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2010年05月26日

【知恵】『ビジネスマンのための「勉強力」養成講座』小宮一慶


ビジネスマンのための「勉強力」養成講座 (ディスカヴァー携書)
ビジネスマンのための「勉強力」養成講座 (ディスカヴァー携書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、お馴染み小宮一慶さんの最新刊。

タイトルには「勉強」と入っていますが、勉強のノウハウ本ではありませんので念のため。

アマゾンの内容紹介から。

効率とスキルと知識だけじゃダメ。資本が智に寄り添う時代のビジネスマンに、経験の集積から本質をつかみ、知識を知恵に変える90分。『発見力』から始まって、『数字力』『解決力』『読書力』『社長力』『時間力』ときた「養成講座」シリーズの集大成。

「何を」「どのように」勉強するかを考えなければいけないんですね!




【目次】

はじめに
 社会人の勉強、一般的な二つの目的
 ビジネスパーソンの勉強、五つの領域
 勉強を続ける秘訣は、アウトプットを続けること! ほか

第1章 論理的思考で、知識を智恵に変える
 ビジネスパーソンにとっての勉強とは?
 論理的思考力を高めつつ、知識を蓄積する勉強法
 徹底して仕事ができること=論理的思考力が高いこと ほか

第2章 勉強によって、いまの仕事をベストなものにする
 いまの仕事でナンバーワンを目指す
 オフ・ザ・ジョブ・トレーニングで、いましている仕事の本質をつかむ
 何から始めるか? ほか

第3章 経済と・会計・経営を勉強する
 経済と会計の勉強には、まず数字力
 マクロ経済を少し深めて勉強する
 会計は一段階目が高いだけ ほか

第4章 人生観を磨く
 長い間、読み継がれた本を読む
 得する相手より、人間性のいい人とつき合う
 素直のスリーステップ ほか

第5章 勉強を続けるための4つのポイント
 1 問題意識を持つ
 2 インプットをルーティン化する
 3 アウトプットし続ける ほか


【ポイント】

■社会人の勉強とは、仕事で自己実現していくための「手段」

だからといって、あまりに功利的に、出世のための資格の勉強だけ、投資の勉強だけ、ITの勉強だけ、というのでは、結局、出世も限定的なものになります。応用のきかない非常に薄っぺらな能力に終わってしまいます。
 いちばんいいのは、頭も良くなるし、仕事で出世もできること。そうなったら、最高です。それが、勉強の究極の目的ではないでしょうか。


■勉強することの価値が以前よりも格段に上がってきた

 ネットのおかげで、情報量が昔よりも格段に増えたことによりその価値が下がり、かつ、情報量が増えれば増えるほど、その膨大な情報の中から価値ある情報を見いだし、解釈して結びつけることがむずかしくなってきているからです。

 だから、意外な結びつけができる人。そして、それを正しく解釈して仕事に生かせる人の価値が非常に上がってきているのです。それが、ドラッカーが言った「智の時代」という意味だと思います。


■自分のいまの仕事に関して、垂直、水平両方向に思考できるようにする

 そのためには、仕事に関係するマニュアルや法令、あるいはささいなことかもしれませんが、職場での回覧物や掲示物にも関心を持ち、「おやっ」と思ったことやポイントを「メモする」ことです。「メモする」という、ちょっとした「一歩の踏み込み」が、長い目で見ると大きな差になります。
 仕事に関する書類や新聞もそうですが、多くの人が読んでいると思います。でも、メモする人は少ないのです。この、ちょっとした「一歩の踏み込み=徹底」を習慣づけられた人が「すごい人」になれるのです。


■オフ・ザ・ジョブ・トレーニングで、いましている仕事の本質をつかむ

 たとえば、経理をやっている人は、いまの経理だと、ほとんど伝票をコンピュータにインプットするたけで作業が終わってしまいます。だから、財務会計はもちろん、簿記のことを知らなくても、できてしまう。でも、何かトラブルが起こったり、通常とは異なる事態が生じたときには困ってしまいます。
 だから、簿記の本質だとか財務会計論を知っておく必要があるのですが、毎日の仕事では、そんなことを勉強する時問はありません。それは、オフで勉強するしかないわけです。
 でも、逆に、それを身につけたら、よその会社に転職しても経理のことは分かりますし、場合によっては、簿記二級とか一級、人によっては、税理士や会計土の資格がとれるまで勉強できるかもしれません。


■定点観測で、世界の景気を知る

世界中、どこへ行ってもそうですが、ホテルのレストランの朝食会場にどういう人がいるかを見ると、だいたい世界の景気が分かります。大阪でよく泊まるラマダホテル(ここもわたしの定点観測場所のひとつです)の朝食会場を見ていても分かります。中国の人や韓国の人が増えたとか減ったとか。
 ともかく、今年のグアムのウエスティンは七割方が中国人でした。グアムでも比較的宿泊費の高いほうのホテルですので、やはり中国パワーはすごいなあと実感しました。


■いちばんのおすすめは「月曜日の日経新聞の景気指標を、実感と比較しながら定点観測すること」

 ただ最初から、全部の数字を追うことはむずかしいでしょうから、

・GDP(国内総生産)
・現金給与総額
・消費者物価指数と企業物価指数
・有効求人倍率


に絞って見てもいいでしょう。
これらを見ているうちに、テレビのニュースに出てくる数字の意味が自然に分かるようになってくるはずです。しばらく続けると、世の中の見え方が変わってきている自分に気づくはずです。


■会計は一段階目が高いだけ

会計というのは一段階目のハードルが高いんです。でも、二段階目、三段階目はほとんどない。だから、一段階目をいかに乗り越えるか次第、というわけで、そのためには、分かりやすくて、評判のいい入門書、それも財務諸表の読み方に特化した入門書を選ぶことが大事になってきます。


■経営の実践と経営学を学ぷことは違う

 経営を実践するのと経営学を学ぶのとは少し違うと、わたしは思っています。
 経営学は、過去に成功した会社の事例などを研究するものです。あくまでも過去の分析です。
 経営は、先にも触れたように、(1)企業の方向づけ、(2)資源の最適配分、(3)人を動かす、という「実践」であり、かつ、現在や未来に働きかけるものです。
 過去の事例が役に立つこともあれば、役に立たないことも少なくありません。


【感想】

◆上記ポイントをご覧いただければお分かりのように、「勉強」と入っているものの、当ブログでよく取り扱う「勉強本」とは、かなり趣を異にしています。

当ブログでの「勉強本」は、基本的には「勉強」が目的となっていますが、本書の場合は「手段」

その先の「自己実現」を目的としている本書は、内容的には、むしろ「知恵力」とでもうたった方がいい感じです。

…「知恵力」って何だよ、ってツッコミが入りそうですがw


「垂直、水平両方向の思考」の例として、本書で挙げられていたのが、以前小宮先生が「日経BPネット」の連載に書かれた下記記事の件。

JALへの公的支援 誰が損をし、得をするのか | BPnetビズカレッジ:ビジネスベーシック | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉

要は、JALが資金繰りにゆきづまっていたのに、なかなか法的整理にならなかったのは、銀行のBIS規制のせいではないか、という見解です(詳細は上記記事か本書を)。

JALの状況という「垂直方向」だけでなく、こういった一見直接関係ない「水平方向」の知識を関連づけられることが、まさにビジネスマンに求められる知恵なんですね。

本書では他にも「H2Oリスティング(阪急阪神百貨店)と高島屋の統合の破談」についても、先生の見解が述べられており、興味深かったです。


◆なお、会計に関して「分かりやすくて、評判のいい入門書、それも財務諸表の読み方に特化した入門書」を選ぶようお話がありましたが、本書では具体的に2冊紹介されています。

そのうちの1冊がこちら。

ビジネスマンのための「数字力」養成講座 (ディスカヴァー携書)
ビジネスマンのための「数字力」養成講座 (ディスカヴァー携書)

もう1冊の方は、一応ネタバレ自重しますが、先生、我田(ry

他にも、日経新聞の読み方については、当然この本を参照して頂きたく。

日経新聞の数字がわかる本 「景気指標」から経済が見える
日経新聞の数字がわかる本 「景気指標」から経済が見える

こちらは中古市場でも全然値崩れしてないヒット作ですね。


先日ご紹介した『「情報創造」の技術』で、三浦 展さんが「誰にでも手に入るデータ」(人口動態統計等)「定点観測」で仮説を立てられていることを知りました。

そして今般、小宮先生も同様に「日経新聞」「定点観測」で論理的思考力を深めていることを知ったワタクシ。

お二人は期せずして、情報そのものの価値が下がる一方、それらを加工して出来上がった「アイデア」に価値があると言われています。

丁度間を空けずにこれらの本を読んで、個人的にも、ただ本を読むだけではなく、そこから一歩思考を深めなければ、と思った次第。


これからは「知識」ではなく「知恵」の時代なんです!

ビジネスマンのための「勉強力」養成講座 (ディスカヴァー携書)
ビジネスマンのための「勉強力」養成講座 (ディスカヴァー携書)


【関連記事】

【社長の切り札】『「社長力」養成講座』小宮一慶(2009年03月18日)

【解決力】『ビジネスマンのための「解決力」養成講座』小宮一慶(2008年06月20日)

【コンサルタントの視点】『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』小宮一慶(2007年10月24日)

【ヤバ本】『「情報創造」の技術』三浦 展(2010年05月19日)

【仕事術系】「仕事頭がよくなるアウトプット勉強法」増永寛之(2009年03月16日)


【編集後記】

◆ノート術でお馴染みの奥野さんの新作がもうすぐ出る模様。

仕事の成果が激変する 知的生産ワークアウト―あなたが逆転するための73のメニュー
仕事の成果が激変する 知的生産ワークアウト―あなたが逆転するための73のメニュー

これも要チェックですね。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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この記事へのコメント
               
smoothさん、お久しぶりです!
twitterでもお世話になっております。

なんだかんだで書評ブログを再開しました。
著者さんからコメントをもらうと、テンションが上がりますよね!

>あとがきに反応
その本、別ルートから入手して読みました。
突飛なインプット法が山ほど載ってるので、
smoothさんのアンテナにひっかかると思いますよ。
レビューに期待しております(*^-^*)
Posted by じゅにがも at 2010年05月26日 21:45
               
>じゅにがもさん

ご無沙汰です。
Twitterは、★付けてるだけですが、一応チェックしてますよ、というサインでございますw

あと、RSSリーダー入れてるんで、記事はチェックしてましたよん。
奥野さんからコメント入ってたんですね。
私もこの本はチェックするつもりです。


Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2010年05月27日 07:27
               
smoothさん

拙著『ビジネスマンのための「勉強力」養成講座』についていつもながらの丁寧な書評をいただき有難うございます。

「知恵力」っていいですね!

今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by 小宮一慶 at 2010年05月27日 08:00
               
>小宮先生

著者様直々のコメントありがとうございます。
先生のご本、ついついディスカヴァーさんの作品ばかり読んでしまうのは、やはり最初の出会いが、「発見力〜」だったからかもしれません。

記事でも触れたように、定点観測は、私もぜひ取り入れてみたいと思っております。

こちらこそ、今後とも宜しくお願い申し上げます!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2010年05月28日 01:06