2010年05月05日
【ものの見方】「生活者発想塾」博報堂生活総合研究所
生活者発想塾
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、博報堂生活総合研究所が、クリエイティブな社会の実現に貢献する目的で実施しているオープンスクール「生活者発想塾」を紙上で再現した1冊。日頃、なかなか気づかないところにフォーカスする「視点」は、非常に参考になりました。
アマゾンのページの出版社からのコメントから引用します。
なるほど、「プロ」は、このように発想するのだな、と。四半世紀以上にわたり生活者研究を続けてきたシンクタンクが、洞察と発見のテクニックを一挙公開。
『生活者発想塾』は創造力と元気をはぐくむ「ものの見方」集。
斬新でポジティブな発想を切り開くヒントが満載です。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
視点の広場へ、ようこそ。
■第一章 生活者発想とは。
広告は、人間学。
人間を《まるごと》観よう。
まるごと観ると《因果》が読める。 ほか
■第二章 生活者発想を体験する。
<兆しの見方>
「気になる」を集めよう。
--ひとときの大衆体験に集まる人々。
--踊って発電、発電ナイト。 ほか
<声の見方>
人は上手く語れないから...
--昔、慣れ親しんだテストの要領で。
--影から光を語る。 ほか
<数字の見方>
数字は偉大な表現者。
--たとえば、時間は心を表わす。
--自己紹介をお願いします......ただし「数字」で。 ほか
<場の見方>
真を写すから、「写真」。
--時代はテーブルの上に載っている。
--食情接近。 ほか
<波形の見方>
時系列データは雄弁である。
--%は向きを持っている。
--シンクロする不安と願望。 ほか
■第三章 生活者発想を実行に移すために。
カンタンなことは、つまらない。
「自分は知らない」ことを、知っておく。
聞き損じに学ぶ。 ほか
メッセージ あなたにしか描けない星座がある。
【ポイント】
■センター街のファストフード店内に他店の食べ物を持ち込む女子高生を見て研究員はハッとさせられました……人が店を勝手につくる時代なんだ!と。
一見、マナーの乱れに見えるこの行為は、いっそのことセンター街全部を一つのカフェテリアにしてしまえばいいのでは?という発想をはらんでいる。この出来事はだいぶ前の話ですが、その後、フードコートという業態が生まれ、店の枠を超え、それぞれが好きなものを買って一つのテーブルに集まって食べるという形が普及しました。街や商業施設のあり方を見直すきっかけを与えてくれた視点でした。
■音のないヘッドフォン
ある20代OLのケース。彼女は会社帰り、音楽を聴かないのにヘッドフォンを付けて家に帰るといいます。何のために?……居合わせた上司や同僚から話しかけられたくないからです。「聴いているんだから、話しかけちや悪いな」と思わわせるのだとか。音楽を聴くために開発された機器を、この人は「人ばらい道具」として使っているわけです。
■「吹き出し法」の調査で、人はペットボトルのお茶に対して何を語るのか?
私たちが気づいたのは、人は聞き役を求めているということです。ペットボトルのお茶は、渇きを癒すだけでなく、女性たちの不平や泣き言を受け止める存在としてテーブルの上にある……。吹き出しの中に書かれたセリフは、人が暗黙的に期待している商品の役柄を表わしています。
■「かわいい」という単語を見て、どんなことを連想するか?
実際に調査をすると、「小さい」「丸い」という形容詞が数多く挙がる一方、「抱きしめたい」「愛おしい」といった情緒的な連想も目立ちました。「かわいい」とは、「抱きしめたい」というハグ欲求の表現で、それを実現する条件が「小さい」「丸い」という形状なんではないか。人々の発した言葉が連なりをもって理解できた経験です。
■抽象的な表現でなく、数や量によって自分を自己紹介する
たとえば、27歳の一人暮らしの男性は、「料理のレパートリー50品目」と書いています。手慣れた暮らしぶりが見えてきます。「肉体年齢19歳」という32歳の男性、若さに対する自負とこだわりが感じられます。「メールアドレス6つを使い分け」という58歳の男性からは、交友関係の広さが窺えます。「転校6回」という女性が、続けて「順応カあり」と書くように、その人の社交性を生み出した因果が見えてきます。
■加齢で動く心の数字
「「近所」って自宅から何メートルの範囲?」という問いに、あなたは何メートルと答えましたか? この数値は年代によって変わっていきます。若いうちは「近所」は広く、歳を重ねるにつれて狭くなっていきます。
では、時間の感覚については、どうでしょう。「「過去のこと」って何年前?」の平均値は、年代が高くなるほど大きな数値となります。
■食卓写真調査で見つけた「パソコンの上で食事をする写真」
こうした写真からは、「もしかしたら将来の食卓は情報端末になっていくんじやないか」、そんな視点が生まれます。実際、家族の情報ターミナルとしてのダイニング・テーブルのあり方を研究している家電メーカーもあるようです。(中略)
撮られている光景そのものは、快適な未来の生活像とはほど遠いものですが、そこに萌芽が存在しています。
【感想】
◆実は、本書に登場する最初の事例が、ポイントでも挙げた「ファストフードの持ち込み」だったのですが、読んでいて「おいおいおいおい!」とツッコミを入れてしまったワタクシ。博報堂生活総合研究所の研究員さんが、一歩引いて、後の「フードコート」を発想したのとはえらい違いです。
確かに、常識に囚われず、人間の自然な欲求に基づく行為から着想を得るというのは、なかなかできないこと。
とはいえ、単に日常生活を送る分には、思考のスタイルがルーティンというか、「思考停止」に近いような状態では、アイデアも浮かびません罠。
◆本書では、そんな「思考停止状態」の私たち(私だけ?w)に、さまざまなアプローチ方法による「ものの見方」を伝授してくれています。
特に「数字」や「写真」といった客観性の高いツールで、今まで見えていたものとは違うものが見えてくる、というのは、興味深いところ。
また、ポイントでは挙げなかったのですが、「時系列データ」に表される「時代の流れ」は、過去から現在、そして未来を予測する上でも重要です。
よく言われるように、将来の世代構成は、現時点で既に確定しているワケですしね。
◆アイデア本でよくあるのが、ユニークな発想をする個人が、その「独自の発想法」を披露するというパターン。
もちろん、そういった本も面白くて、個人的には好きなのですが、本書はそれとは違います。
しいて言うなら、「アンケートによる数字や回答」もしくは、「身の回りの風景や出来事」から、「浮かび上がる何か」があって、それを「見つけ出す」。
ボーっとしていると気が着かなかったり、一人ひとりの声では形にならないものが、「アイデア」となる醍醐味を味わうことができました。
斬新な「ものの見方」を得られる喜びをアナタに!
生活者発想塾
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【編集後記】
◆今日ご紹介したのがアイデア本ということで、こちらもついでにwブレインダンプ―必ず成果が出る驚異の思考法
リアル書店でも見つけられないので、まだ未チェックなんですがー。
ご声援ありがとうございました!
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