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2010年03月03日

【コンサル視点】「マーケティングマインドのみがき方」岸田 雅裕




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、タイトルにもあるようにマーケティング本。

著者である岸田雅裕さんは、ファッションビル「パルコ」の経営会社出身のコンサルタントのせいか(?)、ちょっと尖った視点をお持ちのよう。

アマゾンの内容紹介から。

BMWは顧客の声を聞かない、
ユニクロのターゲットは広くて狭い、
ダイソンのマーケティングセンス、
経済危機で売上を伸ばしたウォルマート・・・
豊富な事例からマーケティングのキーワード、フレームワーク、新たなトレンドが学べる「教科書」。

言及している内容は深いのに極めて読みやすいという珍しい1冊です。


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【目次】

はじめに

第1章 マーケティングへようこそ

第2章 市場と顧客の変化の波を読む

第3章 ユニクロのターゲットは狭くて広い

第4章 不易流行 ブランディングとブランドマネジメント

第5章 顧客の声を聞くトヨタ、聞かないBMW

第6章 テレビCMでは顧客を動かせない

第7章 マーケティングROIとCMO

第8章 消費者はお金を払う理由がほしい

第10章 優れたマーケティングはセールスを不要とするか


【ポイント】

■なぜ若者が消費意欲を刺激されないのか?

 私の考えは、「いまよりいいものをつくれば売れる」という考えの前提にある「よりいいもの」の意味合いが変わってきていて、「高スペック」イコール「よりいいもの」では、もう若い人には通用しないのではないかというものです。


■パルコの差別化戦略「二十歳、OL、ファッション」

それまで百貨店は、
「20代の人たちはお金を持っていないから、私たちのお客様ではありません。ミセスになってお金を使えるようになったら来てください」
 と思っていました。パルコはその百貨店が捨てていた世代にフォーカスした。そして実はその年代は、その後明らかになるのですが、「団塊の世代」という非常に消費欲の旺盛な世代だったのです。


■変化の3つの波

  1.非常に長い不回避のトレンド「大きな波」

統計やデータなどを見ればその流れが確認できて、「これはもうこの方向に間違いなく行く」とわかるものです。

  2.1の中でときおり起こる揺り戻しのような小さな波「揺らぎ」

大きな不回避のうねりと、その中でときおり起こる小さなさざ波……「コンサバとラディカル」とか、「装飾過多なものとシンプルなもの」とか、「モノトーンとカラフル」とか、このような揺らぎはいたるところで生まれるでしょう。

  3.まったく関係ないその場限りの流行、「ノイズ」

 ときどき、どこから来たのかわからない、どこかから降って湧いたような流行というものがあるでしょう。たとえば、例が古くて恐縮ですが、「フラフープ」。


■ユニクロのターゲットは広くて狭い

たくさんの人がユニクロの服を買っているという点においては、ユニクロのターゲットはとても広いといえます。
 でも、どういうニーズで買われているかというと、極めてワンポイントです。「ベーシックなカジュアルウェアを安く買いたい」というニーズにだけ応えていて、それ以外のニーズにはほとんど応えていません。


■新しい価値観の台頭をつかむ

狙ったときまさにそのタイミングで、新しいジェネレーションが台頭してくると、一大ムーブメントになり得ます。パルコでいえば二十歳のOL、丸井でいえば新人類、90年代の半ばに二十歳だった団塊の世代のジュニアというように。価値観が前の人たちとちょっと違う世代が台頭してきたとき、新しい自分たちの価値を与えることができれば、かなり社会的なムーブメントになります。


■ポイントカードなどのFSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)の問題点

 もともとFSPは、米国の航空会社のマイレージ・プログラムから始まりました。(中略)
そしてこのシステムの優れていたのは、お金が追加的にかからないことです。なぜなら顧客がたまったマイレージを利用しても、それは航空会社にとってはあまった座席を提供しているだけです。その人が乗っても乗らなくても飛行機は飛ぶ。(中略)
 ところが小売業が同じようなことをすると、コストがかかって仕方がないのが問題です。


■「もし数が限定されていたら、どのバッグがプレゼントとして欲しいか?」という調査でわかること

 5個のときは、23%の人はルイ・ヴィトンを選びます。1個しかもらえないときにルイ・ヴィトンを選ぶ人の割合は28%に増えます。
 エルメスは18%から25%、コーチが13%から14%。シャネルは11%から10%とほぼ変わらず、逆にこの後から減り始めます。グッチが12%から9%、ボッテガ・ヴェネタが5%から4%です。
 結局これはどういうことを示しているかというと、いまのように不況になって、ほしい高額品が全部は買えなくなったとき、どのブランドが生き残るかということです。


■トヨタがプリウスを205万円で出したということの意味

 おそらく車は、これからよっぽどのお金持ちか車好きでない一般の人は、200万円以上払わないものになります。トヨタは自分でそういうことをしたのではないか。トヨタは「プリウス」でホンダの「インサイト」に勝ったけれど、あれはトヨタ自身にとっても、新しいゲームに足を踏み入れることになっていくのかもしれません。


【感想】

◆一部ネタバレしつつ、この辺で。

上記のポイントでは、抜粋するのが難しい部分(長かったり図が良かったり)は丸ごとカットしているのですが、本書の場合、実はカットされたところもかなり興味深い内容だったりします。

特にご紹介できなくて残念なのが「セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング(STP)の解説辺り。

マーケ本であれば、当たり前のように載っているこのお話も、本書では豊富な事例で分かりやすく説明されていました。


◆また、著者の岸田さんがファッションがお好きなせいか、事例としてファッションブランドが多く登場するのも本書の特徴。

ご紹介してないところでも「J・クルーの復活」「読み替えで復活したアバクロンビー&フィッチ」なんて興味深いネタがありました。

絶好調のユニクロに関しても

もしこの先、ユニクロが失敗するとすれば、それは自分のSTPを忘れてしまったときでしょう。

という指摘が。

この辺のお話がお好きな方は、ぜひこちらの本も併せてお読みいただきたく。


参考記事:そろそろユニクロ以外のファストファッションについてもひと言言っておくか(2009年12月28日)


◆もう1つ興味深かったのは、アーチストがキャッシュポイントをCDからライブに移しているのと同じように、雑誌の世界でも、メディアそのものより「人と人が出会う機会」を持つことの価値が上がっているというお話。

例として挙がっていたのは、料理雑誌における「読者」(プロの料理人や相当な趣味人)と「スポンサー」(食材メーカー、厨房機器の会社)が触れ合う機会である「イベント」です。

要は、スポンサー側としては雑誌に写真が載ることよりも、その雑誌の読者と接する機会の方が価値がある、ということ。

マドンナをはじめ、アーチストが「ライブ」を重視しだしていることは知っていましたが、雑誌でも同じように「ライブ」に価値が出てきた、というのは、ビジネスモデルとしても面白いな、と。


◆本書は読みやすい文章で構成されているため、スラスラと読み進めてしまえるのですが、冒頭で触れたように、その内容は深いです。

本の帯にもあるように、まさに「教科書」

私の読んだ多くのマーケ本が、「事例の集まり」「ガチガチのテクニック集」だったのに比べると、もうちょっと本質的と言いますか。

ひょっとしてこれが、「マーケティングマインド」というものなのかも。


マーケティング的思考法が身に付くオススメ本です!



【関連記事】

【オススメ】「異業種競争戦略」内田和成(2010年02月04日)

【自分ごと】『「自分ごと」だと人は動く』博報堂DYグループエンゲージメント研究会(2009年12月10日)

【スゴ本】「フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」クリス・アンダーソン (著), 小林弘人(監修)(2009年12月02日)

そろそろユニクロ以外のファストファッションについてもひと言言っておくか(2009年12月28日)

【お知らせ】「クラッシュ・マーケティング」がいよいよ発売されました!(2009年11月06日)


【編集後記】

◆昨日発売のアソシエは「英語特集」


出版社サイトで目次を見ると、なかなか興味深いことになっております。

Special 1 やり直し英語勉強術
こんな方法があったのか!(018p)
[注目の学習メソッド あなたに合うのはどれ? ](021p)
レバレッジ本田式 “好き” で苦手を突破(021p)
グーグル村上式 30代は特訓あるのみ(022p)
MBA青野式 「3A」で表現力を鍛える(023p)
[カリスマ講師が読者を直接指導! ](024p)
「英語で日記」 9日間添削レッスン(024p)
TOEIC 「2週間で100点アップ」講座(028p)
[外資系ビジネスパーソン座談会](032p)
英語が苦手でも生き残る(秘)テクとは?(032p)
[話題の学習ツール大集合! ](034p)
「キンドル」活用5つの必修ワザ(034p)
ネットで無料! 単語学習も作文添削も(036p)
「防水MP3」などライフハック系便利グッズ(038p)
どれから読む? “目的別” 英語学習本ガイド(039p)
[ “お試し” 代行](040p)
有料は優良? 人気教材の中身をチェック(040p)
おススメの英会話カフェ & 勉強会(044p)
「英語で自己紹介」 “鉄板” テンプレート(046p)
[日本人英語の落とし穴](048p)
TOEIC問題 & 電子メールの4大ミスを防げ(048p)
要注意! 「will」と「would」、意味が真逆に(049p)
幼稚、下品、無礼 … 恥ずかしいNG単語 10(050p)
[英語ベストセラー本の歴史に学ぶ](052p)
“点数化” のジレンマを超えよう(052p)
3分で実力判明! 単語カテストに挑戦(054p)

これは要チェックですね!


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