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2010年07月03日

【立ち位置を考える】「リ・ポジショニング戦略」ジャック・トラウト


リ・ポジショニング戦略
リ・ポジショニング戦略


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、名著「ポジショニング戦略」で名高いジャック・トラウトの最新刊。

「ポジショニング」の概念を踏まえた上での「リ・ポジショニング」の必要性が、多くの事例とともに挙げられています。

ところで、本書の序章にはこんな見逃せない一文が。

 確かにクリステンセンは、『イノベーションのジレンマ』で問題を提起した。彼がし損ねたのは、変化という問題に取り組むためのマーケティング戦略を紹介することだった。クリステンセンは"リ・ポジショニング"がなんたるかを知らなかったのだ。

初っ端にこんなこと書かれてビックリしましたが、確かに付箋も貼りまくりでした!


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【目次】

第1部 競争

 第1章 基礎
 第2章 ライバルの増加
 第3章 ライバル蹴落とし術としてのリ・ポジショニング
 
第2部 変化

 第4章 変化は起こる。進化は現実だ 
 第5章 大きくなればなるほど、変化するのがむずかしくなる
 第6章 進化してはいけないとき

第3部 危機

 第7章 危機がゲームを変える
 第8章 価値こそすべて
 
第4部 リ・ポジショニングの技

 第9章 リ・ポジショニングには時間がかかる
 第10章 肉食系リーダーのリ・ポジショニング術
 第11章 リ・ポジショニングはCEOで始まり、CEOで終わる
 第12章 リ・ポジショニングが必要なことはわかりきっている


【ポイント】

■メッセージはわかりやすく

 複雑さと混乱を嫌う脳にすんなり入っていくには、メッセージをこれ以上ないところまで刈り込むしかない。最も効果のあるマーケティング・プログラムの例をいくつか見ると、メッセージがひとことに集約されているのがわかる(ボルボなら安全性、BMWなら運転性能)。ここで肝心なのは、ストーリーのすべてを語ろうとしないことだ。あなたをほかと差別化する、強力なひとつのメッセージに的を絞ってそれを潜在顧客の脳に刻み込むのだ。


■製品ラインは拡大しない

 脳という観点からライン拡大を見てみよう。ブランドに変種を作れば作るほど、脳のピントはぽやけていく。シボレーのような高度に差別化されたプランドが、次第に意味を持たなくなるのだ。
 トイレットぺーパーのトップブランド、スコットは、ライン拡大でスコッティー、スコットキン、スコットタオルと、ブランド名の亜種を冠した商品を増やした。すぐに、買い物リストにスコットと書いても意味をなさなくなり、チャーミンが業界トップの地位についた。製品ラインの拡大はリ・ポジショニング戦略ではない。


■ライバルをけなす攻撃は、誰もが共感できなければならない

 あるアイデアを、"誰もが共感できる攻撃"にするためには、それが人々の脳にひらめきを与えるかどうかを見ればいい。つまりある発想を提示したときに、余計な説明や議論なしに、即、潜在顧客が同意すれば合格だ。アイデアが明確で考え込む必要がないのだ。ひらめきが起こらず説明が必要なら、それは"ライバルをリ・ポジショニング"するアイデアとしてよくない。ひらめきが起こると同時に、潜在顧客はそのアイデアを受け入れ、何も尋ねずに同意するのだ。


■攻撃を成功させる秘訣は、自社の良いところをを売り込むこと

 その昔、BMWはアメリカの自動車市場に参入する際、べンツを"座るための究極のマシン"とリ・ポジショニングした。その結果、"走るための究極のマシン"というBMWのポジションが長きにわたって築かれた。タイヤを履いたリビングというべンツのリ・ポジショニングには、多くの人が共感した。というのも当時のべンツは実際に、リムジンタイプの大型車ばかりを製造していたからだ。


■成功した金持ちの企業は、何も変えたがらない

 ゼロックスはレーザー印刷を発明したが、本業のコピー事業に影響を及ぼさないよう、新技術の導入を大型機に限定した。そしてそのせいでレーザー印刷事業でのヒューレット・パッカードの独走を許した。コダックはデジタル写真を発明したものの、写真フイルム事業に影響が及ぶのを恐れ、新技術の開発を積極的に推し進めようとしなかった。そして多くの企業においてきぽりをくわされた。
 市場リーダーは、よりよいアイデアで自分自身を攻撃していく覚悟がなけれぱならない。リ・ポジショニングはみずから行なわなければ、ほかの誰かに悪いイメージをかぶせられて取り返しがつかなくなる。


■リ・ポジショニングとは頭の中の認識を現実に合うように調整しなおすことで、変えてしまうことではない

市場には、人の頭の中を変えようとして失敗した例がごまんと転がっている。ゼロックスは、自分たちにもコンピュータや、コピー機以外も作れることを証明しようとして何億ドルも失った。コカ・コーラは市場に、ニュー・コークが"ザ・リアル・シング(本物)"よりすばらしいことを証明しようとして社名を傷つけ、大金をむだにした。キャデラックは、自社の小型車が大型車に劣らずすばらしいことを市場に納得させようとして、まずシマロン、次にカテラを発売した。どちらも散々な結果になった。


■調整しなおすとはどういうことなのか

 人々の認識にみずからを適合させていくこと。それが効果的なリ・ポジショニングだ。人の心を変えようとするのはリ・ポジショニングとは正反対の行為で、その人が持っている認識に逆らうことだ。適合の余地はまったくない。たとえばゼロックスは文書管理会社として知られていたからこそ、容易にみずからをデジタル文書技術会社としてリ・ポジショニングし、文書のデジタル保存とデジタル配信のニーズの高まりを先取りすることができた。


【感想】

◆本書では、ちょっとした名前の変更から、事業モデルの再構築まで、様々なリ・ポジショニングの方法について述べられています。

しかも、そのほとんどに具体的な事例が挙げられており、分かりやすいのが特徴。

結果、翻訳本としてはかなり読みやすい作りになっていると感じました。

単行本ではありますが、ソフトカバーなのも読みやすさの一因かもしれませんが(弾さん、この本読みやすいっすよw)。


◆さて、上記のポイントでも触れたように、結局のところリ・ポジショニングは、多くの場合「一言」で言い切れるものです。

それが故に「分かりやすい」のですが、逆に、その「実践」の意外なまでに難しいこと。

過去の成功体験や、利害関係、さらには決定権のある人物がプレゼンの場にいない等々、足を引っ張る要因は様々です。

おもしろいのが、冒頭で触れたクリステンセンの『イノベーションのジレンマ』に登場する企業の多くから、著者は実際に、仕事の依頼を受けたのだそう。

それらの会社においても、結局は諸事情(?)により、提案は受け入れられなかったようですが。


◆なお、12章では過去の著作(『大失敗!―成功企業が陥った戦略ミステイクの教訓』)で、GMの危機やリ・ポジショニングの必要性を予測していたことにも言及。

言っておくが、予言が的中したのではない。観察していれば一目瞭然だったのだ。

さらには様々な対象に対して、勝手に(?)リ・ポジショニングをしている例まで挙がっています。

シアーズのような「企業」は、まだしも、ニュージーランドスリランカの観光推進事業というのは、一種の「国策」にも関わることであり、話としては納得できるものの、実践できるのかは微妙(「国名の変更」とかw)。

一方で、「ニューズウィーク」のリ・ポジショニングについては、出版関係者の方には参考になるのではないでしょうか?

確かに、今、大きく揺れ動いている出版業界こそ、リ・ポジショニングを考えるべきなのかもしれません。


◆ところで本書は、著者が関わった事例等を中心としているためか、「大企業」の話が中心です。

ただし、考え方としては、個人事業や、ビジネスパーソンのブランディングにも応用できるもの。

もちろん、「ブロガーが自分の立ち位置をリ・ポジショニングする」というのもアリだな、と私は読みながら考えていました。

何たって「リ・ポジショニングはみずから行なわなければ、ほかの誰かに悪いイメージをかぶせられて取り返しがつかなくなる」そうですから。


ブランディングやビジネスモデル好きならマストだと思われ!

リ・ポジショニング戦略
リ・ポジショニング戦略


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【編集後記】

◆昨夜、小飼さんがいち早く紹介したのが、ダニエル・ピンクの新作。

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