2010年03月11日
【その発想はなかったわ】「語学力ゼロで8ヵ国語翻訳できるナゾ」水野麻子
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、一見、英語勉強本かと思いきやあにはからんや。実はリアル書店で見かけたものの、タイトルからしてちょっとぁゃιぃとスルーしていたのですが、先日のアソシエの英語特集の記事のコメントでエピクロスさんにオススメ頂いて、実際に手に取って見たところ目からウロコ。
この本、基本的には「翻訳」というフィールドのお話なんですけど、中身は完全に「仕事術」です。
しかも汎用性もありそうなので、文章を多く扱う方なら必見ではないかと!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 語学力と論理的思考力
「翻訳のスピード」って何?
「品質」を上げるには? ほか
第2章 知識とは選択肢のこと
技術の知識は二の次
何が書いてあっても恐れるな ほか
第3章 生き残りのカギは発想の転換にあり
意外なところに大きなロスを発見
「辞書を引かない」「入力しない」 ほか
第4章 「重ね刷り」方式の翻訳
途中経過と成果物
分納できない理由 ほか
第5章 まだまだできる、役割分担
見直しと校正作業の自動化
一段落ずつ照合して人間が見直し ほか
【ポイント】
■翻訳のスピードを上げるには「細分化」するつまり、「翻訳のスピード」は「翻訳に伴う作業のスピード」であり、「受注から納品までにかかる時間」と読み替えることができます。受注から納品までの間には、種類の異なるたくさんの作業をしているのですから、その個々の作業――むしろ「動作」と言うほうがいいかもしれません――を細かく分けたうえで、それぞれの時間を短縮するにはどうすればよいかを考えればいいのです。
■必要性が生じてから集中して勉強する
ものすごく非効率的で遠回り、気が遠くなる作業のように感じるかもしれません。でも、実際にやってみるとそうでもなく、将来使うか使わないかわからない単語やフレーズをコツコツと暗記しているのに比べたら、ずっと実用的で確実です。ようするに目の前の案件という最小単位まで細分化しそこで必要な内容だけを勉強するので、ロスが極めて少ないのです。
■適切な動詞や前置詞がわからないときには「ワイルドカード検索」で
「マウスを各群6匹の6群に分けた」
という文なら、
"mice were * six groups"
でインターネット検索します。(中略)
検索すると、「分けた」をdivide intoで表現できることが、簡単にわかります。
■覚える必要はない
さて、すでにおわかりのように、大事なのは頭に入っている単語の数でもなければ暗記した対訳文の数でもなく、必要な情報を必要なときに手に入れる力と、その情報を適切に処理する力の両方です。つまり、一言でいうと問題解決能力ということになります。この土台がないままパターン認識のごとく暗記中心の勉強をしても、あまり意味がないのです。
■拾い読みのススメ
個人的な経験では、専門書一冊を通し読みするよりも、同様の技術内容について書かれた資料から必要最低限の部分だけを拾って数をこなすほうが、よほど理解度が上がります。いわゆるシントピックリーディングという手法に近い読み方です。繰り返しますが、翻訳者は研究職ではないのです。
■入力作業の時間を短縮する「ATOK」
キーボードを叩く回数を減らせば、入力ミスと処理速度の問題を同時に解決できることは、もうおわかりと思います。このストローク数を減らす方法は、いくつかあります。
そのうちのひとつが、「日本語仮名漢字変換システム」をMS-IMEからATOKに変えることです。たったこれだけで、トータルの作業時間をかなり短縮できます。マイクロソフトは巨大企業ですが、アメリカ発の会社が作った仮名文字変換と、日本で30年近くワープロソフトを作り続けているジャストシステムの仮名漢字変換では、語彙・学習能力・きめの細かさに桁違いの差があるのです。
ジャストシステム (1)
■ワードのマクロプログラムを使う
たとえば「辞書」を指定してそこから特定の条件に当てはまる語句やフレーズを自動入力するようにマクロプログラムを作れば、辞書引きと文字入力の両方を一度に効率化できることになります。二度引きがなくなるだけで負荷は相当に軽くなりますが、調べたこと自体を忘れているような単語も、確実に入力されるのです。
■一括置き換えを活用する
マクロによる一括置き換えでなくても、[Ctrl+H]で検索・置換窓を開いて、ひとつの単語や言い回しに対して一括置換をかけるだけでも作業はずいぶん楽になります。
■オススメキーボード東プレの「Realforce」
作業速度のことを視野に入れるようになったら、ぜひとも気にしたいのがキーボードです。今のところオススメは東プレの「Realforce」。少々値段は高めですが、使いやすさで定評のある製品です。私の場合、キーボードとは関係なく入力にはかなり慣れているほうですが、それでもRealforceを使うと、同じ時間内に入力できる文字数の差が歴然です。
東プレ (14)
【感想】
◆本書はタイトルに「8ヵ国語翻訳」とあったため、リアル書店で見たときには、「複数言語の学習方法」について述べた本だとばかり思っていたワタクシ。もちろん、水野さんはお仕事で「英・仏・独・伊・蘭・葡・スウェーデン・ノルウェー」の各言語の翻訳に携わってきたわけですが、9割は英語関係のお仕事だったとか。
しかもそもそも、本書で述べられているのは言語の学習方法ではなくて、「翻訳」という作業の「効率化」。
英検3級の語学力で独立して、2年で月収100万円というのは、翻訳者としてもハンパないですし、それはひとえに、本書で明かされている「仕事術」によるワケです。
◆水野さんのやり方で目立っていたのが、「頭を使う部分」と「そうでない部分」の切り分け。
例えばある英文を和訳する場合、まずは、機械的に翻訳できる部分は「一括置換」を活用して、可能な単語(特に名詞)から訳してしまいます。
さらに翻訳過程で、新たに判明した語句を一括変換するので、後になればなるほど作業が楽になるよう。
ちなみに、一括置換が済んだ英文が本書には掲載されていたのですが、部分部分が日本語になっているのを見ると、私個人的には違和感がw
それでも、最初から一文一文翻訳するより、はるかに時間が短縮できるため、見直しに時間がかけられ、こなれた日本語に仕上げられるようです。
◆そして、「頭を使う部分」としては、対象に関する「大量の資料を読み込む」こと。
なるほど、「シントピックリーディング」は、こういう時にこそ活用すべきなのだな、と。
本書では「大学図書館」「専門図書館」、さらには「国立国会図書館の使い方」にまで言及されています。
まぁ私たちが、必要とされる専門知識は、通常「自分の仕事に関するもの」だけでしょうから、そこまでは必要ないでしょうけど、突発的な仕事等に備えて、知っておきたい情報かと。
◆実は、本書で頻繁に登場する「一括置換」は、実は私もたまにブログの執筆で使うことがあります。
簡単な語句の間違い(これが結構あるw)や、画像サイズ等が一度に簡単に修正できて、かなり便利。
知っているのと知らないのでは、手間がずい分違うので、使ったことのない方は、本書を参考に、是非試して頂きたく。
…と言ってる私も、「エクセルのみならずワードにもマクロ機能がある」ことは、本書を読むまで知らなかったのですが。
本書を熟読すれば、まだまだブログ執筆も効率化できそうなヨカン。
常識破りの仕事術にヤラれますた!
水野 麻子 (1) |
100311追記
今頃気が付いたのですが、水野さんのブログに色々と有益な情報が掲載されています。
「マクロのプログラムコード」なんてカテゴリもあるので、気になる方は要チェック!
翻訳者を応援!〜仕事と家庭の両立20年の経験から〜
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【編集後記】
◆先日の「予約本特集」では載せ損ねた1冊。「HEALTH HACKS!」が好評だった、川田浩志先生の最新刊です。
これまた楽しみですね!
ご声援ありがとうございました!
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気に入っていただけたようで、何よりです。
面白そうな本、役立ちそうな本があったら、また書き込もうかと思っています。
ご本、教えて頂きありがとうございました。
すでに、当ブログの歴代のブクマ数最高記事となっております(汗)。
今までもご本を教えて頂いていたのに、私自身には難しかったりして(ヲイ!)ご紹介できずにいましたが、今般初めて挑戦したらこんなスゴイ結果に(笑)。
また何かありましたら、よろしくお願いします。
このたびは、本当にありがとうございました!