2010年05月14日
【仕事論】「若者のための仕事論」丹羽宇一郎
負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、伊藤忠商事元社長(現相談役)の丹羽宇一郎さんの新刊。本書は出た時点から注目していたのですが「若者のための」とあったがために、躊躇していたワタクシw
「自分は若くないけど、ウチの読者さんは若いからいいよねw」と自分に言い聞かせて読んでみたところ、丹羽さんらしい主張に溢れた好著でした。
若い世代の方ならずとも、一読の価値アリです。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
序章 若者よ、小さくまとまるな!
アダム・スミスの『国富論』が教える日本の危機
人口減少、高齢化という赤信号 ほか)
第1章 DNAのランプが点灯するまで努力せよ―人は仕事で磨かれる
今の若者は伝書バト?
最初の二年間は授業料を払え ほか
第2章 本は仕事と人生を深くする―人は読書で磨かれる
「空いた時間」などない
血肉となる本は人それぞれ ほか
第3章 己を知り、他人を知り、人間社会を知る―人は人で磨かれる
私にとって忘れられない上司
「一切の隠しごとはするな」―人生最大のピンチを救ってくれた言葉 ほか
【ポイント】
■新人時代に習うことは「仕事人」としての土台となるある銀行の頭取は、新人時代の一年間、毎日封筒のあて名書きばかりさせられました。しかし、それが自分の銀行の重要な客先を誰よりも知ることにつながり、人生の後半で役立ったと、後年気がついたといいます。
私自身、雑務をこなすうちに仕事の流れがつかめてきました。たとえば、現業部門の数字から、会社の経営が見えてきます。翻訳業務は海外との接点となります。どんな仕事にも意味があるのです。そして、退屈で基礎的な仕事を長くやった人ほど、実際のビジネスの場面で飛躍的に伸びることがあります。
■小さなミスを怖れない
会社は、新入社員が犯す小さなミスぐらい、最初から起こるであろうことはお見通しです。また、上司はその対処の仕方ぐらい心得ています。ところが小さなミスを隠してしまうと、ちよっとやそっとでは取り返しのつかない大きな事故につながる可能性が高い。本人どころか、会社全体の信頼を失いかねない事態に至ってしまうのです。
■アリ・トンポ・人間になれ
会社に入って最初の時期、20代〜30代までは、アリのように地を這っていくことが大事です。がむしゃらに進み、失敗を重ねていく中で30代前半を迎えます。そこから40代前半までは、「トンボ」のように広い目で世間を見渡して勉強する。会社のリーダーに近づいていく40代後半から50代にかけては、精神的にも鍛錬を積み、自分だけではない、人間というものをさらに勉強する。人を知ることは、マネジメントの極意でもあります。たくさんの部下を抱えるようになり、自ずと人間というものの本質を探っていく必要に迫られるのです。
■「不本意な異動」なんてない
長いこと会社人生を送っていると、ときには自分が希望しない「不本意な異動」というものに見舞われます。でも、私の信条は、「人は仕事で磨かれる」です。
つらい仕事ほど人を成長させるものです。したがって、誰もやりたがらない厳しい部署への異動は、逆に喜ぶべきだと思っています。お金をもらってつらい仕事を経験させてもらえるというのは、むしろ天恵と言ってもいい。
■川上哲治氏から聞いた「努力」の意味
第一段階は、基本練習をとことんやるということです。へトへトに疲れて倒れるまでやるのだそうです。
もっともプロと言われる人たちは、誰でもこのくらいのことはやっているでしょう。彼のすごいところは、こうして疲れて倒れても、まだ練習を続けるということです。これが第二段階です。
それをさらに続けるとどうなるか。疲れを超越して、無我の境地に至るそうです。「三昧境(さんまいきょう)」というもので、我を忘れるのです。この第三段階までいくと、川上さんの場合、バッターボックスに立ったらボールが止まって見えたそうです。
■「論理的な話し方」は、読書でしか身につかない
話をすると、相手が本を読んでいるのかどうか、私はだいたいわかります。言葉の選び方しかり、話し方しかり。多少乱暴な言葉遣いであっても、自分の思いを的確に表す言葉を選び、それを順序立てて説明できる能力があれば、言いたいことはしっかり伝わります。繰り返しますが、これは読書でしか培われません。
■「認めて、任せて、褒める」
上司の立場からすると、部下を育てるには三つの基本原則を押さえていればいいと私は孝えています。それは「認めて、任せて、褒める」ということです。人間は誰だって自分の能力を認められ、責任ある仕事を任され、そして「よくやったな」と褒められれば嬉しいものです。この逆をやると、部下はあっという間にヤル気をなくしてしまいます。
■トップは社員と同じ目線に立つ
私はいつも思ってきました。会社という小さな組織で社長だの会長だのといったところで、偉くもなんともない。たまたま社長になっただけの話です。そんなに偉いと思われたければ、背中に「伊藤忠商事社長」と書いた紙を貼って電車に乗ったらどうなんだ。
だから私は周りから偉いとも思われたくないし、カローラに乗っていようが電車通勤を続けていようが、放っておいてくれと言いたいくらいです。
【感想】
◆私は以前読んだ丹羽さんのご本で、丹羽さんの「人となり」を存じていたので、すんなり本の世界に溶け込めましたが、ご存じない方はちょっと面食らうかもしれません。特に新入社員時代のエピソードを読むと、その後「伊藤忠商事」という有名企業の社長さんを務めることになるとはとても思えないほどの型破りぶりであることがわかります。
しかも、学生時代は「学生運動」までされていた、というくらいですから、かなり「規格外」。
当然、新人としても「生意気」(ご本人曰く)だったわけで、そんな丹羽さんがスポイルされなかったのも、そういう人材をも受け入れる、伊藤忠商事という会社の社風だったようです。
◆ただし、それだけ生意気なことを言うだけあって、丹羽さんは新人時代からとにかく「働きまくった」とのこと。
特に米国駐在時代がすさまじく、早朝はヨーロッパ相手に出社前に一仕事、昼は普通に働き、夜は夜で日本相手にまた一仕事と、東京本社が身体の心配をするほど働かれたそうです。
そしてその思想が色濃く出ているのが、上記ポイントでも挙げた、元巨人軍監督の川上哲治氏に聞いたというお話。
「打撃の神様」と言われていた川上氏の「ボールが止まって見える」伝説の裏には、そんな努力があったとは。
◆また、本書では丹羽さんが常日頃言われていた『Clean Honest Beautiful』という生き方のきっかけとなった(?)出来事も紹介されています。
渡米する前の20代後半の頃、丹羽さんは「やっていない」船会社への請求の仕事を「やっています」と言ってしまったがために、徹夜で仕事をする羽目に。
ところが、その結果、今まで気が付かなかった倒産の怖れのある会社への債権が判明します。
最終的にはその会社が別の会社に吸収合併されたため、債権は無事回収されましたが、それ以降、決して嘘をつかなくなったのだそう。
その後、駐在員時代に穀物相場で14〜15億の含み損を一人で出したときも、「一切の隠しごとをしなかった」ことが、最終的に逆転で利益を出せたことにつながっていると言えるかと(詳細は本書を)。
◆丹羽さんは、とにかく飾らない性格のようで、Wikipediaにも
なんて書かれています。昼食は、子会社であるファミリーマートや吉野家の弁当を自ら購入している。 出勤には、運転手つきの自動車などを使用せず、社員の目線に立つため電車を使用している。
思い出すのが、以前読んだ本にあった、「駐在員時代に奥さんにバリカンで頭を刈ってもらって、ハゲのような刈り込みができても、墨を塗って出社していた」という逸話w
昨今は「長時間労働」を肯定すると、批判される傾向がありますが、丹羽さんのような方が言われるなら、それもまた「『アリ』かも」と思った私。
時代は変わったとはいえ、やはり『人は仕事で磨かれる』のですよ。
効率追求する前に、1度は読んでおきたい1冊!
負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)
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【編集後記】
◆ちょっと、気になる本。偏差値41から東大へ! 宮口式「超」記憶術
情報商材チックで不安なんですが、講談社から出ている本なんで大丈夫…と信じたいw
ご声援ありがとうございました!
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コメントありがとうございます。
こちらこそお役に立てて光栄ですw
今後とも宜しくお願いします。
>苗村屋さん
確かに丹羽さんの働きっぷりはすごいですよね。
だからこそ、社長まで登りつめられたのかもしれませんが。
私は丹羽さんのキャラもですが、文体も好きだったりしますw
>TOさん
それはまた奇遇な。
でも、大学生の方にも是非お読みいただきたい本ではありますね〜。
就職されたら、丹羽さんの新人の頃のように頑張ってください(生意気さはほどほどでw)。
こちらこそ、レス漏れしてますた。
すいません。
さすがにもう読まれたかな(笑)?