2010年07月10日
【オススメ】『実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ 』成毛 眞
実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ
【本の概要】
◆今日お送りするのは、ご存知、マイクロソフト株式会社元社長・成毛 眞さん、待望の「読書術」の本。成毛さんと言えば、書評ブロガーとして名高いわけで、その方の書いた読書術ですから、予想通り濃厚なものでした。
しかもただ「読む」だけではなく、第4章では「書く」こと(「書評」)についても言及アリ。
さらに第5章のブックガイドは、類書にあるものとは異なり、「思わず買いたくなる書評」としても秀逸でした。
この本が売れると、こちとら「商売上がったり」なのですが、オススメせざるを得ません。
そこで今回は、ポイントを3つだけに絞ってご紹介してみます。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
はじめに
第1章 超併読のある生活
私は一体、どれだけの本を併読しているのか
まず本をリビングでざっと読み、仕分け作業を行う
"格好のいい"蔵書棚を作るのが私のライフワーク ほか
第2章 賢者の読書、愚者の読書
古典は他人に任せて、新刊を読もう
ハウツー書や投資本は捨てて経済学に学べ
自然科学に興じることが何よりも大切な理由 ほか
第3章 経営者は自然科学に学べ
仮説検証は経営の仕事、だから自然科学を学べ
マーケッターは、把握できないものに手をだすな
営業部長が歴史読み物に学ぶべき点とは ほか
第4章 書評の技術
書評とキュレーター
書評を書く場合のいくつかの注意点と気構え
書評をコンスタントに書くための知恵とは ほか
第5章 賢者の読書棚を作ろう――厳選ブックガイド
文化・人生編
社会派ノンフィクション編
歴史読み物編 ほか
【ポイント】
■1.ポジションごとにどの本を読むべきかが分かる!◆成毛さんは本書の中で何度か、ビジネス系の「ハウツー書」を読むことを否定されています。
そして、その代わりに「どんな本を読むべきか」について指南。
例えば経営学ならこんな感じ。
代わりに本書で紹介されているのが、こんな本。お手軽なケーススタディをいくつも列挙したようなビジネススクール的なケーススタディではだめだ。トヨタ自動車やホンダ、あるいはパナソニックなど手に垢がついたような成功企業を安易に紹介している本もお勧めではない。
コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった
さらに、本書を読む「本当の意味」について。アメリカの陸運業者であったマルコム・マクリーンが、コンテナという概念を発明する。トラックから船への積み替えが面倒であったからだ。そこからコンテナの規格競争が始まるのだが、最終的にマクリーンがその競争を制し、世界最大級の海運業者にまで上り詰めるという物語だ。
了解っすー、アマゾンアタック!しかもこれは、標準化競争によって世界を制するという物語なのだ。OSを巡ってのマイクロソフトの戦いと同じだ。いかに標準を制するかが、ブローバル企業にとっての究極の目標であることは、現在でも変わらない。標準化競争に勝ち残った企業は、大きな競争優位性を得、新しい産業すら生み出し、利益の総取りすらできるかもしれないのだ。
本書は標準をいかに握るのか、その歴史と戦略とについて書かれた本でもあるわけだ。
これが、おもしろくないわけがない。
◆また、マーケティングについて学ぶなら、「軍事本」を読め、と。
この調子で、どのポジションの人がどのジャンルを読むべきかを、理由を提示して解説してくれているのがありがたいところ。マーケティングは第二次世界大戦時に発達したオペレーションリサーチから派生している。だから、マーケッターには軍事戦略本が欠かせない。(中略)
たとえば、コンビニチェーンのドミナント出店計画は、軍事上の戦闘正面をどこに置くべきかという戦略に似ている。ナショナルチェーンの進出を、リージョナルチェーンがいかに迎え撃つか。どの時点で値下げをして、機先を制するか。それらすべてが軍事作戦に似ているのだ。
他にも「営業は"歴史読み物"で人身掌握術を学べ」等、「なるほど!」とひざを叩くことウケアイのアドバイスが満載です。
■2.「成毛流書評術」が学べる!
◆本書では、第4章を丸々使って「書評」について言及されています。
まずは「心構え」について。
成毛さんが私と同じようにポストイットを使われる(本書でも触れられています)ことは、成毛さんのこの記事で存じており、一方的に親しみを感じていたのですが、「フォーマットを固定する」という部分では、本物の書籍のように「シンプルなフォーマット」を推奨。
はっきりと「黒地に白抜きなどはしない」と書かれており、「smooth涙目の巻w」。
…というか、成毛さんでなくとも、黒背景はダメ出しされてますので、書評ブログをやられる方は真似しないように!
◆ところで成毛さんの場合、「あくまでも自分がお勧めしたい本を誰かに伝えたいと思って書評を書いている」という点では、私と同じです(このブログはは厳密には"書評"ではないですが)。
その結果、
とあって、思わずニヤリ。お勧めすることしかしないから、褒める文章だけはうまくなったような気がする。
書評の中には、対象となる本を厳格に「批評」するものもありますが、少なくとも、成毛さんは違うスタンスなわけです。
これが新聞や雑誌のようにお金をもらって書く書評だと違ってくるのでしょうけど、ことブログで行う書評であれば、この考え方が良いと私も思います。最も重要なことは、書評は対象となる本の内容を評価するためのものではないということだ。著者の主張の正否について吟味するものでもない。あくまで本として面白いか、読む価値があるかということを伝えるものだ。
なお、「読者が思わず読みたくなる書評」については、本書の第5章に山ほどあるので、そちらご参照のこと。
■3.珠玉の書籍集&書評集が読める!
◆読書術本の最近のお約束ごととして、「ブックガイド」が掲載されていることが挙げられます。
本書もその例に漏れず、第5章丸ごと使って、70冊ほどの書籍を紹介。
普通だったら「ちょっと多くね?」と思うところ、あにはからんや。
ここまで読ませるブックガイドはなかったんじゃないか、というくらい、読みふけってしまいました。
しかも、ジャンル的に当ブログではほとんど扱わない「歴史」「ミステリー」「科学読み物」等が中心なこともあり、挙げられている本の中で、当ブログでご紹介しているのはたった1冊であるにも関わらず、です。
◆ここでは、当ブログ的に「アリ」な本を、成毛さんの書評とともに、一部ご紹介。
私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件
こちらがその歴史上もっとも有名な贋作家、ファン・メーヘレンのストーリーだ。その贋作はとてつもない贋作なのだった。果てしなくフェルメールなのである。その贋作者を利用して闇のビジネスを仕掛けた人間がいた。時代は第二次世界大戦前後である。贋作者はナチスの協力者だったのか、はたまたナチスをも欺く贋作者だったのかは本書を読んでのお楽しみだ。
マネジメントI 務め、責任、実践 (日経BPクラシックス)
本書は、ビジネスパーソンであれば、まずは読んでおくべきシリーズであろう。テキストではあるが、経営のノウハウ書として読むのではなく、現実をいかに素直に観察して、そこから未来を予測するのか、その手法を学びとりたい。(中略)
ドラッカーを語りはじめると一冊を費やしかねない。しかし、ドラッカーを解説する本を読むよりも、ドラッカーを一冊読むほうがはるかに手っとり早いのだ。本書はハウツー書やテキストは基本的に勧めない私が唯一お勧めするテキストを超えたテキストである。
山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略
パゴニス氏は、湾岸戦争でロジスティックス(兵站)を担当した将軍だ。56万の大群と700万トンの軍需物質、そして13万両の戦闘車両を地球の裏側まで運ぶのである。途方もない量だ。70万人の将兵への補給ルートを2週間で作り上げてしまう。人類がこれまで1度に動かした最大の物流をいかに達成したのかの実話である。(後略)
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)
旧日本軍について研究した名著であり、本書がきっかけとなって、日本人は科学的に自分たちを反省することができたといっても過言ではない。東大をしのぐ軍事教育エリートたちで構成される司令部のおそるべき無能さに驚かされる。(中略)
しかし、本書が多くの人に読まれた理由は軍事研究にあるのではない。まさに本書が指摘したすべてのポイントが現代の日本の会社に引き継がれているからだ。副題の「日本軍の組織的研究」は「日本企業の組織論推定」と置き換えて充分なのだ。
◆なお、唯一、当ブログでもご紹介していたのが、この本でした。
ダ・ヴィンチ 天才の仕事―発明スケッチ32枚を完全復元
参考記事:「ダ・ヴィンチ天才の仕事―発明スケッチ32枚を完全復元」(2007年05月20日)ダ・ヴィンチが手稿に残した機械をCGで再現した本である。(中略)
さすがにダ・ヴィンチの血を引くイタリア人の手による本だ。CGがじつに美しいのだ。ハリウッドのCG映画のようでもなく、日本製のゲームソフトのようでもなく、イタリアの美術CGとでも言える出来だ。このうちの何点かが模型で発売されるようだ。いまから待ち遠しい。
上記参考記事内には、美しいCGの携帯画像も収録しておりますので、気になる方は要チェックで。
【感想】
◆そもそも本書は、成毛さんご自身のツイートで、その存在を知りました。このツイートでは、小飼 弾さんの、「新書がベスト」と本書を比較し、謙遜されているようですが、個人的には、今回の成毛さんの本の方が「目からウロコ」感は強かったです。
もちろん、弾さんの本は、新書がテーマであり、本書では逆に基本的に新書を扱っていない、という違いはあるのですが、それ以上に、成毛さんのブログが、当ブログとは「真逆のポジション」にある、というのも大きいかと。
「基本的に本を勧める」という共通点はあるものの、それ以外は、フォーマットから選書まで重なっている部分を見出す方が難しいような。
◆また、その「本を勧める」手法ですら、成毛さんの場合、私とは違います。
アサマシ的な視点から言うと、本書の価値はそこにもあるのですが、本書には「どう褒めたらいいか」のようなハウツウチックな内容は含まれておりませんので、あしからずw
ただ、第5章をザーッと読んで、読みたくなった本があった場合、「なぜそう思ったか」を掘り下げるのは、ブロガーならばやってみるべきだと思われ。
弾さんのような「力ワザ」(?)とは違う、巧妙なスキルが散見されます。
◆少し前にブームだった、ライトなビジネス書のブームが沈静化しつつある今、ストレートなビジネス書系「ハウツウ書」以外の読むべき本と、その読み方を分かり易く解説してくれているのが本書と言えるかと。
私自身、第5章で挙げられている本のほとんどを実際に買いたくなったのですが、時間的な問題もあるので自重したくらい(とにかくブログを書かないと)。
いずれにせよ、当ブログはジャンル的に偏りすぎの感がなきにしもあらずなので、本書を参考にして、若干軌道修正してみたいと思います。
まー、でもこの本売れたら、繰り返しますが、「商売あがったり」ですって。←笑えない
書評界の"グル"の英知がこの1冊に!
実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ
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【編集後記】
◆上記のブックガイド選には入れなかったのですが、非常に面白そうだったご本。ノアの洪水
でも、いかんせん、中古価格が高すぎる…。
ご声援ありがとうございました!
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