2010年03月13日
【非Twitter本】「ツイッターノミクス」に学ぶソーシャル・メディアの4つのポイント
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【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、タイトル的にてっきり「ツイッターの本」かと思いきや、実はそうでもなかったという1冊。巻末で解説の津田大介さんが、本書のテーマを的確にまとめてらっしゃるのでそれをば引用。
そしてその核となるのが、本書の原題にある「ソーシャル・キャピタル」の別名である「ウッフィー」(「ヒウィヒヒー」にあらずw)。「デジタル技術とソーシャル・メディアが発達したことで、我々の社会に従来型の市場経済(マーケット・キャピタル)とは異なる指標を持つギフト経済(ソーシャル・キャピタル)が誕生し、両者が猛烈な速度で収斂しようとしている中、個人や企業は後者といかに向き合い、活かしていくべきか」
つまるところ本書は、これからの時代のための「ソーシャルメディア論」だと思われ。

【目次】
第1章 ウッフィーって何?
第2章 Twitterはテレビ広告よりも時には効く
第3章 デルは、商品に対する不満も公開した
第4章 ウェブ上で顧客を増やす八つの秘訣
第5章 ただ一人の顧客を想定する
第6章 ウェブ2.0、各種メディアをいかにつかいこなすか
第7章 ウォルマートの失敗に学ぶ
第8章 アップルはなぜ人をわくわくさせるのか
第9章 無秩序をあえて歓迎する
第10章 社会貢献そのものを事業目的にする
第11章 ツイッターノミクスのルール
【ポイント】
■1.ソーシャル・メディアはいくつ使っても良い◆ユーザーとつながる、という目的のためなら、「どのツールがベスト」というよりも、用途に応じて「何でも使う」のが正しいやり方(条件が許せば)。
本書で挙げられた事例でもっとも手数が多いのが、バラク・オバマ大統領です。
他にも集会や演説はUstreamにアップしたり、ウェブサイト、My.barackobama.comでは、その週に行われた演説や今後のイベント、寄付ボタン、各種支援団体へのリンク、さらにはオバマの携帯へのリンク等も用意されていたそう。たとえば、個人的なスナップショットや選挙運動の様子を記録した写真はFlickrへ。イベントの呼びかけはFacebookのグループへ。ちょっとしたエピソードや議論したい政治課題はTwitterで。オバマの演説は定期的にYouTubeへ、という具合である。
制度が違うとはいえ、日本の政治家に果たしてここまでできるやら。
■2.コミュニケーションは双方向で
◆従来のメディアに慣れた考えでいると、情報を一方的に送ってお終いにしがちです。
でもソーシャル・メディアに基づくこれからのコミュニケーションは、「双方向」が基本。
ユーザーの声に耳を傾け、さらにその声に答えることが、ウッフィーを増やすことにつながると思われ。自分の意見が通らなくても、きちんと聞いてくれたうえで納得できる答えが返ってくるのなら、それはそれで仕方がない。――常識的なユーザーならそう考えるものだ。誠意ある対応は好感を持って受け止められ、ウッフィーを増やすことにもなるだろう。逆に企業の側が受け取ったという返事も出さないと、相手は「無視された」と感じる。これは、きわめて不快な事態だ。こういう仕打ちをされた人は、さっそく知人友人に触れ回るだろう。
「Twitterでブログの記事の配信だけをしていてはダメ」なんですね、分かります。←それ、自分だからw
■3.楽しんでもらうためにはユーモア大事
◆人々の話題にしてもらう際に効果的なのが「楽しさ」の要素。
写真共有サイトのFlickrは、2006年にサーバーがダウンしたときには、サイト全体が「塗り絵コンテスト」になり、優勝者には1年分のプロアカウントがプレゼントされたそう。
たまに落ちていることのあるアメブロやはてブも、何かやってくれないかな、とか思ってみたりwプロアカウントはアップロード量、保存量が無制限で、写真を永久保存できるなど数々の特典があり、ヘビーユーザーにはうれしいプレゼントだ。おかげでFlickrは、激怒したユーザーからのクレームの嵐に見舞われずに済んだ。それどころか、この塗り絵のページは大いに話題の的になっている(なにしろ参加者全員に無料クーポンのプレゼントもあった)。
■4.オンライン・コミュニティを重視する流れはもう止まらない
◆企業側が望むと望まないとに関わらず、ユーザーサイドでの流れはもう止まりません。
先日の「ビジネス・ツイッター」にもありましたが、ツイッターを始めるまで、それまでツイッターでどんなネガティブな発言がなされていたか気がつかなかった、というケースもあります。この流れは、業種を問わず、そしてまた老舗か新参企業か、大手か中小かを問わず、あらゆる企業に影響を及ぼすだろう。そう遠くない将来には、オンライン・コミュニティ専門の担当者を置くことが当たり前になるはずだ。(中略)
利益最優先で顧客は後回しの企業はきっと消えていくだろう。
参考記事:フリーで使える「ビジネス・ツイッター」100選(2010年03月07日)
どうせ参戦せざるをえないのなら、できればポジティブに活用した方が効果も高いハズ。
【感想】
◆本書はタイトルが「ツイッターノミクス」となっており、その下にアルファベットで「TwitterNomics」とあるため、てっきりコレが原題かと思ってましたがそうではなくて。実は本書の裏表紙に「原書の表紙」があって、そのタイトルは「THE WHUFFIE FACTOR」。
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そして、その「WHUFFIE」なるものが登場するのが、人気ブログ「boingboing」のコリィ・ドクトロウの手による小説、「マジック・キングダムで落ちぶれて」。
そこで描かれる近未来では、車を買うにも、電車の切符を買うにも、「ウッフィー」で支払います。
もちろんこれはSFであって、現実ではない。だがソーシャル・キャピタルの重要性は現実の社会でも増してきているし、オンライン・コミュニティでは、人と人を結ぶ最重要ファクターと言ってよい。ソーシャル・ネットワークの基本は、一にも二にも信頼なのである。
◆かつてのように、情報がマスメディアによるトップダウンが基本の頃は、その「信頼」もコントロール可能だったというか、極端な話「お金で買えた」のですが、今はむしろ、そこにお金が介入することは、それが判明した途端逆効果になってしまいます。
本書でも登場するのがウォルマートの「なりすましブログ」の件。
ウォルマートのFlog(やらせブログ)問題 - スラッシュドット・ジャパン
日本でも似たようなケースはありましたが、「クチコミをお金で操作する」ということは、ソーシャル・キャピタルにおいては最もやってはいけない事です。
それでは、お金に頼らずに「ウッフィー」を増やすにはどうしたら良いのか?
それに関して、アメリカの事例を紹介しながら、分かりやすく解説してくれているのが本書なワケです。
◆実際、面白そうな事例に付箋を貼っていったら、かなりの量になってしまいまして。
例えばこんなの。
Wine Library TV
動画でワインの特徴やおもしろ裏話を紹介して、お客様がワインを選ぶお手伝いをする、というサイト。
要はこうした無料での情報提供が「ウッフィー」をもたらしているワケですね。
他にも色々な事例がありましたので、気になる方は本書にて。こうしたすべてが、結果的に事業の成長にも寄与している。ギャリーのワイン・ビジネスは年35%のペースで拡大中だ。彼の書いたワインの紹介本はベストセラーになり、いまや講演にも引っ張りだこ。最近では、ソーシャル・ネットワークやウッフィーについての講演に力を入れているらしい。
◆日本の場合、ツイッターでもそうですが、たいていアメリカから数年遅れて広まる傾向にあるので、「今」この本を読んで、自分ないし自社の「ソーシャル・メディア戦略」を考えるのは、非常に有効だと思います。
ブログが流行るとブログのみに、SNSが流行るとSNSのみに、そしてツイッターが流行るとツイッターのみに注力するようなやり方では「片手落ち」だぞ、と言うこと。
最近、自分なりにツイッターについて考えていまして、マスコミではよくミニブログとか言われてますが、実はメルマガと同じで「プッシュ系のメディア」なんじゃないかと(今さらw)。
しかも、メルマガだと受け取った人から広まる仕組みがないところ、ツイッターだと「RT」というやり方で波及させていくことが可能な訳で、「ある情報を広める」という目的に対しては、もっとも破壊力のあるメディアのような気がしてきました(これも今さら)。
うーん、本書を再読して、ツイッター戦略を練り直すべきのような。
情報発信されている方ならマスト!
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【関連記事】
フリーで使える「ビジネス・ツイッター」100選(2010年03月07日)【スゴ本】『「ツイッター」でビジネスが変わる』ジョエル・コム(著),小林啓倫(訳)(2009年11月07日)
【tsudaる?】「Twitter社会論」津田大介(2009年11月09日)
【ヤバ本】『クリック!「指先」が引き寄せるメガ・チャンス』ビル・タンサー(著),泉 浩人(監修)(2009年11月11日)
「クチコミの技術」コグレマサト,いしたにまさき(2007年03月28日)
【編集後記】
◆今日ご紹介した「ツイッターノミクス」ですが、実は表表紙の画像の左上は著者のタラ・ハント氏で、右下は津田大介さんになっています(小さくて分かりにくいですが)。書影拡大画像
帯じゃなくて、表紙自体に顔写真が載ってるなんて、津田さんテラスゴス!

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