2010年02月10日
【ウェブ】「ウェブを炎上させるイタい人たち」中川 淳一郎
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨年 「ウェブはバカと暇人のもの」がネット界隈(?)で話題となった中川淳一郎さんの新作。本書はその続編とも言うべき「インターネット論」になっています。
今回はその俎上にTwitterも載り、さらにパワーアップ(色々な意味でw)。
「ネットはやってるけど、バカでも暇人でもない!」という方こそ、一読するべきかも。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
出版社のサイトから第一章 炎上させる人間はやっぱりバカか暇人
無闇矢鱈(むやみやたら)に人間関係を増やしてどうする
ネットの「祭り」は“いじめという名の娯楽”
勝間和代が「目立つ」のは「経済評論家の中では美人」だから ほか
第二章 ウェブは「集合痴」の世界 ―― 誠実に対応するだけ時間と金がムダになる
プロに対して誰でも簡単に噛み付けるリスペクトなき時代
バカな客、バカ過ぎるクレームなど、何の役にも立たない
広瀬香美がツイッター(笑)界最強のスター これってどうなの? ほか
第三章 ウェブ炎上への対処法
炎上を逆手に取って企業イメージを向上させる
「かまってちゃん」に振り回されたKDDIの“ハッシュタグ”事件
炎上のタイプは6種類。いずれも無意味な暇つぶし ほか
【ポイント】
■ネットの負のエネルギー『ウェブはバカと暇人のもの』を出して以来、多くの見知らぬ人から連絡をもらった。多くはネット上のネガティブなコミュニケーションに疲弊した人だ。
ネットの「祭り」は"いじめという名の娯楽"
本来抗議というものは、「実害を受けた人」が「実害を引き起こした人」に対して行うべきものなのだが、ネット上では当件とは無関係な暇人が正義感という名の妙な大義名分を振りかざし、群集のネガティブコメントをさらに引き出すべくネットの各所から情報を引っ張り出し、標的となった人を攻め続ける。これを「祭り」と呼び、彼らにとってはもはや"いじめという名の娯楽"である。
■ウェブ世界に存在する7つの主体
(1)ネット教教祖
(2)ネット教信者
(3)一般企業(特に大企業)
(4)普通のネットユーザー
(5)ネットサービス運営会社
(6)ネットに慣れた暇人
(7)賢いリア充ネットユーザー
(※リア充=リアルな世界が充実した人)
■情報をリードするネット教教祖たち
ネット上では(1)と(2)の人々の発言力があまりにも強い。だからこそ、「ネットが世界を変える」「ネットこそ企業を成功に導く」といった前向きな意見を目にすることが多く、マジメで勉強熱心な(3)の企業の人々は(1)と(2)の言うことに真剣に耳を傾けてしまうのだ。
■「普通のネットユーザー」の正体
とかく自分本位。別にネット社会がどうなろうが気にせず、楽しいからSNSで日記を書き、ブログを書き、オフ会のセッティングをしたりする。(1)や(2)の言うことなど気にもしていない。あくまでも重要なのは「自分がいかに楽しみ、自己表現(笑)をするか」「自分がいかに暇をつぶすか」「自分がいかにトクをするか」である。
■江頭2:50がSMAPや嵐よりモテモテになれる世界
ネット世界とは皆が息抜きをしたり、暇つぶしをしたりする場所なわけだ。真性のバカと真性の暇人がくだらないことをやりまくってそれを可視化できるのに加え、普段は真面目なことをやっている人でも、バカを装ってバカ騒ぎに便乗し、げへへへへと笑っていられる場所なのである。実際、私もこの「江頭祭り」が発生している時はさすがに大笑いしたし、今現在、こうして書籍用の資料として当時の記事や、投票を見ても大笑いしてしまう。
■炎上の6つのタイプ
●義憤型
●いじめ型&失望型
●便乗&祭り型
●不満&怒り吐き出し型
●嫉妬型
●頭を良く見せたい型 (詳細は本書を)
■「芸能人ネタ」に対するクレームが、雑誌ではなかったのにネットではある理由
その理由は「ネットだと色々な人から検索を経由して見られちゃうだろ!」であり「ネットだと広がってしまうだろ!」というものだ。事務所から呼び出しをくらい、謝罪した際も「雑誌は出たら終わりだからオレらだってそこまで怒らないワケよ。ネットだと、尾ひれがついて広がるだろ!気をつけてくれよ!」と言われた。
■政治家がカジュアルな発言をすることのメリットが見いだせない
とにかく2ちゃんねるでは、鳩山総理を含む民主党議員が何か発言する度にスレッドのタイトルに組み込まれ、叩かれる傾向にある。
この程度の常識を考えると、議員は気軽に情報発信をすることにあまりメリットはない。何せネット上で発言をするだけで揚げ足取りの題材になってしまうのだから。
■ネットの普及とともに日本人の生産性が低下している
注目したいのがブロードバンドが普及し、ネットユーザーが爆発的に増え始めた01年と、ブログが普及し、誰でも簡単に情報発信ができるようになった04年である。01年の翌年である02年にGDPは8位に落ち、ブログが爆発的に普及した04年に前年の9位から14位に落ち、以後惨憺たる状況になっている。
【感想】
◆本書は、冒頭でも触れた「ウェブはバカと暇人のもの」をお読みの方ならご想像がつきそうな、「アンチ"ネット礼賛"本」です。中川さん、全く軸がブレてません。
前作(厳密には間に「今ウェブは退化中ですが、何か?」が入るのですが)でも登場した「ネットで叩かれる10項目」も新たに3項目追加して「13項目」にw
特に最後の13番目はその本を書いた後に、中川さんご自身が「身をもって痛感したこと」という「ネットに対してネガティブな発言をする」というものです。
◆ただ、こういった「叩き」を行うのは、上記ポイントの「ウェブ世界に存在する7つの主体」で言うところの(4)や(6)であり、逆に(1)や(2)の層は、「黙殺する」、と。
その「黙殺」の例として、中川さんは『「ウェブはバカと暇人のもの」を有名ブロガーで取り上げてくれたのが3人しかいなかった』(そのうちの一人が切込隊長とのこと)、と本書では書かれているのですが、私は結構あちこちで見た記憶が。
例えば小飼さんの記事は、はてブが150を超えてますし、fujiponさんの記事もはてブ40超。
さらに徳力さんの記事は、むしろ批判されている側なのに、フラットに論じられていて、内容的にも素晴らしいと思いました。
……この時点で既に4人あがっているので、どう考えても私は有名ブロガーには含まれてないことが決定w(【Web1.374?】「ウェブはバカと暇人のもの」中川淳一郎)
◆上記の「7つの主体」は、本書では相関図が示されており、その大きさによって人数の多さを表しています(図が無いとわかりにくいですが)。
それによれば、圧倒的な「マス」というのは、「(4)の普通のネットユーザー」とのこと。
私のようなブロガーは、(1)の教祖ではないものの、(2)には含まれるよう。
そしてどうも先鋭的なウェブサービス(今なら「Twitter」)を礼賛するのは、この(1)や(2)であり、それに引きずられるように(3)の一般企業が乗り出す、と。
確かに恐る恐る(?)Twitterに参入している企業を見る限りでは、その通りのような。
とはいえ、「炎上したUCCの件」や、素早く対応を取った「ソフトバンクの孫さんの件」等、現時点でも事例が多々出てくるような状態なので、この辺の是非の判断はもうちょっと時間が経ってからの方が良さげ。
◆本書は乱暴にまとめてしまえば、ポジショントークを展開する(1)の層と、その(1)の言うことを手放しで信じる(2)の層に対する批判なんですが(まとめすぎ)、面白い論点もありました。
例えば、「ネットの普及とともに日本人の生産性が低下している」というお話は、時期的なものから推測しているだけで、根拠は乏しいものの、可能性としては否定できないかも。
考えてみれば、「ポメラの生産性が高いのは、ネットにつなげないから」かもしれませんし。
勤務時間中にゲームをやっていると、後ろめたい気持ちになるところ、ウェブだとそうならない人もきっと多いハズ。
著者の中川さんも、きっとそんな方に読んでもらいたいと思っているのではないでしょうか(憶測)。
前作同様、この本も「良薬口に苦し」でした!
【関連記事】
2時間で覚える「目立つ力」絶対攻略マニュアル(2009年10月02日)【ひろゆき節】「僕が2ちゃんねるを捨てた理由」ひろゆき(西村博之)(2009年05月30日)
【Web1.374?】「ウェブはバカと暇人のもの」中川淳一郎(2009年04月25日)
【必読!】「新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に」小林弘人(2009年04月16日)
【blog】書評ブログを運営する上で頭においておきたい3つのこと(2008年05月29日)
【編集後記】
◆そんな「普通のネットユーザー」の支持率が最も高いと思われるブログサービスがアメブロ。この本は、アメブロユーザーなら必読かも?
私はあくまで「ライブドアブログ」で行きますけどねw
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「ITスキル」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
この記事へのトラックバックURL
●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。
ああ耳が痛い(笑)>ネットの普及とともに日本人の生産性が低下している
これ当たってると思います。
ご無沙汰です!
やっぱ、生産性下げてますかね〜(笑)?
まぁネットさえなければ、私も3時間かけてブログ書くこともないんですが(笑)。
Twitterもかなり危険だと思いますので、ご留意を…。