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2010年03月04日

【草食系のススメ】「こころの価値を売る世界にただひとつだけの会社」小屋知幸




【本の概要】

◆今日お送りするのは、3年ほど前に「お払い箱のビジネスモデル」を取り上げたことのある、小屋知幸さんの最新作。

本書では、「非肉食系=草食系」の企業にフォーカスし、これから生き残ることができるビジネスモデルについて分析されています。

また、企業のみならず「私たちの働き方」にまで言及しているのも本書の特徴の1つ。

「経済合理性」のみ追求することの危なさが実感できました!


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【目次】

第1章 肉食系企業と草食系企業

第2章 キリングフィールドからの脱出

第3章 ハードなビジネスからソフトなビジネスへ

第4章 ココロビジネスに転換しよう

第5章 「草食系社員」で行こう!

終章 人が主役の時代


【ポイント】

■弱肉強食の市場で生き残るための3つの"掟"

 ●「競争」

メガ・コンペティションを勝ち抜く企業は戦いを厭いません。徹底的にライバルと競い、戦います。

 ●「事業拡大」

メガ・コンペティションを勝ち抜く企業は、徹底的な事業拡大・成長を目指します。勝つ企業が成長するのは必然ですが、成長は勝つための勢いをもたらし、事業規模は企業力の源となります。

 ●「利益追求」

メガ・コンペティションを勝ち抜く企業は、徹底的に利益(お金)を追求します。弱肉強食の世界では、お金だけが頼りです。


■草食系企業に共通する3つの特徴

 1.お金(利益)を追い求めるのではなく、お金(利益)以外の価値を追い求める

 2.無理な成長を追わない

 3.競い合うのではなく、支えあう


■勝っても勝っても安心できない

総合スーパー業界の勝ち組であっても、他業態企業との戦いに勝てなければ、勝ち組であり続けることはできません。
 現実に総合スーパーの売り場は、他業態の勢力に浸食されています。
イオンやイトーヨーカ堂の家電売り場はヤマダ電機などの家電量販店に歯が立たず、衣料品売り場はユニクロに押されています。


■モノづくり敗戦

 今まで日本企業は「よいものを一生懸命つくれば必ず売れる」と、固く信じてきました。これが日本企業の"モノづくり信仰"です。しかしこの考えは、現代の世界市場では通用しなくなりました。
 ここに日本企業の"モノづくり敗戦"の根源的原因があります。


■"おもてなしの心"で旅館ビジネスの再生を図る

加賀屋は日本旅館の古き良き伝統である"おもてなしの心"を、正しく継承している旅館の1つです。そんな加賀屋が、ビジネスのフィールドを海外にも広げようとしています。台湾の北投温泉にフランチャイズ方式で、旅館を開業することにしたのです。実は加賀屋は、台湾で非常に有名な旅館です。能登にある加賀屋には、毎年1万人以上の台湾人観光客が訪れています。加賀屋のサービスに息づく"おもてなしの心"は、台湾人からも非常に高く評価されているのです。


■経済的価値の創出を極限まで追求している「肉食系企業」

肉食系企業は弱肉強食の市場の中で、経済的価値の創出力を競っています。肉食系企業同士の戦いは、常により大きな経済的価値を生める企業が勝利を収めます。そして経済的価値で劣る企業は、生き残ることができません。


■草食系企業が顧客に提供する価値

草食系企業は経済的価値よりも精神的価値を重視します。草食系企業は、顧客に"モノの豊かさ"だけでなく、"ココロの豊かさ"も提供しようとします。(中略)

 ココロの満足の感じ方は人によって異なり、人がココロの満足を感じる対象も千差万別です。したがって世の中には、多様な草食系企業が成立する余地があります。


■株主資本コスト(株主が求める投資リターン)に見る肉食系と草食系の違い

肉食系企業に投資する"肉食系株主"は高い投資リターンを求めるので、肉食系企業の株主資本コストは高くなります。一方草食系企業に投資する"草食系株主"は比較的低い投資リターンを許容するので、草食系企業は株主資本コストを低く抑えることができます。言い方を変えれば、肉食系企業は草食系企業よりも、多くの利益を稼ぐことが求められるのです。


■8掛け労働のすすめ

 仮にあなたが、社畜的な生活を送っていて、機械的労働に忙殺されていたとしても、その状況に安住することは適切ではありません。機械的労働にいくら習熟したとしても、それは将来的にはあまり役立たない可能性が強いのです。機械的労働は8割にとどめ、少なくとも残り2割の時間は、自分の専門性を高めたり、こころ豊かな生活をして人間性を磨いたりすることに割くべきなのです。


【感想】

◆上記ポイントでは、加賀屋だけ具体例として挙げましたが、実は本書にはいくつも「草食系企業」が登場します。

社員をサーフィンに行かせる(?)「パタゴニア」や、"子連れ出勤"という制度のある「モーハウス」など様々。

ただ、それらを一つひとつご紹介していると、それだけで結構な量になってしまうので、今回はまとめて割愛(スイマセン)。

と言いますか、本書はたまに見かける「事例の紹介集」的な本とはわけが違います。

あくまで「主張」が先にあって、事例はそれらの補足に過ぎません。


◆その「主張」が、「草食系企業」のすすめ。

何故ならば、「肉食系企業」「ウイナー・テイクス・オール(勝者総取り)」であるから。

その「勝者」も、1つの業種だけではなく、ポイントにも挙げたように、従来なら「他業種だった企業」とも張り合わなければならないわけですから、生き残ることはかなり困難です。

しかも、張り合った末にあげた利益も、従業員(報酬)や株主(配当)でさらに奪い合わねばなりません。


◆それに対して、草食系企業は価値基準を「経済的価値」ではなく、「ココロの豊かさ」などの「精神的価値」においています。

この「精神的価値」は、従業員や株主、顧客といったステークホルダーの間でトレードオフの関係にならないのがミソ。

つまり、奪い合うのではなく、「支えあう構造」になっているということ。

そしてポイントにも挙げたように、ココロの満足の対象は様々なので、多様な草食系企業が成立する余地があります。

それこそタイトルにもあるように、それぞれが、「ただひとつだけの会社」になりえるワケですね。


◆なお、本書の第5章では『「草食系社員」で行こう!』と題して、私たち一人ひとりの働き方についても「肉食系社員であることの危うさ」を説いています。

おそらくほとんどの会社で、「非肉食」、つまり「経済的価値を追求しないで働く」ことは難しいでしょう。

それでも大事なことは、「選択肢がある」ということ。

本書で提案されている「異能社員を目指す」という生き方は、現在の閉塞感に満ちた社会では、むしろ大事なことかもしれません。

つまるところ、「勝つこと」を求めるのではなく、「豊かさ」を求めるべきなのだと思った次第。


不毛な「競争」に疑問を持ったら読むべき1冊!



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続「お払い箱のビジネスモデル」小屋知幸 (著)(2006年05月04日)


【編集後記】

◆毎年この時期になると売れ出すのがこちらの本w


ブログでは紹介できませんし、そもそも私は読んでないのですが(ヲイw)、田口さんの書評を見ると、面白そうですね。


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