2010年07月16日
【理系式アイデア本】『ブレーン・ハッカー 巨人の「肩」に乗れ!』デイビッド・マレイ
ブレーン・ハッカー 巨人の「肩」に乗れ!―「新しいこと」を次々に考える“脳”! (East Press Business)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、本田直之さん翻訳の「アイデア本」。原題が「Borrowing Brilliance」と言うだけあって、アイデアを「借りてくる」ことで、素晴らしいアウトプットを生み出せることが、数多くの事例とともに紹介されています。
ところで、この手のアイデア本として珍しいのが、著者のデビッド・マレイが「理系の発明家」であるということ。
アマゾンの内容紹介から、著者経歴を引用します。
この経歴を踏まえて読むと、本書の内容がより一層「腑に落ちる」ハズ!発明家、企業家。工学部の学生の頃、ニュートンの「自然哲学の数学的諸原理」に触発され、卒業後は航空宇宙エンジニアとして、スペースシャトル、次期戦略ミサイル、地球を周回する国際宇宙ステーションなどをニュートンの方程式を応用し、NASAとの協働で設計・建設。その後、いくつかの会社を起業、最初の会社は「Inc」誌によって「急成長した全米100社」に選ばれた。フォーチュン500の企業数社で重役を務めたほか、ソフトウェア会社インテュイット社のイノベーション部門の統括経験もある。
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【目次】
"うまくいっている人のやり方"を応用する この本の「レバレッジ発想法」こそ"創造"の秘密! 本田直之
はじめに これこそ究極の「発想の転換」 「コペルニクス」たちの“目と頭”を借りる法
1部 創造的アイディアの「建設」 巨人の「頭脳」の“いいところ取り”する!
定義する―「解決しようとしている問題を定義する」
借りる―「似たような問題のあるところから、アイディアを借りる」
組み合わせる―「借りてきたアイディアを、結びつけ、組み合わせる」
2部 創造的アイディアの「発展」 巨人の「頭脳+α」で行動する!
培養する―「組み合わせた材料を培養して、解決に導く」
識別する―「解決策の長所と短所を見分ける」
育てる―「短所を排除し、長所を伸ばす」
結論
【ポイント】
■創造的なアイディアは、解決しようとする問題の上に成り立つチャールズ・ダーウインの伝記の中に、このテーマに関する彼の考えが書かれていた。「振り返ってみると、問題を解くことよりも問題そのものを見極める方が難しかった」。アルバート・アインシュタインの伝記にもこう書かれている。「問題をはっきりさせることは、解くことよりもずっと大切だ」。
■「材料」がアイディアを決定する
使う材科がエンジニアの創造するものの形を決めるように、あなたのアイディアも、それを築くために使う材料に左右される。だから、アイディアを構築する前には、解決のための材料を集めなければならない。どんな場合でも、材料が解決策の性質を決める。何もないところから、何かを作ることはできない。何か別のものから作るのだ。
■「正反対」から借りてくる
借りるアイディアを探しにいくときに、自分の業界から離れて踏み出す一歩は、正反対の方向であるべきだ。あなたと同じ市場で「大きい商品」が成功しているなら、「小さい商品」を作ってみよう。「柔らかい商品」が成功しているのなら、「固い商品」を作ることを考えてみよう。
■メタファーを「確立」する
ルーカスが、探していた「SFと神話」という組み合わせをついに見つけたのは、3度目の草稿を書いているときだった。(中略)
ある日、彼は自分が「神話の要素を持ったファンタジー」という形のSF脚本を書こうとしているのだということに気づいた。スパイ映画でもない。西部劇でもない。古代の伝説だ。「スター・ウォーズ」のアイディアが生まれたのは、このときだった。ルーカスの頭の中でふたつのアイディアが融合し、意味と目的をもったものに育ち始めた。
■潜在意識に創造のプロセスを教える
あなたが定義した問題、集めた材料、たとえによって構築した枠組みを、「意識による思考」という控室から、「潜在意識による思考」という宴会場に招き入れるのだ。つまり、影の自分に、問題、借りてきたアイディア、そして前途有望な組み合わせを与えるということだ。
■「怒り」や「興奮」は創造の起爆剤
創造的思考では、感情を利用しよう。興奮しよう。怒ろう。喜ぼう。(中略)
伝えられるところによると、ステイープ・ジョプズ、ニュートン、ウォルト・ディズニー、マリー・キュリー、ビル・ゲイツは、感情を利用した。彼らは、考え、「そして」感じた。あなたもそうすべきだ。心の中の「ブイ」を監視し、水面下の深いところでアイディアがひっかかったら、引き寄せる準備をしておかなければならない。その釣り針と糸こそ、創造的なプロセスにおける感情だ。
■問題を「再定義」する
へンリー・フォードは、「世界で一番安い車を作る」と彼が説明した「モデルT」に関して、とても具体的な問題を解決した。一方、ゼネラルモーターズ社のCEO、ウィリアム・デュランは、この問題を言い換えて、「人びとが買える車を作る」と再定義した。ふたつの問題の違いはなんだったのだろうか?
へンリー・フォードは安い車を作った。ゼネラルモーターズ社はもっと面白くて、もっと高い車を作ったが、1919年に融資部門GMACを作ることで、問題を解決した。人びとが月賦を利用することで、「買える」ようになったのだ。これらのアイディアによって、ゼネラルモーターズ社は最終的にフォード社よりたくさんの車を売った。
■アイデア再構築の手段:「並べ替え」
へンリー・フォードは、自動車も組立ラインも発明しなかった。彼は、食肉加工会社からアイディアを借りて、現代の「動く」組立ラインを作ったのだ。食肉加工会社では、牛を解体するために、動くフックとコンべヤーシステムを利用した。フォードはこれを逆転させ、自動車を組み立てるために同じアイディアを利用した。彼はただ、違う業界のアイディアを並べ替えて、自分のビジネスの問題を解決するために生かしたのだ。
【感想】
◆世間一般的には、「アイデアを借用する」というと、「パクリ?」という反応が来かねませんが、本書を読んで今さら認識したのが、過去の発明や発見の多くが、何らかの形での「借用」であることが極めて多いということ。ただし、借りてくる場所が、「同じ分野」だと、下手すれば「盗人」扱いなのに対し、まったく違う分野だと「創造的」と言われるワケで。
例えば本書では、ビル・ゲイツがスティーブ・ジョブズのアイデアを「借用」して、「ウィンドウズ」を発表したことによる両者のいさかいについて言及。
その一方で、論文における「引用数の多さで重み付けをする」、というアイデアを「借用」して「ページランクを考案したグーグルの二人は賞賛されています。
なるほど、アイデアは「遠いところから借りろ」と。
…丁度弾さんが、こんな記事書かれてますがw
404 Blog Not Found:The Best vs. The Most - 書評 - アップルvs.グーグル
◆もう1点、「問題を定義する」ことも、アイデアにとって重要であることがよくわかりました。
確かに、「問いが正しければ、問題は解決したようなもの」とはよく言ったもの。
ポイントでは取り上げなかったのですが、問題を理解するために、まず「見上げ」て(高次元)、そして「見下ろす」(低次元)という手法も興味深かったです。
ふと、小山龍介さんのこの本のことを思い出してみたり(「レイヤー」の話とか)。
ライフハックのつくりかた
参考記事:「ライフハックのつくりかた」小山龍介(2007年04月09日)
◆また、本書の訳者である本田直之さんも、冒頭で述べられているように、様々な分野からノウハウを「借用」されています。
特に本田さんの場合は、借りてくる場所が「脳科学」や「投資」といった、本の直接のテーマとは関係ない分野からのものが多いせいか、スマートな気が。
似たようなビジネス書が濫造される中、本田さんがキチンとポジションを築かれているのは、こういう点にあるのかもしれません。
そもそも「レバレッジ」という言葉も、元々は投資用語ですもんね。
◆ポイントだけ抜き出すという、当ブログの構成の関係上、ちょっとわかりにくいのですが、本書で述べられているのは、「6つのステップ」に従ってアイデアを創り出す、という手法です。
そのステップとは「定義する」「借りる」「組み合わせる」「培養する」「識別する」「育てる」の6つ。
それぞれ、事例も豊富に収録されていますし、キチンと読み進めていけば、かなり効果がありそうなヨカン。←単純w
アイデアとは、「何にもないところから生み出すワケではない」、と思うだけで、自分でも何とかなりそうな気がするってもんです。
理系らしく、「ロジカル」な1冊!
ブレーン・ハッカー 巨人の「肩」に乗れ!―「新しいこと」を次々に考える“脳”! (East Press Business)
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【アイデアワイズ】「アイデアをいただいてしまえ」(2007年06月27日)
【編集後記】
◆今号の雑誌「ブルータス」はジブリの特集。BRUTUS (ブルータス) 2010年 8/1号 [雑誌]
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ご声援ありがとうございました!
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