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2009年11月11日

【ヤバ本】『クリック!「指先」が引き寄せるメガ・チャンス』ビル・タンサー(著),泉 浩人(監修)




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、久々の「ヤバ本」

先日ご紹介した『「ツイッター」でビジネスが変わる! Twitter Power』に登場した際、気になったので購入してみたところ大正解でした。

特に、ロジャーズの普及曲線(「イノベーター」とか「アーリーアダプター」とかのアレです)が、インターネットによってどのようにブーストされたとか、「ティッピング・ポイント」で言われていた「コネクター」が、今ではSNSによって「スーパーコネクター」と化している、等目からウロコの話が満載。

思わず知り合いの著名著者さんたちにメールしそうになりましたよ。


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【目次】

序章 ネットユーザーは匿名ですべてを語る
1章 誰よりも早く「クリック」したがる人たち
2章 マイスペース誕生
3章 ウィキペディアと80対20の法則
4章 クリックの「先」で待ち伏せしろ!
5章 オンラインデータの「予知能力」を利用しろ!
6章 ネットジャングルが吸い寄せる「性」と「カネ」
7章 クリック音に時代の「本音」を聴き取れ!
8章 マウスの向こう側の浮気な検索ユーザーたち


【ポイント】

■ユーチューブの成長グラフとロジャーズの普及曲線との関連性

2005年10月、まだベータの段階にあったユーチューブへのトラフィックは、マイスペース、フレンドスター、そして立ち上がったばかりのフェイスブックを含め、SNSからのものが全体の52%にも上っていた。(中略)

 ところがその後たったひと月で、ユーチューブのサイトへのユーザーの訪れ方が劇的に変わり始めた。ホットメールやヤフー!メールのような無料のウェブメールからのトラフィックが、このサイトに向かうすべてのトラフィックの17%以上を記録し始めたのだ。これに対し、SNSからのトラフィックはちょうど30%にまで下落していた。(中略)

SNSとeメールからのトラフィックとともに、2006年1月には、グーグルからのアクセスがユーチューブのクリックストリームに姿を見せ始めた。「アーリーマジョリティ」のメンバーは、ユーチューブのうわさを耳にして、検索をかけてまず「サイトそのもの」を見つけ出し、評判を聞いた人気の動画クリップに行き着くという行動をとりつつあったのだ。


■ウェブ2.0的なサイトのトラフィックを分析してわかった「アーリーアダプター」のプロファイル

●「ボヘミアンミックス」

このグループは都市部に住居をかまえ、たいていは都市かその郊外で暮らしている。(中略)

彼らはブルーミングデール、サックス・フィフスアベニュー、バナナ・リパブリックといったスノッブな店で買い物をし、おそらく、セグメント名の由来でもあるが、アートの世界で仕事をしている人が一番多い。

●「カネと頭脳」

 芸術的な「ボヘミアン・ミックス」たちと違って、「カネと頭脳」のセグメント、つまり2番目の「アーリーアダプター」セグメントのメンバーは、裕福で社会的な地位が高く、法律、医療、あるいは経営的な仕事についていることが多い。

●「若きデジタルエリート」

 3つのセグメントのうち、「若きデジタルエリート」がもっとも裕福であり、同時にもっとも技術オタクだ。このグループのメンバーは、都市周辺部に住む傾向がある。高学歴で、クラリタス社の調査によれば、130万世帯がこのグループに属している。コンピューター技術者として雇用されていることが多い。


■スーパーコネクターの誕生

 もう、ダンバーの150人ルールはいかにも古くさい。マイスペースの世界では、友だちが何万人、何十万人になっても珍しいことではないだろう。ある意味で、SNSの出現によって「コネクター」の新種が誕生し、そして力をつけたということになる。この新種を「スーパーコネクター」と呼ぶことにする。(中略)

 テキーラは本書執筆時点で、マイスペース上でもっとも人気のあるアジア人だ。ネットワークにいるその友だちの数は164万5873人で、プロフィールページには25万件以上のアクセスがある。


■無名バンドだった「アークティック・モンキーズ」の成功とマイスペース

 ライブハウス「グレープス」の外に行列ができると、ネット上ではうわさが広まり始めた。それはアップロードされるMP3形式のファイルによってますますあおられる。その原因がシェフィールドで配布された最初のデモCDであることに疑いの余地はなかった。マイスペースのユーザーはアークティック・モンキーズの歌を自分のプロフィールページに掲載し始める。SNSの世界のティラ・テキーラと同じように、今度はスーパーコネクターが自分のプロフィールページにアークティック・モンキーズの動画クリップを追加し始めると、バンドに対する関心が一気に広まっていったのだ。




■サーチ数がSNSからのトラフィックを抜く瞬間こそが「ティッピング・ポイント」だ!

スーパーコネクターに影響された「本流」、すなわちその他大勢の一般ユーザーがバンドの歌や容姿についての情報を検索するという状況が続くと、検索エンジンからのサイトへのアクセス数は、SNSのクチコミによるアクセス数をしのぐことになる。これら2つの発生源からのトラフィックが交わるところに、ティッピング・ポイントが存在している。


■ウェブ2.0的なサイトにおける「1対9対90の法則」

 そのデータから明らかになったのは、ウェブ2.0的なサイトへの全アクセス数の1%未満が、ユーチューブに自ら作成した動画を投稿するなど積極的に参加している人たち、9%(この数字はそのサイトのオペレーションの「複雑さ」によって3%から9%の幅で変動する)が、項目を編集するかコメントを書き込みながら、消費者の生み出したコンテンツと相互に関わり合っている人たち、そして90%が潜伏者であり、反応はせずに黙ってコンテンツをながめているだけ、という事実だった。


■ネット検索によるアービトラージ

ネット上のデータを利用した利ざや稼ぎは、「過去」ではなく、「現在」起きていることに注目する。例えば、人々がインターネット上で住宅の購入や売却に関する情報収集を活発に行っていることがわかれば、住宅販売に関する経済指標が発表されるはるか前に、不動産市況の上昇を予測することができる。こうした時間差は、数日、あるいは週、月単位に及ぶこともあり、時間差が大きければ大きいほどこちらが有利だ。


■「売り家」での検索回数が増えたのに中古住宅販売数がプラスにならなかったワケ

 つまり「売り家」での検索回数は増加していたが、そうした検索をしていたのは、「住宅購入に関心のある買い手」ではなく、「住宅価格の下落に不安を抱えたホームオーナー」に変わっていたのである。ホームオーナーたちは、自分の住宅がある地域では、どんな住宅が、どんな条件で売れたのか、そして自分自身の住宅の価格が不景気の影響で下落していないかどうかを知るために、必死で検索をして、情報を集めていたというわけだ。


■女性はエロ文学がお好き

 アダルトサイトにアクセスするユーザーが男性ばかりだと思っている人は、おそらくアダルトサイトのコンテンツは写真や動画だと思い込んでいるのではないだろうか。だが「エロ文学」にまで対象を広げて見ると、活字で表現したアダルト向けコンテンツに対する女性の嗜好がはっきりと見えてくる。たとえば、この種のサイトでは最大手の「AdultFanFiction.net」の場合、女性のアクセス数が65.5%と圧倒的に多い。さらに、その年齢層も、18歳から24歳の占める割合が54.6%と若く、この分野ではかなり特異な構成になっている。


【感想】

◆本書は、これら以外にも付箋貼りまくりだったのですが、この辺で。

ご紹介できなかった中では、「GMのお粗末なウェブ連動型TVCMの話」ですとか、「SNSがアダルトサイトに取って代わられた」なんてところが興味深かったです。

後者はちょっと「聞き捨てならない」ところですが、実際に米国では、2003〜2004年頃にはフレンドスターのような第一世代のSNSを、出会い系サイトに代わるサイトとして利用し始めていたのだそう。

日本の場合、さらに「携帯電話」という飛び道具で、若年層まで参加できるわけで、規制もやむをえないのかもしれません。


◆それはさておき、ポイントの最初の方でご紹介した「普及曲線」や、「ティッピング・ポイント」あたりは、マーケティングに携わる方なら、ぜひ本書の方で詳細を確認してほしいところ。

マルコム・グラッドウェルの「ティッピング・ポイント」の文庫版である「急に売れ始めるにはワケがある」でも、そのティッピング・ポイントが起こるロジックは説明されていましたが、現れるタイミングまでは言及していなかったハズ。


参考記事:【ティッピング・ポイント】「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル(2007年07月18日)

本書では、ある程度限定的なケースとはいえ、ポイントで挙げたようにマイスペース内で起きたバンドのブレイクのティッピング・ポイントを分析。

さらに、上記では触れませんでしたが、一度は忘れさられたバンド、「フォール・アウト・ボーイ」の、3枚目のアルバムのブレイク(ビルボード1位)をトラフィックから予想したりもしています。

Fall Out Boy ¥ 1,317

Fall Out Boy - "The Take Over, The Breaks Over":YouTube(埋め込み無効動画)


◆こういう「予想」は上記でも言及があったように、一種の「アービトラージ(鞘取り)」を可能にするわけで、ここにビジネスの匂いをぷんぷん感じる方もいらっしゃるかもしれません。

アフィリエイターの間では、「何月にはどういう単語がよく検索される」みたいな常識はあると思うのですが、それをセグメントと結びつけて分析したのですから、かなり強力。

例えば、ある「成人女性向けファッション雑誌」のオンライン版も、ライバルは似たような「成人女性向け雑誌」と思いきや、実は「10代向けファッション雑誌」のサイト群だったそう。

これも詳細を分析したところ、「ある特定の10代の富裕層に属する少女グループ」が、成人向け女性誌への乗り換えをしていたからと判明。

このケースなどは、「いったい誰をターゲットとしてマーケティングするべきか」について、考えさせられます。


◆また、セグメントと言えば、「はてブトルネード」なるものの傾向と対策は聖幸さんが記事にしてらっしゃるのですが、そもそもはてなブックマークをどういう属性の人々が使っているかを考えないと、トルネードどころか、ブックマークすらされません。

つまり、その本が誰かのブログで記事になる以前に、本のテーマなり著者のコア・コンピタンスが、はてブユーザーとマッチしていないといけないということ。

その点、勝間さんの最初のヒットとなった「勉強本」は、

・テーマ ⇒ 「勉強」

・著者  ⇒ 「デジタル好き」「仕組み化好き」「ロジカル」

といったところが、はてブユーザーの嗜好にマッチしたのかと。

もちろん、マッチしていたからといって、必ずしもトルネードが起こるわけでもないですし、逆にある程度アクセスが多いブログ(小飼さんとか)ですと、力技ホッテントリ入りしちゃうんですけどねw


◆なお、通常のアクセス解析だけではここまではわからないわけで、これもひとえに著者の属する会社が、契約に基づき、全国のISPからの利用データを匿名化したものを分析しているため。

さらにそのサンプルには、調査に同意して個人情報を提供したインターネットユーザーからのデータも含まれているのだとか(もちろんプライバシーを保護した上で)。

インターネットでは購買履歴だけが重要で、属性情報はなくてもいいかな、と思っていたのですが、上記の「女性向けエロ文学」の話などを読むと、さらなるビジネスのアイデアがwww←アフォw


◆本書は冒頭でも書いたように、マーケティングに携わる方なら必読ではないか、と。

さらに、鼻の利く方ならさらなるビジネスアイデアが沸くと思われ。

今まで私は「ティッピング・ポイント」が好きな方には、「アイデアのちから」をプッシュしていましたが、今後は新たに本書も激プッシュさせて頂きます!


テラヤバスぐる1冊!



【関連記事】

【スゴ本】『「ツイッター」でビジネスが変わる』ジョエル・コム(著),小林啓倫(訳)(2009年11月07日)

【スゴ本】「費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて」後藤 一喜(2009年07月30日)

【スゴ本】「ECサイト4モデル式 Google Analytics経営戦略」権 成俊, 村上 佐央里(2009年02月05日)

【オススメ】「アイデアのちから」が予想以上に面白かった件(2008年11月25日)

【ティッピング・ポイント】「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル(2007年07月18日)


【編集後記】

◆性懲りもなく、またこういう本をアマゾンアタックしてしまったワタクシ・・・。

THE 21 (ざ・にじゅういち) 2009年 12月号 [雑誌]
THE 21 (ざ・にじゅういち) 2009年 12月号 [雑誌]

読むだけではなく、実践して成果を上げねば。

まずはブログ書くのを「2時間半くらいに短縮」しようっと!←してもそんなもんw


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この記事へのコメント
               
全くノーマークでしたが、凄そうな本ですね!
最近、マーケティング分野の本を少し意識して読むようにしているので、クラッシュ・マーケティング読んだら、次はこの本ですね!
Posted by Taka@中小企業診断士(業務休止中) at 2009年11月11日 09:37
               
>Takaさん

個人的には、今年のベスト10にも入れてもいいくらいスゴイ本だと思うのですが、イマイチ反応が少なくてションボリでやんす(涙)。

Takaさんには是非お読み頂き、記事にして頂きたいですネ。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2009年11月12日 03:32