
これほどシンプルなチェックリストにここまでの効果があったのはなぜか? チェックリストは人々に最善策を教え、絶対に正しい行動を示してくれるからだ。つまり、チェックリストは象使いに方向を教えるのに効果的なのだ。
【感想】
◆冒頭でご紹介しても良かったのですが、実は本書の第1章に、「本書における基本的なフレームワーク」が収録されています。●象使いに方向を教える
抵抗しているように見えても、実は戸惑っている場合が多い。したがって、とびきり明確な指示を与えよう。
●象にやる気を与える
怠けているように見えても、実は疲れきっている場合が多い。象使いがカずくで象を思いどおりの方向に進められるのは短いあいだだけだ。したがって、相手の感情に訴えることが重要。象に道を歩かせ、協力してもらおう。
●道筋を定める
人間の問題に見えても、実は環境の問題であることが多い。本書では、この状況や環境のことを「道筋」と呼ぶ。道筋を定めることで、象使いや象の状態にかかわらず、変化を起こしやすくなる。
上記目次にもあるように、この3つが本書の根幹をなしており、ほぼ全ての事例がこれに則しています。
なるほど、「理性」「感情」「環境」をコントロールすることで、「望む変化」を起こすことができるのだな、と。
◆個人的には、初っ端の「セルフコントロールは消耗資源」というクダリに打ちのめされました。
今、ムスメに勉強を教えていて、もうちょっと「意志の強さ」が身に付かないものかと悩んでいたのですが、どうもせっつくのは逆効果だった模様。
逆に、ストレスをあまり感じていないような音楽教室の課題はスイスイできるようになっているので、確かにそうだな、と。
…この部分はヨメにも読ませなければ。
◆また、7番目(本書では冒頭でも登場)のダイエットの事例も秀逸です。
「人」の問題ではなく、「環境」の問題である、と。
この辺は、本田直之さんの考え方に近い感じ。
要は、「システム」に落とし込むことによって、習慣化でき、結果的に効果があがるワケですね。
そういえば、本書の中では、「小さく変化させる」というお話の絡みで、本田さん監修のこの本も登場しております。
脳が教える! 1つの習慣
参考記事:【実践!】「脳が教える! 1つの習慣」ロバート・マウラー(著),本田直之(監修)(2008年07月06日)
◆もちろん本書において、こういった「個人」の問題以上に多いのが、「企業や団体での問題解決」の事例。
多くの人を動かすためにどうしたらいいのか?
例えば「5年間で10億ドル単位で購買費用を節約」したジョン・ステグナー。
ジョン・コッターの企業変革ノート
「生徒の8割が貧困層の高校」を立て直した、モリー・ハワード。
顧客思考に転換して「業界内最高収益」を上げた、ラックスペース等々。
スペースの関係で割愛したものの、1つ1つでも本になりそうな(なっているものもありますがw)事例が満載でした。
◆このハース兄弟の前作「アイデアのちから」は、図抜けて面白い一方、「実務で使えるか」というと、マーケティングやクリエイティブに携わる方以外、正直微妙だったかもしれません。
それに対して、本書はおそらく、ほとんどのビジネスパーソンにおいて「実践可能」。
何らかの問題を抱えているのは、「企業」だけでなく、「個人」もそうなのですから。
とりあえず私は、本書収録の「5分間お部屋レスキュー」を実践してみます(詳細は本書をw)。
これはオススメせざるを得ませぬ!
スイッチ!
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【編集後記】
◆今発売のプレジデントは、「読書特集」!PRESIDENT (プレジデント) 2010年 8/30号 [雑誌]
今回はコウスケさんに先を越されたので、記事は自重しますw
ご声援ありがとうございました!
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スイッチ!作者: チップ・ハース出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2010/08/06メディア: 単行本(ソフトカバー) ダイエットを決意しても、ついつい甘いモノを食べてしまうのはなぜか? 試験の勉強をしなければいけないはずなのに、大掃除に逃げてしまうのはなぜか? 本
自分を変える、他人も変える:スイッチ!【本読みの記録】at 2011年03月21日 22:46
この記事へのコメント
おはようございます。
こちら、書店で見て絶対に買いの一冊としてリストに入れてあります。
ただ、積ん読にしている本たちの解消をある程度進めている最中なためまだ買っていないのですが、そろそろ積ん読も20冊を切ってきたので購入時期近しです。楽しみ!
こちら、書店で見て絶対に買いの一冊としてリストに入れてあります。
ただ、積ん読にしている本たちの解消をある程度進めている最中なためまだ買っていないのですが、そろそろ積ん読も20冊を切ってきたので購入時期近しです。楽しみ!
Posted by Taka@中小企業診断士(業務休止中) at 2010年08月11日 10:34
>Takaさん
著者の二人は「面白ネタ」の人かと思いきや、今回の本はかなり「使え」ます。
私はさっそく、ムスメに対する態度を変えました。
アフォなことばかりやってくれてるのですが、うーん、我慢我慢(汗)。
早めに読んでみて下さいね〜!
著者の二人は「面白ネタ」の人かと思いきや、今回の本はかなり「使え」ます。
私はさっそく、ムスメに対する態度を変えました。
アフォなことばかりやってくれてるのですが、うーん、我慢我慢(汗)。
早めに読んでみて下さいね〜!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2010年08月12日 04:46
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