2009年12月10日
【自分ごと】『「自分ごと」だと人は動く』博報堂DYグループエンゲージメント研究会
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【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、私の行きつけのリアル書店で大展開しているマーケ本。Twitterで丸善オアゾの田中さんが「『自分ごとだと人は動く』わけです」とつぶやかれていたのは、これだったのか、とw
アマゾンの内容紹介から。
自分がブログやTwitterで発進した情報が「選ばれる」ためのヒントを本書で見つけてください!日々、膨大な情報に囲まれる生活者。メディアを通して流れる情報の99%はスルーされる時代です。では、選ばれる1%の情報とは何か。それは、生活者にとって『自分ごと』の情報です。選ばれた情報は、多くの伝達ツールをもった生活者によって、多くの人に伝播される。そう、社会を動かすカギは、『自分ごと』なのです。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 細分化する社会
1「幸せの標準」が崩壊している
2大衆→分衆→網衆
3細分化する「その都度」社会
4「マスメディア>生活者」だった20世紀のメディア環境 ほか
第2章 タグ化する個人――人間とは「タグ」の集合である
1そのプロフィールは自分のすべてか?
2一貫性のない「ワタシ」という存在
3 10年後のコミュニケーションを予想すると?
4タグ同士をひもづける情報行動「シェア」 ほか
第3章 99%の情報がスルーされる?
1「届く」と「受け取る」
2受け取らない技、「スルー」
3スルーする技その1:「気がつかない」
4スルーする技その2:「見切る」 ほか
第4章 コミュニケーションは「自分ごと」で成功する
1「自分ごと」を定義する
2「自分ごと」されれば、情報はスルーされない
3「自分ごと」されれな、情報は「シェア」される
4ブランド価値を「with C」の視点で捉え直す ほか
第5章 「自分ごと」は社会を動かす
1あなたは「自分ごと」の伝道師
2ケーススタディ#1 シブヤ大学:街が「自分ごと」になる
3デコンストラクション#1 シブヤ大学のケース
4ケーススタディ#2 コーセー:本社移転を「自分ごと」にする ほか
第6章 社会の主導権は誰が握るのか?
1それでも、人は誰かとつながりたい
2テーマは24時間、365日
3生活者が参加・選択する「余地」を残せるか?
4対応、運用の総合力こそがマーケティング力である ほか
【ポイント】
■時代は「大衆→分衆」と来て「網衆」へ大衆、分衆、網衆との間にある決定的な違いとは、生身の人間という"器の限界"を超えてどこまでも軽やかに結びつき、つながっている、その自由度。いつでもつながれるオープンな"集まり"なのです。
■生活者は「情報の受け手」から「情報の取扱者」へ
生活者が情報を扱うようになると、情報自体がメディアの種類をまたがってダイナミックに動き回り始めます。(中略)
たとえていうならピンボール。ところどころにある柱にぶつかると、光ったり音が出たりしながら得点が増えていくゲームですが、各所を回りながら情報としての価値が高まっていく。情報はピンボール台に乗っかっていて、何かと衝突すればするほど輝きを増していきます。
■「人間は『タグ』の集合」という仮説
タグとは関心。タグとは興味。生活者が個人的に興味・関心を持っているそれぞれの対象ごとに1枚ずつペタリと貼られていくイメージです。つまり、1人の人間が持っている興味の数だけタグの数があります。(中略)
レッテルが「糊たっぷりべったりの1枚限りの札」だとすると、タグは取ることもできる軽い札。また1人につき、何枚でも自由にペタペタ貼れる。
そして人間は自らに貼った「タグ」を相手によって使い分けながら生活をしている、他人とコミュニケーションを図っている。それが私たちの仮説です。
■情報をシェアする技「おく」
自分の行動や感想を話の材料として、不特定多数の人々の前にそっと「おく」こと。誰かへ届けることが目的ではないことにご注意ください。むしろ誰かが、欲しい、面白い、興味があると思ってくれて取りにきてくれることを期待している行為です。
■スルーする3つの技
●気づかない
●見切る情報の存在自体には気がついているのに、それを受け流し、聞き流し、見送る。
●放っておくチラとは見るけれども、即刻に不要と判断し、捨ててしまう。判断するステップが入っているところは、「気づかない」とは大きく違うところ。
「放っておく」スルー技が可能になった大きな理由は、デジタル化による情報のデータ化、ストック化の進展です。
■メッセージは形容詞から動詞へ
これまでは「自分は○○である」という自己紹介型のメッセージが多かったと思います。競合他社と比べて違うところはココとココです、と差別化ポイントを自ら語るやり方です。
だからこそ「形容詞的」なコトバが多く使われていました。「自分は○○である」の○○に使われたのは形容詞が多かった、ということです。(中略)
しかし生活者はすでに情報選択の権限を持っていますから、いくら熱心に自己紹介してもらっても「自分とは関係ないな」と思ったら、それ以降すべての情報がスルーされてしまいます。
関係をつくるためには、形容詞的なメッセージよりも、動詞的なメッセージの方がどうやらベター
■「やさいしぼり」の「100万人サンプリング」が目指したところ
「おいしい」に一票を投じていただけたなら、その時点で「野菜を健康軸ではなくて、おいしいの軸で考える」という関心のタグが1回つながったことになります。残念ながら「おいしくない」派の方であっても、野菜=健康、のステレオタイプ以外の野菜ジュース選びがあるんだな、とタグの存在には気がついてもらえるでしょう。(中略)
ブランドからの一方的な主張によるコミュニケーションではなく、テーマの共有によるコミュニケーションとは、こうした仕組み。ただただ話題になるのではなく、その背後にある興味・関心の顕在化を伴って広がっていくのがユニークかつ効果的なのです。
■最近評判の広告にある「凸と凹」
まず凸。生活者が興味や関心のきっかけを持てるような体験への「デッパリ」をつくることです。(中略)
凹とは、生活者が共振・共鳴・参加できるように、関与したくなる「クボミ」を用意して誘うこと。(中略)
「凸と凹」なんていうと、凸のデッパリと凹のクボミが直接ドッキングするような印象を持たれるかもしれませんが、それはイメージ違い。凸のデッパリも凹のクボミも、相対するのは生活者。情報発信者が生活者主導の視点を持ち、凸の要素と凹の要素を目的共有しながら横で連携することが大切です。
【感想】
◆ここまでが大体第4章で、次の第5章では「具体的な事例」が紹介されているのですが、分量的にこの辺で。自分自身がブログという「情報発信」にかなりの時間を投入していることもあって、本書で述べられている『生活者は「情報の受け手」から「情報の取扱者」へ』というクダリにはえらく納得しました。
今までは、マスメディアから与えられた情報を、何の疑問もなく受け入れていた私たちも、その情報をスルーことがかなり多くなってきているわけで、では逆にスルーされないためにはどうしたら良いのか、と。
ひとつには、あえて「ツッコミどころ」を作る。
本書では、ソフトバンクの「犬のお父さん」が挙げられていましたが、確かにCMに「おいおい!」とツッコンだ時点で、その対象は「自分ごと」になります。
◆これは実はブログにも言えることで、某著名ブロガーはあえて、記事にちょっとした書き間違いやささいなミスを残しておくのだとか。
すると、親切な読者がブログのコメント欄や、ブックマークのコメントで教えてくれたりするので、スルーされない、と。
確かに私もミスを見つけたら、コメントしたりすることもあるので、その人の術中にはまってますねw
ちなみに私の場合、よく記事に「リンク切れ」があるのですが、私の場合は「200%ガチのミス」なので、生温かく見守ることなくご指摘下さいマセ。
なお、人によっては火種となりそうなネタを置いたり、読んだ人の中の一部が「ムキーッ」となりそうなことを書く、というやり方でアクセスやブックマークを集めることがありますが、完全に「炎上ギリギリ」なので、素人にはオススメできませぬー。
◆上記ポイントでカットした第5章の事例の中で面白かったのが、ライオンのハンドソープ・「キレイキレイ」で行った「バイ菌とたたかうプロジェクト」の「みんなでバイキンやっつけよう!ラリー」。
これは幼稚園児が、手洗いとうがいを自分でできるようになるための「参加キット」を用意し、できたらシールを貼り付けていくというものです。
そのキットの中には、2週間後にもらえる「認定証」もあり、「自らの体験を報告する行動ステップ」がツールの中に組み込まれている、という点が秀逸。
これによって、手洗いやうがいが「自分ごと」となるわけですね。
・・・ウチの子ども達にもやらせなくては。
◆本書の「おわりに」にはこうあります。
確かに、「キレイキレイ」のお話も本来なら「子どものしつけ」でくくられるべきもの。ケーススタディを含めて、論のほとんどは広告・マーケティングの領域に属するものですが、汎用性はあると自負しています。あなたの具体的な生活シーン、ある誰かとのちょっとしたコミュニケーションにも、同じ構造が隠されているからです。
考え方によっては、私たちの生活全般に応用できるのかもしれません。
「他人ごと」としてスルーされたくない方へ!
博報堂DYグループエンゲージメント研究会 ¥ 1,575 |
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【編集後記】
◆この本、土井さんのメルマガで紹介されて、一気に品切れになっちゃいましたねぇ・・・。仕組みで「売る」技術
当ブログ的には微妙なネタなんですけど、私はコッソリ読むつもりですw
ご声援ありがとうございました!
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