2010年02月23日
【図】「ビジネスモデルを見える化する ピクト図解」板橋 悟
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【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、以前『「記事トレ!」日経新聞で鍛えるビジュアル思考力 』がスマッシュヒットを記録した板橋悟さんの最新作。今回も、ビジネスモデルを可視化するツールである「ピクト図」が大活躍であります。
出版社のサイトより引用。
「FREE」や「異業種種競争戦略」もこの本と一緒に読むと理解が深まるかも。「誰が」「誰に」「何を」「いくらで」の4要素に注目すれば、儲けのしくみが見えてくる。ビジネスを絵で解読する新しい思考法。
『ドラクエ9』もiPodもユニクロのフリースも、ヒットの秘訣は「儲けるしくみ」にあった! ビジネスの基本要素である「誰が」「誰に」「何を」「いくらで」の4要素に注目し、シンプルなシンボル記号を使ってビジネスモデルを絵で解読。さらにその絵をアイデア発想にも応用できる、画期的なビジュアル思考法を紹介。

【目次】
はじめに
Part 1 ビジネスモデルを見抜く
Chapter 1 ビジネス想像力クイズ
1 ビジネス想像力クイズ1――"仲間探し"に挑戦!
2 ビジネス想像力クイズ2――"微妙な違い"はなに?
3 ユニクロ、『ドラクエ9』の成功の裏にビジネスモデルあり!
Chapter 2 ピクト図解とは
1 ピクト図の描き方
2 ピクト図はビジネスの「レントゲン写真」
3 ピクト図解の3つのメリット
Chapter 3 ビジネスモデルを解読する
1 代表的な8つのビジネスモデル
2 「ビジネスモデル」と「収益モデル」
3 ビジネスモデルを解読する1――居酒屋 ほか
Part 2 ビジネスのアイデアを発想する
Chapter 4 ダイアグラム発想法
1 ビジネスモデルを次々と生み出す「ダイアグラム発想法」
2 ビジネス事例からダイアグラム発想法を学ぶ
3 新聞記事からダイアグラム発想法を学ぶ
Chapter 5 アナロジー発想法
1 ビジネスモデル応用力がつく「アナロジー発想法」とは
2 アナロジー発想のためのトレーニング
3 アナロジー発想法で業績を改善させたA社
Chapter 6 アイデアの風呂敷をたたむ
1 OBゾーンに入っていないかを考える
2 目標数字に照らして考える
3 実現可能性を考える ほか
おわりに
【ポイント】
■雑誌『Goo』の損をして得をとる情報誌のしくみ広告料が収益の大半を占める、いわゆる「情報誌」において重要なのは、「掲載された情報を見て、読者が実際に購買行動を起こすこと」にあります。読者の行動という掲載の「効果」がなければ、継続的な広告出稿は見込めないからです。たとえ販売収入が赤字になったとしても、まず読者が雑誌を手に取ることを優先して「効果」を出し、次の広告掲載につなげる――「損して得をとる」ビジネスモデルということもできそうです。
■ユニクロの利益支えた「合計モデル」
格安でほかにはないカラーバリエーションをそろえたフリースという商品をフックに客を集め、利益率の高い定番商品を合わせて買ってもらう。――仮にフリースの利益率がそれほど高くなかったとしても、客1人当たりの合計の利益をとらえればビジネスは成立するでしょう。
■「ピクト図」は「3W1H」で描く
ビジネスで重要なのは、「誰が(Who)」「誰に(Whom)」「何を(What)」「いくらで(How much)」売って儲けるのかということ。ピクト図解は、このビジネス3W1Hを1枚の図にまとめる手法であるともいえます。描く際も、この「誰が」「誰に」「何を」「いくらで」の順番に描き進めていきます。
■ビジネスは全体を俯瞰できなければダメ
ビジネスモデルを考え、あるいは改良していくことができる経営者は、つねにさまざまな企業のビジネスの情報を収集しています。しかもそれは、単に「こんな商品がヒットしている」といった次元の話ではありません。ビジネスの情報に接したとき、彼らは頭の中で、そこに登場するプレーヤーどうしの間でモノやカネがどのように流れているかをイメージし、ビジネスモデルの事例として自分のものにしているのです。
■「1粒で2度おいしい」二次利用モデル
二次利用モデルはコンテンツビジネスに多くみられますが、「償却ずみのものや開発ずみのもので、もう1度商品化できるものはないか」という視点は業界を問わず有効です。(中略)
たとえばシステム開発会社であれば、社内業務用に開発したソフトウェアをパッケージ化して販売することはできないでしょうか。
■プリンターの「消耗品モデル」の弱点
このビジネスモデルは、消耗品の部分で継続的な収入が見込めるのが大きなメリットではありますが、このことを裏返せば、自社以外の誰かに肝心の「継続的な収入」の部分を"いいとこ取り"されてしまうと、旨みが一気に失われかねないビジネスモデルである、ということでもあります。
■コストを収益に「逆転」させたビジネスモデルの例
足裏マッサージなど、リフレクソロジーのサービスを提供する「クイーンズウェイ」。わずか数年で店舗数を大きく増やした同チェーンを展開するRAJA社は、リフレクソロジストと呼ばれる施術師を養成するスクールビジネスも手がけています。スクールを終了すると、店舗でスタッフとして働くことができます。つまり、RAJA社は店舗で未経験者を採用してリフレクソロジストとして育成するのではなく、受講料として収益をあげながら自社の店舗で雇用する人材を育てているのです。
■いまの商品で利益をあげることを考える
私がビジネスプロデューサーとして仕事をしてきた経験からすると、商品が売れないとき、A社のように新しい商品やサービスを投入しようと考える企業が多いように思います。しかし商品力に問題がないのであれば、まず疑うべきは「儲かるビジネスモデルがきちんとつくれているか」という点です。
■「アイデアを実現する力」こそすべて
すぐれたアイデアとは「結果として実現できたアイデア」であって、「実現できればすばらしい結果になったはずのアイデア」、ではありません。私は、ベストなアイデアを求めて考えてばかりいる人より、ベターな解を見つけた時点で行動に移せる人のほうが、すぐれたビジネスパーソンであると思っています。結果として実現したかどうか、そこが大切なのです。
【感想】
◆板橋さんの前作『「記事トレ!」日経新聞で鍛えるビジュアル思考力』は、タイトル通り、「日経新聞の記事をピクト図解する」ことがメインテーマでした。それに対し本書は、さらに一歩進めて「ビジネスモデルを分析する」ことが中心に。
もちろん、4章、5章では「ビジネスモデルを発想する」ところまで踏み込んではいますが、まずは分析できる「体質」になることが肝心かと。
結果、「どう図解するか」という方法論よりも、「どういうビジネスモデルがあるか」がまずあって、それをピクト図解するとどうなるか、という流れになっている感じです。
そういう意味では、冒頭でも触れたように、ビジネスモデル関係の本と併せて読むと良いと思われ。
◆さてそのビジネスモデルですが、他書では別の表現になっていたりするケースがあるものの、その辺は気にせずザクザクとピクト図解されています。
中には、以前某高額セミナーにおいて「マル秘ネタ」として教わったモデルもアリ。
具体的にどれとは書けませんが、そこに目を付けてこられるとは「サスガだな」、と。←偉そう
他にも興味深いビジネスモデルが色々紹介されているので、「儲けの構造」を考えるのがお好きな方なら、楽しめそうです。
◆なお、ピクト図を用いる際に心がけたいのが、「実際に手で描くこと」。
「そのビジネスモデルなら知ってる」「図解しなくても分かる」と思っても、まずは実際に手で描いてみるべきです。
それに関して板橋さんのお言葉から。
言われて私も「アフィリエイトをピクト図解」してみましたよ(シンプルなんで、図は割愛しますが)。ピクト図を描かずに"わかったつもり"になることもあるかもしれませんが、ビジネスモデルを俯瞰する力は一朝一夕につくものではありません。複雑なビジネスモデルでは、「隠れた儲けるしくみ」を見落とす可能性もあります。図にしてみることで抜け漏れや見落としに気づきやすくなるのも、ピクト図解の効用です。
◆ところで、他の図解本のやり方ですと、どうしても絵の「上手い下手」が結果を左右しそうな雰囲気があるところ、本書の「ピクト図」だと、それほど差は出てこないと思います。
出てくるのはむしろ「分析力の差」や「発想の差」だったりするわけで。
そういう意味では、ピクト図は「ビジネスモデルを見える化」すると同時に、私たちの「分析力・発想力も見える化」してしまうのかもしれません。
今年は「ピクト図」が"来る"予感!!
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【強力!】「勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力」勝間和代(2008年06月15日)
【編集後記】
◆今日ご紹介した板橋さんのご本でもチラっと紹介されていたのがこの本。![]() |
「ビジネスモデル」を考える上では、避けては通れない名著です。

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ん年前に「ザ・プロフィット」を読んで大変感動しました。と同時に事例が海外ものばかりなので実感値が薄い。日本事例版があればいいなと思いました。まさか自分で書くはめになるとは(笑)。なので「ザ・プロフィット」は「ピクト図解」のルーツの1つです。あわせてお読みいただくと理解が深まると思います。
著者様直々のコメントありがとうございます!
「ザ・プロフィット」は私もずい分前に読んで、当時はあまりピンとこなかった記憶があります(汗)。
まだビジネス書読み初めで、よくわかってなかったんですけど。
本書を活用して、ビジネスモデルを読み解けるようになりたいと思っております。
今後ともよろしくお願い申しあげます。