2010年07月25日
【受け手志向】「心を動かすプレゼンの技術」の8つのポイント
心を動かすプレゼンの技術 人前で話すのが苦手なあなたへ (角川oneテーマ21)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、類書とはひと味違ったプレゼン本。著者の藤沢晃治さんの作品は、ブルーバックスの「分かりやすい〜の技術」三部作でも分かるように、情報を受け取る側を意識されているものが多いです。
本書も同様に、「いかに見栄えの良いプレンゼンをするか」ではなく、「いかにメッセージを聴講者に理解してもらうか」に注力されている点が秀逸。
ただプレゼンをするだけでなく、それによって「成果を挙げたい」なら、「一読の価値アリ」だと思われ!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 成功するプレゼンとは何か?
1-1 巷に溢れる駄目なプレゼン
2-2 プレゼンの三つの基本要素
第2章 伝える技術
2-1 概観を先に与える
2-2 視覚情報を与える
2-3 聴講者に「届ける」意識を持つ ほか
第3章 プレゼンの話術
3-1 発声の留意点
3-2 「脳の入口」対策
3-3 眠らせない話術 ほか
第4章 スライド作成の手順
4-1 スライドのメリット
4-2 文字表示
4-3 図解表示 ほか
第5章 説得する技術
5-1 論理力
5-2 構成力
5-3 比喩力 ほか
【ポイント】
■1.聴講者に「お持ち帰りメッセージ」を与えよプレゼンで成功するには、プレゼンの種類を問わず、聴講者に「有意義感」を持たせることです。人はプレゼンに参加する場合、自分の投資時間という経済損失に対し、その「見返り」を要求します。その見返りの価値が投資時間の価値を下回る場合、「時間の無駄だった」となり、上回る場合、「参加してよかった」となるのです。(中略)
聴講者全員に、その「何か」として、プレゼン会場から確実に持って帰っていただきたい重要メッセージを与えるのです。プレゼンで伝えたい核心的メッセージです。これが私の言う「お持ち帰りメッセージ」です。
■2.発声の際には語尾に注意せよ
語尾は、発音が不明瞭になりやすいだけではなく、声量も小さくなりがちです。クリアな発声で話し始めたのに、語尾になるとムニャムニャで終わるのです。語尾だけが不明瞭になる癖を持つプレゼンターもいます。語尾はべテランのプレゼンターにとっても落とし穴なのです。
■3.早口だけは避けよ
トークの失敗の中で一番多いのは、この早口タイプでしょう。気が小さくて、緊張で早口になるタイプから、自信過剰で早口になるタイプ、聴講者への思いやりが欠如して結果的に早口になるタイプなどいろいろです。原因は違っていても、早口で発せられるメッセージは、聴講者の脳の入口までには届いても、そこで溢れてしまい、その先の脳の保管庫までには届きません。
■4.一文、一文は短くせよ
プレゼンターが早口を避けて、どんなにゆっくりと丁寧に話しても、句点「。」で区切られるワンメッセージが長いと、やはり、脳の入口での仕分け作業は苦しくなります。文字数オーパーで処理に失敗し、「意味不明」と判定されるかもしれません。脳の入口には次から次へと情報が殺到していますから、ワンメッセージを悠長に吟味、分析してはくれないからです。
■5.抑揚に留意し、単調にならない
バラエテイ番組の司会者がニュース原稿を明瞭に読むアナウンサーのような口調だったら、どんな感じになるかイメージしてみてください。つまらない番組になってしまいます。視聴者は寝てしまうでしょう。プレゼンでもプレゼンターがそんな口調で話していたら、聴講者は寝てしまいます。(中略)
そうです、プレゼンの話術での敵は「単調」なのです。同じ口調をずっと続けることです。学生時代の「つまらない授業」を思い起こしてください。
■6.「要約サービス」を心がけよ
気の利いたプレゼンターは、聴講者の脳の代行サービスをして、聴講者の負担軽減をしてあげるのです。趣旨は「ゴチャゴチャといろいろ話していますが、ポイントは〇〇〇だけです。後は忘れていただいても結構ですよ」のようなサービスです。このようなサーピスをされると聴講者の脳は、ぐっと楽ができるので、「分かりやすい」という脳の快感につながります。
常時、「要するに」や「つまり、私が言いたいことは」で導かれるような要約サービスを心がけて欲しいと思います。
■7.プレゼン中、時間を気にしていることを聴講者に悟られない
腕時計をチラチラ見たり、会場設置の壁時計などをチラチラ見るのはNGです。私は何度もこの失敗をしました。アンケートで「講師が常に時間を気にしていたので、気分的に落ち着けなかった」などと手厳しいご批判をいただいたこともあります。
■8.比喩を効果的に用いて素早く理解させよ
実は、プレゼンターが喩え話などしなくても、聴講者の脳はアナロジー方式によって「似たもの検索」を自動的に開始します。聞き手の脳が素早く理解するために欲しがっているその「似ているもの」を外から与える話法が喩え話なのです。聞き手の脳の要求を叶えるのが喩え話なのです。
【感想】
◆ポイントとしては挙げていないのですが、本書の最初の方に「耳ではなく、脳に届ける」というお話があります。要は、プレゼンターによってメッセージが語られても、それが聴講者の「耳」まで達し、さらには「脳」まで届くことによって、はじめて意味がある、と。
この場合に藤沢さんの言われている「脳」とは、「入口」ではなく「保管庫」。
しっかり理解した上に、記憶に残るところまでを目指しています。
プレンゼンターはプレゼンの準備の過程で「どう話そうか」といろいろ戦略を練ります。しかし、この根本の発想が誤りだと言いたいのです。
「どう話そうか」ではなく、「どう届けようか」との意識改革が必要なのです。
◆どんなに資料が優れていても、「脳まで届かない」典型的な例が「聴講者の居眠り」。
上記でも挙げたように「単調」なプレゼンは、確かに眠気を誘います。
このブログでも以前書いたことがあるのですが、私は社会人時代に、課として新入社員教育のとある項目を担当することになり、新入社員に混じって、その年講師を担当した先輩の講義を受けたことがありました。
その時、私の目に映ったのは、眠気に勝てず「居眠りをしている新入社員の群れ」。
冗談抜きで、1/3以上が爆睡していました。
◆そこで翌年、同じ講義を担当することとなった私が意識したのが、藤沢さんも言われている「抑揚」です。
「声の大きさ」と「話すスピード」を意識的に変化させることによって、とりあえず、居眠り率だけは画期的に改善。
さらには、多少の「笑いの要素」を織り込むことによって、アンケートの結果も上々で、翌年以降も私が担当することになったという。
ただし、藤沢さんの言われるような「お持ち帰りメッセージ」はなかったですし、「比喩」や「要約サービス」のことなど、考えたこともありませんでした。
そういう意味では「脳まで届いても何も残っていない」可能性が高かったとは思います。
◆実際、スキルフルなプレゼンを行って、受講者が「SUGEEE!」となったとしても、時間が経って「すごかった」という感想しか残らなかったら、プレゼンの意味がありません。
そして本書で目指すのは、それと真逆な「受講者が理解し易く記憶に残る」プレゼンです。
さすがに「分かりやすい〜技術」というシリーズを出されている藤沢さんの本だけあって、「聴講者にメッセージを届ける」、という意識が徹底されており、類書とはひと味違う出来だと思われ。
ある程度プレゼンがこなれた方こそ、本書を読んで今いちど、「プレゼンの本質とは何か?」について考えてみるべきかもしれません。
「脳に届く」プレゼンを目指すなら必読!
心を動かすプレゼンの技術 人前で話すのが苦手なあなたへ (角川oneテーマ21)
【関連記事】
【Amazonキャンペーン有】「口ベタでも人を動かす 魔法のプレゼン」山田進一(2010年07月14日)【スゴ本】『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則』カーマイン・ガロ(2010年07月11日)
【プレゼン】「世界最強のプレゼン術」ジェリー・ワイズマン(2010年03月08日)
【テク満載!】ブライアン・トレーシーの 話し方入門(2008年08月03日)
【おすすめプレゼン本】「SEのプレゼン術」克元 亮(2008年07月02日)
【編集後記】
◆今日の本の「この商品を買った人はこんな商品も買っています」で挙がっていた1冊。論理的にプレゼンする技術 聴き手の記憶に残る話し方の極意 (サイエンス・アイ新書)
こちらも中々評判良さそうです。
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「プレゼンテーション」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
この記事へのトラックバックURL
●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。