2009年11月30日
【読書術】『「眼力」をつける読書術』吉岡友治
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、小論文に関する著作を多く残されている、吉岡友治さんの「読書術」のご本。今まで技術的な読書の本というと、どうしても「速読関係」が多かったと思うのですが、本書は「読解」的な技術ネタが多く新鮮でした。
出版社さんのサイトから引用します。
さすが「書く」ことの専門家は「読む」ことに関しても「プロ」なのだと思わされました!論理的な思考を養い、アイデアや企画を発想するにはどんな本を読み、どのように読んだら良いのか? 読書の達人が、論理的に読む力がつき、問題解決につながる読書法を解説する。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 読書はなぜ必要なのか?
最新の情報は「文字の中」にある
「ハウツー本」にヒントがあるとは限らない
ジャンク情報にだまされるな ほか
第2章 ジャンル別の読み方
ジャンルごとに読み方がある
論文の読み方1
論文の読み方2 ほか
第3章 技術を知れば、視点が変わる
ヴィジュアル時代に文字を読む意味
大切なところを見分ける小技
統計の読み方を覚える ほか
第4章 何を読むべきか?
読書の始まりは何でも良い
ビジネス・経営学書は古典を読め!
他分野に迂回するという方法 ほか
第5章 読むための環境づくり
どうやって本を読む時間を見つけるか?
いつ・どこで読むか?
環境力を利用するミニ・テクニック ほか
第6章 読んでからどうする?
忘れることを後悔しない
気に入った本は可愛がる/いじめる
見られても恥ずかしくない本棚を作る ほか
おわりに―再び・読書はなぜ必要なのか?
巻末:読む力を磨くための読書案内
【ポイント】
■「成功哲学」を捨てて冒険しよう既存の「マニュアル」「ハウツー」を捨てて、その先に行く。そのためには、わざわざ迂回して、ムダと思われる読書もする。そういう積み重ねからしか、新鮮な発想は湧いてこないのだ。自分の知っている知識・情報に閉じこもらず、過去の知識・情報をいさぎよく投げ捨てて、次のリソースにアクセスする。これが、自分を発展させる唯一の方法なのである。
■論文は要約を作れるように読んでみる
論文は、問題と解決という大事なところさえわかれば、小説や詩歌のように全部を丁寧に読んで理解する必要はないのだ。(中略)
とくに根拠は解決が納得できるように読者を説得する手段にすぎないのだから、少なくとも、文章理解にとっては一番大事なところとは言えない。だから「この文章で筆者は何を言いたいのか?」と聞かれたら、理由や例示を出してはいけない。「こういう問題について、こういう主張をしている」と問題と解決を抜き出す。これを要約と言う。要約=問題+解決と覚えておこう。
■論文は段落の最初が大事
すべてがそうだとはいうわけではないが、大部分がポイント・ファーストになっているのだ。つまり、段落の冒頭部分に筆者の一番言いたいことが述べられ、後から詳しい情報・データなどの細部が続くという仕組みになっている。だから、段落冒頭の文を拾って読むだけでも、だいたいの全体内容はわかる。
■随筆の構造
個人的な出来事とその感想をきっかけに人間・社会一般について考察を深めていく文章形式を「随筆」というのである。日本的な随筆の原型とされる「方丈記」にしたって、都で起こった火事や飢餓を体験して、その悲惨さから「無常」という観念にたどり着くという構造になっている。その考察の部分を私は「思考」と名付けている。つまり、随筆とは体験→感想→思考・考察という順番になっているわけ。
■論理的文章では、接続詞が重要な標識
順接とか逆接とか学校で習っただろうが、読むときに大事なのは、同じ順接であっても意味に違いがあるということだ。たとえば、「しかし」の場合は「しかし」の後の内容が大切、「ただ」は前の内容が大切であり、伝えたいメッセージの位置が違ってくる。だから、それぞれの接続詞の意味を覚えるだけでなく、どこを強調しているかに注意すべきなのだ。つまり接続詞に注目すれば、文章の中身など読まなくても、その大切度がある程度わかるようになっているのだ。
■具体例にとらわれない
論文で大事なところは、ほとんどの場合、抽象的な表現になっている。具体的な例示とかデータは、そこを納得させるための補助的な材料=サポート情報にすぎない。だから極端なことを言えば、抽象的な表現が理解できれば、具体的な例示とかデータは読まなくていいのだ。
その意味で、要約とは「大切なところを丁寧に抜き出す」というより、要らないところを大胆に捨てる技術なのである。
■比喩表現色々
●隠喩(メタファー)
例:「警察のイヌ」
●換喩(メトニミー)
例:「クルマ」は元々車輪のことだが、自動車をイメージするはず
●提喩(シネクドキ)
例:「空から白いものが舞い落ちてきた」
■論理が不明瞭な文章ほど、感情に訴える傾向がある
だから「非常に」「絶対に」などという強調後が多用されたり、「何と……だろうか!」などと感嘆文・感嘆表現が使われたりする。逆に言えば、感嘆・慨嘆・強調表現ばかりが目立つ文章は、眉に唾を付けながら読んだ方が良い。淡々と書かれてある文章ほど信用できるし、そういう感嘆・慨嘆・強調表現が並んでいる場合は、それらを極力取り除きつつ読むようにしたい。
【感想】
◆ここまでが第3章で、以降「何を読むべきか?」「読むための環境づくり」「読んでからどうする?」と章が続くのですが、私個人の趣味で第3章までを詰め込んでみましたwさすがに小論文の専門家だけあって、テクニカルな記述が多く、ついついそちらを優先したという。
日頃、「ビジネス書を読み流して付箋を貼る」ことを繰り返している身としては、反省することが多かったです。
そもそもビジネス書も「古典を読め」と、ごもっともなご指摘もありますしたがw
◆アマゾンの内容紹介の冒頭(と本の帯)には「速読なんぞ笑止千万」と書いてあるのですが、これは「目に焼き付ける系」の速読を指しているようで、本書では吉岡さんが今後「速読の本」を出される、との記述がありました。
確かに、「目に焼き付ける」以前に、例えば目を速く動かさなくとも、本書に書かれている技術で、少なくとも論文や専門書といった論理的な書物を読むスピードは、大幅に上がると思われ。
「段落の冒頭の文を読む」、というのは、かつて私もチラッと記事で書いたことがありましたが、より深く掘り下げてらっしゃいます。
参考記事:【本リスト有】専門書を素早く読む5つの方法(2008年04月29日)
ただ、本書内でも明記されているのように、この手のテクニックが使えるのは、あくまで論文等の「論理的に書かれたもの」に限りますので、あしからず。
◆そして、当ブログ的にはあまり関係ないと思って割愛しましたが、小説や詩歌の読み方まで指南しているのが、本書の特徴かと。
ちなみに「小説」に関して、1点指摘しておかねばならないのが「時代状況等の知識」の必要性。
事例として川端康成の作品『夏の靴』において、ちょっとした単語(「桃色の洋服」)で、階級制度が見え隠れすることが指摘されており、確かに当時の状況を知らなければ、そこまでは分かりえません。
この辺は、小飼 弾さんがこの本で言われていたことと同じですね。
空気を読むな、本を読め。 小飼弾の頭が強くなる読書法 (East Press Business)
参考記事:【小飼流読書術】「空気を読むな、本を読め。」に学ぶ7つのポイント(2009年10月22日)
◆なお、巻末には「読む力を磨くための読書案内」と称して40冊ほどの本が推奨されています。
いわゆる「ハウツー物」を避けたような選書なので、この辺は即効性があるかどうかは微妙ですが、それこそ上記ポイントで挙げたように「わざわざ迂回して、ムダと思われる読書もする」本領発揮かと。
ビジネス書の古典と言われるものまでクリアされたような方なら、視野を広げる意味で、有効だと思います。
当ブログの読者さんなら第3章までで元はとれるハズ!
「眼力」をつける読書術
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【読書力】『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』小宮一慶(2008年09月19日)
【編集後記】
◆当ブログ的にはツボのヨカン!これは楽しみですね!ベストセラー『成功本50冊「勝ち抜け」案内』(光文社)や『ビジネス書のトリセツ』(徳間書店)で知られる著者が、今度はモテ本を斬る!
600冊以上のモテ本を読破したなかから厳選した51冊のそれぞれのメソッドをわかりやすく解説すると同時に、幅広いジャンルのモテ本から導き出したビジネスと恋愛に共通する成功法則や、社会的事象にも言及している。
巻末には「あなたを結婚へと導く10のステップ」をはじめ、51冊のモテ本の位置づけが一目でわかる「モテ本マトリックス」、自分に適した結婚パターンを知る「婚活マトリックス」、数々の恋愛本のベストセラーを生み出しているぐっどうぃる博士との特別対談なども掲載。
正しいモテ本の読み方、実生活への活かし方がわかると同時に、モテ本を読んだことがない読者でも「へ~、こんなことが書いてあるのか!」と「のぞき見」感覚でも楽しめる豪華な一冊。
ご声援ありがとうございました!
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まあ、現代国語を苦手とするような受験生が、この手の本を読むようなことはほぼないと思われますが。。。
読書本も色々出た割には似たようなことが書かれていることが多いのですが、本書はちょっと毛色が違ったと思ってます。
「なるほどね」という点が結構あったので、記事にしてみました。
このブログで紹介しているようなビジネス書を読む際に、役に立つかは微妙ですが(汗)。