2010年06月25日
知らないと損する「記憶力」活用法
記憶力 (ポケットブック)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、勉強本マニアなら、読んでおきたい1冊。2007年に単行本として出た「記憶力―成功をもたらす無限の力(パワー)」のポケット版(「新書」とは言わないのねw)です。
世に「記憶」に関する本は多々あれど、その中でもかなり良質な部類に入るであろうクオリティに、出た当初に読まなかったことをちょっぴり後悔したワタクシ。
付箋は山ほど貼りましたが、今回は簡単に7つほどポイントを挙げてみたいと思います。
なお、タイトルはおなじみ(?)ホッテントリメーカー作ですw
【目次】
1.記憶とは何か?
2.注意力と集中力
3.印象が大切な理由
4.目は心の窓である
5.耳は目より優れもの
6.聴覚を鍛えるエクササイズ
7.関連の法則とは?
8.印象に関する13の法則
9.古代の記憶術に迫る
10.「テン・クエスチョン・システム」
11.数字とイメージ
12.道に迷わない人になる
13.人の顔の覚え方
14.名前の記憶術
【ポイント】
■1.最初の印象の強さが後の想起の強さを決める◆基本的に、五感を通して受け取った印象はすべて、いったん潜在意識の貯蔵庫に保管されますが、そのほとんどが、記憶力を使って意識的に思い出そうとすることがないため、顕在意識の領域では役に立ちません。
つまり、最初から意識的に覚えようとしていないと想起しにくいわけですね。ですから、多少の注意力を向けなければ、永続性のある印象は保存されないと言えるでしょう。この意味で、対象物から五感という経路を通って脳に印象が送られるだけでは不十分で、何かを記憶に焼き付けるためには、最初に印象を受け取ったときに注意と意識を向けることが必要だと言えます。
■2.見たものを覚えるためには、観察力が大事
◆やはり、ただ漠然と見ているだけでは記憶できないようです。
ここで大切なのが「観察力」。目に映ったものの明確な印象を心が記録し、価値あるものとして大切に保管することが必要なのです。
参考書等はさておき、本書の13章で出てくるように「人の顔」を覚えるには、この観察力が非常にキモとなってきます。そして心にこの作業をさせる唯一の方法は、観察力を鍛えることです。心に強く印象を焼きつけるためには、慎重に、こまやかに観察しなければなりません。
■3.耳を使って記憶することも重要
◆そもそも紙のないような大昔から、人は知恵を受け継いできたわけで、それは「口から耳に伝える」という行為によって可能でした。
そして現代でも、「音読」の効果は知られています。
この「音読すると分析能力が生まれる」というのは、私は初めて知りました。音読すると、読んでいる内容を覚えやすくなると同時に、言葉の意味が頭に焼きつけられます。音読することで、黙読からは生まれ得ない分析能力が生まれるからです。
今まで音読をあまり重視されなかった方も、試す価値はありそうですね。
■4.想起には関連性が重要な役割を果たす
◆記憶する際に、他の何かとの「関連性」を意識することはありましたが、これは特に「想起」に大事なようです。
これに関係したお話として、想起したい対象の「記憶した場所や状況」、さらには「その直前または直後に起こったこと」を思い出すと良いとのこと。受け取った印象の記録や保管をするとき、最高の結果が生まれるのは、対象となるものに注意力を集中したときです。しかし、保管した印象を思い出すときは、思い出したい印象を2つ以上のほかの印象と関連づけられることが、最高の結果に結びつきます。多くの印象同士を関連づけるほど、思い出すのは簡単になります。
そう言えば私も、「この理論を覚えるまで電車降りない!」と決めて、一生懸命暗記していたら、「そのまま終点まで運ばれた」ことがありましたw
あの時の見慣れない風景は忘れようもなく(遠い目)。
■5.数字に関する記憶力は暗算で鍛える
◆「数字」に関する記憶は、「数字に関する能力」が発達している人は得意で、そうでない人は苦手なのだそう。
私の場合、正直、コンビニで小銭が増えないようにお金を出すときくらいしか、暗算なんてしてないような…。後者のグループの人たちは、積極的に数字に触れて、数に関する能力を鍛えなければなりませんが、とくに効果的なのが暗算です。もしもあなたがこのグループなら、小学校の教科書として使われるような、初歩の暗算の本を買いましょう。毎日1レッスンをこなせば、短期間のうちに数字に対する興味がふくらみ、以前より覚えやすくなっていることに気づくでしょう。
■6.日付や年号を覚えるにはメンタルイメージで
◆覚えたい年号(日付)がある場合、出来事(人物)とセットにして「イメージ」にします。
具体的には、「新大陸の海岸に立つコロンブスの頭上に、"1492"という数字が浮かんでる」等々。
大人になると、こういう覚え方はちょっと恥ずかしかったりしますが、実際に効果はあるとのことなので、資格試験等でも試す価値はあるかと。ある小学生の男の子は、歴代大統領の任期の始まりと終わりの年を、歴史の教科書に載っている各大統領の写真の額に年号を書いて覚えていました。先生にはしかられそうですが効果的な方法です。
■7.人の名前はメモに書いて覚える
◆初対面の人の名前を覚えるには、「会話に相手の名前を何度も出す」といったやり方はよく聞きますが、本書で推奨されているのが「視覚を取り入れた方法」。
セミナーや懇親会ですと「名刺」をもらえますが、名刺をもらうような状況でない場合でも、紙に書くのは大事なようです。できれば名前をメモに書き、しばらく見つめてからメモを捨てましょう。こうすると、"心の目"で名前を見ることができると同時に、名前の音やほかの印象も思い出すことができます。できるだけ多くの感覚を通して印象を取り込むといいでしょう。
【感想】
◆本書を以前書店で手にしたときは、パッと見「地味」ですし、図表も全くないのでスルーしてしまったのですが、今般読んでみたところ、かなり「濃い」1冊でした。述べられている内容についても、概ね同意。
何でも原著が書かれたのは1903年とかで、「最新脳科学」等とは縁遠いものの、何かを覚える必要のある人々が「いかに記憶してきたか」等の事例が多く、説得力がありました。
さらに本書は「エクササイズ」も収録されており、「観察力」「聴覚」といった、記憶のためには大事な能力を伸ばす工夫が施されているのも、ポイント高し。
◆また本書は、ガチガチの「勉強本」というわけではないため、日常生活で役立つ記憶についても言及されているのが特徴です。
それが目次で言う12章〜14章あたり。
特に、13章の「人の顔の覚え方」では、初対面で相手の顔のどういう点を観察すべきかについて指南しており、参考になりました。
もちろん、職業によっては、「顔を覚える」ことが大事だったりするので、興味のある方はチェックしてみて下さい。
◆個人的に、改めて強く認識したたのが、記憶における「関連づけ」の重要性と、それが「想起」に大事な役割を果たすという点。
自分自身の資格試験の受験時代を思い出しても、暗記したい文章をよく観察して、いかに他の文章と同じか(もしくは違うか)についてマーキングしていました。
当時は「インプット」のための作業のつもりでしたが、実は「アウトプット」にも効果があったとは。
他にも、苦しかった受験生当時を思い出して、「こういう本があったなら」と思ってみたりw
◆本書は、元となった単行本もですが、このポケット版自体も発売されてから随分時間が経っているため、この手の本がお好きな方なら、既読かもしれません。
ただし、もし未読で、かつ、何らかしらを覚える必要がある人なら、受験生に限らず、読んでおくと良いと思われ。
「記憶術」とか「暗記術」の類は多くありますが、それらの本を読む前に、本書で「ベースとなる知識」を得ておくと、すんなり納得(もしくは「おかしい」と認識)できると思います。
思いのほか買ってよかった1冊!
記憶力 (ポケットブック)
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【編集後記】
◆昨夜はTwitterを見ていても、皆さんワールドカップ、対デンマーク戦をご覧になってたようですね。私は、軽く仮眠を取って最後まで観たのですが、実はその時点でこの記事を書いておらず、心から試合を楽しめなかったというヘタレぶり…。
次の試合はそうならないよう、事前に仕上げておきたいな、と。
頑張れ、ニッポン!(自分モナーw)
ご声援ありがとうございました!
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この記憶術という書籍は、近くの本屋でも売られており買うかどうか迷っていた一冊でした。
今売れてる「記憶術」の本とは違って地味ですけど、クオリティは高かったです。
また、自分自身の経験と照らし合わせてみても、納得できる部分が多かったですし。
良かったら、実物に当たってみてください!