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2009年10月31日

【スゴ本】土井さん推奨の「インセンティブ」が面白かった件




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、かつて「ヤバい経済学」にハマった方なら、見逃せない1冊。

ちょっと前にリアル書店で見つけて、編集後記でご紹介した後も、他の本と平行して味わって読んでいたら、土井英司さんのメルマガに先を越されて超涙目の巻

本の帯の推薦の言葉が、アマゾンの内容紹介にもありましたので引用します。

▼「タイラー・コーエンは、経済学者であり、カルチャー渉猟家であり、レストラン評論家であり、世界最高のブロガーでもある。この本はチャーミングで、聡明で、とてつもなく創造的だ」(ティム・ハーフォード、『まっとうな経済学』著者)

▼「この本は、あなたに世界の本当の可能性を伝え、より良く考えることが、より良く生きることに役立つのだと教えてくれる」(ジェームズ・スロウィッキー、『「みんなの意見」は案外正しい』著者)

付箋もこんな感じで貼りまくりでございました。

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【目次】

第1章 バナナなら買える。けれど、市場にないものも欲しい

第2章 世界をうまく動かす方法――基本編

第3章 世界をうまく動かす方法――応用編

第4章 芸術を真に楽しむために「足りないもの」は何か?

第5章 シグナルは語る――家庭でも、デート中も、拷問のときも

第6章 「自己欺瞞」という危険だが不可欠な技術

第7章 とにかくおいしく食べるきわめつけの極意

第8章 七つの大罪の市場――その傾向と対策

第9章 クリスマス・プレゼントは世界を救うだろうか?

第10章 内なるエコノミストとわれらの文明の未来


【ポイント】

◆付箋を貼った箇所が多いので、簡潔に引用していきます。

■子どもに皿を洗わせるには?

「君には皿を洗う義務がある」と娘に言えば、その言葉は、娘の心に残る。毎回、義務を果たすわけではないかもしれないが、手伝わなければならないとか、親の期待に応えようと少なからず思うはずだ。(中略)

 これが小遣いを上げるとなると、話は違ってくる。娘は、「皿洗いは、カネのもらえるアルバイト」だと思い、やらなければならないという義務感も希薄になる。親は尊敬の対象ではなく、上司になる。


■生徒に教室を掃除させる2つの方法

ひとつは、きちんと片付けなさいと指示する方法。もうひとつは、きちんと片付けられたねとほめる方法だ。指示する方法では効果がみられなかったが、ほめる方法だと3倍もゴミが集まった。生徒たちは、きれい好きで良識のある人だと思われることが得になると思ったのだ。


■賞罰システムの欠点

当人が主体的に関わっていないと感じていると、賞罰システムはうまくいかない。インセンティブを導入するなら、敬意をもってシステムをつくり、少なくとも助言という体裁をとるべきだ。報酬に伴って社会的地位があがる場合は別だが、そうでないなら賞罰をなくすべきだ。そうしないと、報酬が大きければ大きいほど、内側から湧いてくるやる気はそがれる。


■会議の質を上げる方法(抜粋)

 ●会議が終わるまで、全員を立たせておく

 ●チェスのように、全員にタイマーを配って、発言時間を制限する



■美術館にとってのインセンティブは、寄付してくれる有力者を喜ばせることにある

 美術館も多少は来場者を気にかけるが、それは人気のないハコモノに支援していると有力者に思われたくないという間接的な理由からだ。有力者と来場者の利害は一致しないのがふつうなので、来場者が上に立つことなど期待すべきではない(ちなみに、動物園は入場料収入が多く、美術館ほど寄付に頼っていない。そのため動物園は来場者を楽しませることに力を入れている)。


■スポーツジムに通う回数を多く見積もって、月会費が無駄になる理由

これだけの会費を払うのは、自分が運動をどれほど好きか――と言うより好きでないかを直視したくないからだ。あるいは、定額の月会費を支払ったほうが、まじめにジムに通う気になると勘違いしているのかもしれない。アンケートに答えた会員は、定額の月会費の元が取れるだけ通うつもりだと考えている。大多数の会員が思い違いをしているわけだ。


■集団による生産性の錯覚

 ブレインストーミングは、時間の使い方としては非生産的だ。人は集団のなかにいるときよりも、自分独りのときのほうが新しいアイデアを思いつくものだ。(中略)
各種の調査結果を比較したところ、22の調査のうち、集団のほうが生産性が低いとする調査が実に18にのぼった。身に覚えがあると思うが、他人の仕事を信頼し過ぎて、「ただ乗り」する人が多すぎるのだ。


■美食の旅をするなら貧富の差が激しい国を選ぶ

 ほかの条件が同じであれば、富裕層がいるということは、食事がおいしいことを意味する。(中略)

 だが、供給者に目を向けると、美食のための食材の供給を支えているのは、かなりの貧困層だ。最貧層の賃金水準が上がると、料理人やウェイターを雇うのが難しくなり、食材の生産コストも上昇する。


■メキシコにおける誘拐犯と保険会社が取引する仕組み

誘拐犯のほとんどが、保険に入っている人質を好むのは意外ではない。保険が、誘拐犯のインセンティブになっているのだ。人質が保険に入っているほうが、取引がスムーズに進むし、誰もがプロフェッショナルとしての行動をとる。少なくとも行動が予測できるからだ(卑劣な行動をとり、市場を荒らす、ならず者もいる)。要するに、保険会社は、犯人が信用できる約束をするための手助けをしているわけだ。


■家族に現金を贈ってはいけないワケ

 いつもではないにせよ、現金を贈るのは趣味が悪いと思われる理由ははっきりしない。おそらく贈り物は、愛する人を理解していることを示すパフォーマンスなのだ。ほかのシグナリングと同じく、プレゼントを贈ることでも、われわれは試されている。愛する人は、どれだけ自分の欲しいものをわかってくれているのかをみている。現金なら誰でも贈れるが、自分に似合う花や、ロマンチックな夜にぴったりなワインを選んでくれる人は、そういないのだ。


【感想】

◆冒頭部分での推薦者の著作や、下記の参考記事に挙げた記事の書籍を読まれて楽しめた方であれば、本書は間違いなく、「当たり」だと思われ。

とにかく、「身も蓋もない」(いい意味でw)お話の数々に、その手のコンテンツが好きな私は狂喜乱舞。←大げさw

翻訳本らしいシニカルな表現も内容とマッチしており、土井さんが「隠れた名著」というのも分かります。

・・・まだ本は出たばかりなんで、「隠れた」という表現はどうかと思いますがw


◆タイトル通り「インセンティブ」をテーマとして扱っているため、「ヤバい経済学」とも近い(「罰金を取ると遅刻がかえって増える」という事例は両者にアリ)のですが、アチラが本当に「ヤバいネタ」(売春やクスリ等)まで扱っているのに比べると、こちらは比較的まとも。

とはいえ、通常の経済学の本では出てこないような「面白ネタ」の数では決して負けていません。

上記で列挙した以外にも、ネタ的に面白かったこんなお話が。

●良い経済学と悪い経済学を見分けるための3つの原則

●招待状の出欠の連絡を早く出してもらう方法

●メトロポリタン美術館を本当に楽しむための4つの原則

●第一印象で退屈に思えた古典小説攻略の8つの原則

●古い曲が顧みられないワケ

●レバノンを訪れた男性がCIAの工作員と間違われた場合に拷問を避けるための5つの作戦

●この10年でUFOを見たという報告が激減したワケ


・・・本の前の方から拾ってみて、この辺でまだ半分ですよ。

「拷問を避ける作戦」というのは、非日常的ですが、ポイントで挙げた「皿洗い」のお話を含め、日常生活に活かせる話が多いのも本書の特長かも。


◆また、本書の後ろの方で登場するため、すぐ上の「面白かった話」からも漏れてしまったネタで、「レストランの攻略法」「家庭でつくるべき料理は?」なんてのもありました。

その話の絡みで、私も常々頭にあったのが、ファストフード店等のチェーン店の価格。

日本の場合、地方と都心とでは、人件費や土地代がかなり違います。

もし提供される食事の質が同じだったら、銀座のど真ん中で食べるハンバーガーは、かなり贅沢なんじゃないかな、とか思ってみたり(味は変わりませんがw)。

ちなみに、ウチの近所のデニーズは「たぶん全国で一番景色のいいデニーズ」なんて言う人もいるくらい、景色が素敵。

それ込みでの料金と考えれば、結構お得だと思います。


◆ただし、本書は「比較的まとも」だと言っても、「仕事ですぐに役立つネタ」が満載されているワケではありませんので、その辺はあしからず。

私も本書では、純粋に「面白さ」を味わってみました。

ただ、人間の根底にある「インセンティブ」という仕組みを理解しておくと、じわじわと仕事や家庭で役に立ちそう。

私もいつか、子供のしつけに取り入れてみる所存です。


読んでおくことを激オススメしたい1冊!



【関連記事】

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転ばぬ先の経済学(2007年01月26日)

「まっとうな経済学」ティム・ハーフォード(2006年10月23日)

『「みんなの意見」は案外正しい』 ジェームズ・スロウィッキー(2006年02月28日)


【編集後記】

『「見える化」仕事術 』などでお馴染みの石川和幸さんの新作がコチラ。

なぜ日本の製造業はもうからないのか
なぜ日本の製造業はもうからないのか

風のウワサ(?)によると、かなりの自信作らしいですよ!


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