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2010年02月04日

【オススメ】「異業種競争戦略」内田和成




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、土井英司さんが、「『FREE』の次に読むべき本」として、昨年紹介された1冊。

その時は、装丁やタイトルの重々しさと、値段の高さwにビビって、手を出さなかったのですが、最近の出版業界での大きな動きを見るにつけ、「これは読んでおくべきか」と、やっと手に取った次第です。

アマゾンの内容紹介から。

流通vs銀行、家電vs光学機器、電気vsガス、フリーペーパーvs雑誌――成熟市場で「成長」を求める壮絶な戦いが始まった。予期せぬ競争相手の出現、破壊される収益構造など、進化するビジネスモデル戦争の本質を説く。

出たのは昨年11月ですが、今まさに読むべき1冊です。



【目次】

第1章 いま何が起きているのか

第2章 なぜ異業種格闘技が頻発しているのか

第3章 事業連鎖―異業種格闘技を読み解くカギ

第4章 どんな戦い方があるか

第5章 事業連鎖を描く―異業種競争戦略1

第6章 ルールをつくれ―異業種競争戦略2

第7章 革命を起こせ―求められるリーダーシップ


【ポイント】

■異業種間競争の現状と未来

 このように、カメラメーカーvs家電メーカー、あるいは、任天堂の「Wiiフィット」vs街角にあるフィットネスクラブといった、これまでなら競争相手とは考えられなかった相手と戦う局面が、成熟する市場のなかで増えてきています。(中略)

 ひょっとしたら、10年後にトヨタがパナソニックと電気自動車で戦うといった、これまでなら考えられなかった競争が起きているかもしれません。


■事業連鎖の変化の5つのパターン(抜粋)

 ●置き換え

先ほどの事例では、記録媒体である「フィルム」が「メモリーカード」に、撮影機器の「カメラ」が「デジタルカメラ」に、さらには「カメラ付き携帯電話」に置き換わりました。

 ●省略

フィルムカメラでは、撮影した画像(写真)を見るために「現像」と「焼付け」という2つのプロセスが必要でしたが、デジタルカメラの登場によって「現像」は不要に、場合によっては「焼付け」も不要となりました。

 ●追加

これまでになかった新しい機能が加わることを指します。写真でいえば、「送付」という機能です。カメラ付き携帯電話機の登場で、撮った画像データをそのままメールに添付して送るということもできるようになりました。


■目的が違えば、戦い方も違う

 ニューヨークのホテルは、ホテルに宿泊してもらうことが目的なので、宿泊費で稼ごうとします。一方、ラスベガスのホテルは、宿泊費を払ってもらうだけでなく、カジノにどれだけお金を落としてもらうかが目的となります。そのため、ラスベガスのホテルは、基本的にかなり宿泊費が安くなっています。


■局地戦の例「小判鮫」

これは、業界の最大手企業があって初めて成り立つ戦い方です。たとえば、セブン銀行が、これにあたります。銀行としては非常に高収益なセブン銀行ですが、第1章で述べたように口座数も預金残高も少ない、ほとんどが手数料で成り立っているビジネスです。
 これは、大きな銀行に口座を持っている人がたくさんいて初めて成り立つビジネスモデルです。つまり、大手銀行が破綻したらセブン銀行のビジネスモデルも成り立たなくなるわけです。


■全面戦争の例「デファクト戦争」

いわゆる事実上の標準争いです。最近ではメモリーカードで、デファクトスタンダード戦争がありました。ソニーが推進した「メモリースティック」と、パナソニックと東芝が推奨した「SDメモリーカード」です。一時は両者のシェアが半々ぐらいになりましたが、いまはもうソニー以外はほとんどメモリースティックを使わなくなりました。


■事業連鎖を見るときには、川上と川下に注意

 まずは、自社のバリューチェーンの川上と川下を注意深く見ることです。なんといっても、隣接する要素から起こる変化がいちばん大きいからです。特に、どこで機能が省略されたり、結合されたりされそうか、あるいは、できるかを見極めることが重要です。もしも自社の提供している価値が、他社の製品やサービスで置き換えられてしまうなら、いくら自社のバリューチェーンを強化しても無駄な努力となってしまいます。


■従来の価値と同じ価値を異なる手段で提供する3つの場合

 ●両者がほとんど同じ価値の場合

実際には何らかの違いがあることが多いのですが、その違いに顧客が気づかない、あるいはまったく気にしない場合は、顧客にとって、あえて新しい手段に移るインセンティブはありません。そのため、価格を訴求することが唯一の手段になります。

 ●プラスアルファの価値を持つ場合(薄型テレビvsブラウン管テレビ等)

この場合は、価格が同じであれば消費者にとってもメリットが大きいので、新しい手段が取って代わる可能性が高いといえます。

 ●特徴的な価値を付加している場合(exリアル書店vsアマゾン等)

この場合は、消費者が両者を使い分けるようになります。


【感想】

◆読む前はどんだけ苦労するのかビビッていたのですが、いざ読んでみると、意外とすんなり読了。

その理由を考えるに、ひとつには、抽象的な概念も逐一説明のための事例が付されており、イメージするのが容易だったこと。

もうひとつは、さすがボストン・コンサルティング・グループの方だけあって、お話が「フレームワーク化」されており、理解しやすかったこと。

また、そもそも本書は、ビジネスブレークスルーで著者の内田さんが担当された「異業種格闘技」という番組が元になっているというのも、とっつきやすさの要因となっているのかもしれません。


◆事例の豊富さでは、冒頭にあげた『FREE』も負けてはいないのですが、こちらは、よりコンサルチックな印象。

例えば、カメラ業界でどんなことが起きたかを図示したのがコチラの図(相変わらず見にくくてスイマセン)。

100202_2143~001異業種競争戦略













各部門部門で、「置き換え」られたり「省略」されたりしているのが分かります。

他にも「ツリー図」で解説がなされていたり、とフレームワーク大活躍の巻w


◆さて、今話題の「出版業界」も、上記のように図を描いて考えるとわかりやすいかも。

それまでは、「出版社」というプレーヤーが、下手すれば「中抜き」というか、最悪「省略」されるんでは、となっていたところに、「いやいや、出版社というのは、こういう仕事もしてるんですよ」と、一石を投じたのがこちらの記事。

それでも出版社が「生き残る」としたら: たけくまメモ それでも出版社が「生き残る」としたら: たけくまメモ

この記事に対しても、「弁護士雇えばいい」ですとか「どんだけ編集者が(ry」みたいなブクマコメントが付いていて、ぶっちゃけ将来的に何が正しいのか、まだわからない状態。

電子書籍のデバイスだけを考えても、Amazon KindleiPadのどちらがデファクトスタンダードになるのかも全く予想がつきませんし、それ以外のデバイスが登場する可能性もあります(iPhoneでも読めますし)。


◆上記ポイントにも一部挙げたように、本書にはこうした「現象」「事例」を落とし込むべき「フレームワーク」がしっかり用意されているところがポイント高し

気になる「異業種競争」があったら、当てはめてみることをお薦めします。

もちろん、現在のご自身のフィールドで、自社と他社の現状を分析するのも良し。

フレームワークは劣化しないですが、事例は古くなるので、早めにお読みになる方が良いかと。


もっと早く読んでおけばよかったと思った1冊!



【関連記事】

【コンサル的知的生産術】「スパークする思考 右脳発想の独創力」内田和成(2008年11月19日)

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【超・仕組み系】「Hot Pepperミラクル・ストーリー」平尾 勇司(2008年06月04日)


【編集後記】

今日ご紹介した本の著者である、内田和成さんの最新刊がコチラ。

最も重大な過ちは間違った問い、不要な問いに答えること。成果を出すには、「正しい答え」ではなく、「正しい問い」が重要だ。正しい論点で問題解決力が劇的に向上する。

何やら丸善オアゾ店では激売れしているみたいですぜ!


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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この記事へのコメント
               
smoothさん、こんにちは!

これは、今の、私がまさしく必要としている本です。
お役立ち本のご紹介ありがとうございます。
Posted by ニタ@教えて会計 at 2010年02月04日 18:32
               
>ニタさん

お!さすが目を付けられましたかw
考え方というか、整理の仕方が学べる良書だと思いますよ。
ぜひお読み下さい。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2010年02月05日 06:19