2009年09月09日
【英語】『「伝わる英語」習得術』から学んだ「英語活用5つのツボ」&「勉強法4つのポイント」
【本の概要】
◆今日お送りするのは、久しぶりに「英語」の勉強本。とはいえ、本書は通常の勉強本ではなく、前半(といっても4/5ほど)は「理系の巨匠6人」(養老孟司、小柴昌俊、日野原重明、きたやまおさむ、隈研吾、海堂尊各氏)への英語全般(習得、活用等)に関するインタビューが。
そして後半は、東京工業大学で英語の非常勤講師を勤める著者の原賀さんの、「英語勉強法」によって構成されています。
◆単純に英語学習のノウハウを仕入れるのだったら後半部分の方が濃いのですが、前半部分の、仕事で英語を使われている「理系の巨匠」のお話は、「なぜ英語が上達できないのか」と悩む方にとっては、良いヒントになるかと。
特に、英語を使うことが「目的」ではなく、「手段」であるビジネスパーソンにとっては、得るところが多いと思われ。
そこで前半部分からは「活用法」のツボを5つ、後半部分からは「勉強法」のポイントを4つお送りします。
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【目次】
1 理系の知の巨人たちに聞く
日本人の深層心理と英語―きたやまおさむ(精神科医・作詞家)
世界の公用語はブロークン・イングリッシュ―小柴昌俊(物理学者)
日本人の脳のつくりと英語の関係―養老孟司(解剖学者)
コミュニケーションのつぼ―日野原重明(医師)
「はじめに英語ありき」ではない―海堂尊(作家・病理医)
こころをつかむ英語―隈研吾(建築家)
2 「伝わる英語」に変えるための勉強法
付録:すぐに使える場面別フレーズ
【英語活用5つのツボ】
■1.ジェラシーが上達を阻む◆それまでの部分で、日本人の「均質性」について、解説されていたきたやまおさむさん。
要は、日本だと「出る杭は打たれる」傾向にある、と。
そういえば、勝間さんも「三毒追放」で「妬まない」って言われてますし。外国にだって当然あるのですが――彼らは滅多にそれを認めないけど――、日本の社会現象はほとんどがこの「羨望」で動いています。誰かを支持したり、誰かのファンになったり、または誰かを嫌いになったりするときも、「ジェラシー(jealousy/嫉妬)」が動く。
これは突っ込んだ心理学の話になるんだけど、英語をうまく喋る人にジェラシーというものを抱いていると、実は自分の英語はうまくならないんです。といおうのは、「モデル(model/手本)」を失ってしまうから。同じように、歌がうまい人をけなすと、その人自身は歌がうまくならない。
◆さらに、「モデル」という点で、こういう指摘も。
このお話に関連して、著者の原賀さんは、「ベストヒットUSA」で知られる小林克也さんが、実は海外経験がなく、在日米軍のラジオ放送で英語力を身につけたことを知ったときの衝撃が、忘れられないとか。だからぼくは、日本人で英語が喋れるようになった人の中から「適切なモデル」というものを見つけるべきだと思います。英語の教師は外国人のほうがいい、外国人でなくちゃいけない、と思っている人が多いけど、それは違うと思いますね。日本人で英語が喋れるようになった人ほど、実はいい先生ですよ。だってその人たちは、いいモデルなんだから。
原賀さんにとっては、まさに小林さんが「適切なモデル」だったわけですね。
■2.コミュニケーションの秘訣は、大人のジョーク
◆ノーベル賞受賞者である小柴先生は、お茶目な一面を披露。
外国人とのコミュニケーションを円滑に行う秘訣として、こんなお話が。
とはいえ、その「色っぽいジョーク」の具体的な内容は、本書内でも「オフレコ」。――ジョークというのは、どんなものを?
小柴 一番得意だったのはね、パーティーでアメリカの奥さん連中に話すジョーク。あちらはパーティーというと、奥さんたちがうんと出てくるでしょ。その奥さんたちは、ぼくのまわりを囲んじゃうんだよ。なぜかっていうと、日本の色っぽいジョークを英語に訳して話してあげるから。そうすると彼女たち、ケタケタ笑うんだよ。
具体的にはこんなものラシイです・・・。
小島 貞二 ¥ 840 |
なお小柴先生は、英語で話すことに関して、そのちょっと前の部分で
「いちばん大事なのは、自分の言おうとしていることが、はたして価値のある内容なのかどうか。それだと思うよ」
と言われてらっしゃいます。
「素晴らしい!」と、思って、その部分に付箋を貼った私ですが、その直後にこんな「オチ」があったとはw
■3.英語で言えないことはない?
◆今度は、養老先生が留学当初、自分の言いたいことがなかなか英語にできずにいた時に、オーストラリア人の同僚から言われた言葉、「英語で言えないことはない」に関して。
この部分のお話は、知ったからと言って、英語が即、上達するとかではないのですが、個人的に「なるほど!」と思った次第。養老 いやそれはね、もうびっくりしましたね。彼らにとって、「『言葉にならないこと』というものは存在しない」ということなんですよ。
いろんなことを考えていくうちに、我々の頭の中には曖昧模糊としたものが出現するわけですが、彼らの世界では、それをいったん「言葉」に変換することによって、初めて存在するようになるのです。そこが非常にはっきりしていて、ちょうど人と動物を区切るように、「言葉の世界」と「そうじゃない世界」のあいだに線を引いている。聖書にも、「はじめに言葉ありき」と書かれていますね。
しかし我々日本人は、けっしてそうは思っていないでしょう。逆ですよ。「言葉にならない」部分がちゃんとあって、そこから言葉が抽出されてくるというふうに思っている。
英語と日本語とでは、もう実在感自体が違うんですよ。実在感というか、「現実感ね」。
養老先生のパートは、他にも興味深いお話(『英語は「客観的」ではなくて「具体的』『日本人は「概念の階層構造を考えない』等)がいくつもあったのですが、このスペースではまとめ切れなかったので、ぜひ本書でご確認を。
■4.人に説明するとうまくなる
◆建築家の隈さんは、米国留学中よりも、海外で講演をするようになってからの方が英語が上達した、と発言。
また、隈さんは「話す内容が山ほどある」ということが、英語上達のキモだと言われていて、客員研究員時代、ニューヨークのアパートには「畳を2枚買って茶室をしつらえた」のだとか。自分のことを英語で90分話すためには、いろんなことを考えないといけないし、用意しなきゃならないでしょう。普通の日常会話というのはスポーツみたいなもので、球が来たら打ち返せばいいから、自分で90分間喋る必要はまったくない。でも、テニスみたいな打ち返す感覚とは違う世界で経験を積むと、英語の質が変わってくるんですよね。説明の仕方が、単に「好き」「嫌い」「美しい」「汚い」だったら、90分ももたないじゃない。
だから、オーディエンスに向かって話す機会が増えて、いろんな説明を自分なりに探すようになったというのがよかったのだと思います。
それによって、作法から道具から話すネタがたくさんできたとのこと。
日本の文化を説明することによる、「コミュニケーション」と「英語上達」の一挙両得ですね!
■5.英語では自信を持って最後まで言い切る
◆同じく隈さんが、外国でのプレゼンやコンペで得た経験は、「自分はとても自信がある」とアピールすることだそう。
ところが、日本だと真逆なのだとか。図面だけを見て、それがいい建物なのか悪い建物なのかというのは、ほとんどわからないと思うんですよ。審査するほう、つまり依頼者は建築のプロじゃないわけだし。
そうするときっと、ぼくの「自信」を見ているんですよね。喋っている人間がどれだけ自信を持って、「いい建物ができます」って言うかを見ている。海外では、その自信をちゃんとストレートに出すことが大事なんです。
これも、外国人相手にプレゼンをされる方なら、思い当たるフシがありそうなお話でした。逆に日本では、自信をストレートに見せると嫌なヤツだと思われちゃうから、一緒に仲良くやっていけそうな「いい人」だということのほうを強調しないと駄目なんですよね。
【原賀さんによる英語勉強法】
◆次に、本書の著者の原賀さんによる、「英語勉強法」をご紹介。こちらはコンパクトに「Listening」「Speaking」「Writing」「Reading」「社交術」といったところがまとまっています。
ポイントを4つ。
■1.カタカナに置き換えない(Listening)
英語ではまったく異なる音なのに、日本語にはその区別がないので「L」と「R」はすべて「ラ行」に、「B」と「V」は「バ行」に一括されてしまう。この弱点を克服するには、聞いた音をカタカナに対応させずに、日本語には存在しない音を受信するアンテナを頭の中に立てようと強く意識することが第一歩だ。あきらめずに聞き続ければ、かなり改善される。養老先生のお話では、大人になってからでも集中的に聞かせると、脳の中で、「L」と「R」がきれいに区別されるようになることが科学的にわかっているそうだ。
■2.英語のリズムに慣れる(Listening)
カタカナ英語は一度頭にこびりつくと足をひっぱり続けるので、外来語はすべて、本来の発音と強調する音節の位置を辞書で確認する習慣をつけるようにしたい。
■3.ストーリーを語るように話す(Speaking)
とにかく「ストーリーを語るように話す」のがコツだ。そうすると、語彙が豊富でなくても発音が日本人英語でも、「伝わる英語」にぐっと近づく。
この技を磨くには、誰かと英語で話すのがいちばんだが、自宅で一人でできる方法もある。一分などと時間を決めてタイマーをセットして、その間ひたすら英語で喋り続けるのだ。その日の出来事など、なんでもいい。考えすぎないで、止まらずに言葉をつなぐ。録音すると緊張感が生まれるし、あとで聞くと改善すべき点が自分でもよくわかる。
■4.「伝わる英語」を書く3原則(Writing)(抜粋):
●一文は短く、簡潔に
●受動態はなるべく避ける
受動態のほうが望ましい場合もあるし、むしろ受動態でしか書けない場合もあるが、それ以外はできるだけ能動態を使う。
【感想】
◆冒頭でも書いたように、巨匠6人へのインタビュー部分は、非常に興味深かったです。そもそも、中学3年、高校3年、大学でも通常2年くらいは英語を習っていて、なぜに一般的に日本人は英語が苦手なのか?
私なんぞ、何度か申し上げたように、大学卒業時に3ヶ月だけ英国の語学学校に短期留学し、その時点では結構喋れるようになったわけです(一応)。
帰国前に欧州旅行をした際、スペイン人の友人宅で英語を喋っていたところ、同じ3ヶ月しかやってない友人より喋れていたのでその両親が「スゴイ」とホメてくれたのに、日本ではかれこれ「8年英語やってた」と言った途端に、「なーんだ」と言われてしまったワケですが(当時スペインの第2外国語はフランス語のため英語は義務教育ではなかった)。
まーでもぶっちゃけ、英語8年やってても会話した記憶ってほとんどないような。
◆もっとも、そういうカリキュラムの問題以外にも、「日本人が英語が得意になれない要因」がいくつかあることを、本書を読んで初めて知りました。
特に注目すべきは、きたやま先生と、養老先生のパート。
ここは英語学習を志す方なら、一読されても損はないです。
結局、「物事を考える時点」から英語を用いて、さらに「階層構造」も意識して・・・って、私には無理かも(詳しくは本書を)。
◆ただし、冒頭にも書いたように、英語を手段として用いるのであれば、様々なアプローチが可能。
どんなに英語が下手でも、本書で散見されるように「話す中身を充実させる」ことや「ブロークンでも気にしない」といったことで、相手に伝えることは可能ですし。
さらには小柴先生や、取り上げなかったのですが、日野原先生が「ユーモア」の必要性について説かれているのが印象的でした。
小柴先生にいたっては、本書のインタビュー中にも一発ジョーク(しかも大人系w)かましてたりしていて、びっくりですよ。
なるほど、こういうセンスも外国人相手には大事なのかも。
◆同様に割愛させて頂いた海堂先生は、むしろ「いかに英語で苦労しないで済ませるか」みたいなお話になっていて、英語を勉強されたい方にはどうかと思うのですが、これもアリかと。
なにせ、研究されていた「Ai」の国内での認知度を高めるために「外圧」を目的として海外の学会で発表していたのが、小説の映画化により、その本来の目的を果たせたわけですから。
海堂 尊 ¥ 1,680 |
どうも海堂先生の場合、「小学校6年生の頃から、HNKのラジオ講座を7年間聴き続けて英語が得意になったのが、大学に入って2年間遊び呆けて留年したらきれいに初期化されてしまった」(本人談)というのが大きかった模様。
それでも、海外出張の2週間前からは、英語のテープを聞き流して、耳を「開く」ようにしているのだそうですから、流石です。
◆そもそも、英語関係の本というのは「英単語&英文だらけ」なものが新書でも見受けられたりするものですが、本書は別。
恐る恐るリアル書店でチェックしてみたところ、通常のビジネス書と代わらない(?)ほどの英単語量だったため、つい買ってしまったというw
しかも中身も、かつて短期留学から帰国してからは「比較言語学」にハマった私には、かなりツボ。
ただ、きっと私以上に実際に英語を学習されている方の方が楽しく読めるのではないか、と。
もちろん、後半部分の勉強法も、ページ数的に薄い割には抜かりないです。
正直、見っけモノな1冊だと思われ!
原賀 真紀子 ¥ 819 |
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【編集後記】
◆ちょっと気になる本。NHK「ソクラテスの人事」制作班 ¥ 1,260 |
番組は観た事無いのですが、本は面白そうです。
ご声援ありがとうございました!
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私は高校時代にビヨンセになりきってデスチャを歌いまくることで、コテコテのアメリカンアクセントを身につけました。やっぱり楽しい方法が一番。
初めまして。コメントありがとうございます。
なるほどー、発音ですか。
私も結構速く喋れるようにはなったのですが、いかんせん、ジャパニーズアクセントというか、ストレスやイントネーションがおかしかった記憶が(汗)。
そして、ビヨンセ!
ウチのムスメも以前はPV観て踊りまくってました(当時2歳)。
やはり歌は英語にはいいんですね。
アドバイスありがとうございました。